山本まりこさんが北欧で撮った旅写真「airy FINLAND」を公開!
森、湖、街…FUJIFLIM X-A1とともに旅した思い出
11月23日に発売されるデジタルカメラ「FUJIFILM X-A1」。そのX-A1を発売前に手にした山本まりこさんによる、素敵な旅写真&エッセイをお届けします(編集部)
今年の夏のこと。
いつものごとく旅を妄想しながらネットで世界の写真を眺めていました。
その時にたまたまフィンランドについて調べていてふとみつけたのが、フィンランドで生まれた物語ムーミンに登場するスナフキンの言葉でした。
「長い旅行に必要なのは大きなカバンじゃなく、口ずさめる一つの歌さ」
なんてかっこいい言葉なの。
次の旅に行くときはこの言葉と共に旅に行こう。
スナフキンみたいに一つの歌と共に旅をしてみたいな。
そんなことを考えながらスナフキンの言葉をFacebookにつぶやきました。
そのまさか一週間後にフィンランドに行くことが決まるとは。
自分でも思ってもみない展開に本当にびっくりしました。
そして、梅雨が明けてセミが鳴き始めてジリジリと汗をかくくらいの気候のころ、
フィンランドの首都ヘルシンキに向けて出発しました。
7月のフィンランドは暑くもなく寒くもなく半袖でちょうどよい快適な気候でした。
私は初めての場所に行くと、とにかく歩きます。
ずんずんずんずんと歩きます。
最初は地図を見ながらどこかを目指して歩くのだけど、しばらくすると、いつの間にか地図はカバンの中に入っていて、地図も関係なく歩いています。
多分、私が初めての街をずんずん歩くという行為は、その街を知りたいから歩くということでもあると思うのだけど、それよりももっと大切なことがあるのだと思う。
自分がずんずんと歩くことで、体温が上がって、体が熱くなって、血流が速くなって、それに伴って自分の思考もぐんぐんと回転して、いつの間にか体まるごと心丸ごとあったまっているのでものすごくプラス思考になっていて、さらに、歩くということは前に前に足を出しているのであって、いつの間にか心が前向きになっていて。
その興奮の中で押すシャッターの快感てば、もう、たまらない。
今回もずんずんと歩いていたら、地図はいつの間にかカバンの中へ。
気付いたら、ヘルシンキの街の中で夢中でシャッターを押していました。
海に面したヘルシンキの街はあちこちに公園があり緑やお花で溢れていて、
街を歩く人々はどこかゆったりのんびりとしていて、
いたるところにあるカフェでは昼間からビールを飲んでいる人達が楽しそうで、
公園のベンチに座ってのんびり木々を眺めている人がいたり、
小さくてかわいい路面電車(トラム)がトコトコと街を走っていたり、
マリメッコのカラフルな柄の服を着ているおばさんがたくさん歩いていたり。
初めての土地なのに頑張らなくても街の中にスルッと気持ちが入りこめるような、なんだか優しい空気の場所だなと感じました。
ヨーロッパに来ると最初はちょっと頑張らなくちゃ入り込めないような気がしてしまうけど、北欧のこの街はなんだかとっても柔らかい感じがして最初から居心地が良かった。
ヘルシンキの街では、歩いていると、とにかくカモメに出会います。
街のあちこちにカモメが飛んでいて、いたるところでクエクエ〜という鳴き声が聞こえます。日本で言ったらスズメみたいな存在なのかな。
フィンランドのカモメは色白でとってもかわいい。
白い羽がとことん真っ白で、ぶっくりとした体で、くりっとした黒いお目目。
こんなかわいい姿で街のあちこちにいるのです。
例えば、マリンブルーの船の上や、カラフルなベンチの上、クラシカルな車の上にちょこんといるものだから、ついつい目がいってしまいます。
そして、ついつい撮ってしまいます。
彼ら彼女らも撮られることを分かっているんじゃないかと思うくらいポーズをとってくれたりするときもあるので、さらにかわいく思えたり。
街を歩いていて、たまにカモメの声が聞こえなくなったりすると、ちょっと寂しくなって上を見上げて探してしまったり。
そのくらいカモメが人間の近くにいる街でした。
街を歩いたり、トラムに乗って眺めているとこの国は緑が多いなあと思ったけど、調べてみると、フィンランドの国土は約8割が森林や湖や川なのだそう。
ムーミンも自然がいっぱいの中で暮らしているし、すぐそこに自然があるというようなあの環境は、この国だからこそ生まれた物語なのだと改めて思いました。
今回の旅の中でも、一日、森に行くことに。
いろいろな森があるけれど、今回はヘルシンキの街から車で1時間くらいのところにあるヌクーシオ国立公園というところに行くことにしました。
森に行くということで、私にはとても楽しみにしていたことがありました。
そう、とてもとても楽しみにしていたこと。
それは、フィンランドでは野生のベリーやキノコは自由に採っていいのだということ。
野生のベリーを積み放題、そんな夢みたいなことって本当にあるのかしら。
テレビで見たみたいに、赤いベリーがごろごろとなっているのかしら。
映画で観たみたいに、キノコがポコポコと生えているのかしら。
わくわく。
森の中に一歩入ると、街とは違う空気にひゅんと一変しました。
街よりも少ししっとりと湿った空気が流れていて、そこはものすごく静か。怖いくらい静か。
聞こえる音は葉が重なる音とたまに聞こえる鳥の声だけ。
人はと言えば、20分に一人すれ違うかすれ違わないかというくらい。
でも、そのすれ違う人達が、みんなとても楽しそうだということが心地よかった。
例えば、
年配の夫婦の旦那さんが奥さんの腰に手を回しながら
木々の上から太陽の光がキラキラと降り注いでいるのを見ながら“きれいだね”と微笑んでいたり。
今そこにある現実を、自然を、体いっぱいで楽しんでいる姿を見ているのが楽しかった。
すれ違う時はみんな
”enjoy!(楽しんで)”と声をかけてくれるし。
日本で言ったら登山の途中で「こんにちは」という感じなのかな。
それにしても森の中の空気は本当にきれいで美味しかった。
鼻をいっぱいふくらませて空気をぐいんと吸い込むと、
すぅ〜っとお腹なの中まで透明に入ってきて、体の隅々まで透明なまま流れ込んでゆく感じ。
森を歩き出したら、森の木々の美しさ、光の美しさに心を奪われ、その写真ばかりを撮っていました。時間にして30分くらい。歩いた距離は、1キロ弱くらい。
だから全く気付かなかったのだけど、
ある時ふと遠くにいた人がしゃがんで手をのばして何かを口にしているのを見かけました。
あれ?
そう言えば、もしかして!
あの人が食べたのは、ベリー!?
と思って自分の足下を見たら、なんと、ブルーベリーがなっていました。
しかも、よく見たら、見渡す限り一面にぎゅうぎゅうと!
ずっと上ばかり見ていて全くベリーに気付かないなんて。
あんなに楽しみにしていたのに。
赤いベリーだと思っていたからまさかブルーベリーだなんて思っていなかっし、さらに、フィンランドの野生のブルーベリーは地面から20センチくらいの背の高さなので全く気付かなかったのです。
もう、そこからはベリーを摘むのに夢中になりました。
撮って、摘んで、食べて、撮って、摘んで、食べて。
撮って、摘んで、食べて、撮って、摘んで、食べて。
夢中だった私は、いつの間にか座り込んでいました。
言葉にしたらツーンという言葉が合うくらい静かな森の中で一人、
地面にお尻をドンと置いて、
森の音を聞きながら、
森の湿度を肌で感じ、
森の大地の温度を(お尻で)感じながらブルーベリーを撮影したら、なんだかとっても心が落ち着いて来ました。
フィンランドの大地でできたものを直接自分の手でとって自分の口に入れると言うことがそう思わせるのか分からないけど、
なんだかとっても気持ちが落ち着いていくのが分かりました。
大げさかもしれないけれど、森と大地と空気と風とこの国といろいろなことと「今、私、つながっている!」と思いながらベリーを食べていました。
つんだベリーはちっちゃくて、甘酸っぱくて、でも爽やかで。
食べながら、ああこの国に来てよかったなあと思いました。
そうそう、森を歩く前に、
インフォメーションのお姉さんに「ベリーはどこら辺で摘めるの?」と聞いたら、
ニコッと笑った彼女から返って来た応えは、
”Anywhere”
うーん。いいね!
スナフキンの言葉みたいにかっこいいね!
とにかく初めてのフィンランドの旅は楽しかった。
森も湖も街も人々もキラキラと輝いてまぶしかった。
やっぱり旅はサイコウ、
写真ってサイコウ、
カメラってサイコウ!
こんな気持ちにさせてくれて、いろいろなことに感謝。ありがとう。
まだまだ話したいことはたくさんあるけれど、今回はこの辺で。
またいつかいろんな話ができたらいいな、と思っています。
※こちらもチェック!FUJIFILM X-A1のWebサイトにも、素敵な旅写真がいっぱいあります。