切り貼りデジカメ実験室

銀塩PEN用の「フラッシュガン」をLEDライトに改造

オリンパスがハーフ判フィルムカメラOLYMPUS PENを発売していた当時、「PEN-FLASH」という小型でスタイリッシュな照明用アクセサリーが発売されていた。これは現在のストロボとは異なり、使い捨てのフラッシュバルブを使うタイプで、今となっては使うことが難しい。そこで、PEN-FLASH内部にLEDライトを組み込み、現代のOLYMPUS PEN DIGITALにも使えるアクセサリーとして改造してみた。

レトロなフラッシュガンにLEDライトを組み込む

 カメラ屋さんのジャンクコーナーを覗いたら、ふと銀色の小さな四角いモノが目に止まった。超小型のストロボなのかな? と思ったのだが何かが違う。さらに観察して、これはストロボが普及する以前に一般的だった「フラッシュガン」であることに気付いた。

 フラッシュガンは、発光部にフラッシュバルブ(閃光電球)をセットして使用する。電圧をかけると、ガラス玉に封入されたアルミニウムあるいはジルコニウムが瞬時に燃焼し、閃光を発する仕組みだ。フラッシュバルブは使い捨てで経済性が悪く、やがて現在のストロボに取って代わられた。

 つまりずいぶんレトロなアクセサリーなのだが、それにしてはデザインがなかなか洗練されていて、実にコンパクトだ。上面の銘板を見ると「Olympus PEN-FLASH」とあって、合点がいった。これはかつてオリンパスが発売していたハーフ判フィルムカメラOLYMPUS PENシリーズ用のアクセサリーだったのだ。

 読者のみなさんもご存じの通り、現在のOLYMPUS PEN DIGITALシリーズは、フィルムカメラのOLYMPUS PENのコンセプトを受け継いでいる。だからこのPEN-FLASHをPEN-DIGITALに装着したら、さぞかし似合うだろう。

 ――などと考えていたら、なじみの店員さんが「買うんだったら無料でフラッシュバルブも付けますよ」と声をかけてくれたので即購入することにした。ついでに「糸崎さん、今度はLEDライトにでも改造するんですか?」と言われたので、そのアイデアも頂戴することにした(笑)。

 そう言えば、最近あまり使わなくなったLED懐中電灯が家にあったなと思い出し、これを分解し中身をPEN-FLASH内部に組み込む工作に挑むことにしたのだ。

―注意―
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ハーフ判フィルムカメラOLYMPUS PENの時代に発売されていた、その名もPEN-FLASH。中古カメラ店のジャンクコーナーで売られているのを発見し、購入した。かなりコンパクトで、オシャレなデザインは現在のPEN DIGITALに装着しても似合いそうだ。
PEN-FLASHは現在のストロボと同じくホットシューに装着するタイプだ。調べてみると、PENシリーズで初めてホットシューを装備した「OLYMPUS PEN EED」と同時期の1967年発売のようだ。背面には露出表が印刷され、距離に応じた絞り値が示されている。対応フィルム感度は「ASA64/100」である。
PEN-FLASHは現在のキセノン管を使ったストロボとは異なり、それが一般化する以前のブラッシュバルブ(閃光電球)を使うフラッシュガンなのである。フラッシュバルブに電圧をかけると、封入されたアルミニウムあるいはジルコニウムが燃焼し閃光を発する。フラッシュバルブは使い捨てで、本体向かって右のレバーを引いて排出する。
ついでに「東芝閃光電球AG-3」の箱の裏だが、注目すべきは蓋の内側に描かれたキャラクターで、何と「高速エスパー」だ! 1967年放送のテレビ番組で、スポンサーである東芝のマスコットキャラとしてもしばらく使われていた。この閃光電球はPEN-FLASHを買った際、店員さんがおまけに付けてくれたのだ(どうもありがとうございます)。
PEN-FLASHはアルミ製のシェルを引き抜き、プラスティック製の本体に電池を挿入する。この電池はネットで調べてみると「W10・15V」というフラッシュバルブ専用の積層電池で、もちろん現在では売られていない。
現在のOLYMPUS PEN DIGITAL専用フラッシュ「FL-LM1」と比較しても遜色ないほどのコンパクトさ。当時のオリンパスの思想がいかに先進的だったかがうかがい知れる。
PEN-FLASHをOLYMPUS PEN Lite E-PL5に装着してみたが、思った以上に実に良く似合う。しかし、PEN-FLASHは電池も売ってないし、フラッシュバルブも2個しかないのでこれを使って写真を撮のは難しいだろう。そこで今回はこのPEN-FLASHの外観をそのままに、これをLEDライトに改造することにしたのである。
LEDライトは自宅の引き出しの奥に眠っていた「GENTOS PATRIOPRO GT-10AA」を改造することにした。単3電池2本使用で、かなりの光量が得られ、しかも防水タイプの優れものだ。しかし最近はiPhone内蔵のLEDライトを使っているので、すっかり出番がなくなっていたのだ。
GENTOS PATRIOPRO GT-10AAの先端パーツを外すと、電子回路と一体になったLEDライトが摘出できる。これは電圧を高める昇圧回路で、そのおかげで電池2本(3V)で高照度LEDの発光を可能にしているのだ。
LEDライトをさらに昇圧回路と発光部とに分解してみる。このような工作は半田ゴテを使って、部品を壊したり無くさないよう気をつけながら丁寧に行なう。なお、今回ははじめから付いていたヒートシンクも外しているので、発熱の関係から短時間の点灯にとどめたい。熱対策としては、アルミ板を熱伝導の良い接着剤で貼り付けてヒートシンクとしても良い。
PEN-FLASH本体の方も、このようにバラバラに分解してみる。本体右にはコンデンサー? のような部品が収められていたが、このスペースにLEDの昇圧回路が収納できそうだ。
しかし実際に昇圧回路を入れようとすると……入らない!
そこで基盤の外縁をヤスリで削り、サイズダウンを試みた。さらにPEN-FLASH本体の内側も、一部を彫刻刀で削り落とす。
何とか昇圧回路をボディにすっぽり収めることができた。
昇圧回路を再び取り出して、PEN-FLASHの電池ボックスに使われていた接点を、ちょっと加工して半田付けする。
接点と回路を、あらためて本体に組み込むとこのようになる。
そして、試しに電池をセットしてみたのだが、実は偶然にもPEN-FLASHの電池ボックスが、3Vリチウム電池「CR123A」とほぼ同じサイズだったのだ。
電池レイアウトが決まったところで、電源スイッチについて考えてみる。ご覧の部品はフラッシュバルブ装着金具と排出レバーだが、これをスイッチ金具として流用するアイデアが閃いた。
金具は先端部をペンチで切り取り、曲げを少し変える加工を施した。
あらためて部品を組み直すとスイッチが完成する。これは電源オフ状態。金具の間にフラッシュバルブ排出レバーが挿入され、隙間ができて通電しない。
側面のスイッチを引くと電源オン。内部のレバーが引き抜かれ、金具が接して通電する。
次にLED発光部について考えてみたのだが、発光部の中央に取り付けることにした。そのための穴を、ドリルを使い本体と反射鏡にそれぞれ開ける。
さらにまた昇圧回路を取り出し、LED発光部と電源スイッチ用のコードを半田付けする。
発光部と昇圧回路を再び組み込み、マイナス側の電気接点にコードを半田付けする。コードのレイアウトはあらかじめタイトに決めておかないと、部品が本体からはみ出してしまう。
全ての部品が何とか綺麗に収まった! PEN-FLASH本体にLEDライト、電子回路、スイッチの全てが内蔵されている。
電池を入れて、外装シェルをセットすると、LEDライトとして生まれ変わった「PEN-FLASH DIGITAL」が完成する。
あらためてE-PL5に装着してみたが、発光部の他は外観に変更がないため、違和感がまったくない。パンケーキレンズM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8を装着したE-PL5は、まさに往年のハーフ判PENのイメージで、改造で蘇ったPEN-FLASH DIGITALもまさにジャストフィットする。
電源オンでピカッと光る! 今回の工作は実は非常に苦労したのだが、それが報われた瞬間である(笑)。
上記のシステムでテスト撮影をしてみた。被写体は藤沢市の「前衛実験NETART」で展示されていた、如月愛氏のレディ・メイド作品「テルミンとミロのヴィーナス」である。ちょっと照明ムラがあるようだが、それも味わいだと解釈しよう(笑)。露出はISO200、F2.8、シャッター速度0.6秒で、ストロボやフラッシュバルブに比べるとかなり光量が落ちる。しかしこれも使いようによるだろう。
とりあえず、ワンランク明るい単焦点レンズとして、M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8に換装してみた。ボディに対してレンズがちょっと大きめで、バランスをとるためにグリップも装着してみたが、これもなかなか似合ってる。このような“着せ替え遊び”ができるのも、最近のPEN DIGITALの特徴だ。

カメラの使用感と実写作品

 改造したPEN-FLASH DIGITALはなかなか良くできたと自己満足している。しかしその光量はストロボに比べると微弱で、昼間はもちろん明るい室内でもあまり効果が感じられない。

 そこで夜の暗闇で撮影してみたところ確かに効果があるし、液晶モニターで照明効果を確認しながら撮影できる面白さはある。

 だがこの場合も、手持ち撮影すると感度を上げなければならず、画像の粒子が荒れてしまう。LEDライトによる真正面からの照明も単調で、普通に撮ってもあまり綺麗な写真になるとは言えない。

 そこでいろいろ考えた結果、アートフィルターの「ラフモノクローム」で作品撮影をしてみることにした。ラフモノクロームはもともと粒子の荒れた画質で、高感度による画質の荒れも気にならない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO12800 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/20秒 / F1.8 / 0EV / ISO25600 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/25秒 / F4 / 0EV / ISO25600 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO5000 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO12800 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO5000 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/15秒 / F1.8 / 0EV / ISO2000 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/15秒 / F1.8 / 0EV / ISO1600 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/30秒 / F1.8 / 0EV / ISO25600 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO16000 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO4000 / ラフモノクローム / 17mm
E-PL5 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 1/60秒 / F1.8 / 0EV / ISO5000 / ラフモノクローム / 17mm

 またLEDライトの直接照明も、ラフモノクロームの雰囲気にマッチしている。いわゆる森山大道風でありながら、一味違う写真が撮れるのだ。

 光量が少なめのLEDなので、近くの物しか撮れないが、そのように限定された条件がかえって面白い。

 植物を撮るとLEDに照らされた葉が妖しくてかり、その造形美が際立つ。また高感度撮影しているため、手前のLEDライトと背景の夜の光がミックスされ、独自の夜の世界を描き出す。その効果が、そのままライブビューで確認しながら撮影できるのだ。

 まぁ、夜間にライトで照らしながら撮影する姿はちょっと怪しいかもしれないが(笑)。おかげでいつもの自分の作風とは趣が異なる、美しい写真が撮れたと、こちらの結果にも満足している。

【2014年3月10日】記事初出時、フラッシュバルブに封入されているのをマグネシウムと記載しておりましたが、正しくはアルミニウムあるいはジルコニウムです。また、フラッシュバルブに「高電圧をかける」との表記を「電圧をかける」としました。

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。ホームページはhttp://itozaki.fc2web.com/ Twitterは@itozaki 「前衛実験NETART」所属。