新製品レビュー
キヤノンEOS 80D(実写編)
高い描写性能と優れたコストパフォーマンス
2016年5月16日 11:00
キヤノンの中級機として堅実ともいえる進化を遂げた「EOS 80D」は、その基本性能の高さがいちばんの魅力だといえる。約2,420万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーを搭載し、視野率約100%の光学ファインダーと、デュアルピクセルCMOS AFを採用したライブビューのいずれを使用してもレスポンスの高いAF撮影が可能だ。
前回の外観・機能編ではおもに外観や新機能について検証を行った。そこで今回はEOS 80Dで捉えた画像の画質を検証していくことにしよう。
遠景描写をチェック
EOS 80Dにキットレンズとして設定されているEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMを組み合わせて、ワイド端の18mmで撮影したものだ。ダムのコンクリートや手摺、山の斜面の木々や手前の下生えもきちんと描写されている。PCの画面にフィット表示させると2,420万画素の高い精細感も伝わってくる。
感度
画像処理エンジンはEOS 70DのDIGIC 5+に代わり、新たにDIGIC 6が採用された。これにより高感度撮影時のノイズ処理のクオリティが向上し、これまで以上に低ノイズな画像を得ることができるようになった。通常の感度設定域はISO100~16000(EOS 70DはISO100~12800)、拡張ISO感度はEOS 70Dと同じISO25600までだ。
常用感度のうちISO100~12800までを各1段ごとにと、拡張感度のISO25600で撮影した画像を比較する。「高感度撮影時のノイズ低減」はデフォルトの「標準」で撮影した。
ISO100~ISO800まではノイズもディテールも申し分ないほど良い画質だ。ISO1600を超えると、ノイズは低減処理によって目立たないが若干ディテールが緩くなり、その傾向はISO3200~12800と感度が上がるにつれ強くなる。ただしこれは画像を等倍に拡大しての判定であって、PC画面のサイズにフィットする程度の拡大率ではその差はほとんどわからない。ISO12800であれども低照度のなかでの撮影であれば積極的に使用したいと思えるレベルだ。
拡張域のISO25600になるとさすがに暗部などにノイズがみられディテールも緩さが目立つようになるが、これもまた決して使用不可なレベルの画像ではない。
作品集
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMのワイド端18mmで広角スナップ。自転車のフレームや後輪のスプロケットなど硬質な金属のエッジがクリアに描写されている。軽快なAFレスポンスはスナップ撮影でも気持ちよく撮影を行うことができる。
晴天の強い光の下での撮影。クルマに反射する太陽の光が直接レンズに飛び込んでくるがAFは迷うこともなく、さらにハイライト周辺の画像の滲みも少ない。黄色い車体が鮮やかに発色しながら白飛びにはならない絶妙な露出バランスとなっている。これらは7,560画素 RGB+IR測光センサーによる色検知と新EOSシーン解析システムによる最適化がなされた結果と思われる。
真っ青な青空と桜。プラス露出補正だけでは補いにくい桜の花の明るさだが、新EOSシーン解析システムにより花の明るさと青い空の色のバランスをうまく取ることができ、とても抜けの良い写真とすることができた。
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMの中ほどの焦点距離71mmにて絞りをF8まで絞って撮影。高倍率ズームレンズながら画面の全面に広がる八重桜の花と枝を十分に解像する。
屋外での人物ポートレート撮影。晴天時の日陰なので光の色温度が高くなり青っぽくなりがちだが、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)と新EOSシーン解析システムによりとてもきれいな肌色として表現されている。直射日光が射しているいる左手やスカートは露出オーバーになってはいるが、極端な白飛びにはならないように抑えられているようだ。(モデル:夏弥)
トンネル内と外という極端な明るさの差があるシーンだが、シャドウ部からハイライトまで実に自然な階調として表現されている。人が見たイメージにとても近い仕上がりだ。
限られた照明のなかでのジャズライブ撮影。一般客がいるなかでは撮影位置もあまり自由には動けないため、ステージから離れた位置からの望遠撮影が必須となる。それに伴い手ぶれや被写体ぶれがより目立つため、予防としてシャッタースピードを速く設定する必要がある。ISO感度を上げるということは高感度ノイズの発生にもつながるが、しかしEOS 80Dの高感度撮影は非常にノイズが少なくて済むので、安心して高感度撮影ができた。(テナーサックス:右近茂)
ミュージシャンのなかでもドラムは動きが大きく遅いシャッタースピードでは人物がぶれてしまうパートだ。そこで感度をISO6400に設定し、絞りをレンズの開放であるF2.8にすることでシャッタースピードを1/1,250秒まで速めることができた。実際にはもう少し遅くても撮影可能だが、ノイズの発生を恐れずに高速シャッターを選択できるということは表現の幅を広げることにつながる(ドラム:木村由紀夫)
まとめ
キヤノンのデジタル一眼レフカメラの歴史は、この二桁番号の中級機シリーズとともにあるといっても過言ではない。デジタル一眼レフ草創期の2003年に現在のEOS二桁機の初代となるEOS 10Dを発売後、着実に代を重ね8世代目となるEOS 80Dが登場した。
その間に解像度は630万画素から2,000万画素を超えるまでとなり、AFシステムもより速くより正確にピントを合わせることが可能となった。今回レビューしたEOS 80Dは、ほんの少し前であれば最高級機に搭載されていたレベルの性能を持ったカメラである。中級機というカテゴリーはカメラメーカーとユーザーの双方にとって熟成の樽として、今後もデジタル一眼レフの中核に位置する役割を担うことだろう。
発売からひと月半ほど経った現時点において、量販店での実勢価格はEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMと組み合わせたレンズキットで税込17万円前後。これだけの能力がこの金額で購入できることを考えると、非常にコストパフォーマンスに長けたカメラであると言える。