リコーGXRの「A12」ユニットを実用カスタマイズ――オリジナル塗装でバージョンアップ編

Reported by糸崎公朗

オリジナルカラーのリコー「GXR」が発売……ではなく、グリップのゴムを剥がし自分で塗装したのだ。ボディの塗装はもちろん無理だが、グリップの塗装は意外に簡単にできるのだ

グリップにオリジナル塗装を施す

 今回は リコー「GXR」のグリップをオリジナルカラーに塗装し、バージョンアップを図ってみた。バージョンアップと言えば、11月1日にGXR 用の「機能拡張ファームウェア Ver.1.29」が公開された。

 本連載では以前「リコーGXRの『A12』ユニットを実用カスタマイズ――マクロ撮影編」をお届けした。この時「GR LENS A12 50mm F2.5 Macro」(A12カメラユニット)に搭載されたマクロレンズ(実焦点距離33mm)は実にシャープな描写をするにもかかわらず、AFが非常に合いにくいという苦言を呈した。

 そんな願いが天に……いやメーカーに通じたようで、新たに公開されたファームウェアではA12カメラユニットのAF高速化が計られている……などという記事を書こうと思ったら、編集部による連載「気になるデジカメ 長期リアルタイムレポート・リコーGXR【第5回】A12 50mmのAF高速化を検証する」で先に紹介されていた(笑)。

 しかしそもそも、ファームウェアの紹介だけでは「切り貼りデジカメ実験室」としては芸がない。だから本体グリップにオリジナル塗装を施し、デザインもバージョンアップする記事として考えていたのだった。

 最近はペンタックスの革新的精神により、デジタル一眼レフカメラにもカラーバリエーションが登場するようになった。そうなると、ペンタックス以外のユーザーも、自分のカメラに個性的なカラーが欲しくなるかも知れない。そういう人は自分で塗装するしかないのだが、カメラボディの塗装は素人には絶対に不可能だ。

 しかし実は、グリップのゴムの塗装くらいだったら割と簡単にできるのだ。デジカメのグリップのゴムは、たいてい両面テープのような接着剤で貼られていて、慎重に作業すれば剥がすことができる(もちろん機種によるが)。これをラッカー系の缶スプレー塗料で塗れば、簡単にオリジナルカラーのグリップが完成する。

 以下、ぼくがGXRに施したグリップのオリジナル塗装の手順を紹介しよう。

―注意―

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塗装前のGXR+A12カメラユニット。とは言えぼくのGXRは、以前の記事で紹介したように、EVFの接眼部レンズキャップなどが改造されている(笑)塗装するグリップのカラーは、レンズ鏡筒のリングカラーに合わせて、メタリックレッドに決めた。塗料は「タミヤカラー スプレー塗料」の「TS-17アルミシルバー」と「TS-74クリヤーレッド」をセレクト。ほかに「メタリックレッド」も販売されていたが、シルバーの下地にクリヤーレッドを塗装するほうが綺麗に仕上がるのだ
グリップのゴムは両面テープのような接着剤で貼り付けてあるので、手でゆっくりと剥がす。接着剤はグリップ裏に残り、粘着性を保っている。塗装後ふたたびグリップを貼る際に、この接着力を活かすことにするさて、ゴムをどうやって塗るかを考え、治具の製作を思いついた。まず、コピー用紙に短く切ったガムテープを2列貼り付ける。このあとガムテープ以外の周囲をカットする
ご覧のように、ガムテープにゴムをしっかりと貼り付ける。ガムテープの表面はツルツルしており、作業後に接着剤の粘性を残したまま剥がすことができるのだ裏から見るとこんな感じ。割り箸に、裏返したガムテープを巻き、治具に貼り付け持ち手にしている
塗料はシルバーから塗る。いちどに厚塗りすると仕上がりが汚くなるので、まずは薄く塗って十分に乾燥させてまた塗る。という作業を3回繰り返す次はクリヤーレッドの塗装。これも3回塗りする。このあと十分に乾燥させ、ガムテープからゴムを慎重に剥がす
塗装したゴムを、元通りグリップに貼り付けると完成! レンズ鏡筒リングのメタリックレッドとコーディネートしてみたのだが、なかなか似合っている。ゴムにメタリックカラーは素材としても違和感があるかも知れないが、イマドキはこれくらいの派手さが無いとオリジナルカラーとしては主張できない(笑)これまでの連載で紹介した改造、倍率アップした電子ビューファインダー、自作ストロボディフューザー、手動開閉キャップをフル装着した状態。まさに機能と美の融合……と自分では満足している(笑)
P10ユニットを装着するとこんな感じに。これもなかなかオシャレな感じだ。こうなったら、取り外し可能な自動開閉キャップの塗装も考えられるが、その際は可動部の処理に工夫が必要だろう

アップデートでAFが格段に良くなった!

 A12カメラユニットのアップデートについては、前途のように「A12 50mmのAF高速化を検証する」 で紹介されているが、ぼくなりの追記をしてみよう。

 今回のアップデートでは、確かにAFが速くなっているし、何よりマクロモードでもきちんとピントが合うことに感動してしまった。いや実に当たり前のことなのだが、それまでのバージョンのAF性能があまりに良くなかったのだ(笑)。

 機械式のフィルムカメラと異なり、デジタルカメラはソフトのバージョンアップにより、別のカメラと言っていいほどに生まれ変わることがあるから面白い。同じ人間でも、勉強すれば“リコー”になれる、というのに似てるかも知れない(笑)。

 まぁ、他メーカーに比べるとまだAFの動作はゆっくりだが、この性能ならスナップからマクロまでこなす万能レンズとして、多くの人に勧められる。

アップデート後の、ぼくのA12カメラユニットの起動画面。これは「MY3」に登録したマクロ撮影用の設定だが、「スポットAFエリア設定」を「ピンポイント」にしている。もちろんターゲット移動も可能で、AFでも精密なピント合わせができるので便利だ前々回のアップデートから採用された「マクロAF距離制限」は、撮影範囲が微妙に変更された。これをONにすると、マクロボタン(花マーク)を押すたびに撮影距離が3段階に切り替わる。新しいバージョンでは「マクロオン12-30cm」、「マクロオン7-14cm」、「マクロオフ」の循環式。旧バージョンはマクロオンがそれぞれ「10-30cm」、「7-10cm」だった
これは「マクロオン12-30cm」に切り替えた画面で、左上にその表示が出ている。このように距離を制限することで、高速なピント合わせができる

作品

 A12カメラユニットでのマクロ撮影の作品は、「リコーGXRの『A12』ユニットを実用カスタマイズ――マクロ撮影編」で紹介済みだが、今回はアップデート後にAFモードで撮影した写真を見ていただこう。このアップデートのおかげで、ようやく「GR」の名を冠したマクロレンズの性能を発揮できるようになり、嬉しい限りだ。

 今年の東京は厳しい残暑のあと急に寒くなったりしたが、11月1日以降は急に暖かくなり虫もいろいろ出てきた。今回のバージョンアップはまさにグッドタイミングだと言えるだろう(笑)。

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

ファームウェアが公開された11月1日に、さっそく撮影したキボシカミキリ。自宅近所のクワの葉に止まっていた。絞り開放でもちろんAFでの撮影だが、ピントばっちりで思わず感動してしまった(笑)
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/200秒 / F2.5 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
これも11月1日に撮影したハラナガツチバチのオス。地味な虫の何気ない写真だが、ともかくAFできちんとピントが合っているのが驚き。以前のバージョンでは、このように小さなポイントにAFが合うことはなかった
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/660秒 / F2.5 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
ゲンノショウコは右の花にAFターゲットを移動して撮影している。しかし左端にもピントを合わせたかったので、3つの花の位置とカメラの撮像素子が平行になるよう向きを調節した。なかなかうまくいったが、開放から画面隅までシャープなレンズ性能のおかげでもある
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/100秒 / F2.5 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
雑木林の林床に生えていたナギナタコウジュ。花も葉も立体的な配列なのでピント位置を決めるのに迷ってしまった。花期はもう終わりのようで、ちょっと寂しい感じ。これも上手く表現すれば「情緒」になるかも知れない
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/140秒 / F2.5 / -1EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
オレンジ色の花びらが鮮やかなマルバルコウソウ。アサガオの仲間のつる植物だが、花の直径は2cmほどと小さい。花と葉の距離がずれているのでF8まで絞っている。ピントはもちろん花に合わせている
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/1,100秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
久しぶりに見たアキアカネを、杭に投影された影と共に撮影。複眼や翅脈も描写され、レンズ解像力の高さを伺わせる
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/10秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
樹液を吸うルリタテハはたびたび撮影しているが、この個体は翅の後ろがちぎれている。恐らく鳥にこの部分だけ食いちぎられたのち、逃げおおせたのだろう。このような鳥の攻撃跡を「ピークマーク」と言うそうだ
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/1,100秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
威嚇体勢のオオカマキリだが、何だかとぼけた表情に見える。顔面にピントを合わせたが、特徴的なカマを描写するためにF8に絞っている。シャッター速度は遅くなったが、カメラを地面に置いているのでぶれていない。背景のボケもなかなか美しい
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/10秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
雑木林の脇に生えていたヤクシソウは、まだまだ花盛りといった感じ。たくさん咲いている花をどう表現するのか? というのは慣れないのでなかなか難しい。ピントは右の花に合わせたが、葉の雰囲気を出すためにF8まで絞っている。シャッター速度1/24秒の手持ち撮影だが、奇跡的に!? ブレていない。
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/24秒 / F8 / -1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm
クマバチも久しぶりに見た。ヤクシソウの蜜を吸っているが、頭に花粉がたくさん付いている。昆虫の体毛が、花粉を運ぶために役立っているのがよく分かる。
GXR / GR LENS A12 50mm F2.5 Macro / 4,288×2,848 / 1/1,100秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm

告知

名称:ワークショップ「フォトモで作ろう! 静岡の街
日時:2011年1月15日(土)、1月16日(日)、1月22日(土)、1月23日(日)、2月20日(日)
時間:10時~16時
場所:静岡市美術館 ワークショップ室
住所:静岡県静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー3階
講師:糸崎公朗氏
対象:高校生以上で、5日間とも参加できる方
定員:20名、申込先着順
材料費:1,000円
持ち物:デジタルカメラ
申込方法:11月10日10時以降に電話(054-273-1515)で受付




糸崎公朗
1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。ホームページはhttp://itozaki.cocolog-nifty.com/

2010/12/9 00:00