ファーストインプレッション:キヤノンEOS Kiss X6i
写真はEOS Kiss X6i・EF-S18-135 IS STMレンズキット。発売は6月下旬を予定。店頭予想価格は13万円前後の見込み |
いわずと知れたヒットシリーズ「EOS Kiss」に、新しく「EOS Kiss X6i」が仲間入りした。外観はこれまでの「EOS Kiss X5」とほぼ変わりはないものの、既存のデジタル一眼レフカメラ全体が苦手とするライブビュー時のAFにおいて、大胆な変革を行なった意欲作だ。さらに、満を持してタッチパネル式のインターフェイスを搭載。今後のEOS DIGITALの方向性を予感させる製品となっている。
なお今回の記事では、実写画像の掲載、およびライブビューを記録した動画を公開することが禁じられた試作機を使った紹介となる。製品版とは異なる可能性があることを留意いただきたい。また、EOS Kiss X6iに関する詳細な仕様については、こちらの記事を参照いただきたい。
■ライブビューを大幅に使いやすくする「ハイブリッドCMOS AF」
新たに搭載された「ハイブリッドCMOS AF」は、撮像素子面に位相差検出式AFを行なう画素を埋め込み、ライブビュー時に位相差AFを可能とするシステム。AFの初動から合焦距離付近までを位相差AF画素が担当し、その後の追い込みをコントラストAFが行なう。ライブビュー撮影と動画記録時において発動するシステムだ。
APS-Cサイズ相当の有効1,800万画素CMOSセンサー。画素数こそ前モデルと同じだが、撮像面に位相差検出式AF用の画素を搭載した |
実際に試してみると、従来のコントラストAFよりは確かに速くなっている。これまでEOS DIGITALのライブビューは、フォーカスが行ったり来たりして、ピントが合うまで時間がかかるケースが見られたが、EOS Kiss X6iのライブビューではそれが大幅に少なくなっている。試作機なので厳密な評価は避けたいが、体感的には一般的なノンレフレックス機(ミラーレス機)に近い速度が得られている要に感じる。ここまで速ければ、クイックリータンミラーのアップダウンを伴うクイックAFは必要なくなるかもしれない。
特に今回は、ステッピングモーターによるAF制御を採用した新レンズ「EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM」(7万1,400円)で試用したこともあり、スムーズなAF動作が体感できた。キヤノンではEOS Kiss X6iの発売に合わせ、製品名末尾に「STM」が付くステッピングモーター搭載のレンズをラインナップする。現在はEF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMのほか、「EF 40mm F2.8 STM」(2万4,150円)がともに6月下旬に発売予定となっている。
EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM | |
そのうちEF 40mm F2.8 STMは、EOS初のパンケーキレンズとあって、期待している人も多いだろう。このレンズもEF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMと同じく、ライブビューでのスムーズなAF動作を実現しているのを確認した。見た目も良く高級感もあるので、価格からすると大ヒットの予感がするレンズだ。
EF 40mm F2.8 STM | |
なお、位相差AF用の画素は撮像素子中央付近に配置されている。ライブビュー時に画面端などで測距する場合は、位相差AFは作動せず、コントラストAFのみで測距する。また、大デフォーカス状態からの測距についても、コントラストAFのみで行なわれ、ハイブリッドCMOS AFが動作しないことがあるという。
「動画サーボAF」もEOS Kiss X6i固有の機能。動画記録時に被写体を自動追尾するタイプのAFで、静止画でいうところのAIサーボ(他社製品ではコンティニュアスAFなどと呼称)を動画記録時に実現する。EOS DIGITALに限らずデジタル一眼レフカメラの動画は、動画対応を念頭に生まれたノンレフレックス勢に比べると、AFの使い勝手の悪さがネックだった。それを解消する新機軸であり、動き回る子どもなどでの利用が期待できる。
動画サーボAFを新たに搭載。動画記録中に動く被写体を追尾する |
EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STMを装着した試作機での動作を見ると、追尾性能はなかなかのもの。ステッピングモーターはDCモーターより分解能が高く、細かい位置決めが可能なので、連続してのAF動作に強いのは理にかなっている。また、静音性にも優れており、動画記録中にフォーカス駆動音が記録されないのもメリットだ。これらの優位性は試作機においても確認できた。
他にも動画については、ステレオマイクが内蔵されたり(EOS Kiss X5はモノラルマイクだった)、動画起動レバーが電源レバーと一体化されるなど、より重みを増しているように見える。動画サーボAFやSTMレンズの登場で、新生EOS DIGITALにおける動画への注力具合がわかるというものだ。
動画モードへの移行は電源レバーから行なうようになった | ペンタ部上部にステレオマイクを装備。EOS Kiss X5はモノラルマイクだった |
光学ファインダーでの撮影時には、従来と同じく、専用センサーによる位相差AFを利用する。こちらも測距点の9点すべてがクロスセンサーになるなど(EOS Kiss X5では中央1点のみがクロスセンサー)強化されている。エントリークラスとしては異例の充実度といえるだろう。光学ファインダーそのものがEOS Kiss X5から変化していないのは残念だが、ライブビューだけでなく、ファインダーでの撮影についても進化しているのはうれしい。
なお、外観はほぼEOS Kiss X5と変わらないが、グリップの形状が若干変わったことで、個人的には持ちやすくなったように思う。また、バッテリーやバッテリーグリップはEOS Kiss X5のものを共用可能だ。
■ついにタッチパネルを搭載。静電容量式でヌルヌル動く
EOS Kiss X6iのもうひとつの目玉が、EOS DIGITAL初のタッチパネル式インターフェイスの採用だ。一眼レフカメラとしても初だろう。ノンレフックス勢では一般化しつつある機能だが、本機では、スマートフォンなどでおなじみの静電容量式のタッチパネル機構を採用。軽く触れるだけで動作し、追随性も良好だ。2本指での拡大・縮小といったマルチタッチにも対応している。露出補正などは、目盛上を指でスライドさせて操作することも可能だ。タッチに対する反応が速くて適切で、デジタルカメラのタッチッパネルとしては、コンパクトデジカメを含めてトップレベルにあると感じた。
EOS Kiss X5と同じく3型104万ドットのバリアングル式液晶モニターを採用。ただし、今回からタッチパネルになった |
タッチパネルになったといわれても、操作画面はこれまでのEOS DIGITALから変わっていないように見える。しかし、あらゆる場所がタッチで操作可能。項目によっては多少無理を感じる操作もないことはないが、「これはタッチ可能」「これはタッチ不可能」というややこしさはない。電子ダイヤルや4方向ボタンといった従来からの操作系も残っているので、好みの方法で操作すれば良いだろう。
ほぼすべての操作がタッチで行なえる。電子ダイヤルや4方向ボタンとの併用も可能 | 露出補正などでは、スライドさせて値を操作できる |
Qメニューもタッチで操作可能 |
ただし、タッチならではの新機能もひとつ用意されている。それが「タッチシャッター」だ。画面上でタッチした場所にフォーカスが合い、そのままシャッターが切れるというもの。タッチパネル式のレンズ一体型デジカメや、ノンレフレックス機ではおなじみだろう。タッチシャッターはタッチからシャッターが切れるまで、タイムラグがあればあるほど違和感が生じる。ハイブリッドCMOS AFでライブビューAFが高速化したことから、今回から自信を持って搭載されたと思われる。
タッチシャッターは左下のアイコンをタッチすることでON/OFFを切り替えられる |
なお、タッチパネル機能そのものをオフにすることも可能。また、タッチシャッターは、ライブビュー中にオンとオフをトグルで切り替えられる。オフにすると、タッチでAFが動作するだけになる。IXYのように、タッチした被写体をそのまま追尾させることもできる。
タッチ操作全体をオフにすることもできる |
その他、連写性能が約3.7コマ/秒から約5コマ/秒まで強化されたのもトピックだ。エントリークラスのデジタル一眼レフカメラとしてはトップクラスの性能で、全点クロスセンサーといい、これらのスペックだけ見れば、一昔前の中級機に匹敵するレベルになったといえる。今まで以上に運動会などの子どもの行事で活躍することだろう。シャッター音は切れが良い音で、ファインダーで撮っていて気持ちがよい。
その高速連写を活かした機能として、「手持ち夜景」、「HDR逆光補正」、「マルチショットノイズ低減」が追加された。
クリエティブフィルターには「油彩風」と「水彩風」が追加された。いずれも、先行して発売された上位機種「EOS 5D Mark III」に準じた新機能である。
いずれも今回はその効果のほどを実写で披露することはできないが、後日、製品版を使ってのレビューを公開する予定だ。
クリエイティブフィルター「油彩風」 |
クリエイティブフィルター「水彩風」 |
シーンインテリジェントオートも強化された。オートライティングオプティマイザなどを駆使して、よりシーンにあった絵作りを行なうという | GPSレシーバー「GP-E2」にも対応した。キヤノンAPS-Cモデルでは初 |
【6月11日12時5分】記事初出時に発売日を「6月15日」と記載していましたが、「6月下旬」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
2012/6/11 00:00