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「AGFA」ブランドに参入するジェネラル・イメージング・ジャパンの狙い


 ジェネラル・イメージング・ジャパンは、米ジェネラル・エレクトリック(GE)ブランドのデジタルカメラを手がける会社として2008年に創立。2009年から国内での販売を開始した。低価格ながら性能を詰め込む「Value for Money」の考え方で当初から展開しているが、2012年春にはGEに続いてドイツAGFA PHOTO(アグファ フォト)ブランドのデジタルカメラを投入する。今回はAGFAブランドの狙いや、“映像創作を通じて学び育つ”という独自の思想「映育」について、代表取締役社長の小宮弘氏に話を訊いた。

ジェネラル・イメージング・ジャパン代表取締役社長の小宮弘氏。1942年4月7日生まれ。1965年ブリヂストンに入社し、北米本部長などを経て1993年に退職。翌年オリンパスに入社し、グローバル一気通貫経営体制の確立やデジタル一眼レフカメラの参入などを実行し2005年に退職。その後ジェネラル・イメージング・カンパニーを経て、ジェネラル・イメージング・ジャパンを2008年に創立する。

ドイツのAGFAが映育に共感して実現

――AGFA PHOTOブランドのデジタルカメラを投入することになった経緯は?

 AGFAは140年の歴史がある会社だが、私が映育について説明すると大変興味を持ってもらえ、「是非ヨーロッパでも映育をやりたい」と言ってもらえた。日本語の映育だと字で意味がわかるが、そうではないのにドイツ人はどうしてこんなに話が通じるのだろうとびっくりしたほどだ。

 GEブランドについてはライセンシーという契約だが、AGFAとは映育への理解からブランドパートナーになることができた。海外では映育を「A-iQ」と表現しているが、これを展開していく上でもAGFAのほうがGEより自由度が高いといえる。GEは「Value for Money」、AGFAは「Value for Value」として棲み分ける。

 AGFAブランドの第1弾になるのがコンパクトデジタルカメラ「AP15」だ。“モノクロームで深い写真を撮ろう”を提唱して、この度「デジタルカメラグランプリ2012 SUMMER」(音元出版主催)の「企画賞」を受賞することができた。このカメラには自信をもっており、CP+2012で発表してからかなりの手応えを実感している。

AGFA PHOTO AP15(試作機、以下同)。2012年春の発売で、実勢価格は2万円台後半の見込み モノクロ撮影へのこだわりをアピールしている

 写真を撮る喜びをValue for Valueと表現している。まだ詳しいことはいえないが、AP15が発売される時にはさらにValueを掛け合わせる施策を考えている。同グランプリで企画賞はジェネラル・イメージング・ジャパンとして5回連続の受賞だ。やはり新しいオファーをしていくことが重要だが、単に機能が良くなったということだけではなく、ユニークな発想を評価してもらえていると思う。

 AP15については、店頭のコーナーをひと味違ったものにすることも考えている。今は大きなポップに半額ですよ、と書けば人が動くという時代でもない。そうすると、なにか“こんな楽しいものを出してる。珍しいな”というものが必要だ。大きなスペースでなくとも、アグファワールドのようなものを出せればと思う。ただ、AGFAというブランドで選んでもらうのが目的ではない。あくまでも製品の価値をしっかり表し、お客様に選んで頂けたものがたまたまAGFAであったり、GEであったりということを目指したい。

往年のAGFAカメラを思わせる赤いシャッターボタンが印象的 モードダイヤルからモノクロモードに入れる

 ただAP15もこれまでやってきたGEブランドのカメラと同じで、シェアアップに邁進するつもりは無い。というのも、我々が数を追い始めればどうしても販売価格が下落するからだ。いまのデジタルカメラは最初に高く出して、その後落ちるのが当たり前というビジネスだが、これはおかしい。値下がりはカメラの価値がどんどん無くなっていくことで、メーカーの収益も悪化させる。

 それに、最初に買ったお客様が「半年たったら何千円値下がりした」と聞けば当然がっかりされる。私は“価格は価値の品格”だと思っており、最初から低価格で提供できるコスト構造を絶対作る、そしてできるだけ値崩れを起こさないという信念でやっている。そのなかで、機能・性能は一流のものを入れることにこだわってきた。日本で始めてから3年余り経ち苦しくもあったが、きちんと価値を訴求してこれたのではないかと考えている。

商品企画から一貫して生産地で行ないコストを下げる

――小宮氏は以前から“10倍速の人生”を送っているそうだが?

 4月7日にちょうど70歳の誕生日を迎えた。私が唱えている“人生千年説”の8回目の100年の始まりだ。今までで一番、新しい百年を迎えるような気持ちでいる。人生千年説とは、人生を10倍のスピードで生きれば、10年が100年、100年が10回で1,000年になるという考え方。デジタル時代になってコミュニケーションは瞬時に実現するようになったのだから、自分だけではなく裾野のスピードもどんどん速くなると思っている。10倍速の10年間を100年として生きると思うと、とても豊かな気持ちになるのではないかと考えている。

 私は大学卒業後ブリヂストンに30年務め、次にオリンパスで10年、ジェネラル・イメージング・ジャパンで5年過ごした。ブリヂストン時代は通常のスピードで30年、オリンパス時代は4倍速で行ったので40年、GEで最後の3年間を10倍速でやろうと考えて、100年間やったらもうやめると決めていた。

 GEでは北米の販売網作りなどを担当していたが、3年たったところで「日本でもデジタルカメラをやるんだ!」とGEから言われた。私はアメリカはもういいので辞めたいと言ったら、「欧米やアジアでデジカメをやったのに、日本でやらないまま辞めるのか?」とちょっと刺激的なことを言われた。

 そこで思ったのは、日本の「三三九度」という言葉。私はワンツースリーと3社を自己流で100年間過ごした。そこで2杯目は少し小さな杯だがちょっと美味しい酒を飲むかということで、日本でデジカメをやろうと決心した。GEも10倍速の考えを気に入ってくれた。ちょうど、中国や台湾のODM(設計製造受託企業)の品質・性能が高まってきたのも日本に参入することになった理由の1つだ。日本のカメラメーカーと同じ機能・性能が出せないのなら日本に参入する意味はないとずっと考えていた。

――GEブランドで最も安価な「C1233」は実売5,000円を切る。どのように低価格を実現しているのか?

 低価格でカメラを提供できる大きな理由に、各機種におけるベースの共有化がまずある。主だった機能は一番良いものを基本的に全部の機種に搭載する。これで共通化を図り機種ごとの開発コストなどを下げ、結果としてトータルで競争力あるコストを実現できる。

C1233。「映育」には特に適するというモデル。実勢価格は4,980円前後だ

 それから余分な経費はほとんど掛けていない。我々は生産地で商品の企画、開発、調達、品質保証まで一貫して行なうことで、拠点同士の受け渡しに伴うコストを省く。“繋ぎ”という仕事は価値を生まないどころか、大きなコスト負担を強いられるからだ。

 真の競争力を持つには固定費は最小限にしなければならないから、少数精鋭で進めるのも当然のことだ。例えばアメリカでGEのデジタルカメラを担当していたときは、私を含めた3人で1万店の販売網を作り上げた。それも1年間で。コスト競争力の有無は重要だが、顧客志向のマーケティングと併せることで真の価値創造と顧客への貢献ができる。

「映育カメラ」は“キッズカメラ”とは違う

――ジェネラル・イメージング・ジャパンとして「A-iQ」(映育)を前面に押し出している印象を受ける。

 1つエピソードを紹介すると、C1233を出すときにカメラ本体にGEのロゴよりも大きく、しかも上にA-iQのロゴを入れた。するとGEの担当者からクレームが来た。ロゴの大きさを変えれば解決できるが、C1233の外装には日本板硝子のメタシャインという特殊なものを使用した。これはレクサスや化粧品にも使われている小さなガラス粒子の塗料だが、GEのとの交渉やロゴの変更となれば半年も掛かることがわかり、残念だが結局A-iQのロゴは外して販売している。

C1233の当初のデザイン。GEのロゴに対してかなり大きくA-iQと入っている

 つまり、我々のブランドはもう「A-iQ」だという意気込みだ。アルファベットで表現し、グローバルで展開していく。会社案内もA-iQが真ん中で、その両脇をGEとAGFAのブランドが占めている。今後は、A-iQを徹底的に進めていきたい。

会社案内でもA-iQを大きくアピールしている 「子どもが感性を磨き、自らを育んでいく」のが映育の理念

 ところで最近は他社からも子ども向けを謳うデジタルカメラが登場しているが、我々の映育が目指す方向とは反対だと思っている。そうしたいわゆる“キッズカメラ”の多くは、落としても壊れないとか、簡単に使えるといった部分を前面に出しているが、我々にそういう概念は無いからだ。落として壊れるのなら、落とさないよう大切にする躾をすればいいと思っている。

 だから子ども向けにも最適の映育カメラとしては、圧倒的に他社とは違うものだと自負している。2歳の時から本物のカメラを使わせたいわけだから、撮影の疑似体験をするためのアイテムであってはならない。我々は「映育カメラ」として1つのカテゴリーを作って、A-iQのブランドを広げて行くのが目標だ。

 近頃では10倍速の考え方を映育に当てはめて、「生涯映育」というものを提唱している。10倍速なら成人式は2歳の誕生日。例えばお母さんが、生まれた子どもにデジカメを買ってあげる。2歳になるまで母親がカメラを預かって2年分の子どもの写真を撮りためる。それから子どもが2歳になったときに、「今日からあなたは本物のカメラで撮るんですよ」といって、そこから50年間子どもが母の姿を撮る。これはとても素敵な世界だと思う。

 2歳では野球のバットも振れない。鉛筆を持っても文字は書けないし、絵だって描くのは難しい。でも色々見ていると、実際に2歳の子どがデジタルカメラなら一人前にいろんなものを一生懸命撮っている。なにも二十歳が成人式じゃなくてもいい。2歳で“人と成り”自主性と責任を持って生き始めれば、その人生には10倍の価値と幸せがあるのではないだろうか。

これからは目に見えないものが価値を持つ

――映育とともに、さまざまな「シンカ」があると提唱している。

 最近よく言われる“絆”は人間関係の深さのことだが、私はかねがね“現代は深さの時代”だと言ってる。「シンカ」という言葉はいろいろな漢字を当てはめることができるが、進める「進化」や新しくなる「新化」よりも、深める「深化」や心の「心化」が大事だと考えている。特に東日本大震災後は、深い心の交い合いや絆が大切になってきている。

 人生1,000年とすれば、最初の100年は新しくなる「新化」、今流の10代は進める「進化」、20代は深める「深化」、30代は本物にする「真化」、40代は信じる「信化」、これを10倍速で500年経ったら、50歳から新しく生まれ変わってもう一回やる。60歳で進めて、70歳から深める。最後の10年は信化だが、これだけは神の「神化」だ。90歳になったら神様の道を行くということ。人は1,000年生きる、生きさせて頂く、と考えることによって10倍の価値創造・実現と10倍の感謝を持つことができると思う。

 今回投入するAGFAは一般にはあまり認知のないブランドと思うが、ほんとうに大事なのは“眼に見えない価値”であって“ブランドそのもの”ではないと考えている。

 「ヴァスコ・ダ・ガマが出てくるまでは“陸の時代”、それからの500年は“海の時代”、次に来るこれからの500年はBRICsといった新しい国が中心になった“陸の時代”にまた戻る」という人がいる。しかし、私はこれから“空の時代”が来ると考えている。もちろん陸海空の“そら”という意味もあるが、“見えないものが重要になる時代”という面を強調したい。リーマンショックも見えなければ、放射線にしても見えない。音楽、コミュニケート、絆という価値のあるものも同じ。見えないものをちゃんと見ていくことが大事だ。

 今はものに恵まれており、デジタルカメラも新化や進化よりも、心化や深化が大切になったと考えている。撮影した1枚の写真をどういう風に愉しんでいくかといった“深めていく”部分が重要になってくるだろう。「新しいものが出たら、高くても一番最初に買いたい」は、ずっと成長時代の日本人の考えだったが、その時代は終わりつつあるように思う。例えるなら、すごいものを買うよりも、感謝の気持ちを持って1つのおにぎりを頂きましょうということ。震災後の大きな変化はそこだと思う。

「物量を追うのではなく、おひとりおひとりの豊かな生活に資していければと考えています」

 カメラはおひとりおひとりが使うもの。幸せもまた1人ひとりにあって同じだ。ブリヂストンの社是は「最高の品質で社会に貢献」であるが、自分は「社会のおひとりおひとりに貢献する」ことが使命だと考えている。

 “3Cの時代”という言葉があるが、今は「コネクト」、「コミュニケート」、「コントリビュート」の3Cに変わったと感じている。コネクトはつながりや絆、コミュニケートはお互いに心が交い合って鳴り響いていく世界、コントリビュートはお互いに貢献し合うということだ。

 例えば販売店に対しても、何が貢献できるかを常に考えていかなければならない。今ある需要層を取るのではなく、1人ひとりがカメラを使い、心豊かな生活をして頂ければ需要は3倍、5倍にもなるというのが持論だ。こうしたこともコントリビュートの1つといえる。その上で、お客様1人ひとりの生きる上での「シンカ」に対する貢献ができればと念じている。映育が間違いなく貢献する。

――70歳とは思えないお元気さだ。

 8回目の100年という認識は70歳から100年間を生かせて頂くということで、日々心を込めてお1人おひとりに感謝と貢献をしていきたい。72歳で「成人式」をやるというつもりで初心に立ち戻り、日々刻々「シンカ」をしていく心と気持ちをいっぱいに、まずは80歳までの100年を現役でと考えている。





(本誌:武石修、インタビュー撮影:國見周作)

2012/4/25 00:00