トピック

CFexpress 4.0規格に初めて対応 ProGrde Digital「COBALT 1.3TB」を試す

対応カードリーダーで従来品もスピードアップ

左からCFexpress 4.0 Type B COBALT 1.3TB、USB4.0シングルスロットカードリーダー PG05.6

CFexpressカードの発展を黎明期からリードしてきたProGrade Digitalが、世界で初めてCFexpress 4.0規格に対応したCFexpressカード(CFexpress 4.0 Type B COBALT 1.3TB)とカードリーダー(USB4.0シングルスロットカードリーダー PG05.6)を発売した。実際の製品を試す機会が得られたのでその驚異的なスピードを紹介したい。

執筆時点ではCFexpress4.0対応のカメラは発表すらされていない状況だが、試してみると従来のCFexpress2.0対応カメラを中心とした環境でも、大きなメリットがあることが分かった。データ転送速度に不満がある人や、今後登場するであろうCFexpress4.0対応カメラに向けて予習をしておきたい人はぜひ今回のベンチマーク結果を参考にして欲しい。

CFexpress 4.0カードを投入した意図や今後の展開などは、先日公開したProGrade Digital創業者兼CEOのウェス・ブリュワー氏へのインタビュー記事も参考になるだろう。

検証した機材

今回検証に用いたのは世界初のCFexpress4.0対応カード「CFexpress 4.0 Type B COBALT 1.3TB」(以下COBALT 1.3TB)と、新型カードリーダー「USB4.0シングルスロットカードリーダー PG05.6」(以下PG05.6)だ。

CFexpress 4.0はPCIexpress4.0とNVMe 1.4cの技術をベースにしており、従来のPCIexpress 3.0をベースにしていたCFexpress 2.0よりも2倍の帯域を持った規格だ。下位互換性があるため、これまでのカメラでも使用でき、ユーザーとしては単純に「スピードが2倍になったCFexpressカード」だと思えばOKだ。

スピードが2倍になったことで、COBALT 1.3TBは最大読取速度3,400MB/秒、最大書込速度3,000MB/秒、持続書込速度2,800MB/秒を有するモンスタースペックに仕上がっている。最も高速なUHS-II対応SDカードの約10倍の速度を誇る。

CFexpress 4.0 Type B COBALT 1.3TB

そして、この高速性能を引き出すために新たに開発されたのが最大40Gbps のUSB4に対応したPG05.6だ。

USB4.0シングルスロットカードリーダー PG05.6

比較カードとして、これまでProGrade Digitalのフラッグシップだった「CFexpress Type B COBALT 650GB」(CFexpress2.0準拠、以下COBALT 650GB)を利用した。比較カードリーダーは「USB3.2Gen2 ダブルスロットカードリーダー PG05.5」(以下PG05.5)だ。

左からUSB4.0シングルスロットカードリーダー PG05.6、USB3.2Gen2 ダブルスロットカードリーダー PG05.5

パソコンを使ったベンチマーク

まずはお馴染みのBlackmagic Disk Speed Testを使ってカードのライト、リード性能をチェックした。MacBook Pro(M1 Pro 16inch)のThunderbolt 4対応ポートを利用している。

結果はライト2,021.4MB/秒、リード2,288.0MB/秒と、共に2,000MB/秒オーバーの驚異的な速度で、私がこれまで見てきたカメラ用メモリーカードとしては最高の値となった。これはProGrade Digitalで今まで最も速かったCOBALT 650GBの公称スペックを大きく上回る数値だ。

COBALT 1.3TB×PG05.6
カード:CFexpress 4.0/カードリーダー:USB4

COBALT 1.3TBの公称スペック最大読取速度3,400MB/秒、最大書込速度3,000MB/秒には届いていないが、これはMacBook Pro側Thunderbolt 4対応ポートの上限値がこのあたりなのかもしれない(他の外付けSSDを使ったベンチマークでもこのあたりが最大値のようだ)。

COBALT 650GBとUSB4対応リーダー PG05.6の組み合わせでは以下のような結果となった。以前検証したThunderbolt 3対応リーダー(販売終了)とCOBALTカードとの組み合わせでも同程度の速度であったので、これまでのCOBALTカードの実力もしっかり引き出せているようだ。

COBALT 650GB×PG05.6
カード:CFexpress 2.0/カードリーダー:USB4

COBALT 1.3TBはCOALT 650GBに対して、ライト、リード共に約1.6倍のスピードが出ていることが分かった。特にリード性能の向上は後述するファイル転送速度に大きく影響する。

続いて、USB 3.2 Gen 2対応リーダーPG05.5を利用した結果はこちら。USB 3.2 Gen 2では800MB/秒あたりが実効速度としては限界のようで、COBALT 1.3TB(CFexpress 4.0)だけでなく、COBALT 650GB(CFexpress 2.0)の性能も十分に発揮し切れていないことが分かる。

COBALT 1.3TB×PG05.5
カード:CFexpress 4.0/カードリーダー:USB 3.2 Gen2
COBALT 650GB×PG05.5
カード:CFexpress 2.0/カードリーダー:USB 3.2 Gen2

データ転送速度の比較

続いて、データ転送速度の比較も行った。利用したデータはEOS R5(約4,500万画素)のRAW+JPEGデータ1,431カット(2,862ファイル、62.1GB)と8K RAWで30分撮影した動画ファイル(587GB)の2タイプだ。こちらもMacBook Pro(M1 Pro 14inch)を利用した結果となる。ファイルが細かく分割されている場合と巨大な1ファイルを転送する場合の違いにも注目していただきたい。

写真データの転送結果は以下の通り。

RAW+JPEG 2,862ファイル(62.1GB)の転送時間および転送速度
1回目2回目3回目平均
COBALT 1.3TB29.4秒29.2秒28.7秒29.1秒
2,111MB/秒2,129MB/秒2,165MB/秒2,135MB/秒
COBALT 650GB41.6秒41.7秒41.4秒41.6秒
1,495MB/秒1,488MB/秒1,500MB/秒1,494MB/秒

USB4に対応したPG05.6を利用した場合、驚いたことにCOBALT 1.3TBでは1,431カットのRAW+JPEGデータが30秒以内に転送できてしまった。まさにスルスルとPCに吸い込まれていくようなイメージで、実効速度は2,135MB/秒だ。かつて64GBのメモリーカードを何分もかけて読み出していたことを考えると凄まじい速度だ。COBALT 650GBも十分速いのだが、CFexpress4.0を前にするとその速度が霞んでしまう。

続いて、8K RAWの動画ファイルの転送速度はこちら。

8K RAW動画ファイル(587GB)の転送時間および転送速度
1回目2回目平均
COBALT 1.3TB3.99分3.96分3.97分
2,453MB/秒2,470MB/秒2,462MB/秒
COBALT 650GB6.17分6.15分6.16分
1,585MB/秒1,590MB/秒1,588MB/秒

587GBという巨大なファイルの転送に、従来のUSB 3.2 Gen2リーダーでは10分以上かかっていたが、USB4対応のPG05.6とCOBALT 1.3TBの組み合わせでは3分台で読み出しが完了してしまった。実効速度は写真転送時より15%アップして2462MB/秒だ。COBALT 650GBでは同じデータの読み出しに約6分かかっており、体感速度も圧倒的に異なる。単一な巨大ファイルを転送した場合の速度向上率もCOBALT 1.3TBが上回る。

従来のUSB 3.2 Gen2リーダーを使った時に比べ、USB4対応PG05.6ではCOBALT 1.3TBでは約3倍、COBALT 650GBでも約2倍の速度でファイル転送を終えられた。

先日のウェス・ブリュワーCEOへのインタビューにもあったように、この結果がProGrade DigitalがCFexpress4.0対応カード、およびリーダーを早期に発売した大きな目的の一つのようだ。

CFexpress4.0対応カメラがまだ発表すらされていない段階でこれらの製品を発売したのは、ProGrade Digitalの「メモリーカードの性能はカメラだけでなくユーザーのワークフロー全体にわたって発揮されるべきだ」というポリシーを体現したものだろう。

連写可能枚数と発熱

最後にEOS R5を用いた連写可能枚数と利用時の発熱についても簡単に紹介しておく。

連写可能枚数に関しては、結論を言えば従来のCOBALTカードと全く変わらなかった。EOS R5はCFexpress4.0に非対応のため当然ではあるが、従来のCOBALTカードでもEOS R5の書き込み性能を100%引き出せていると言える結果だ。

データ転送時の劇的なスピードアップを見てしまうと、早くCFexpress 4.0対応のカメラを使ってみたいという気持ちになる。

また、利用時のカードの発熱は、今回定量的な検証は行っていないが、COBALT 650GBと大きな違いはないように感じた。長時間のデータ転送や高ビットレート撮影時にはカード本体がしっかり熱くなるが、ベンチマークを連続で行うような使い方をしてもサーマルスロットリングが発生して速度が低下するといったことは一度もなく、8K RAW撮影でも撮影終了の30分まで熱警告が出ることもなかった。このあたりは発熱の少ないpSLCメモリーを使うなどしっかりと対策をしているのだと思う。

まとめ

執筆時点ではまだCFexpress4.0対応のカメラは存在しないが、日々大量の写真や動画を撮影するユーザーにとって、撮影後の転送速度が劇的に速くなるのは大きなメリットになるはずだ。

COBALT 1.3TBは22万円(執筆時)と価格もモンスタークラスのため、8K動画をガンガン撮るような業務用用途が中心となりそうだが、すでにCOBALTやGOLDシリーズのCFexpressを利用しているユーザーは、PCがThunderbolt 3または4、USB4に対応していればカードリーダーを変えるだけでも大きなメリットがあるだろう。

新型リーダーPG05.6は従来のPG05.5に比べて3,500円ほど高い1万5,200円(執筆時)だが、40Gbps、240W給電に対応するUSB4ケーブルが付属するのもポイントだ。現在このスペックのケーブルを買おうとすると2,000~3,000円はするため、本体価格はあまり変わっていないと考えることもできる。

一般のCFexpressユーザーは少ない投資で大きな効果を得られるUSB4対応カードリーダーを先に導入しておき、来たるCFexpress4.0時代に備えておくのもおすすめだ。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワークショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主宰。ライフワークは写真をより楽しむための情報を発信すること。2021年より北海道に移住して活動中。