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14時間以上ノンストップ!最新アクションカメラで連続撮影できる“強い”メモリーカード

「Samsung microSD PRO Ultimate」を耐久テストしてみました

今、アクションカメラが熱い。

各社から最新型が登場し、過酷なシェア争いを繰り広げている。おそらくみなさんの中には、動画用のサブカメラに一台と考えている方もいるのではないだろうか。

アクションカメラを購入するときは、メモリーカードにも着目してほしい。たくさんある中からカメラに適した信頼性のある製品を選ばないと、せっかくの投資が無駄になってしまうだめだ。

そこで今回は、筆者も愛用しているSamsungのPRO Ultimateを使い、4台のアクションカメラで限界撮影テストを行ってみた。

果たしてPRO Ultimateはアクションカメラのあらゆる設定に耐えられるのか、ユーザーのひとりとして気になるところだ。

最大読み出し200MB/秒を誇るPRO Ultimate

動画撮影、とくにハードな状況で使用するアクションカメラ用メモリーカードの場合、より慎重に製品を選びたい。

「ハードな状況」というと自分には無関係と思うかもしれないが、アクションカメラは常にハードな状態にあるという点を認識しておこう。

その証拠に、ちょっと撮影するとすぐさま高温になり、カメラによっては熱停止してしまうほどなのだから。

信頼性の高いメモリーカードという点で、筆者も長年使い続けているのがSamsung製のメモリーカードだ。

ミラーレスカメラやアクションカメラ向けのシリーズとして、EVO Plus、PRO Plus、そして今回の主役PRO Ultimateの3種類がある。

PRO Ultimateは名称から想像できるように、シリーズ最高スペックのメモリーカードとなっている。

Samsung microSDメモリーカードの種類と特徴
EVO Plus
(MB-MCxxxSA-IT)
PRO Plus
(MB-MDxxxSA-IT)
PRO Ultimate
(MB-MYxxxSA-IT)
容量64GB、128GB、256GB、512GB、1TB128GB、256GB、512GB、1TB128GB、256GB、512GB
最大読み出し160MB/秒180MB/秒200MB/秒
最大書き込み130MB/秒130MB/秒
スピードクラスU3、V30、A2、Class10
(64GBはU1、V10、A1、Class10)
U3、V30、A2、Class10U3、V30、A2、Class10
それぞれの特徴

EVO Plus
コストパフォーマンスが高いエントリーモデルだが、4K30Pや4K60Pでも撮影できる実力をもつ。64GBはスペックが異なるので注意。

PRO Plus
書き込み速度が速く、高速連写や4K60P以上のような負荷の高い撮影に向いている。ハイエンドの機材にはこのタイプを選ぼう。

PRO Ultimate
高負荷の撮影に強く、長時間の撮影データも高速にバックアップ。タイムパフォーマンスを重視する制作環境に適したタイプ。

3タイプの違いを簡単に説明すると、ベーシックなEVO Plusを速度アップしたものがPRO Plus、PRO Plusの読み込み速度をアップしたものがPRO Ultimateとなる。

スペックだけを見ると、EVO Plus=初級者、PRO Plus=中級者、PRO Ultimate=上級者向けのメモリーカードと思いがちだが、そういうわけではない。

動画撮影用のメモリーカードは「総撮影時間」で考えるべきで、短時間の撮影ならEVO Plus、長時間の撮影ならPRO Ultimateが適している。たとえ初心者であっても、メモリーカード一杯まで撮影するような撮り方ならPRO Ultimateが最適だ。

読み込み速度が速いPRO Ultimateなら撮影後のバックアップも素早く完了し、即座に編集作業に入ることができる。

また、撮影スタイルによっては「万が一のデータ損失」を想定し複数のメモリーカードに分散する場合もあるが、このようなケースにこそPRO Ultimateは威力を発揮する。

複数枚のメモリーカードをバックアップするということはそれだけ手間と時間がかかるわけで、1枚当たりの読み込み時間が早いPRO Ultimateならかなりの時短になる。

使用するメモリーカードの枚数が多いほど、PRO Ultimateのメリットも大きくなるだろう。

というように、メモリーカード選びはケースによりさまざまで、「ハイスペックなメモリーカードだから上級者向け」とは一概にはいえないわけだ。

基本的には「上位モデル」を選んでおけば問題はないのだが、SDやmicroSDメモリーカードの規格はどんどん変化し、カメラが要求するスペックも高くなる。

動画時代のメモリーカードの選び方

SDメモリーカードやmicroSDメモリーカードは歴史が長く、その間にたくさんの規格が登場しては廃れ現在に至っている。カメラ以外にも使われるメモリーカードなので、あらゆる規格が乱立し、どれを選べばよいのか分かりにくいのが現状だろう。

たとえスピードが表記されていても、規格が異なるとその速度は保証されないのだから始末に負えない。

たとえば、10GB/秒の速度を要求するカメラ用に10GB/秒の速度を保証するメモリーカードを買ったとしても、「違う規格の10GB/秒だから使えない」となるわけだ。

しかも厄介なのは、古いメモリーカードでも形状が同じため、最新のカメラに挿入できてしまうという点。その結果、撮影の途中で書き込みエラーが生じたり、特定の設定にすると撮影できなかったり、そもそもメモリーカード自体が使えなかったりと問題が出てしまう。

とくにmicroSDメモリーカードは、表面にプリントされた「非常に小さな文字」を読まないと規格が判別できないため、慌てていなくてもミスを招きやすい。

カメラの求める速度に適さないメモリーカード、たとえばV30のカメラにU1のメモリーカードを挿入すると、カメラによってはアラートが表示される。その後の動作はカメラ次第で、メモリーカードが使えないものもあれば、撮影が続けられる機種もある

その辺りを配慮しているのか、最近のSamsung製microSDメモリーカードは見やすい色と大きさで規格がプリントされている。

スピードクラスの表記が横並びで判別しやすい点も好印象だ。

筆者はとくに「V〜」の値を参考にしているので、この数値が見やすいメモリーカードはありがたい。製品によっては小さくて薄い文字で羅列しているものもあり、そのタイプのメモリーカードは高確率で将来苦労するので避けること。

EVO Plus(左)、およびUltimate(右)のプリント面。地色と区別しやすい色と大きさでスピードクラスの表記がプリントされている。製品名のUltimateより大きくプリントしている点はユーザーに優しい

アクションカメラやミラーレスカメラで動画を撮る場合、前述の「V〜」はとても重要な数値で、この値に着目してメモリーカード選びをすると簡単だ。

V〜は「ビデオスピードクラス」と呼ばれる規格のことで、メモリーカードのスピード(最低保証速度)を知る指標となっている。類似の数値としてはほかにも「スピードクラス」や「UHSスピードクラス」があり、最近はより高速な「SD Expressスピードクラス」なども登場している。

これらの速度の規格をまとめて「スピードクラス」と呼ぶのだが、「C2、C4、C6、C10」の速度表記もスピードクラスと呼ぶなどややこしい。

さらに「UHS」は、スピードクラスの速度表記(U1、U3)のほか、バスインターフェース規格(接続端子の数や形状)としてのUHS-IやUHS-IIなどもあり、類似の用語が入り乱れてとても難解だ。

ほかにもアプリケーション用の規格もあるため、メモリーカードの表面にはさまざまな規格の文字や数値がプリントされることとなる。

スピードクラス一覧
最低保証速度スピードクラスUHSスピードクラスビデオスピードクラスSD Expressスピードクラス
600MB/秒E600
450MB/秒E450
300MB/秒E300
150MB/秒E150
90MB/秒V90
60MB/秒V60
30MB/秒U3V30
10MB/秒C10U1V10
6MB/秒C6V6
4MB/秒C4
2MB/秒C2

※V60/V90はUHS-II向け

これらの意味をまじめに覚えてもよいのだが、前述したとおりSD系の規格は古いものも含まれているし、「動画撮影」をする場合は無視してかまわないものもある。

というより、「見るべき数値」だけを追えばカメラに必要なメモリーカードを見分けることができるので、これを覚えてしまえばOKだ。

その数値が「V〜」というもの。

V10、V30、V60などがあり、それぞれ「最低保証速度」がMB/秒の数値として表記されている。たとえばV10なら、10MB/秒の速度を保証しているメモリーカードということ。

動画を撮影するカメラのスペック表には、対応メモリーカードとして「V〜」の数字が記されていることが多いので、その数値以上のメモリーカードを選べば問題なく撮影できるわけだ。

そして現行のアクションカメラの場合、ほぼすべての機種で「V30」の速度があれば問題なく撮影できる。

大まかな目安としては、V10はフルHD画質、V30は4K画質、V60はオーバー4K画質で撮れる速度と考えるとよいだろう。

ちなみに、スピードクラスやUHSスピードクラスの数値も最低保証速度になっているのだが、こちらは動画のような連続した長時間のデータ通信を考慮しているわけではない。

どちらかというと瞬発力、つまり連写のような「写真」を書き込む速さの指標として使われていて、同じ速度でも動画撮影には当てはまらない場合もあるので注意しよう。

このように最近のメモリーカードは複雑化して分かりにくいため、カメラ側で推奨メモリーカードを指定することも多い。それらを選べば安心ではあるのだが、すべての製品を網羅しているわけではなく、推奨メモリーカードとして扱われるものはごく一部だ。

では、それ以外は使えないのかというと、そんなことはない。

カメラの仕様書に「V〜」などのスピードクラスの記載があれば、その値以上のメモリーカードなら使うことができる。直接の記載がなくても、推奨製品が「V30」のタイプなら、他メーカーのV30メモリーカードを選べばいい。

ただし、SDやmicroSDメモリーカードは品質に差があり、安価な製品を適当に選んでしまうと失敗する可能性もあるので注意したい。

とくに“ギリギリの速度”しか出ていない製品の場合、熱を帯びた状態になると速度が低下して書き込みエラーが生じやすくなる。最初は使えていても、しばらく撮影するとエラーが出るというパターンだ。

動画撮影はカメラが発熱しやすい上、小さくて防水性の高いアクションカメラはより高温になりやすいため、その状況下でも撮影し続けられる信頼性の高いメモリーカードを選ぶことが重要。

たとえ持てなくなるくらいカメラが熱くなったとしても、カメラが故障するまで撮り続けられるタフなメモリーカードが理想だ。

PRO Ultimateのベンチマークを測定

SamsungのEVO Plus、PRO Plus、PRO Ultimateはネットでも評判がよく、信頼性の高いメモリーカードとして知られている。大手ゲーム機メーカーの公式サイトでオプション品として扱われている点からも、信頼性の高さは明らかだろう。

しかしながら、映像制作する側としては「撮影が止まらない」という確信がほしいところ。

熱停止などカメラの都合で止まるのは仕方がないが、メモリーカード側の問題で撮影が止まったり、データが壊れることだけは避けたい。

というわけで、現行の小型カメラ4台を使い、PRO Ultimateの実力を検証してみよう。

使用するカメラの中には、Osmo Action 5 Proのように推奨メモリーカードのリストに含まれていない機種もある。そんなカメラでも撮影できるのか、カメラのスペックは活かせるのか、さまざまな撮影を試みてみた。

通常のテストは以前の記事で行なっているし、カメラが熱停止しても撮影データに異常はないことも前回の検証で分かっているので、今回はさらに過酷な「長時間の限界撮影」を中心に検証してみようと思う。

撮影に使うカメラは、DJIのOsmo Pocket 3(以下、Pocket 3)と同Osmo Action 5 Pro(以下、Action 5)、GoProのHERO13 Black(以下、HERO13)、そしてInsta360のAce Pro 2の4機種。

Osmo Pocket 3
1インチセンサー搭載のジンバルカメラ。センサーサイズが大きいため低照度に強く、さらにジンバルによる機械的なブレ補正により昼夜を問わず安定した映像が撮影できる
Osmo Action 5 Pro
アクションカメラとしては大型の1/1.3インチセンサーを搭載し、13.5ストップのダイナミックレンジと低照度特性の高さを誇る。コンパクトで省電力、熱停止がしにくいカメラ
GoPro HERO13 Black
アクションカメラの元祖GoProの新製品。レンズ交換が可能で、マクロや超広角のほか、アナモフィックレンズによるシネマチックな撮影も可能。最大解像度は5.3K60P、8:7の比率にも対応
Insta360 Ace Pro 2
アクションカメラでは最高解像度となる8K30Pに対応。イメージセンサーが1/1.3インチと大きく、低照度下の撮影にも強い。発色のよさも特徴のひとつで高精細な映像が撮れる

まずは、Pro Ultimateのベンチマークの確認から。

なお、こちらのEVO Plusは、筆者が以前購入したもので、最大読み出し速度が130MB/sの前モデルとなる。最新モデルと区別するため「EVO Plus(KA)」と表記する。

カードリーダーは純正の「Samsung SD Card Reader V3.0」を使い、PCのUSB 3.2 Gen 2端子に接続する。カードリーダーに関しては後半で検証しているので、そちらも参照してもらいたい。

ベンチマークの測定結果は、下記の表のとおり。

Samsung SD Card Reader V3.0
メモリーカードを挿入するスロット部分が斜めに開口している点が特徴で、メモリーカードをスライドして入れやすい。EVO PlusやPRO Plus、PRO Ultimateに最適化されていて、メモリーカードと合わせて入手したいカードリーダーだ
測定結果:PRO Ultimate
測定結果:EVO Plus(KA)
測定結果:他社U1メモリーカード

撮影に使うメモリーカードの場合、着目するのは「Write」の項目。この値がカメラの要求値(今回の4機種の場合はV30の30MB/秒)より低いと、撮影データの書き込みが間に合わずエラーやコマ落ちが生じてしまう。

実測値を見ると、EVO PlusでもV30を余裕で上回る65.75MB/秒に達していることが分かる。アクションカメラでもっとも高いビットレートを要求するAce Pro 2でさえ200Mbps(25MB/秒)なので、この速度なら問題なく使えるはず。

そして、その倍の速度となるPRO Ultimateなら(理論上は)書き込みが間に合わないという状況は考えられない。たとえカメラやメモリーカードが熱を帯びて速度が半分に落ちたとしても、十分に撮影し続けられるスペックだ。

ちなみに、PRO UltimateとEVO Plusの動作時の耐熱温度は「−25℃~85℃」。これはカメラの動作温度をはるかに超えており、カメラが熱停止しても安心して扱えるメモリーカードといえる。

対してU1タイプのメモリーカードは、書き込み速度がV30を大きく下回っているため、撮影データの書き込みが間に合わない可能性が高い。つまり、書き込みエラーやコマ落ちが生じてしまうということ。

U1クラスのメモリーカードは現在でも普通に流通しているので、動画撮影を目的とするなら所有するメモリーカードを確認してみるとよいだろう。

4K 120fpsの長時間撮影も余裕でこなす

PRO Ultimateで最初に検証したいのは、標準的な4K 30fpsの動画をいつまで撮れるかという点。もっとも、この程度の撮影でトラブルが出るようでは困るのだが。

カメラの中には熱停止しやすい機種もあるため、4台ともに同じ条件で冷却しながら撮影を行うことにした。

テスト撮影の状況を再現。PC用のファンでカメラに風を当て、気温28度の室内で定点撮影を行っている

使用する電源は満充電した内蔵バッテリーのみ。

メモリーカードの容量は128GBで、メモリーカードは撮影前にそれぞれのカメラで初期化してから撮影を開始。バッテリーが切れてカメラの電源が落ちるまで放置し、録画された映像を確認している。

その結果が、下記の表となる。

4K 30P連続撮影テスト(内蔵バッテリー)
カメラ撮影時間停止理由
Osmo Pocket 32:07:13バッテリー切れ
Osmo Action 5 Pro2:44:02バッテリー切れ
GoPro HERO13 Black1:53:57バッテリー切れ
Insta360 Ace Pro 21:58:18バッテリー切れ

4台のカメラ共に、バッテリーが空になるまで止まることなく映像を記録。録画された映像も問題は見当たらなかった。

カメラのバッテリーは新品ではないので撮影時間は参考値になるが、それでもAction 5の撮影時間の長さが際立つ。省電力でバッテリー駆動による連続撮影時間が長いという謳い文句を実証する結果となった。

続けて、よく使われる設定の4K 60fpsと、負荷の高い4K 120fpsでも同様の撮影を実行。

120fpsは普通の映像として使えるだけでなく、4倍から5倍のスローモーションが作れる便利なフレームレートなので、使いたくなる場面は多いのではないだろうか。

ただし、Pocket 3は4K 120fpsには対応していないので未計測となる。

4K 60fps連続撮影テスト(内蔵バッテリー)
カメラ撮影時間停止理由
Osmo Pocket 31:54:47バッテリー切れ
Osmo Action 5 Pro2:08:19バッテリー切れ
GoPro HERO13 Black1:30:20バッテリー切れ
Insta360 Ace Pro 21:19:48バッテリー切れ
4K 120fps連続撮影テスト(内蔵バッテリー)
カメラ撮影時間停止理由
Osmo Pocket 3未対応
Osmo Action 5 Pro1:38:29バッテリー切れ
GoPro HERO13 Black1:11:50バッテリー切れ
Insta360 Ace Pro 21:16:12バッテリー切れ

アクションカメラにとって4K 60fpsは通常撮影の範囲に入る品質なので、PRO Ultimateで問題が出てしまってはこの記事自体がボツになりかねない。もちろん、当然ながら撮影も映像データも問題なし。

カメラの温度は高くなっていたけれど、冷却しながらの撮影だったため、すべてのカメラでバッテリー切れまで撮影を継続することができた。

4K 120fpsは4K 30fpsの4倍のデータ量になるため、長時間撮影ではカメラ側のトラブルが生じそうな気もしたが、撮影も映像確認も問題なく検証は終了。

4K 120fpsでバッテリーが切れるまで撮影し続けられるということは、一般的な撮影において「メモリーカードの速度不足」で撮影が止まるようなことはないだろう。

12時間を超える連続撮影でもノントラブル

アクションカメラの活用の一例として、車載やボディマウント、定点撮影など、何時間も撮影し続けることがある。

このような場合、カメラの確認やメモリーカード交換などが行えないことも多く、撮影できているか不安になる場面も少なくない。

そこで、PRO Ultimateの限界を知るためにも、モバイルバッテリー運用による限界撮影のテストを行ってみた。バッテリー切れを防ぎ、メモリーカードいっぱいまで撮影できるかを確認するテストだ。

なんらかのトラブルが生じるなら本番の撮影で回避するための参考になるし、ノントラブルなら安心して超長時間の連続撮影に臨めるようになる。

使用するカメラはHERO13で、PRO Ultimateの容量は128GB。

解像度は4Kを選択して、30fps、60fps、および120fpsのフレームレートで撮影できた時間を測定する。

カメラはこれまでどおり熱停止しないように冷却し、メモリーカードにひたすら書き込み続けるという過酷な撮影となった。

限界連続撮影テスト(モバイルバッテリー)
カメラ設定撮影時間停止理由
GoPro HERO13 Black4K 30fps14:07:25メモリーFULL
GoPro HERO13 Black4K 60fps5:04:55メモリーFULL
GoPro HERO13 Black4K 120fps4:18:12メモリーFULL

同じ4K解像度で30fps、60fps、120fpsと設定した割に、撮影時間がフレームレートに比例していない。これはHERO13のフレームレートそれぞれでビットレートが異なるため。たとえば4K30fpsでは19,235kbps、4K60fpでは54,876kbpsとなる。

HERO13を選んだのは定番カメラという点もあるが、GoPro製品が比較的熱に弱いとされているため。熱停止ギリギリの高温で撮影し続けるとPRO Ultimateにも影響が出るのではないかと予想してのことだったが、すべて杞憂に終わった。

4K 30fpsの設定では一晩経っても撮影は止まらず、結局14時間もの間カメラに貼り付いて状況を見続けることとなった。

メモリーカードの容量がなくなった時点で撮影がストップしたことを確認しているし、メモリーカードを確認しても空きはない状態だ。映像もきちんと撮影されている。

4K 60fpsも同様だし、もっとも負荷の高い4K 120fpsでもメモリーカードの容量いっぱいまで撮影できているし、映像に問題もない。

上記の結果がすごいのは、4K 30fps、4K 60fps、4K 120fpsの撮影を連続して行っているという点だ。

4K 30fpsの撮影が終わったらすぐにデータをPCに転送し、続けて4K 60fpsで撮影を行い……というように、128GBの容量を何度も入れ替えている。メモリーカード的には休むことなく約24時間の書き込みと読み込み作業を続けたことになる。

実際は最後にほかのカメラでも4K 30fpsのテストを行っているので、30時間以上の連続読み書きを行ったわけだが。

長年Samsungのメモリーカードを使ってきた経験上、長時間撮影でエラーが出ることはないと予測はしていたけれど、14時間を超える連続撮影というのは未経験。

しかしながら、今回の検証で14時間の撮影なら問題ないという実績が得られたので、これからは安心してPRO Ultimateを酷使しようと思う。

カメラの限界撮影についてこられるか?

最後の撮影テストは、オーバー4K画質や、オーバー120fpsの高フレームレートなど、カメラの上限設定における長時間の連続撮影となる。カメラの限界性能にPRO Ultimateはついていけるのかを知るテストというわけだ。

先に検証するのは、オーバー120fpsの「最高フレームレート」における連続撮影時間。

各カメラの最高フレームレートは240fpsなので、その設定で選べる最大の解像度で撮影する。

このフレームレートで撮るメリットは、「普通の映像」として使えるだけでなく、スローモーション映像にもなる点だ。30fpsで編集するなら8倍、24fpsなら10倍のスローモーションが作れるため、映像に緩急を付けることができる。
アクションカメ用のメモリーカードを選ぶなら、オーバー120fpsでも安心して撮影できる製品がいい。

電源は満充電した内蔵バッテリーで、PRO Ultimateの容量は128GB。カメラはこれまでと同様に冷却しながら撮影を行う。

ただし、Pocket 3は最高フレームレートが4K 60fpsなので割愛している。

オーバー120fps連続撮影テスト(内蔵バッテリー)
カメラ設定撮影時間停止理由
Osmo Pocket 3未対応
Osmo Action 5 Pro1080P 240fps1:57:04バッテリー切れ
GoPro HERO13 Black2.7K 240fps1:09:48バッテリー切れ
Insta360 Ace Pro 21080P 240fps1:34:22バッテリー切れ

240fpsとハイスピードな撮影ではあるが、画素数が小さくなるためメモリーカードへの書き込み負荷が極端に増すことはない。データ量としては、1080Pでおおよそ4K 60fps、2.7Kでも4K 120fpsと同程度となるはず。

当然ながら、もっとも解像度の大きいHERO13でもバッテリーが空になるまで撮影し続けることができた。

では、オーバー4Kの最高解像度における連続撮影はどうかというと、こちらも問題なくバッテリーが空になるまで撮影できている。

おそらく、今回の検証で最大のデータ量と考えられるAce Pro 2の8K 30fpsでも問題なし。メモリーカードへの書き込みが間に合わずに撮影が止まることはなかった。

オーバー4K連続撮影テスト(内蔵バッテリー)
カメラ設定撮影時間停止理由
Osmo Pocket 3未対応
Osmo Action 5 Pro未対応
GoPro HERO13 Black5.3K 60fps1:19:50バッテリー切れ
Insta360 Ace Pro 28K 30fps1:06:30バッテリー切れ

オーバー4Kで撮影できれば、4K映像の編集時にクロップによる自由度が増し、構図が整えやすくなる。

アクションカメラは手持ち撮影が基本となるだけに、撮影しながら理想の構図を作ることは難しい。そのため、広めにとって後から構図が作れる5.3Kや8K映像は重宝するだろう。

内蔵バッテリーでの検証になるが、PRO Ultimateなら「カメラが止まる」までオーバー4Kで撮り続けられるという実績が得られたわけだ。

以上で撮影テストは終了だが、スペックどおりというか予想どおりというか、PRO Ultimateはアクションカメラで映像を制作する上で想定される撮影設定において、問題なく長時間撮影が行えることを再確認する結果となった。

カメラを冷却しながらかなり強引に撮影を繰り返したけれど、それでもエラーが出たり撮影が止まることはなく、映像制作のプロも安心して使えるメモリーカードといえる。

PC転送はカードリーダーに注意したい

撮影テストはPRO Ultimateで行なったけれど、スタンダードなEVO Plusでも同様の結果になっていたはず。

筆者はEVO Plusを使うことも多いが、少なくとも4K 60fps程度で撮影が止まることはないし、バッテリーが空になるまで撮り続けることも頻繁にある。

どちらかというとカメラが先に熱停止してしまうことが多いため、EVO Plusの実力を出し切れていない感じだ。

しかしながら、撮影後の話となると考えは変わってくる。

メインで使うのはPRO Ultimateで、EVO Plusはどうしても予備のメモリーカードにせざるを得ない。その理由となるのが、バックアップに要する時間だ。

最近は128GBや256GBという大容量メモリーカードを使うことが多くなり、必然的にメモリーカードに記録する映像の容量も大きくなってくる。

たとえメモリーカードいっぱいまで撮影しなかったとしても、空き容量に余裕があると、つい撮影してしまうものだ。その結果、バックアップする映像が増え、そのための時間もかさんでくるというわけだ。

そこで、PRO UltimateとEVO Plusを使い、128GBのメモリーカードいっぱいまで撮影したデータ(実容量119GB)のバックアップ時間を測定してみた。

機材とセッティングに関して補足すると、使用したカードリーダーは純正の「Samsung SD Card Reader V3.0」、他社製の「USB 3.1 Gen 1タイプのカードリーダー」と「USB -Cドッキングステーションのカードスロット」で、PC側のUSB 3.2 Gen 2端子に接続。

バックアップデータの転送先は、実測で1013MB/秒の書き込みが行える外付けSSDを使用した。

測定した転送時間は以下の表のとおり。カッコ内の数字は転送時間から算出した転送速度となる。

下記の表を見てEVO Plusで十分と考えるか、PRO Ultimateの速度が必要と考えるかはひとそれぞれ。自分に合ったメモリーカード選びの参考にしてもらいたい。

128GBデータのバックアップに要する時間
カードリーダーPRO UltimateEVO Plus(KA)
Samsung SD Card Reader V3.00:11:15(176MB/秒)0:16:48(118MB/秒)
USB 3.1カードリーダー0:23:53(83MB/秒)0:23:54(83MB/秒)
USB-Cドッキングステーション1:50:30(18MB/秒)1:50:37(18MB/秒)

PRO UltimateとEVO Plusのバックアップ時間の差はスペックから分かっていたことで、約1.5倍の開きがあるのは予想どおり。

それより着目してもらいたいのはカードリーダーによる速度の違いで、PRO Ultimateにおける純正品と他社製USB 3.1カードリーダーでは2倍以上の開きがある。

使用した製品は速度が5Gbpsのものなので、理論的には625MB/秒で転送が可能だ。これはPRO Ultimateの最大読み込み速度(200MB/秒)よりもはるかに速く、問題なくPRO Ultimateの速度が活かせるはずなのだが。

USB 3.1というと高速な規格のように思えるが、製品によってかなりの差があると理解したほうがよいだろう。

速いメモリーカードを使うのならなおさらで、その速度に見合うカードリーダーがなければ性能を活かし切れず、宝のもち腐れになりかねない。

その証拠に、今回使用したUSB 3.1カードリーダーでは、PRO UltimateとEVO Plusで差がなくなっている。カードリーダーがEVO Plusよりもさらに低速なため、どちらのスペックも活かし切れていない結果といえる。

メモリーカードとカードリーダーをSamsung製で揃えることで、高速なPRO Ultimateの性能を発揮できるようになる、メモリーカードとカードリーダーは組み合わせにより速度に違いが出るので、相性がよい純正同士が手軽で確実

そして、おそらく多くの方が誤解するだろう問題が、USB-Cドッキングステーションのカードスロットだ。

USB-Cは高速な規格と認知されていて、事実、使用したドッキングステーションのUSB A端子も5Gbpsと高速にデータ通信が行えるタイプを搭載している。

したがって、カードスロット部も高速なタイプと考えがちだが、そうではない。コストを抑えるためか、安価な製品の中にはカードスロット部はUSB 2.0規格のものも存在する。これが本当に紛らわしい。

今回使用した製品がまさにこのタイプで、PRO Ultimateの最大読み込み速度を大きく下回る低速なUSB 2.0規格でテータ転送を行ったため、途方もない時間がかかってしまった。

それでも、理論上は480Mbps(60MB/秒)の速度が出るので転送時間はもっと短くてもよいと思うのだが、やはり品質の問題なのだろう。

ちなみにカードスロット部の速度がEVO Plusより低速なため、PRO Ultimateとの速度差もなくなっている。

どちらのメモリーカードにとっても、実にもったいない使い方だ。

バックアップに使用したUSB -Cのドッキングステーション。安価な製品だったのでカードスロット部がUSB 2.0規格なのは仕方がないとして、青色のUSB A端子の片方はUSB 2.0という仕様は紛らわしい

過酷に使い倒しても安心できるメモリーカード

筆者は普段からEVO Plus、PRO Plus、PRO Ultimateを使っているので、今回の検証は予想どおりの結果なのだが、それでも長時間の連続撮影を行って問題ないことが確認できた点は大きい。

自分で経験したことなので、自信をもってPRO Ultimateを過酷に使い倒すことができる。

ちなみに、ほぼすべてのテストを1枚のPRO Ultimateで行なっている。

複数のカメラを使う場合、効率を考えて台数分のメモリーカードを用意するのだが、今回はPRO Ultimateの耐久性も知りたかったので、あえて同じメモリーカードを繰り返し使用し続けたというわけだ。

記事では触れていない長時間撮影も行っているし、カメラが熱停止するまで撮影したりもしているし、別件の撮影でも使っていたので、短期間で酷使したほうだと思う。

念のため返却前にベンチマークを確認したけれど、受け取ったときと違いはなく、PCへのバックアップ速度の低下も見られず。

過酷に思えた検証も、PRO Ultimateにとっては大した問題ではなかったようだ。

アクションカメラや小型カメラ用のメモリーカードとして、PRO Ultimateは十分なスペックをもった製品といえる。少なくとも、現行のアクションカメラで書き込みが間に合わないということは考えられないし、メモリーカードが原因で撮影が止まることも考えにくい。

たとえ8Kで撮影してもバッテリーが空になるまで撮り続けられるのだから、これ以上のスペックを求めても意味はないだろう。

アクションカメラに限らずスピードクラスがV30のカメラなら、EVO Plus、PRO Plus、PRO Ultimateの中から選べば間違いはない。撮影で差が出ることないはずなので、コストを優先するか、バックアップ速度を優先するかで決めるといい。

もちろん、メモリーカードのスペックを活かすためにも、純正の「Samsung SD Card Reader V3.0」を一緒に入手したいところだ。

気が付けば、SDカードもmicroSDメモリーカードもSamsung製がたくさん。アクションカメラや360度カメラには大容量タイプを入れっぱなしにしているし、未開封のものも多い。純正のカードリーダーはもちろん必須

機材協力:株式会社PANDASTUDIO.TV

桐生彩希