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“完璧かつ簡潔”を目指した「ライカT」発表会レポート
Reported by 本誌:鈴木誠(2014/4/28 08:00)
ライカカメラジャパンは4月25日、レンズ交換式デジタルカメラ「ライカT」のプレス発表会を開催した。本稿では会場の模様と実機写真をお届けする。
ライカT(Typ 701)は、新規のライカTマウントを採用するAPS-Cミラーレスカメラ。5月26日に対応レンズ2本とともに発売する。詳しくはこちらの記事を参照いただきたい。
2014年は「ライカ100周年」 。5月にはライツパーク新社屋がオープン
発表会では、独ライカカメラAGのプロダクトマネージャー、ステファン・ダニエル氏が登壇。拍手で迎えられた。ライカ誕生100年という2014年におけるライカカメラ社の現況と、「今夜披露するのは、最高の製品を目指すライカの取り組みの成果のひとつ」として、前夜に公開されたばかりのライカTを紹介した。
2014年は、ドイツのウェッツラーでエルンスト・ライツ社の技術者オスカー・バルナックが、現在ライカの歴史において「ウル・ライカ」(Ur Leica、ウア・ライカ。のちに市販機が登場する際、ライツのカメラということから“ライカ”と名付けられた)と呼ばれる35mmカメラの試作機を設計して100年にあたる。オスカー・バルナックは映画用の35mmフィルムを横向きにし、その2コマ分(36×24mm)を写真の1コマとして用いることを発案した。
5月末には、ライカカメラ社の新社屋がウェッツラーの「ライツパーク」で正式オープンする。1988年にゾルムス拠点となって以来の“発祥の地”に戻ることになる。
ライツパークは「一般客に楽しんでもらえるユニークな場所になる」とダニエル氏は語る。以前、本誌のインタビューにおいても「ライツパークはミュージアム、ギャラリー、フラッグシップストアなどを備え、“360度ライカを楽しめる”場所になる」との説明があった。
「アイコニックなライカを現代的に解釈」
続けてダニエル氏は、「本日、またライカは新たな歴史を作る」と前置き、新システムの概要から語った。新システム(=ライカTシステム)は「完璧かつ簡潔」であることを目指し、クラフトマンシップや使いやすさを凝縮したという。
大きな特徴であるボディデザインは、「カメラとして欠かせない要素しか残らなくなるまで削ぎ落とした」とし、残ったのがタッチパネル式の大きなモニターと、4つの操作部のみ。パートナーのアウディ社デザインチームと、「アイコニックなライカを現代的に解釈した」と話す。
カメラボディは、世界初という「一つの金属の塊から削り出したユニボディ」で、1.2kgの無垢のアルミニウムを94gに削り出した。加えて、職人が45分をかけて手作業で磨き上げる。なお、その約45分間の工程を収録した「The Most Boring Ad Ever Made?」という公式ムービーが同日に公開されている。
ライカTシステムのレンズも、ドイツの技術者によリ新設計されたものだという。アダプターでライカMレンズも使用可能。APS-Cセンサーは「浅い被写界深度をクリエイティブに使いたい方」に向くといい、「ライカのボケ味をライカTで達成したかった」と説明した。
本体に16GBのメモリーを内蔵し、転送はUSBケーブル、SDカードのほか、iOSアプリ「Leica T app」が利用可能。ライカTはコンパクトのライカCに続き、Wi-Fi機能を内蔵する。iOSアプリではリモート撮影も可能。
新しい顧客層にアピール
質疑応答では、続けてダニエル氏が回答。Mマウントより外径の大きなライカTマウントにおける35mmフルサイズ化の可能性についての質問があったが、カメラのサイズとのバランスで現状はAPS-Cセンサーがよいと判断しているとのこと。
ちなみにMシステムとの棲み分けについては、ライカTシステムは主に「ライカに入ってきにくかったユーザー」を意識していると説明した。ボディ両端を半円としたデザインは、Mとの連続性も意識しているとのこと。
発表会終了後に改めてダニエル氏に「T」の由来を伺ったところ、「深い意味はない。Tの文字はシンプルでシンメトリーな形状で、新システムのイメージにマッチした」とのこと。また、「かつ他社システムにない文字だったから」とも加えた。
“ライカ使い”によるトークショーも
会場ではプレス発表に続き、写真家の若木信吾氏とモデルのKIKIさんによるトークショーが行なわれた。ともにライカユーザーで、今回は正式発表前のライカTを使って撮影を行なったという。
若木氏はライカの魅力について「(撮る瞬間を)確実に逃さない」、「ライカを持っているのを見ると、いい人と思える」と語り、ライカTで撮ったベトナムの写真などを紹介した。
被写体として「何かの形跡や光を撮るのが好き」というのは、エルメスライカの愛用者としても知られるKIKIさん。ライカTは暗い中でもキレイに写り、(あまり使ったことがないという)デジタルカメラの中ではピントが合わせやすいように思う、と印象を語った。
なお、ライカ直営店のスタッフによると、ライカTは4月29日頃から各地のライカストアにて実機を展示予定という。フォトキナ2012での発表から最近まで品薄が続いていた「ライカM」に比べると、店頭でお目にかかる機会も多そうだ。