交換レンズ実写ギャラリー
キヤノン「EF 200-400mm F4 L IS USM エクステンダー 1.4×」
スッキリとしたヌケの良い描写
Reported by 大浦タケシ(2013/10/30 08:48)
エクステンダーを内蔵したレンズとしては世界初となる超望遠ズーム。しかもこのズーム域はキヤノンEFレンズとして初めてとなる。本レンズの国内での開発発表は2011年、ようやく今年の春リリースされたが、待ちわびていたスポーツカメラマンなど少なくないことだろう。
ズームレンジは200mmから400mmまで、さらに内蔵する1.4倍のエクステンダーにより最大560mmまでの焦点距離をカバーする。エクステンダーを内蔵するメリットとしては、通しで200mmから560mm相当のズーム域とした場合にくらべ鏡筒がコンパクトに仕上がること、単体のエクステンダーと異なり着脱の手間や時間がかからないこと、そして光学的により最適な位置にエクステンダーの光学系を入れられることなどがある。
エクステンダーを入れるとF値が1段分低下するほか、切り換え操作時にカメラ側の操作の制限があるが、そのメリットによる恩恵は計り知れないだろう。ちなみにエクステンダーの切り換えはマウント近くにある専用のレバーを操作するだけなので、スポーツなどシャッターチャンスを見逃したくないような撮影ではこの上ないものとなるはずだ。さらに、本レンズはエクステンダーEF1.4×IIIの装着も可能としており、その場合EOS-1D XやEOS 5D Mark IIIではAFも機能する。なお、エクステンダー切り換え操作時のカメラ側操作の制限については、こちらで確認していただきたい。
エクステンダーに関する部分を除く操作系は、他の超望遠系のEFレンズと同じだ。一見複雑そうに見えるボタン、レバー類だが、機能を理解するとその理に適ったレイアウトに感心する。そのなかでもAFストップボタンとフォーカスプリセット機能は動体撮影をメインとするユーザーは覚えておくとよい。
鏡筒先端近くにあるAFストップボタンは、AF作動中に押すとAFを一時中断する。一部のフィルムEOSでは機能しないが、被写体を深追いしすぎてデフォーカスになることを抑えたいときなど便利だ。フォーカスプリセットはあらかじめピント位置をカメラに覚えさせておくと、再生リングを左右いずれかに回すと記憶したピント位置にフォーカスが移動する。野球のピッチャーのように決まった位置にいることのある被写体や、置きピンで被写体を狙うときなど出番も多そうである。
掲載した作例は全てEOS 5D Mark IIIで撮影した、撮って出しのJPEGである。基本的にはAFモードはAIサーボAF、いわゆるコンティニュアスAFとしている。作例を見る限りどのカットも全てAFはしっかりと捕捉している。残念ながら今回サッカーやラグビーのような比較的近距離で速い動きのものは被写体とすることはできなかったが、他の超望遠EFレンズの性能を考えれば、その実力は違わないことだろう。
描写については、まずシャープな画像に驚かされる。線の細い繊細な描写は、古い超望遠ズームの描写を知っている者にとっては別次元。もちろん色のにじみなどもズーム全域皆無といってよく、それは内蔵エクステンダーを使ったときも同様だ。蛍石1枚、UDレンズ4枚の贅沢な光学系を採用していることが功を奏しているのだろう。最新のSWCコーティングが施されており、スッキリとしたヌケのよさも特筆すべきものである。
カタログなどを見ると軽量と謳うが、それは他の超望遠レンズと比較してのこと。3.6Kgという質量は正直体力を要する。何より1,000~1,500ccクラスの乗用車が買えてしまうようなプライスは財力も必要だ。しかし、描写はそれらに見合うものであり、エクステンダーの使用も含めた広いズーム域は望遠レンズとしてたいへん使いやすく感じる。描写も含め、真剣に購入を検討しているEOSユーザーの期待を裏切るようなことはないはずだ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
- カメラによる周辺光量および色収差の補正は行なっていません。