特別企画

写真を撮るならLEDでしょ!最近の製品でその実力を検証してみた

高品質で使いやすい「Phottix Nuada R3 II LED Light」を紹介

写真撮影にもLEDライトを使ってほしい。

LEDライト好きの筆者は、イベントなどでそう呼びかけているのだが、「定常光=動画」の印象が強いらしく、なかなか思いが伝わらずに寂しく感じている。

しかしながら、LEDライトと写真の相性はとてもいい。事実、筆者はLEDライトを十数台ほど購入し、仕事やプライベートの撮影に活用している。

作品撮りだってできるし、セッティングも楽だし、色温度だって変えられる。

「こんなに便利なのに、みなさんはなぜ使わないのだろう?」と不思議でならないほどだ。

そこで、筆者の持ち合わせている知識を動員して、気になっていたLEDライト「Phottix Nuada R3 II LED Light」をチェックしてみた。

写真好きとしてだけでなく、レタッチャーの目線で発色や色補正の可能性なども検証してみたいと思う。

Phottixってどういうブランド?

なんらかの製品を購入するとき、それが高価なほど、気になるのがブランド名だろう。有名なブランドだったり、老舗のブランドだと安心感があるのだが、そうでない場合は少々不安だ。

今回紹介する「Phottix Nuada R3 II LED Light」(以下、「Nuada R3 II」)について、製品は気になっていたのだが、Phottixというメーカーに関してはほとんど知識をもち合わせていなかった。

しかしながら、スペックも上々で、レビュー記事や動画でも評判がよい。それらを信じるなら、写真+動画をワンオペで撮影している筆者にとって「Nuada R3 II」は魅力的な製品といえる。

丸い発光面が特徴の「Phottix Nuada R3 II LED Light」。フラットなタイプのLEDライトは角型が多いが、光を当てた面をきれいに明るくしたり、影をやわらかくするなら丸形が向いている

そこで、さらなる安心を得るためにPhottixというブランドから調べてみたのだが、これがまたユニーク。バックグラウンドが興味深いブランドでもある。

来歴を要約すると、2007年に写真家が設立したブランドで、ストロボやスタジオ向けのライトなどを数多く手がけている。テレビ業界で多くのPhottix製LEDライトが使われているらしく、(業務用機器に比べて)安価で高性能なため、ロケの現場でタレントを照らす照明として人気のようだ。

しかも、「写真家の目線」で製品を開発しており、LEDライトも「写真がきれいに撮れるスペック」になっているという。

「写真家が作るLEDライト」といわれると、がぜん興味が沸いてくる。

というわけで、「Nuada R3 II」についてあれこれとチェックしてみよう。

トップに掲載したカットを撮影しているシーン。多くの写真愛好家の参考になるように、スタジオではなく自宅リビングの一角で撮影。「Nuada R3 II」は円盤状の薄い本体のため、狭いすき間でもセッティングでき、散らかった部屋の隅でも作品が生み出せる。カメラは三脚に乗せているが、実際は手持ちで撮影

肉眼でも分かる光質のよさ

「Nuada R3 II」のファーストインプレッションは、「気持ちのよさ」。

スイッチを入れて発光した瞬間から、「なにか違う」と感じる光を放ってくれる。近い感覚は、陽の光を浴びているような感じだろうか。

色温度や光量を上げても刺激的な眩しさは出ず、棘のないやわらかな光で場が明るくなる印象。適当に被写体を並べただけでも、「いろんな色が見える」と実感できるほどに精彩な色が浮かび上がる。

LEDライトで筆者が重視する項目は、「演色評価数(CRI)」と「照度」のふたつ。

前者は色の正確さで、太陽光を「100」として、どの程度のクオリティなのかを知ることができる。CRIが90を超えれば美術館でも使用できる品質といわれ、「Nuada R3 II」はそれを大きく上回る「96+」とかなりのハイスペック。

とはいうものの、「きれいな光です。すごいです」では説得力に欠けるので、実際に「Nuada R3 II」の演色性がどの程度なのかを測定してみた。

下の画像を見て欲しい。どちらも同じ距離から被写体に直接光を当てて撮影したものだ。露出はオート、ホワイトバランスは画面内のグレーのパッチで補正している。

「Nuada R3 II」と演色性の低いライトの違い
Nuada R3 II
演色性の低いライト

両者を比較すると、赤系の色に差が出ていて、そのまま肌の色にも影響が及んでいる感じ。演色性が低いライトは特定の色が抜けたような色彩になるのだが、その写真だけを見ていると気付きにくい点が厄介でもある。

ちなみに「Nuada R3 II」は、色温度が5600Kと3200Kの「2色のLED」が搭載されていて、それらの光をミックスして5600Kから3200Kの色を作り出している。このタイプのライトの場合、単色のLEDで再現される色温度の上限と下限がもっとも演色性が高く、ミックス光になる中間は下がる傾向にあるが、測定してみたところ、どの色温度においても、CRI値はカタログスペック以上の「97」を超える高水準。演色性能で重視される赤(R9)と青(R12)に関しては、赤は「91」から「99」、青はほかの色より少し低めだが、それでも「90」程度と頑張っている。特性的には、3200K時にCRIが「99.2」も出ている上、青の演色性も高い状態だったので、色を重視するときは3200Kで撮影するとよさそうだ。

色温度に関しては精度が高く、本体の設定値とほとんどズレが出ていない。設定値が信じられるということは、多灯撮影の際にすべてのライトの色温度が簡単に揃えられるということ。セッティングの簡略化につながるポイントでもある。

下の画像は「Nuada R3 II」の色温度を「3200K」にセットしてRAW形式で撮影後、写し込んだチャートのグレーを使いWBを補正したものだ。

3200Kで撮影

あとで紹介する「5600K」の画像と比較すると、チャートの青が濃く出ていて、被写体の緑も発色がよい。撮影後にWBが適切に補正できるなら、「3200K」で撮ると色彩が出しやすいだろう。筆者的には、コッテリとした色に仕上げたいときはこちらで撮影したい。画像左上は補正前のオートホワイトバランスで撮影したときの色だ。

次は「5600K」の色温度で撮影後、グレーのチャートでWBを補正した画像だ。

5600Kで撮影

チャートの青と被写体の緑の発色が少し弱い印象。オートホワイトバランスで撮影した色(左上)のように、少し寒色系にすると青系の発色も出てスッキリとした色調になる。ハイキーのような爽やかな色彩はこちらをベースにするとよさそう。また、後処理を行わないなら、WBを「オート」に設定し、オートホワイトバランスが効きやすくて演色性の高い暖色系LEDがミックスされる「5000K」前後で色を探るとよいだろう。

次は、「Nuada R3 II」の照度(明るさ)についてチェックしてみよう。照度とは、簡単にいうと被写体がどのくらい明るくなるかの数値のこと。

「Nuada R3 II」の照度は「1400lux@1m」。これは、1メートル離れた位置から照らした場合、被写体は1400luxの明るさになるという値だ。写真家でもイメージしやすい露出に換算すると、ISO100、F4.0、1/30秒程度で撮影できることになる。

ちなみに、下記の写真は約50cmの距離で斜め前から照射して撮影したもの。このときの露出は、ISO200で絞り値はF4.0、シャッター速度は1/200秒となった。

美しい影が生まれる秘密

LEDライトの特性を測るとき、確認したいのが点灯時のパネル面だ。

「フラットな面」で発光するライトの場合、内部にたくさんの小さなLEDライトが並んでいて、それらを乳白色の板(ディフューザー)で拡散して「ひとつの面」のように光らせている。

広い面で光るため、本来ならソフトな影が生じるはずなのだが、影のエッジがブレたように濁ったり、硬くて濃い影が出るライトも少なくない。それを見極める方法のひとつが、前述した点灯時のパネル面の状態ということ。

点灯しているときにLEDの粒が見えているライトは、光が上手くディフューズできていない可能性が高い。この場合、被写体に直接光を当てたようなハードな陰影が生じやすいし、場合によっては複数の光を照射したような影の重なりでエッジが汚く見えることもある。

対して「Nuada R3 II」の場合、明るさを最大にしてもLEDの光の粒は確認できない。つまり、「ひとつの面」で光を放っている状態にある。光源がひとつなので、被写体に生じる影はひとつ。しかも、影がきれいに出やすい「丸い形状」で、「大きな面」で「均一に光る」ため、エッジがやわらかくぼやけた影になるというわけだ。

LEDライトで意外と多いのが、乳白色のディフューザーを装着しても発光時に「光の粒」が見えるタイプ。この場合、ソフトな陰影で写すには別途ディフューザーが必要。「Nuada R3 II」は発光時に光の粒が見えず、大きな白い面で光を放つため、ディフューザーはなくても大丈夫。この記事で掲載している作例はすべて、「Nuada R3 II」の直接光で撮影している

粒が見えるLED
Nuada R3 II
画面の右半分は「Nuada R3 II」の影。輪郭がソフトで影本体は色が薄く、とろけるように消えていくさまが美しい。左半分は「光の粒」が見えるライトの影。光が上手く拡散できず、ベタっと貼り付いたような色濃い色になり、なおかつエッジに向かって突然に薄くなるような質感

やわらかな影が絶対に必要というわけではないが、濃い影は画面をうるさくするし、影を修整する手間を考えると、きれいにぼけているほうが扱いやすい。

「Nuada R3 II」のソフトな影の秘訣は、LEDの光の粒が見えないくらいに不透明で、非常に厚みのあるディフューザーのおかげと考えたのだが、実はそうではないらしい。どうやら、LEDの並べ方に工夫を凝らしているようだ。

あいまいな表現なのは、「Nuada R3 II」はデュフューザーが外せず、LEDの配置が確認できないため。以下に紹介する発光の仕組みは、担当者に伺った情報になる。

一般的なLEDライトは、「小さなLED」を縦横に並べて「疑似的な平面」として光らせている。対して「Nuada R3 II」の場合、LEDが配置されているのは円盤の「外周部」のみ。その数は272個。色温度5600KのCoolタイプが136個、3200KのWarmタイプが136個搭載され、それらミックスすることで5600Kから3200Kの光を作り出している。

そして、外周部に配置されたLED光を円形のデュフューザーで受けて拡散し、パネル全体が「ひとつの面」のように光る仕組みだ。その結果、ソフトでシンプルな影が生じるという。

「Nuada R3 II」が生み出す影は本当に美しい。ポツンとモノを置くだけでもストーリーが生まれるような、そんな趣がある。ちなみに、「Nuada R3 II」を被写体に近付けると影はぼやけ、遠ざけるとハッキリとした形状になる。小物の撮影では覚えておきたい特性だ

外周部のみにLEDが並ぶ仕組みは、カタログや製品のサイトでもっとアピールするべきではないだろうか。光り方に工夫を凝らし、光や影の質にこだわっていることが分かるので、エントリー層への説得力だけでなく玄人の方々も興味を引くと思う。

LEDライトはなにを基準に選べばよいのか分からないひとも多いだけに、他製品と異なるポイントがあるなら、積極的にアピールしたほうが印象に残る製品になるはず。

とにかく、「Nuada R3 II」の光り方や影の出方はとてもきれいなので、機会があれば実機で確認してもらいたい。

誰でも使えるシンプルな操作性

本体の操作はいたってシンプル。

そもそも、ストロボと異なり「カメラとの通信」は皆無なので、電源を入れて点灯すれば準備は完了だ。

調整できる項目は、明るさと色、そしてリモコン操作時のグループ設定の3項目。もっとも、グループ設定は普段は使わないので、実質2項目だ。

本体の裏にある「BRIGHTNESS」か「COLOR TEMP」ボタンを押すと入力待ちになり、その状態でダイヤルを回せば「明るさ」や「色温度」が変化する。ボタンを押さないと変更できないため、誤操作の心配もない。

本体裏にある操作部だと調整できるのは明るさと色温度だけなので、直感でも扱える。もっとも、本体の裏に回って設定するより、付属のリモコンを使うほうが実用的だろう。ちなみにリモコンはストラップが通せるため、撮影中に身に付けておくことも可能だ。

本体操作パネル
付属のリモコン

付属のリモコンには表示パネルが搭載され、手元でも明るさや色温度の設定値が確認できる。しかも、ひとつのリモコンで40チャンネル/3グループの「Nuada R3 II」(または、「Nuada R4 II」など)がコントロールでき、多灯撮影においては「ストロボ+コマンダー」のような役割も果たす。

ただし、1灯でリモコンを使う分にはよいのだが、多灯撮影では操作性に少し手間を感じた。グループ内の3つのライトを直接指定するボタンがあると便利だし、それぞれの設定値が同時に確認できるとセッティングが詰めやすいと思う。

2台の「Nuada」シリーズで多灯撮影もしてみたが、1台のリモコンで複数のライトを操作するより、それぞれ個別のリモコンで操作したほうが分かりやすくて、セッティングしやすかったのが実感だ。

電源は、ACアダプターだけでなくバッテリーによる駆動にも対応。電源が確保しにくい現場にも持ち出しやすい。バッテリーは付属していないが、汎用性の高い「NP-F」シリーズなので入手しやすいだろう。
また、装着したバッテリーはボタンを押さないと外せない操作性もよく考えられている。筆者所有のLEDライトはスライドで外すタイプが多いのだが、慌ただしく移動するさいに誤って落としてしまうことがあった。その点、「Nuada R3 II」なら現場での移動も安心。

バッテリーは2本一組で使用。「NP-F」シリーズは容量の異なる複数のタイプがあるので、使用環境に合わせて選べばよい。バッテリーの装着はスライドするだけだが、外すときはボタンを押す必要がある

ACアダプターはコンセントと一体型で、コンパクトに持ち運べるタイプになっている。LEDライトの中には、本体はコンパクトでもACアダプターが大きくて重い製品もあるので、現場を移動する写真家はこの点にも着目したい。

また、アダプターからライト本体までのケーブルが4m弱と十分に長く、スタンドの高い位置にライトをセットしても「アダプターが宙に浮く」ことはない。

実はこれ、LEDライトでは意外と盲点で、購入後に気付くことも多い。しかも、購入後に使ってみるまで分からないという、かなり悩ましい問題でもある。

コンパクトなACアダプター。コンセントの端子部分が外せて、突起の小さな形状になる。ケーブルはかなり長く、コンセントの端子にはロック機能が付いているなど、携帯性や使い勝手、安全性も良好

本体で印象的なのは「薄さ」だ。パネル面の厚みはわずか12mm。指1本分程度と考えると分かりやすいだろう。この薄さのおかげで、引きのない狭い場所でもセッティングがしやすい。

また、その薄さにもかかわらず発光面の直径が328mmあり、立体物というよりも薄い円盤という感じ。ちなみに、「約33センチの円盤」は想像以上に大きい。製品の箱を見たときに、思わず「デカっ」と声を漏らしたほど。もしこの大きさで足りないのなら、一回り大きな「Nuada R4 II」もあるのでそちらを選べばいい。

「Nuada R3 II」のサイズ感がイメージできるように実機を手にしたカット。テーブルトップでの小物の撮影や、バストアップ程度のポートレート撮影に使いやすい大きさだ

色温度が変えられるメリット

続いて、「Nuada R3 II」を使った撮影方法について。

光の当て方に関してはストロボと同じだが、アンブレラやトレペなどが不要なのは前述のとおり。電源をオンにしたら、カメラのファインダーなどで光と影の見え方を確認し、明るさや色温度をイメージに合わせて調整すればOK。この辺りの撮りやすさは、定常光を使うメリットだろう。

撮影におけるポイントは、やはり「色温度」が簡単に変更できる点。この機能のおかげで、あらゆる照明の下で被写体本来の色が出せるようになる。

たとえば、電球色の照明の下で撮影する場合。人物取材はこのようなシーンが多いのだが、明るく写すためにストロボを使うと、暖色系の環境光に白いストロボの光(約5400K)がミックスされることになる。
つまり、ストロボ光が当たる部分は白っぽく、それ以外は環境光で黄色味を帯びるという、あまり美しくは見えない上、現場の空気感も台無しな写りだ。

下の作例は、電球色の環境光の中で、左手前から白色の光を当てたミックス光で撮影したものだ。

ミックス光の状態
ホワイトバランスを補正

左はカメラを「オートホワイトバランス」に設定し、右はホワイトバランスを補正して撮影したもの。ホワイトバランスを調整しても、光が当たるボールの左下は青っぽく、右上に伸びる影は環境光の影響を受けた暖色系が残り、ムラのある仕上がりになっている。

解決策として、ストロボに色変換用のフィルターを装着して環境光に近付けたり、ストロボを使わずにISO感度を上げて撮る方法があるが、前者は環境光と同じ色にできるとは限らないし、後者は陰りが払拭できないこともある。

その点、色温度が変えられる「Nuada R3 II」なら撮影は簡単。環境光と色温度を合わせてライトを照らし、カメラでホワイトバランスを調整すればOK。これで、色ムラのないニュートラルな色彩や、現場の空気感を出した色調まで自由自在に表現できる。

電球色の環境光の中で、左手前から色温度を合わせた「Nuada R3 II」の光を当てて撮影してみた。カメラを「オートホワイトバランス」に設定しても暖色系の色が残っていたが、カメラのホワイトバランスを照明の色温度に合わせて撮影することで、色ムラのないフラットな色調で写せるようになる。

ホワイトバランス:オート
ホワイトバランス:3200K

デジタルに強い写真家なら、光(色)なんてレタッチやRAW現像で作り出せばよいと考えるかもしれないが、それは誤り。

たとえば、ミックス光の写真は「色が偏っている部分」だけを「適切な強さ」で補正しなければならず、レタッチしても色ムラが残ってしまう。また、一般的な照明は演色性が低く足りない色の成分があるため、レタッチで元の色を復元するのはなかなか難しい。

つまり、よい色を得たければ、やるべきはレタッチではなくて「きれいな光で撮る」ということ。演色性の高い光で撮った写真だからこそ、レタッチやRAW現像の素材になり得るという点を覚えておいてもらいたい。

これからの写真家が必要とするもの

最近は写真と動画の境界があいまいになっていて、たとえ写真家でも動画撮影が必要な場面も少なくない。プロの写真家なら「ついでに動画も」とお願いされることもあるし、「動画も撮れる写真家」であることが仕事に結びつく可能性だってある。

そう考えると、しっかりとした定常光のLEDライトは所有しておきたい機材といえるだろう。

しかしながら、写真家がLEDライトを購入する場合、満足する製品を見付けるのは意外と難しい。

照明が必要ということは、撮影を理解していて、写真や色を見る目が肥えているという証しでもある。それゆえに、イメージする色が出ないと納得できないし、些細な色の変化に違和感を覚えてしまうためだ。

結局のところ、最初から確実な製品を購入することが、余計な出費や無益な時間を省く近道といえる。

もし、照明を使う撮影がはじめてなら、ストロボよりもLEDライトをおススメしたい。

定常光のLEDライトは、光と影の見え方を目で追いながら、イメージした陰影が作り出せる。ライティングの知識がなくても、「感覚的」にきれいな光を探して写真が撮れる点は大いなる魅力だろう。

ストロボユーザーがLEDライトを導入するのもアリだ。多くの面で撮影がラクになったと実感できるはず。少なくとも、筆者はそう感じているし、照明を使った撮影の半分くらいはLEDライトを使用している。

ストロボほどの絶対的な光量は望めない代わりに、環境光と組み合わせて現場の空気感を出したり、ライティングしながらスローシャッターで撮影できたりと、ストロボとは異なる写真が撮れる。その違いを楽しむのも面白いし、新たな作風を生み出す源になるかもしれない。

真っ暗な中、「Nuada R3 II」でぼんやりとライティングして、0.6秒のスローシャッターで撮影。被写体に扇風機の風を当てることでブレを作り、動きを表現してみた。それにしても、「Nuada R3 II」の光で撮る写真は、艶めかしくて美しいと思う

ただし、LEDライトはストロボのような「エッジの効いた影」が作りにくい点も把握しておきたい。表現におけるストロボとの大きな違いといえるし、これを理解しておかないと「撮りたい写真が撮れない」というジレンマに陥る可能性がある。

下の撮影はどちらも1mの距離からライティングして撮影。ストロボはディフューザーを使わず、直接光を当てた状態だ。

Nuada R3 II
ストロボ撮影

「Nuada R3 II」は離れるほど影のエッジが硬くなるとはいえ、ストロボ光ほどシャープには表現できない。しかしながら、影の出方以外はストロボ光と区別はつかないので、表現に合わせて好きなほうを使えばいい。ただし、ストロボに比べて光量が少なく、同じ絞り値だとシャッター速度は遅くなるのは覚えておいても損はないだろう。

「写真家目線」で「Nuada R3 II」をいろいろとチェックしてみたけれど、これはよいものだと思う。照明を使った撮影がすごくラクになるし、その気持ちのよい光と影は「写真を撮ってみようかな」とやる気にさせてくれる。

1灯あるだけでも効果は絶大だし、レフ版で陰影をコントロールしたり、2灯目を導入することでさらなる表現が可能になるだろう。

個人的な欲望としては、「Nuada R3 II」×2台と、トップライトやポートレート用に「Nuada R4 II」があると幸せになれそう。そんな考えが浮かぶくらいに気に入ってしまった。

最後に、LEDライトの撮り方について汎用的なアドバイスを。

ポイントは「色温度」の選び方で、基本的には「最高」か「最低」のどちらかにすると演色性の高い状態でライティングできる。「Nuada R3 II」の場合なら、「3200K」時の演色性が高かったので、今回の撮影は多くの作例で「3200K」の光を使用。

どちらの演色性が高いか分からないライトの場合は、最高色温度と最低色温度で撮影してRAW現像などで色温度を補正し、「白(ハイライト)」の見え方を比較してみるといい。白は微妙な色成分がよく分かるため、「きれいに見える白」を選ぶとイメージする色彩に仕上げやすい。

明るさに関しては、筆者は「最大」を基準に使うことが多い。これは、明るさを下げると演色性が変化するライトもあるためだが、色温度ほどは気にしていない。多灯撮影時にメインのライトの明るさを最大にして、ほかのライトはその明るさに合わせるように調整する程度の意識だ。

長々と語ってしまったけれど、LEDライトの楽しさに気付いてもらえると嬉しい。
みなさんも、これを機会に「写真+LEDライト」の世界に足を踏み入れてみてください!

制作協力:SAEDA

桐生彩希