“商品写真の撮り方 完全ガイド”より

その3「ボールペン」の撮り方

この連載は、MdN刊「商品写真の撮り方 完全ガイド プロがやさしく教えるブツ撮りの手引き」(著者:鈴木知子)から抜粋しています。5回にわたり様々な商品写真の撮り方を紹介しますので、どうぞお楽しみに!

商品写真の撮り方 完全ガイド プロがやさしく教えるブツ撮りの手引き(MdN刊。A5判224ページ。税別2,200円)

クリアなボールペンは背景が透けてしまいますが、不透明なタイプならプラスチック、金属ともに、同じようなセッティングで撮影ができます。光沢、マットと質感によって映り込み方が変わるので、しっかりと確認しながら撮影しましょう。

○良い撮影例…窓にトレーシングペーパーを貼り、自然光で撮影。金属部分の映り込みは、トレーシングペーパーとレフ板を使ってカバーしています。レフ板の色が変わると、映り込む色も変わるので注意が必要です。Canon EF100mm f/2.8L Macro IS USM / F16 / 1/80 秒 / ISO250 / ±0EV / AWB
×イマイチな例…金属への映り込みは、しっかりとチェックしましょう。黒い部分が少なくなるようにレフ板を写し込みましょう。ただし立体感は損なわないように、レフ板の距離を離す、角度を変えるなどして調節します
窓からの自然光をメインに、三脚は使わずに撮影。背景はA3サイズの白い紙です。

Step 1 背景紙に直接置かない

ペンなどは、背景紙の上に直接置かず、細くカットしたポリスチレンボードなどで浮かせるように配置しましょう。白い紙に直接置くと輪郭に白が映り込み、あいまいな見え方になってしまいます。背景から離すことによって、背景紙の影響を受けにくくなります。

また丸い形状のペンの場合、簡単に動かないように撮影台と背景紙、背景紙と台、台とボールペン、それぞれ両面テープやねり消しゴムなどを使って、固定しておきましょう。

細長くカットしたポリスチレンボードなどを用意しておきましょう。材質はなんでもかまいませんが、安定感のあるものでつくっておきます

Step 2 輪郭に紙を映し込む

筒状になっている被写体は、床面の色を拾ってしまいます。背景紙に濃い色の紙を置きましょう。この紙の色がペンの輪郭に映り込むのです。ファインダーを覗き、ペンにかからないように輪郭部分の見え方を確認しながら位置を決定します。

被写体の色にもよりますが、無彩色である黒、グレーが最適です。今回はペンと同系色である茶色の紙を使いました。同系色はなじみがよく、不自然になりません。

輪郭の部分を確認しながら、茶色の紙をペンに近づけていきます。白い背景紙が見えなくなると、切り抜きがしづらくなるので、白を残すように調整しましょう
輪郭に白い紙の部分が映り、あいまいになっています。切り抜きを行う場合は、輪郭を強調しておきましょう。見映えもよく、処理が楽になります
左右に違う色の紙を置き、比較しました。微妙な差ではありますが、右側の輪郭は赤みがかっています。不自然にならない色を選ぶようにします

Step 3 ハイライトのラインをつくり込む

輪郭の調整が終わったら全体をチェックします。ポイントは金属部分の映り込みと、ボールペン本体のハイライト。ここでは白いラインの部分です。明暗によって立体感を表現するため、ハイライトがないとフラットな印象になってしまいます。ハイライトのラインをまっすぐ、切れないように光を調節しましょう。ここでは窓を利用しているので、台を移動させ調整しました。

また金属部分ですが、真っ黒ではシルバーの質感が伝わりません。レフ板の位置を調整して、金属部分に写し込みましょう。

金属の部分は、真っ白すぎても質感がわかりづらくなります。レフ板の位置をいろいろと動かし、1枚で足りない場合は、数枚のレフ板を使って映り込みをつくります

POINT…切り抜きではないカットの場合

ボールペンなどの筆記用具は縦に長いので、切り抜きでなく背景も生かした画像にする場合は、画面を上手に使って構図を考えましょう。対角線を目安に配置すれば、大きく撮影でき、ほどよい空間もできます。キャップをはずして手前に置くなど、バリエーションも撮れますね。

切り抜きと同様に、ハイライトや金属部分など細かいディテールの見え方を確認しましょう

鈴木知子