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ベルボンULTREK UT-63Q

高伸縮比のユニーク三脚、重量級機材に対応

 近年よく見るタイプの三脚に「脚を反転させて収納時の長さを抑える」ものがある。旅行など荷物を少しでもコンパクトにまとめたいときに便利なのだが、その性格上、大型機材に対応するものは少ない。搭載可能重量を増やせば脚が太くなるので、コンセプト的に仕方がないところだろう。その問題をクリアしたのが、今回紹介するベルボンの「ULTREK(ウルトレック)UT-63Q」だ。

ULTREK UT-63Q。価格は4万2,630円。発売は11月。

 ULTREKは、ベルボンにおける脚反転タイプのシリーズ名。これまで推奨積載2kgの「ULTREK 45L」「ULTREK UT-43Q」がラインナップされており、どちらも約300mmの縮長から全高1,550mm(エレベータースライド時)にまで変化するという、他社製品を圧倒する高伸縮比を誇っていた。この手の脚反転タイプは全高が低いという弱点を持っているが、ULTREKは独自の「ダイレクトコンタクトパイプ」を採用することで、この問題をクリア。実用に堪える全高を実現しており、この手の製品としては異例の使い勝手の良さを誇っていた。

 なおダイレクトコンタクトパイプについては、この記事を参照いただきたい。

 加えて今回追加されたUT-63Qは、脚径を従来の24mmから30mmへと太くしたことで、推奨積載重量も2kgから3kgへと増加。おかげでデジタル一眼レフカメラと超望遠レンズの組み合わせなど、ブレが気になる重量級の機材の使用にも不安はなくなった。

製品名全高(EV含む)縮長脚径質量推奨積載
UT-63Q1,510mm278mm30mm1,590g3kg
UT-43Q1,550mm272mm24mm1,080g2kg
ULTREK 45L1,560mm295mm24mm1,240g2kg
縮めると最短で27.8cmになる。
最大まで伸ばすとこの長さに。一般的な使用ではほぼ問題ない。
脚径が30mmもあるのが新製品の特徴。三脚としてはイレギュラーな形状ながら、推奨積載3kgを実現している。

 機構的には従来のULTREKと大きく変わるところはない。セッティング方法も共通だ。脚の角度を元に戻し、本体のロータリーハブをつまんで持ち上げながら、所定の角度(約45度)まで回転させる。ロータリーハブを元の高さに戻すと脚の角度が固定される。このとき、ロータリーハブにある3カ所の開閉調整ノブを調整することで、3段階の脚の開閉角度が選ぶ。その後は各脚の先をつまんで1本ずつ伸ばし、伸ばしたら逆方向にひねって固定……文字にして書くとちょっとややこしいが、慣れればレバー式やナット式と変わらない、スムーズなセッティングが行なえるようになるだろう。

 セッティングについては、このページでULTREK 45Lでの例を動画で公開している。今回のUT-63Qも基本的な構造は同じだ。

指でつまんでいる部位がロータリーハブ。ここを回転させて開脚角度を選択する。
最も低いポジションにしたところ。機構上、腰高になるのはやむを得ない。
エレベーターを収納した状態。雲台もしっかりしている。
6段三脚なので脚先はそれなりに細い。ただし目立つようなたわみはなかった。

 全高がそれなりに高いので、一般的な3〜4段三脚を前にしたときと使い勝手が変わらないのはULTREKらしいメリットだ。しかもUT-63Qは脚径が太くなったため、安定感がかなり増した印象を受けた。大型機材でも脚のふらつきが少なくなり、安心してエレベータを伸ばせるようになったのは大きい。

 個人的にこれまでのULTREKは、ミラーレスなど軽量機材での使用が基本だと感じていた。しかしUT-63Qなら、超望遠レンズ装着時を除くフルサイズ一眼レフカメラにも十分対応できると思う。今回、ブレが目立ちやすいことで、旅行用の三脚選びに困っていたSIGMA SD1 Merrillと組み合わせて使ったが、何ら問題を感じなかったのは収穫だった。

 といっても、重心が高いスタイルは相変わらずだし、加えて段数が6段もあることから、一般的な3〜4段の三脚には性能面でかなわない部分もあるのも確か。例えばベルボンでは、脚径28mmの3段カーボン三脚「Geo Carmagne E635M」の推奨積載を4kgとしている。一方UT-63Qは、脚径30mm/推奨積載3kg。こうしたスペックだけを見ると、やはり一般的な3〜4段三脚の方が機構上有利だ。ただし縮長に目を転じれば、E635Mの67.5cmに対し、UT-63Qは約30cmと半分となる。

 ちなみにGeo Carmagne Eシリーズのうち、UT-63Qと同じ推奨積載3kgの製品は、脚径25mm/3段/縮長66.5cmのE535Mなどが該当する。こうしてみるとUT-63Qの縮長約30cmというスペックが、いかに驚異的かがわかるだろう。

 雲台にはQHD-U6Qという自由雲台が付属する。QRAシステムと名づけられたベルボン独自のクイックシューシステムを採用し、シュープレートは他のQRAシステム採用雲台と互換性がある。そのため、Geo Carmagneシリーズなどのベルボン製品のユーザーなら、Geo Carmagneをメインに、UT-63Qをサブに、という使い分けも考えられる。

 雲台には縦横2つの水準器を装備。ボールの動き、ストッパーノブの操作性などにも不満はない。比較的大きな雲台であり、ストッパーによるボールの固定も強力なので、試用中はレンズがお辞儀をするような事態にはならなかった。

 なお、雲台は取り外しが可能。取り付けネジは1/4インチ。取り外した状態でも脚の反転が可能だ。

雲台はQHD-U6Dが付属。QRAシステム採用のクイックシュータイプ。ボールの操作感は良い。

 あとULTREKで気になるのは、脚の長さ調整が難しい点と、高さの割に重量がある点か。といっても長さ調整は2段目脚の下についているノブで行なうのが基本となり、慣れればそれほど面倒ではない。

 三脚を敬遠する理由として挙げられるのが、何よりも携行しづらい点だろう。ULTREKシリーズはそれをクリアし、さらにUT-63Qで搭載機材の自由度が増した。満員列車での移動が多い人や、航空機の機内持込バッグに機材をまとめなければならない人など、機材を小さくパッケージングする必要がある人にお勧めしたい三脚だ。

付属のケースに入れたところ。雲台を外して携行すれば、さらに軽くなる

本誌:折本幸治