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プリントすると写真が上手くなる!岡嶋和幸流フォトセレクト術を学ぼう

キヤノン PIXUS PRO-100S セミナー・体験会レポート

この記事の一番最後に、次回開催される「鶴巻育子 with Canon PIXUS PRO-100Sプリントセミナー・体験会」の情報があります。今回紹介する“岡嶋和幸流”と同じく、プリントと写真の上達の関係を学べます。最後までどうぞご覧ください!

去る7月18日、神保町にあるインプレスセミナールームにて、写真家の岡嶋和幸さんによるセミナー「プリントすると写真がうまくなるって本当? with Canon PIXUS PRO-100S セミナー・体験会」が開催された。

「どうすれば写真が上達するか?」というのは、写真愛好家であれば誰もが悩む永遠のテーマと言えるだろう。その答えとして「プリントをすること」というのが、岡嶋さんが強く勧める主張である。

しかし「プリントをすると写真が上手くなる」というのは、誰もが一度は聞いたことがある話でもある。現実的には、撮影した膨大な量の画像から、どのようにしてベストな1枚を選んでいくのか具体的な方法論を知りたい、というのが本当のところではないだろうか。

そこでインプレスでは、多くの方々の悩みに応えるべく、岡嶋さんを講師に迎え、本セミナーを開催する運びとなったのであった。

講師の写真家、岡嶋和幸さん。

セミナーは午前の部と午後の部に分けて行なわれ(内容は午前・午後とも同じ)、参加人数はそれぞれの部で10名。合計20名ではあるが、参加希望者が多数だったので厳選の20名である。

参加者は、キヤノンのインクジェットプリンター「PIXUS PRO-100S」で実際にプリント作業を体験しながらプリントを仕上げる方法を学んでいく。PIXUS PRO-100Sは、8色染料インクのプロフェッショナル向けプリンターだ。もちろん1人につき1台割り当てられている。

交換インクやプリント用紙も準備されていた。

PCはマイクロソフト社の「Surface Book」が準備されていた。高性能モデルが用意されていることに、受講者も驚いていた。

もっとも、このセミナーは単なるプリンターの体験会というわけではない。あくまで、実際にプリンターを使うことで、写真が上達するプロセスを学んでもらうのが狙いだ。したがって、セミナー受講者にはそれ相応の義務もあり、当日は60枚の画像データを持参してもらうことになっていた。

60枚のデータは「RAW+JPEG」で撮影された、ファイル名が「連番」の画像であることが条件。連番であることの重要性はのちほど紹介する。

さて、セミナーは岡嶋さんご自身と、この日の内容を紹介するところから始まった。

その後はいよいよ写真のセレクト作業に。具体的な手順としては、


    A4サイズで60枚の画像をインデックスプリント

    セレクトした画像を2Lサイズでプリント

    さらに絞り込んだ画像をA4サイズで本プリント

というように、プリントサイズを段階的に大きくしながら選んでいく。この手順を追ってみることにしよう。

A4サイズでインデックスプリント

デジタルカメラで撮影した写真のセレクトと言うと、PC画面上で画像を開いて写真を選ぶことが多いのではないかと思う。しかし、岡嶋さんの教えでは、このセレクトという作業の最初の段階からプリントで行うところが面白い。

セレクトをプリントで行う理由としては、画面だと自分の撮影した画像を客観的に見ることができない(どうしても1枚1枚に対して主観が生じる)ため、迷いが生じやすく判断がアバウトになりがちだから、とのことだ。

もっとも、最初に作成するプリントは、A4サイズの用紙に写真を一覧で印刷する「インデックスプリント」である。これならPC画面をスクロールしてみる必要がないので写真を選びやすい。

今回はPIXUS PRO-100Sに付属するプラグインソフト「Print Studio Pro」を使って、5×4の並びでインデックスプリントを作成した。この段階では時間とインクを節約する意味で、印刷品質は「標準」でOK。

持参した画像は60枚なので、用紙1枚につき画像が20並んだインデックスプリントが3枚できることになる。60枚はセミナーの都合上なので必ずしも60枚である必要はない。

インデックスプリントの段階で行うセレクトは、「この中から最高の1枚を選ぶ」といった最終的なものではない。作品としてモノになりそうな「シーン」を選ぶためのものである。そうしたシーンは、撮影時に何かが心を惹き、しつこく何度もシャッターを押しているはず、と岡嶋さんは言う。

そうして選んだシーンは、次の段階で2Lサイズにプリントする。このシーンの中から選ぶと決めたら、そのシーンの写真は残さず全て選ぶ、という割と大まかなセレクトだ。しかしこれは、後に最後の1枚を選ぶための大切な一歩なのである。

そして、ここまでで大切な岡嶋さんの教えをもう1点。「撮影した画像は1点も削除せずに全てインデックスプリントにして確かめる」ということである(もちろん作品としての写真を選ぶ時の話)。これは、撮影時には意図しない失敗写真だと思っても、後にプリントで写真全体を見たら作品として成立しうる画像だった、ということがよくあるからだ。

さらには、セレクト段階で落ち着いて画像を見たときに、何がいけなかったかを反省する機会も失ってしまうことになる。直ぐに画像を削除してしまう習慣を戒め、いま少し慎重にデータを扱うよう心掛けたくなる話である。

セレクトした画像を2Lサイズでプリント

インデックスプリントでシーンを選んだら、次は2Lサイズのプリントを作成する。選んだシーン全ての画像をプリントするのだ。余白を付けたフチありプリントで印刷すると作品をセレクトするという意識が高くなる。

似たような写真が並ぶので、この段階でも撮影データ込みで印刷。ボケが気になるようなら絞り値を、ブレが気になるようならシャッター速度を、といったように撮影情報もセレクトの基準にする。

出力した2Lサイズのプリントは、床に置いて立った状態で観察する。写真を床に置くという行為は普段しないことなので、驚いたり戸惑ったりする参加者もいた。しかし、数枚〜10枚程度の2Lサイズプリントなら、このくらいの距離だと全てのプリントを一括で見ることができるため、むしろ適切な距離であることが分かる。同じシーンを撮った写真でも客観的に選びやすいのだ。

この段階でも、1枚の写真を決定するという選び方はせず、気になった写真とそれによく似た3〜4枚の写真を選んでいく。似たような写真が並んでいるので迷うところであるが、「自分の直感を信じて迷わず選ぶことが大切」。という岡嶋さんの言葉に励まされ、参加者の方々は意外にスムーズに次の段階へと進む写真をセレクトしていた。

さらにセレクトした画像をA4サイズでプリント

2Lサイズプリントから気になるカットを選んだら、次はA4サイズのプリントを作成する。セレクトが進んできたことでプリントサイズが大きくなってきた。

A4サイズの大きなプリントをする段階となると、セレクトするために必要なチェック項目は、露出や構図など、わずかな違いが決め手となってくる。そうはいっても、ここまでくると写真の良し悪しを選ぶ決定打を見つけることは難しい。

そこで岡嶋さんが参加者にかけるアドバイスはやはり「直感を信じて選ぶこと」。微妙な差の中に直感で写真を選ぶには、やはりPC画面にはない、プリントがもつ質感が必要なのだ。

ただ、直感で写真を選ぶにしても、A4サイズの写真の場合にはそれなりの岡嶋さんの流儀が存在する。それは、2Lサイズプリントを床に置いて立った状態で見るように、A4サイズプリントならA4サイズプリントを観察するための最適な距離を探すこと、である。岡嶋さんが説明する例としては「4枚なら2.5mくらい、1枚をじっくり見る場合は概ね60cmくらい」とのこと。

ここで岡嶋さんが、明るさや色温度をごくわずかずつ変えたご自身のプリントをサンプルとして見せてくれた。

隣り合う写真の差は非常に微妙で、限りなく経験を繰り返してきた岡嶋さんだからこそ分かるレベル。まさにプリントによるセレクトの賜物だろう。多くの参加者はまだ違いを見分けるのが難しかったようだ。取材をしている僕も分からなかった……

用紙選択、画像調整、そして本プリント

セミナーも終盤に差し掛かり、いよいよ苦労して選んだ1枚を本プリントする段階になった。その前に用紙を選ぶ必要が有る。

これまでのセレクトのためのプリントでは、キヤノン写真用紙・光沢 スタンダードを使用していた。加えてここからは、キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]、キヤノン写真用紙・微粒面光沢 ラスター、キヤノン写真用紙・プレミアムマットから選ぶことになる。

用紙の選択が終わったら、次はRAW画像を使っての画像調整。ここまでの段階では、一切画像調整をしていない、撮って出しのJPEG画像でセレクトを行ってきたが、作品出力のためには選んだ画像をPCで画像調整することになる。

セミナーではキヤノンデジタルカメラに付属する「Digital Photo Professional」を使って、明るさや色温度の微調整、ピクチャースタイルの変更などの画像調整を行った。純正ソフトだけにキヤノンのデジタルカメラと全く同じ色味を再現できる正統派の画像処理&RAW現像ソフトだ。

ただし、この作業は失敗した写真を救出するためではなく、撮影段階できちんと撮れていた写真をよりイメージに合わせるための処理であることに注意してもらいたい。

「失敗した写真は撮り直しが原則です。撮影がアバウトだと画像処理で苦戦することになります。だから、セレクト段階では撮って出しのJPEG画像からきちんと撮れている写真を選び、RAW画像できちんと撮れた写真をよりよくなるように仕上げます」というのは岡嶋さんの言葉。

そしてようやく、作品を出力するための本プリントである。といっても、画像処理後の1枚だけをプリントするのではなく、まだまだ作業は続く。1枚の画像に対して、画像調整の設定を少しずつ変えた画像を保存しておき、それら全てを本プリントとして出力する。

先に岡嶋さんがサンプルを見せてくれたように、結局のところPC画面上ではきめ細やかな調整を知ることができない。最後の最後まで、何枚も出したプリントの中からセレクトを行い、ようやく納得の1枚に出会えることができるのであった。

セミナーを受けて

今回のセミナーのように、少しずつプリントサイズを大きくしながらセレクトを繰り返すという手法は、銀塩時代では当たり前のことであった。デジタル時代のインデックスプリントとは、銀塩時代のコンタクトプリント(密着焼き)に相当し、そこから選んだカットをキャビネ、四つ切といった具合にサイズを大きくしながら「あたり」を探っていったものである。画像処理の設定を少しずつ変えて本プリントを決定するという作業は、引き伸ばしレンズの絞りや印画紙の号数を変えてみる、といった行為に当たるだろう。

実は、今やプロでも少数派になってしまった、プリントを使ってセレクトを繰り返すという行為を、デジタルの現場で今一度見直してみよう、というのが今回のセミナーにおける主旨だ。

フォトコンテスト等でプリント部門の審査員を務める岡嶋さんは、結果を残すプリントを応募してくる人は、撮影技術もセレクトの能力も一級であることを痛切に感じると言う。セレクトとプリントを繰り返すことで、反省点を撮影にフィードバックしているという訳だ。

まさに「プリント上手は撮影上手」(岡嶋さん談)である。

参加者の声

浅井圭介さん

「仕事が印刷業なのでプリント自体は日常的に行っていて、個人的にもキヤノンのPRO-1を使っています。色や明るさを調整するなどの技術的なことは分かりますが、自分が撮った写真を作品として選ぶという作業を知りたいと思い参加しました。今まではやはりモニターで写真を選んでいましたけど、インデックスプリントをして、そこから選んでいくという作家さんのプロセスを体験してなるほどと思いました。フォトコンテストや写真展にも役立てていきたいと思います」

小田牧子さん

「写真は好きですけど、今までは必要な時にお店でL判をプリントする程度でした。でも今日、A4サイズにまでプリントしたら自分の写真が違って見えてビックリです。作品を仕上げるまでに必要なプロセスがよく分かりましたし、インデックスプリントの大切さもよく分かりました。心配していたプリンターの操作も簡単で楽しかったです」

上森祐子さん

「写真教室にも行っているのでプリントは経験しています。岡嶋先生のプリント方法を実践すると、セレクトする時に客観性が養われるのでモチベーションが上がりました。今日は、プリンター選びや用紙選びに興味があって参加しましたけど、PIXUS PRO-100Sは黒が良く締まって表現力を引き出してくれるのでいいですね」

川島奈緒美さん

「自分でもPIXUS PRO-100Sを所有してプリントを楽しんでいますが、セレクトの方法をしっかり学びたかったので参加しました。きちんとセレクトとプリントをすれば撮影にも役立つのですね。フォトコンテストに応募する作品も上達しそうです」

佐藤康司さん

「ハイグレードなプリンターで写真をプリントしたのは今日が初めてです。以前から自分で撮った写真をプリントしてみたいと思っていましたが、今日実際にプリントして、離れたところから見て、また選び直すという貴重な体験ができて嬉しかったです。モニターとプリントでは感覚がまるで違うこと、紙で写真の雰囲気が大きく変わることは驚きでした。プリンターを買ってプリントしたいという気持ちがますます強くなりました」

嶋崎健一さん

「インクジェットプリントに興味があってよくイベントに参加しています。壁にプリントを貼るなど、十分な鑑賞距離をとってセレクトするということを実践したかったので今日は嬉しい体験ができました。2Lサイズのプリントを床に置くのには最初驚きましたけど、離れた場所からプリントを観察することの意味がよく分かりました。今まで使っていたA4プリンターが壊れてしまい、ちょうど次のプリンターを考えていたところですのでPIXUS PRO-100Sを体験できたこともよかったです。やはり色の出方が素晴らしく表現力が高いですね」

M.I.さん

「普段は野鳥を連写して撮影していますので、撮影枚数はすごく多い方だと思います。セレクトする時はピントが合っているかどうかだけに注意していましたけど、岡嶋先生のお話を聞いて、写真のセレクトに大切なことは他にもあることが分かりました。これからは自分の直感を信じてセレクトするようにしたいと思いました」

告知!!

岡嶋和幸さんのセミナーに続き、今度は「鶴巻育子 with Canon PIXUS PRO-100Sプリントセミナー・体験会」が開催されます。

  • ・日時:9月17日10時30分〜13時(午前の部)/14時30分〜17時(午後の部)
  • ・会場:インプレスセミナールーム
        (東京都千代田区神田神保町1-105神保町三井ビルディング23F)
  • ・参加申し込み:こちらのページから応募

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