交換レンズ実写ギャラリー
HD PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited
見た目と実力を兼ね備えたパンケーキレンズ
Reported by 大高隆(2013/12/2 08:20)
smc版のDA 40mmF2.8 Limitedは本誌でも繰り返しとりあげており、ペンタックスファンにとってなじみ深いものだろう。私自身にとっても、DA 15mm F4 Limitedとのコンビでいつもバッグに入れて持ち歩いている使い勝手のよいレンズだ。今回とりあげるHD DA 40mm F2.8 Limitedは、そのリニューアル版にあたる。3群4枚のテッサータイプの最後尾に1枚を加えた4群5枚構成のこのパンケーキレンズは、ペンタックスの伝統的な名玉の1つだ。35mm判換算焦点距離は61mm相当にあたり、中望遠寄りの準標準の画角になる。
最大径63×長さ15mm、重量90gというサイズは、これが一眼レフ用AFレンズであることがにわかには信じられないほどコンパクトで、ボディに取り付けた姿はまさにパンケーキのようだ。15mmという短い全長にAFレンズとして必要なすべての要素を収め、さらにクイックシフトフォーカスまで組み込んでいるのは驚きに値する。フォーカスリングは幅が非常に狭いものの、滑り止めの刻みが適切に入れられており、MF時の操作性も優れている。
フジツボ型のフードはアルミ削り出しで、遮光機能はもちろん保護性にも優れており、一般的な使用環境であれば保護フィルターの必要はないだろう。フィルターアタッチメントは鏡筒先端の49mmとフード先端の30.5mmの2種類を備える。付属のレンズキャップは30.5mmのねじ込み式だが、脱着に少し時間がかかるのが難点だ。一般的なスナップオン式のレンズキャップにも30.5mmの製品があるので、実用性を重視するユーザーはそれを入手するといいだろう。
今回のリニューアルに際しては、HDコーティングと円形絞りの採用というHD DA Limitedすべてに共通する改良に加え、この40mmには、前玉のSPコーティング導入も行なわれた。絞りは9枚羽の円形絞りを採用し、F2.8~5.6の間で開口部をほぼ円形に保つ。最小絞りはF22である。
これ以上ないほどにシンプルな4群5枚の光学系は、以前から抜群のヌケのよさを誇っていたが、HDコーティングの採用によって逆光性能はさらに確かなものになっている。光源をモロに画面内に入れても、回折による光芒が出るだけで、ゴーストやフレアはまったく発生しない。画面のわずかに外側に太陽があるようなアングルでは、ミラーボックス内壁からの乱反射が画面にかかってくることがあるけれど、それ以外には逆光を怖れる理由は何もないようだ。
シャープネスの高さで知られるレンズだが、実際に使ってみると、思いのほかボケが素直で、目障りなところがないことにも気付くはずだ。ただし、真正テッサーほどではないものの、開放絞りでは周辺光量落ちと画面周辺部の玉ボケの欠けがやや目立つ。おそらくは口径食の影響だろう。軽く絞り込んでやればこれは抑えられるのだが、従来の絞りでそれを行なうと、玉ボケに絞り開口部の多角形が現れ、不自然な表現になってしまうことが避けられなかった。今回の円形絞り採用によって、1絞りほど軽く絞ってやることで、周辺まで崩れのない自然なボケを表現することができるようになった。
解像力は非常に高く、開放絞りからすでに、画面の隅々まで充分なシャープネスを発揮する。収差を抑えるために絞るという考えは、この40mm F2.8には無用と言ってよいだろう。色収差についてもほとんど指摘すべき欠点はない。歪曲収差はわずかなタル型を示すが、非球面を使わないレンズ構成に相応の素直なもので、補正に苦労するようなものではない。
最短撮影距離は0.4mで、マクロレンズには及ばぬものの、ちょっとしたメモ代わりの接写程度なら十分に対応できる。これ1本つけておけば様々なシャッターチャンスに即応できる、守備範囲の広い高性能レンズだと言える。
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