特別企画
【2020梅雨版】機材管理、保管時のポイントとは?(ドライボックス編)
除湿剤のほか防カビ剤を併用するなど、管理のポイントを掘り下げ
2020年7月3日 12:00
新型コロナウィルスの感染拡大防止に向けて在宅で過ごす時間が増えましたが、これを機会に機材のメンテナンスや整理をした、という方も多いのではないでしょうか。一部明けた地域もありますが、国内は梅雨を迎えています。
ところで皆さまは、機材管理はどのようにされているでしょうか。防湿庫を設置して管理しているという人、除湿剤を入れた密閉ボックスやカメラバッグに収納しているという人、普段から使用しているから、そうした管理はしていないという人など、その管理方法は様々だと思います。
様々な管理方法がありますが、適切な管理湿度は、実際のところどれくらいなのでしょうか。高温多湿となるこれからの時期に向けて、カビの発生を防ぎ、機材を適切に管理する方法を各メーカーに聞いていきました。
回答には国内で防湿庫およびドライボックス製品を取り扱っているメーカーにそれぞれ協力してもらいました。ドライボックス編の協力メーカーは以下のとおりです。(編集部)
・東洋リビング株式会社
1974年に設立された防湿庫製品を専業とするメーカー。設立同年に電子ドライユニット(日本製)を開発し、自動デシケーターとして発売。1982年には形状記憶合金実用化第一号の全自動防湿庫「オートドライ」を発売。また、業界で初めて防湿庫に光触媒を採用(2007年)したり、LED照明を搭載(2016年)するなど常に開発を行い防湿庫を進化させながら製造・販売を行っている。
・ハクバ写真産業株式会社
1955年に創立(創立時の社名は三洋写真商会)され、写真や映像関連製品を手がけている。現在の社名になったのは1976年のこと。防湿庫関連製品では、防湿庫のほか、ドライボックスや除湿剤などの製品を販売している。
ドライボックスの特徴
――ドライボックスといえば、“密閉パッキンつきの容器”というイメージです。市販のパッキンつきのボックスと、専用品の違いとはどのような点にあるのでしょうか。
東洋リビング :しっかりとしたパッキンがついた密閉できる容器であれば、市販品の使用でも問題はありません。弊社のモバイルドライをご使用いただく際は、しっかりとしたパッキン付きの密閉容器でご使用ください。
ハクバ :乾燥剤ケースが蓋に付いていることが市販品と専用品の違いです。弊社のドライボックスは本体にイラストで用途を表している点も、市販品との違いとなっています。
――ドライボックス運用のコツを教えてください。
ハクバ :ポイントは大きく3つあります。まず適切な除湿剤を入れて密封し、頻繁な開閉をしないこと。2つめは除湿剤がどれくらい吸水しているのかを確認し、効力がなくなったら交換すること。3つめは、防カビ剤を併用するとより効果的にカビ対策ができることです。
――防カビ剤の併用も必要なのですか?
東洋リビング :ドライボックスによる管理ではなく、防湿庫を用いた管理となりますが、弊社が独自開発した電子ドライユニット(日本製)は光触媒機構を搭載しているため、防カビ剤は不要です。防湿庫は弊社が1974年に開発した特許製品ですが、その心臓部である電子ドライユニットは国内自社工場で製造しており、数年ごとにバージョンアップしております。「オートクリーンドライ」シリーズは庫内を最適な湿度でクリーンな状態に保つことができますので、防カビ剤を併用する必要はございません。
ハクバ :レンズ表面に生えるカビは低湿度でも繁殖する種類のものもあるので、除湿だけでは完全な対策にならない場合があります。カビそのものの発生を抑える防カビ剤の併用は、カビ対策として効果的だといえます。
――ハクバさんは専用の防カビ剤をラインアップしていますね。これは衣類用とは違うものなのでしょうか?
ハクバ :防湿剤として売られているものの中には同じ素材のものもありますが、防虫効果のある薬品を加えているものがあります。また、吸湿すると”ゼリー状”になるものは経年で液漏れを起こすと、サビの原因となるため、カメラの保管には不向きなのです。
[2020年7月7日修正]「吸湿すると”ゼリー状”になるものは経年で液漏れを起こす恐れがあるのと、使われている「塩化カルシウム」からはIC関連部品に影響を及ぼす恐れのある微量の塩素ガスが検出される」としていた箇所に関しまして、内容に誤りがあったとの連絡を受けました(「塩化カルシウム」からは通常の環境では塩素ガスは発生しないため)。これにより、該当箇所を修正しました。
――除湿剤というと一般的にはシリカゲルがあります。
ハクバ :除湿剤はシリカゲルの他に酸化カルシウム(石灰)を使用してるものがあります。また、除湿剤は使用期限に注意する必要がありますが、シリカゲルは取り込んだ水分を蒸発させることにより再生が可能です。石灰を主成分とする乾燥剤の場合は、石灰そのものが水分に接触すると発熱する(直接水がかかると火災の原因になる恐れがある)ため、水が直接かからないように、また口に入れないよう注意する必要があります。
東洋リビング :弊社ではコンセントに差すだけで“繰り返し使える乾燥剤”であるモバイルドライを販売しています。この製品の最大のポイントは、吸湿力が低下しても電力供給することで吸湿力が再生し、何度でも使えるという点ですが、海外の電圧にも対応しているため、密閉容器と併用すれば、海外での撮影や出張先でも機材を安全に防湿保管できます。
――ドライボックスを用いた管理で「これはやってはいけない」という使い方はありますか?
東洋リビング :モバイルドライを用いる場合は、パッキンがしっかりとした密閉容器内で使用しないと、ドライボックスの意味を成しません。また、ボックス内の湿度計をこまめにチェクして湿度が高くなったままの状態で放置しないように気をつけてください。
ハクバ :蓋を開けっ放しにすることと水気のあるものを入れること、こうした使いかたは避けるようにしてください。
――湿度計はどのようなものがいいのでしょうか。
ハクバ :アナログ(針)のタイプは直感的な見やすさがポイントです。また、金属の収縮を利用するため湿度の急激な変化には対応していない、という点も考慮する必要があります。一方で、デジタル式は電気的に計測するためアナログタイプに比べて実際の湿度を表すまでの待ち時間を必要とせず、数字で読むことができるところがポイントです。
まとめ
防湿庫による機材管理は自動で湿度を調節してくれるため、手間がかからないというメリットがあるが、どうしても占有面積が大きく、製品自体もそれなりの金額を投じなければならないという側面がある。こうした費用や設置面での理由のほか、防湿庫による管理を必要とするほどたくさんの機材は不要だ、という方もおられることだろう。そうした場合に、ドライボックスは有望な選択肢をもたらしてくれる。
カビ発生の原因のひとつとして、本記事の防湿庫編で各メーカーはホコリなどの存在をあげていたが、どうしても生活空間では、老廃物などの有機物を排除しきることはできない。さらに高温多湿の住環境では、ふと気を許すとカビの発生を招く恐れがある。そうした点からも、機材をホコリから守ってくれる密閉式のボックスの有用性は高いといえるだろう。
今回のメーカーインタビューでは、防カビ剤の併用などの有用性も高いという回答が得られた。また、株式会社足柄製作所のように、フィルムの劣化対策剤など用途別に特化した保管剤を販売している企業もある(記事はこちら:【CP+2019】意外な企業から登場したカメラ・レンズの保管剤)。すでに防湿庫を導入しているユーザーにとっても、ドライボックスの併用は収納物に応じた管理という点でメリットはあるのではないだろうか。
機材管理をあらためて考えていく際に、参考材料のひとつにしてもらえたら幸いだ。