特別企画

600mm F4+カメラボディを背負って撮影ポイントへ

ハクバ「GW-PRO REDレンズバックパック02」レビュー

「GW-PRO REDレンズバックパック02」は、ハクバ写真産業株式会社が展開するカメラバッグブランド「GW-PRO RED」のひとつ。各社の超望遠600mm F4にカメラボディを装着したままで収納できる「GW-PRO REDレンズバックパック」をリニューアルしたモデルだ。

そもそも、600mm F4はその価格と大きさから、カメラユーザーでもあまり馴染みのない製品だろう。だが一方で、スポーツシーンや航空機、野生生物といった撮影ジャンルにおいて必要な画角と明るさを備え、時に常用する場合もある。人によってはカメラボディに付けっぱなしの、言わば「標準レンズ」になることがあるのだ。

600mm F4をカメラボディに付けたままの状態で移動する……これをコンセプトに生まれたのが前作の「GW-PRO REDレンズバックパック」。さらなる市場調査を経て、リニューアルを果たしたのが「GW-PRO REDレンズバックパック02」である。前モデルとの大きな違いは、テレコンバーターをつけたまま600mm F4+カメラボディを収納できるようになったこと。

今回は、この「GW-PRO REDレンズバックパック02」に600mm F4を入れ、撮影現場へと持ち出してみたので、その使用感をお伝えする。

GW-PRO REDレンズバックパック02。カラーは「カモ」。他に「ブラック」もラインナップ。

重い機材を持ち運びしやすい設計

その名が示すように、「GW-PRO REDレンズバックパック02」はバックパックタイプの製品なのだが、交換レンズの中でも重い部類に入る600mm F4を中に入れつつも、背負っている最中はその重さを、さほど感じさせない。

とにかく腰骨から肩直前での収まりが良いのだ。肩に掛けるショルダーハーネスと、腰で支えるヒップハーネスの形状や、それらの設置位置のバランスが重量感の低減に功しているからだろうか。さらに背中と密着する箇所は通気性を確保しつつ、それでいてフィット感もしっかりある。こうした形状面での工夫にも関心させられた。

ゆえに、600mm F4を背負うことがそれほど苦にならない。背負ったまま小走りすると、余計にそれが判る。「お、これは走れる」と。

背中面はフィット感を得ながらも通気性を考慮した作りで、肩に掛けるショルダーハーネスと、腰骨付近で巻くヒップハーネスは、非着用時に邪魔にならないよう、無駄な厚みが省かれている。
左のショルダーハーネスには、キーホルダーに束ねた鍵、コンパスなどの小物が入る。背負っている最中に下ろすことなく取り出すものを入れておくのに便利である。
三脚は2ヶ所に取り付けられる。この写真はバックパック正面に取り付けたところ。
サイドへの取り付け例。
向かって左側に畳んだ際に全長45cmほどの三脚を付けて、メイン室を開けたところ。均等には開かないが、それでも自立するだけの安定性がある。

なおこのバックパックは、600mm F4+カメラボディを収納した状態で安定して自立する。前面を大きく開いた状態や、その状態で三脚を取り付けている場合でも自立する。野外での撮影が多い方なら、自立することの利便性はお判りだろう。取り出しやすくなるのはもちろん、バックパック表面への水・汚れなどの付着も避けられる。

独自の設計でサブ機材も一緒に持ち出せる

この手の600mm F4向けのバックパックは他社のラインナップにもみられる。しかしこの製品ならではの思想が存在する。それは「徹底的な空きスペースの有効利用」だ。

600mm F4とカメラボディをバックパックに収納する際、それ以外のレンズや予備のカメラボディをどうやって持ち運ぶか。一般的な600mm F4用のバックパックの場合、600mm F4+カメラボディを収納すると、それ以外の機材を収めるためのスペースがない。そうなると別のショルダーバッグを用意することになるが、それだとさすがに機動性が落ちる。

「GW-PRO REDレンズバックパック02」には、600mm F4とカメラボディの間に生じる左右の隙間にサイドポケットが設けられている。そこに追加の機材を入れられるのだ(前モデルから続く特徴)。

試してみると向かって右のサイドポケットに70-200mm F2.8を入れ、左のサイドポケットにバッテリーグリップを付けたカメラボディが入った。左右の重量バランスも上手く取れている。

そのサイドポケットの扉にはアクセサリー類が格納できるポケットが複数備えられている。ここにケースに入れた各種メモリーカード、ケーブルレリーズ、タブレットなどが収納できた。

向かって右のサイドポケットに中望遠の70-200mmを収納。サイドポケットの扉にはバッテリー充電器を差し込んでいる。
左サイドポケットにバッテリーグリップ付きのカメラボディを入れてみた。扉ポケットにはケーブルレリーズと8インチタブレットが入っている。

もしサイドポケットをバックパックの外側に張り出して配置する設計だと、これほどの安定感はないだろう。600mm F4+カメラボディのくびれた部分のスペースを活かすことで、スリムな外観と自立可能な安定感が生じているようだ。

特殊な表面素材で機材を守る

600mm F4用のバックパックには、レンズを「持ち運ぶ」以外に「保護する」という役目もある。

大きな前玉側が収まる底部には、防水性能を持つターポリン素材が使われている。クッション性がありつつもある程度の硬さが底部を形作っているため、前述した通りバッグは安定して自立する。

接地する底面と、メイン室扉の底部の表面にはターポリン素材が使われ、さらなる防水・防汚の効果が高められている。硬質材ではないものの、底の平面性がしっかり保たれる。

そして、バックパック表面を触ると感じられる頼もしいゴワゴワ感。このゴワゴワは、「GW-PRO RED」シリーズが採用する「Xpac X50」によるものだ。

「Xpac X50」とは、優れた耐摩耗性を持ち、耐久撥水加工が施されたミルスペックの「500Dコーデュラナイロン」、引き裂き強度と斜め方向への延びを抑制する「X-PLY」、防水性と低伸長性を持つ「ポリエステルフィルム」を重ね合わせた3層構造の高強度耐水生地。ヨットの帆材にも使われているという。

Xpac X50の構造。中間に設けられたX-PLYが耐久性を高めている(提供:ハクバ写真産業株式会社)

本製品ではこの「X-pac X50」を表面の約半分に使用している。これまで木の枝や有刺鉄線などでバックパックを傷をつけてきた身には、安心できる仕様だ。

カラーリングはブラックとカモフラージュが用意される。試用にはこの写真のカモフラージュを使ったが、表面素材には耐摩耗性とDWR耐久撥水加工が備わる500Dコーデュラナイロンが採用されている。迷彩柄はワールドスタンダードな「MULTICAM」だ。
背中側には深さ35cmほどのポケットがある。付属のレインコートを差して撮影したが、タオルや下着類の着替えなども余裕で入る。
付属の専用レインカバーを装着したところ。1,500mmもの耐水圧があるとされる。一般的な雨傘が持つ耐水圧は約500mm。
メイン室の扉の内側にも小物ポケット(メッシュ)と収納ポケットがある。
バックパック上部にあるポケット。ジッパーが付いており、フィルター類などを入れるのにちょうどいいサイズである。
テレコンバーターも装着した状態で収納できるとあって、ミラーレスカメラの場合は、高さに余裕が生まれる。マウント周辺を固定するベルトも装備。利用することで安定度が高まる。
本体上部のDリングに取り付けられた持ち手用のストラップ。背負わずに手で持ち運ぶ際に掴む。長さ調節が可能で、ウレタン状のクッションが入っている。

良い機材には頼もしいバッグを

理にかなったレイアウト、洗練された表面素材、それらの佇まいからくる頼もしさに目が行くが、「扉を開ける」「小物を入れる」といった、基本操作についても気遣いがみられる。

たとえば、各所にあるジッパーのプルタブには手袋装着時でも難なく触れられる樹脂と紐で作られた専用リングが付いている。ハーネスやストラップ類を固定するバックルも厳選されたという。

暗い場所でも視認性を高めるため内装はライトグレー。さらに内部のポケットのジッパーラインはアクセントのある赤色だ。

メインおよびサイドの扉のプルダブは専用設計。バックルは金属製だ。

大きく重い機材を使う撮影は、どうしても体力が奪われてしまう。そんなときにこそ「GW-PRO REDレンズバックパック02」のような現場主義のバッグに頼ることで、少しでも撮影のための集中力を保てるようになる。「助力を貰う」という言葉がピタリと合うほどのアシストが得られるだろう。

600mm F4をすでに持たれる方、また入手を考えている方には、そのレンズの持ち運びと保護を「GW-PRO REDレンズバックパック02」に託してみてはいかがだろうか。必ずや、作り手の熟思に包まれる心地良さが判るはずだ。

協力:ハクバ写真産業株式会社

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタント、出版社のカメラマンを経てフリーランスに。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。「今すぐ使えるかんたん 飛行機撮影ハンドブック」を技術評論社より刊行中。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。