特別企画

旅写真レビュー|タムロン「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD」

旅の光景をあますことなく捉える、22.2倍の超望遠高倍率ズーム

株式会社タムロンから世界初、22.2倍の超望遠高倍率ズームレンズ「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD」が発売された。本レンズを持って沖縄を旅してきたので、実際の使用感やレンズ性能、注目のポイントなどをご紹介したいと思う。

デザイン

まずは外観を見てみよう。近年のタムロンレンズにはデザインに一貫性があり、とても高級感がある。このレンズにも、かつての高倍率ズームレンズにあった安っぽさが見られない。

上級ラインのSPシリーズからデザインを継承している部分が多く、例えばマウント部分に光るブランドリングもそのひとつ。スイッチ類のデザインも統一されており、焦点距離のフォントやレンズ名のフォントも控えめで好印象だ。

驚異の22.2倍ズーム

特徴は、なんといってもデジタル一眼レフカメラ用として世界初の22.2倍ズームを実現したこと。35mm判換算で27〜600mm相当(ニコン用の場合)の画角をカバーできる。

広角端
望遠端

タムロンからは今までも18.8倍ズームの「16-300mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO」や、15倍ズームの「18-270mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD」といった高倍率ズームレンズが発売されているが、本レンズはその上をいく22.2倍ズームを実現。旅行など荷物の限られる条件でも活躍すること間違いなしだ。

広角側で夕日に染まる空を撮影した。歪曲収差も気にならずイメージ通り広く撮影できた。F8まで絞れば周辺までしっかりと光量を得られている。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/30秒・F8・+0.7EV) / ISO 140 / 18mm(27mm相当)
放し飼いにされていたクジャクを望遠端600mm相当で。珍しく羽を広げてくれた。毛の質感までしっかりと表現できている。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/500秒・F6.3・±0EV) / ISO 3200 / 400mm(600mm相当)

レンズの鏡筒は3段繰り出し式鏡筒を採用しているため、望遠端600mm相当の画角をカバーする超高倍率ズームレンズとしてはコンパクト。一般的なダブルズームキットに含まれる望遠ズームレンズより、一回り大きいくらいのサイズ感だ。

今回はニコンD7500に装着して試用した。持ち運び時などは少しフロントヘビーになるものの、撮影時はバランスもよく使い勝手も良い印象だ。終日肩からぶら下げても疲れることはなかったので、旅先などでもストレスなく撮影できるはずだ。

操作感

ズームリングは適度な重さがあり、しっかりと使いたい焦点距離で止めることができる。鏡筒のロック機構も備えているが、ズームのカム機構がしっかりしているため、移動中に鏡筒のロックを忘れていても、かってに伸びてストレスになることはなかった。

近接域撮影時にMFを使って合わせてみたが、フォーカスリングもスムーズに動かせ、思い通りのピント表現を試みることができる。ただし、いわゆるフルタイムマニュアルには対応していないので、AF後にフォーカスリングで微調整することはできない。フォーカスリングを使用する場合は、AF/MF切替スイッチを使用することになる。

AF

AF駆動にはHLD(High/Low torque-modulated Drive)を採用。静音性に優れておりAF駆動音は気にならない。近接から遠景まで高速に合焦するため、風景から飛行機などの動き物まで、ストレスなくピント合わせが行えた。一緒に使用したD7500との相性もともてよい印象だ。

瀬長島から那覇空港で離発着訓練をしていた航空機を撮影した。AFも精度が高く、高速なためストレスなく撮影することができた。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/1,600秒・F6.3・+0.7EV) / ISO 320 / 400mm(600mm相当)

また、インナーフォーカスのため、フィルター枠が回転しないのでPLフィルターを使うのも容易だった。

C-PLフィルターを使い、沖縄らしい美しい海を撮影した。歪曲収差も気にならず解像感も十分だ。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/125秒・F9・+0.7EV) / ISO 100 / 18mm(27mm相当)

手ブレ補正機構VC

手ブレ補正機構VCの補正段数は2.5段。数値以上に効きが強い印象で、屋内から夕景、夜のスナップまで100%手持ち撮影でカバーすることができた。望遠側が充実したレンズなので、手ブレ補正が強力なのはうれしい限り。用途によっては三脚すら省略できるので、荷物を減らしたい旅行ではありがたいことだろう。

225mm相当の画角で素敵な街灯を撮影した。手持ちにもかかわらず1/20秒でしっかりと止めることができた。街灯のハイライトの部分も収差など気にならない。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/20秒・F7・+1.3EV) / ISO 1600 / 170mm(255mm相当)

画質

高倍率ズームレンズとは思えないほどしっかりした描写力だ。近接域から遠景まで極めて高い解像感を実現しており、これ1本で十分だと思うシーンが多かった。

歪曲収差についても、水平線や建物を撮影してもまっすぐに描写されるため、気になることはほとんどない。

オシャレなCafeメシを撮影。少し俯瞰目で撮影したが、歪みも気にならない。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/200秒・F5・+0.7EV) / ISO 100 / 35mm(52mm相当)

高倍率ズームレンズとしては色収差も良好に補正されており、ハイライト部分の表現、特に雲や飛行機の機体などを見ても、不自然な色ズレが生じることはなかった。

南国らしい雲とボート、島のバランスがよかったので50mm相当の画角で撮影した。シャープネスも高く、ボートのディテールまでしっかり描写している。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/400秒・F8・+0.7EV) / ISO 100 / 35mm(52mm相当)

最短撮影距離

最短撮影距離はズーム全域で0.45m(ファインダー撮影時)、最大撮影倍率は1:2.9。この手のレンズとしてはかなり被写体に寄れる。昆虫や花のシベなども撮影してみたが、十分な表現力でディテールまでしっかりと写っている。

望遠端、最短撮影距離で小ぶりなハイビスカスを撮影。MFでピントをシベの部分に合わせた。高倍率ズームレンズとしては、かなり大きく写っているのがわかる。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/640秒・F11・+0.7EV) / ISO 500 / 400mm(600mm相当)

近接撮影能力の高さと600mm相当の望遠撮影により、ボケ表現が楽しめるのもうれしい点だ。実写画像を見ていただくと分かると思うが、ボケは高倍率ズームレンズとしては柔らかく前ボケ後ボケ共に自然な印象だ。

日の当たっていた葉が美しかったので撮影。202mm相当の画角で前ボケを活かして撮影している。前ボケも自然でとても美しい。ピント位置の葉は葉脈までしっかり描写している。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/500秒・F5.6・+0.3EV) / ISO 100 / 135mm(202mm相当)

まとめ

今回、梅雨の明けた沖縄を旅してみたが、18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLDは期待にしっかりと答えてくれた。

広角で風景を、望遠で飛行機を、近接撮影で食事をと、旅行中めまぐるしく変わるシーンや被写体にしっかりとついていく。特に望遠側の選択肢が強化されたことで、レンズ1本でここまで撮影のバリエーションが増えることに感心した。

これから夏の旅行シーズンに入るので、とにかく1本で多くの被写体をカバーしたいという欲張りなユーザーにオススメのレンズだ。

屋根の上のシーサーを撮影。瞬時に思い通りの画角で撮影できるのは超高倍率ズームレンズの魅力だ。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/640秒・F8・+0.3EV) / ISO 800 / 400mm(600mm相当)

広角端、絞り開放で道と花を撮影した。広角側のボケはF3.5のため少し硬めではあるが、スナップには使い易いボケ感といえるだろう。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/320秒・F5・+0.7EV) / ISO 100 / 18mm(27mm相当)

お昼に食べた三枚肉そば。適切な画角で収めることができた。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/80秒・F5・+0.3EV) / ISO 280 / 46mm(69mm相当)

ピントを合わせたパラセーリングがとても鮮やか。望遠端でも水平線が大きく歪んでないのもポイント。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/640秒・F6.3・+0.7EV) / ISO 100 / 400mm(600mm相当)

アメリカンビレッジの建物群の夜景を撮影。広角端であれば1/6秒でも手ブレ補正が効いてくれるので手持ち撮影ができた。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/6秒・F5.6・±0EV) / ISO 800 / 18mm(27mm相当)

枝に止まっていたトンボを撮影。近接であればボケも大きくなり被写体を浮き立たせることができる。トンボの羽のディテールまでしっかり写っている。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/640秒・F8・+0.7EV) / ISO 500 / 400mm(600mm相当)

残波岬沖を航行する大型船舶を撮影。600mm相当の画角があれば迫力のある写真を撮影できる。また、逆光性能も高く、コントラストも高い。
D7500 / 18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD / 絞り優先AE(1/500秒・F8・+1.3EV) / ISO 320 / 270mm(405mm相当)

制作協力:株式会社タムロン

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。