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最新のサンニッパ、「FE 300mm F2.8 GM OSS」はやはりすごかった…圧倒的な軽さ・コンパクトさに脅威の描写!
α9 IIIとのマッチングも良し スポーツフォトグラファー水谷たかひとさんに聞く
2024年2月6日 07:00
ソニーαの交換レンズ「G Master」のラインナップに、「FE 400mm F2.8 GM OSS」「FE 600mm F4 GM OSS」に続く待望の大口径単焦点望遠レンズ、「FE 300mm F2.8 GM OSS」が登場した。
モータースポーツからウインタースポーツ、サッカーやラグビーなどスポーツ写真の第一線で幅広く活躍中の写真家で、昨年5月からフィールドホッケーチーム「BRAVIA Ladies」のオフシャルフォトグラファーも務める水谷たかひとさんに、同時発表の「α9 III」との組み合わせでいち早く撮影していただいた。「FE 300mm F2.8 GM OSS」の登場で広がる撮影の可能性とは。
フィールドホッケーを撮る面白さ
——今回は昨年12月に行われた、2023全日本女子ホッケー選手権大会のときに撮影された作品を見せていただいています。ラグビーではなかったのでちょっと意外だったのですが(笑)
ラグビーを約10年追いかけてきて、ある程度の納得感がえられたという感触もありました。新しいことに挑戦したいという思いはもともと強く、今ハマっているのがフィールドホッケーです。納得できる作品が集まるのにはまた10年ぐらい掛かりそうですけれど、ものすごく楽しいですね。
——フィールドホッケーを撮る楽しさとは何でしょう。
面白いんですよ。フィールドホッケーって。今まで全く撮ったことがないということ、女子のチームスポーツを追いかけるということ、ウェアもビビッドで目を引くという興味からのスタートだったのですが、知れば知るほど面白い。
難しいのは、選手が8割がた下を向いていることです。スティックでボールを打つ競技なので、ボールが下に来ることが多いため、表情がなかなか撮れない。顔が見えて表情がしっかしている一瞬をいかに撮るかが勝負なのです。
浮いたボールを追うように選手が顔を上げる瞬間を、約60コマ/秒の高速連写と1/6,400秒の高速シャッター、顔・瞳認識で狙う。逆光に光る髪の描写はシャープだが固くなりすぎずあくまでも繊細。ボールやスティックの位置も丁度良く「生きている」カットを連写の中からピックアップ。この高速連写でも「シャッターを切った分だけピントが合う」ので、あとは表情やしぐさなどで選び放題だ。背景を十分にボカして被写体を浮き上がらせる大口径F2.8の力も感じてほしい。
あと、試合前とハーフタイムに水を撒くんですよ。これも面白い効果が期待できます。
この軽さとコンパクトさは正義
——αを使うようになった切っ掛けは何でしょう?
OVFの一眼レフからミラーレスへという流れの中で、一番のネックはEVFでした。僕らのようなスポーツフォトグラファーは、常に動いている被写体をファインダーでしっかり認識できないと話にならない。
そんなときに手にしたのが「α9 II」(2019年11月発売)で、それまで見ていたEVFとは全然違う。「こんなに見えるんだ」と驚いちゃった。しかもブラックアウトもなく、動いている被写体をずっと追従できる。加えてAFの歩留まりも圧倒的だった。そのタイミングでαシリーズに乗り換えました。
——「FE 300mm F2.8 GM OSS」を使ってみていかがでした?
300mmの大口径単焦点レンズなのに、「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」とほぼ同じぐらいの重さ(約1,470g *三脚座別)と大きさ。これには驚きました。
特に手持ちでの撮影で、その軽さを実感しています。ハンドリングを重視するような撮影、たとえばザックに入れて雪山へ持っていって、スキーをしながらの撮影にも使えます。今まで70-200mm F2.8を入れていたところに、単焦点レンズの300mm F2.8をポンと入れて行ける感覚。ズームレンズのクオリティーも十分に高いのですが、よりクオリティー求めるとなると、やはり単焦点レンズが必要になりますからね。
さらに凄いことに、これだけ小さくなったのに描写性能が落ちていません。良く使っている「FE 400mm F2.8 GM OSS」と比べても、階調の再現や暗部の描写力など、さらにクオリティーが上がっていると感じます。描画を犠牲にしないで小型軽量というのは、もう正義としか言いようがありません。
切り詰めた露出の中、逆光に浮かび上がるエッジラインも美しい1枚。白い息がたおやかに背景の暗部へ溶け込んでいく。この逆光条件にも関わらずクリアで抜けの良い暗部の色彩感。このレンズだから撮れる世界といっても良いかもしれない。
体感レベルで進化したAF
——スポーツ写真というと、素早く動く被写体へのAF性能が重要になると思います。このレンズのレスポンスや合焦精度はいかがでしたか?
「α9 III」のAF性能を引き出せているのもあるのでしょう。ピントが合うまであまりにも速く、最初に使ったとき「こんなに速くて、ちゃんと制御できてるの?」と正直不安に思うほどでした。約30コマ/秒や約60コマ/秒など高速連写で撮っていると、撮影中にピントが合っているかの確認は、事実上できません。カメラとレンズを信用するしかありませんよね。
撮影した画像を確認してみると、すべてのコマとはいえませんが、ほとんどのコマでちゃんとピントが合ってる。速度を考えるとすごいことだと思います。いまは「FE 400mm F2.8 GM OSS」と同じ安心感で使っています。
“サンニッパ”は良いレンズ、と改めて思う
——ご自身にとって300mm F2.8のレンズとはどのような位置づけのレンズなのでしょうか。
「なぜ今、サンニッパ(300mm F2.8)なのか?」を考えながら使ってみて、やっぱり良い焦点距離だなと改めて思いました。
300mmという焦点距離は、アップになり過ぎずロングになり過ぎない。ラグビーやサッカーといったフィールドの広い競技だと400mmが欲しくなるところではあるけれど、そのような場合でも300mmにテレコンバーターを組み合わせたり、クロップ撮影することでカバーできます。そういう意味で自由度がかなり高いレンズだといえます。
実際、写真を初めて15年ぐらいは300mm F2.8を使用していました。モータースポーツでも使っていましたし、そのころメインで撮っていたスキーなどでも300mmで距離感を全部つかんでいます。
300mmが一番向いているのはテニス、バドミントン、卓球といった、被写体が比較的近い競技。サッカーやラグビーだと少し物足りないという話もしましたが、逆にいえば、足や頭が画面から切れてしまうことがない。そういった画角の余裕がある分、いろいろなシーンへ対応できるともいえます。少年サッカーや少年野球、室内だったらバスケットボールなども良いですね。
−5度の気温の中、フィールドに撒かれた水は静かに凍りつく。その前で息を白くしながら試合前のアップをする選手を絞り開放で捉える。早朝の低い太陽がレンズに直接差し込もうかというぐらいな真逆光の条。これはAFにもレンズにも厳しい条件のはずだが、クリアで抜けの良いコントラストと解像感を見てほしい。画角に余裕のある300mmらしい空間表現、そして癖のないボケもこの写真のポイントだ。
——口径F2.8は、やはり必要ですか?
僕はF2.8のレンズだったらF2.8でしか撮りません。スポーツ写真で背景の存在は結構気になるのものです。背景をシンプルにできるポジションを探すのですが、被写体がある程度近い場合、F2.8で撮れば背景をぼかせられる。そういったポジショニングの制約も減り、作品にいろいろと発想を生かせるようになります。
以前は、ピントがちょっとズレたときのためにF4で撮るということももありましたが、αのAFを信用しているので、その必要も無くなりました。絞り操作ができなくても困りません(笑)。
——このレンズで“サンニッパ”が復権しそうですね。
かつてサンニッパといえば、ボートレート撮影の花形レンズだった時代もありました。「FE 300mm F2.8 GM OSS」の登場で、また大口径望遠レンズを使用したポートレートの流れが生まれそうな予感もします。クリアで解像感も高いけれども質感描写はナチュラルというこの描写は、ぜひポートレートを撮る人にも試してみてほしいと思います。