リコーGXR【第5回】

A12 50mmのAF高速化を検証する

Reported by 本誌:折本幸治


 現在、GXRユーザー最大の関心事といえば、本日発売の新カメラユニット「GR LENS A12 28mm F2.5」だろう。すでに前日より入手している人もいるようで、購入者による報告がWeb上で盛り上がりを見せている。

 その一方で既報の通り、GXRと既存カメラユニット用の最新ファームウェアが1日に公開された。リコーお得意の機能拡張ファームウェアであり、GXR用としては早くも第2弾となる。

 というわけで今回は取り急ぎ、機能拡張ファームウェア第2弾における目玉、「GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO」ユニット(以下A12 50mm)のAF高速化についてレポートしたい。

アップデートはSDメモリーカードを使って行なう。V 1.29が最新バージョンになる
今回もボディとカメラユニットの両方を一度にアップデート。同じSDメモリーカードを取付けたまま、別のカメラユニットのアップデートも可能だ
晴れてV 1.29になった瞬間

 A12 50mmのAF速度といえば、前回の機能拡張ファームウェア第1弾(3月18日公開)でも目玉として取り上げたことがある。このときリコーは、AF動作中にモニターの画像の動きを省略することで、高速化を図った「QF-AF」を増設。確かに体感的には早く感じられるようになったものの、根本的な解決には至っておらず、特にマクロ域や環境光が暗い場合は従来のAF(QK-AFの追加により、そのときからFR-AFという名称になった)になってしまうなど、いささか場当たり的な対応に思えたものだ。

 今回のアップデートではAF高速化にともない、リコーはQK-AFおよびFR-AFを一本化。元通りFR-AFのみというシンプルな体制に戻った。

もはや見ることがないであろう、旧ファームウェアでのAFモード設定。QK-AFとFR-AFのどちらかを指定できたが、どちらもいまひとつといえた

 さて、アップデート後のAF速度だが、明らかに速くなっていて驚いた。特にマクロ域での進化は顕著で、合焦をあきらめるケースも少なくなったように感じる。中・遠景も若干速度アップしているようだ。

 とはいうものの、ようやくマイクロフォーサーズ陣営でいえば、製品化初期時代の速度に追いついたレベル。コントラストAF特有の待ち時間は存在する。またAFの動作音が大きく、少々騒々しいのは今まで通りだ。撮影のテンポは格段に良くなったものの、研鑽を重ねた一眼レフカメラの位相差AFに比べると、まだまだといったところであり、動く被写体をガンガン追えるほど速くなったわけではない。

 それでも、リリース当初の遅さを知る者にとっては、「よくぞここまでがんばってくれた」と感慨深いものがある。いままでは最初からマクロ域でのAFをあきらめていたが、これからは積極的に使えそうだ。

 


旧ファームウェア動作(FR-AF)

 

旧ファームウェア動作(QK-AF)


 

 
新ファームウェア動作

 

 さらにうれしいアップデートがあった。それは、撮影時画面のフレームレートが上がり、表示が滑らかになったこと。リコーのアナウンスにないアップデートなので詳細は確認中だが、どうやらA12 50mmについてはフレームレートが倍速程度にはなっているようだ(RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCでは変化なし)。

 もっとも、アップデート前の表示がどうだったか思い出せないので、本当にフレームレートが上がったのか自信がない。ともかく、現在手にしているA12 50mmの表示はものすごく滑らか。リコーからの回答があれば、詳細情報を追記したいと思う。

 AFがらみでは、上記とは別のアップデートがある。スポットAFにした際、AFエリアを「ノーマル」と「ピンポイント」から選べるようになった。

「スポットエリアAF設定」というメニュー項目が新設された
こちらは「ノーマル」「ピンポイント」。A12 50mmはとりあえずこちらに設定している

 もうひとつうれしいアップデートが、アスペクト比切替に関するものだ。

 GXRには、4:3、3:2、16:9、1:1の4種類のアスペクト比を設定できるが、いままでは画質・サイズに連動して設定する必要があった。これが結構面倒で、画質・サイズ設定メニューを呼び出したあと、DISPボタンを押してからアスペクト比を変えなければならない。

 今回のアップデートにより、Fnボタン1、Fnボタン2、ADJ.レバーのそれぞれに、アスペクト比切替を割り当てられるようになった。個人的には大歓迎の機能拡張だ。

 アスペクト比は写真にとって重要な要素であり、「撮影のたびにフォーマットをコロコロ変えるなんて……」と思っていた自分にしても、最近はミラーレス機でガンガン変更するようになった。シーンに合わせてアスペクト比を切り替えるのは、ライブビュー機の面白さのひとつ。さっそく各ユニットのFn2ボタンに仕込んでいる。普段は3:2で撮り、思いついたら瞬時に1:1に切り替えられるのが、もう楽しくてしようがない。

「アスペクト比」をFnボタンに割り当てられるようになったADJ.レバー1〜4にも割り当てられる
Fnボタンから切り替えたところ。写真は4:316:9
3:2こちらはADJ.レバーから1:1に切り替えた状態

 ほかにもたくさんのアップデートがある中、最後に触れておきたいのが「撮影時画面拡大」機能だ。実は画面の一部を拡大する機能自体はいままでもあったが、今回のアップデートで、ようやく構図の中央以外を拡大できるようになった。つまり、他社のライブビュー機と同様、任意の場所を拡大してのピント確認が可能になったのだ。

 操作方法は少々特殊で、従来からあるマクロターゲット機能に連動しているのが特徴的だ。マクロターゲットはご存知の通り、十字のマクロターゲットをピントを合わせたいところまで動かし、シャッターボタンを半押しすると、そこにピントが合う機能。リコーファンならおなじみの機能だろう。

 今回から、マクロターゲットの移動先でMENU/OKボタンを長押しすると、ターゲット部分が拡大されるようになった。AFだけでなくMF時でも可能。マクロ派にとっては願ってもない機能といえる。ターゲットを斜めに動かせる点も面白い。A12 50mmだけでなく、S10 24-72mmでも動作を確認した。

 このとき、セルフタイマー/削除ボタンを長押しすることで、表示倍率を切り替えるメニューが現れる。2倍、4倍、8倍から選ぶことが可能で、これも今回からの新機能だ。

マクロターゲットの位置を拡大できるようになった。なぜいままでなかったのか不思議

 しかし肝心の拡大画面が粗いため、他社のライブビュー機能に使い勝手の面で及ばない。拡大画面が液晶モニターいっぱいに広がらない点も物足りなく感じる。

 リコーが登場をほのめかしているマウントアダプターユニットが出た際、この機能は重要なポジションを占めると思う。ぜひさらなる改良に挑戦していただきたい。


新ファームウェア動作・撮影時画面拡大  

 ともあれ、機能拡張ファームウェアで使い勝手がアップしたGXR。この冬は新製品のGR LENS A12 28mm F2.5も加わったことだし、一層盛り上がりを見せそうで楽しみだ。




本誌:折本幸治

2010/11/5 15:03