新製品レビュー
FUJIFILM X-Pro2(外観・機能編)
待望のモデルチェンジ。カメラ好きに嬉しい多数のギミック
Reported by 大浦タケシ(2016/2/2 09:17)
富士フイルムからXシリーズが登場して早5年。その間の同シリーズの発展は目覚ましく、特に色乗りがよく鮮鋭度の高い絵づくりから愛用するプロやアマチュアは少なくない。そのXシリーズのなかでもレンズ交換式の初号モデルであり、シリーズのトップエンドでもある「X-Pro1」がモデルチェンジを果たした。
新しい「FUJIFILM X-Pro2」の基本スタイルはX-Pro1から変更がないものの、各デバイスは徹底した見直しが図られている。今回は「外観・機能編」として、その概要を紹介していきたい。
なお、X-Pro2の発売は3月上旬、掲載時点での実勢価格はボディ単体が税込21万5,450円だ。
X-Pro1のイメージを継承した外観
まずは外観を見ていこう。ボディシェイプは基本的に先代X-Pro1から大きくは変わらない。大柄なボディは好き嫌いの分かれるところであるが、ホールディング性を考えると悪くないといえる。
特にカメラ正面にあるグリップの張り出しは先代より少し大きくなり、ホールド性が向上している。操作部材などの形状やレイアウトなどを細かく見ていくと、カメラ前面部のAF補助光ランプは円形から四角形になり、マイクの穴はカメラ上部に移動した。グリップ上部のフロントコマンドダイヤルは新しく加わったものである。これについては後ほど詳細を記す。
カメラ上部に関しては、操作部材のレイアウトに変更は無いが、カメラレンズの断面図を象ったメーカーロゴが無くなったのはちょっと寂しく感じられる部分だ。
カメラ背面については大きく手が入る。まず液晶モニターがボディの左端に移動し、X-Pro1では液晶モニター左側に並んでいたドライブ/AE/AF(ゴミ箱と兼用)の各ボタンは廃止された。
ドライブモードボタンはセレクター(十字キー)の上ボタンと兼用で、ゴミ箱ボタンは独立してセレクターと液晶モニターの間に設置される。また、兼用であったAF-LとAE-Lボタンはそれぞれ独立したものとする。
注目は新たに搭載されたフォーカスレバーだ。いわゆる小型のジョイスティックで、その名のとおりAF測距点の選択用である。これの操作感についても後ほど記述したい。
キーデバイスを一新
肝心のキーデバイスについては、まずイメージセンサーが新開発の「X-Trans CMOS III」となった。APS-Cセンサーで、有効2,430万画素である。これまで同タイプのイメージセンサーは先代のX-Pro1や「X-T1」などに搭載された有効1,630万画素が最大画素数なので、飛躍的に増したことになる。この画素数であれば特段不足を感じるようなことはないはずだ。
カラーフィルターの配列に関しては従来通り。一般的なBayer配列に比べて配列パターンの繰り返し周期が長い独自配列で、光学ローパスフィルターレスながらモアレや偽色の発生が起きにくい点をアピールしている。感度は通常でISO200からISO12800、拡張でISO100相当のLからISO51200相当のH2まで選べる。
新開発といえば、画像処理エンジンも新しい。「X-Processor Pro」と名付けられた画像処理エンジンによりコマ速は最高8コマ/秒を実現。6コマ/秒である先代モデルにくらべ、画素数が増大しているにも関わらずこのコマ数を実現できた事は素晴らしい。ちなみに従来比で約4倍の処理速度を実現しているという。
さらに、この画像処理エンジンはAFおよび各種レスポンスの向上にも寄与。特にシャッタータイムラグは0.05秒を実現しており、「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」を表示遅延のないOVFにすると、シャッターチャンスを見逃すようなことはもはや皆無といってよいほどである。
機能も操作性も進化したAF
AF測距点は通常で77点、最大273点が選択可能。そのうちの画面中央部49点を像面位相差エリアとし(通常時)、先のX-Processor Proの持つ高い処理能力により、フラッグシップモデルに相応しい高速AFを実現する。
実際、AFスピードはストレスのないもので、選択したAF測距点と重なる被写体に瞬時にピントを合わせる。さらにコンティニュアスAF時、8コマ/秒のAF追従連写が可能だ。一眼レフ並みとはいかないものの、穏やかな動きの被写体であればしっかりと捕捉し続けてくれる。
シャッター速度の最高速は、新ユニットの採用で1/4,000秒から1/8,000秒へとアップ。同社のXFレンズには魅力的な大口径レンズがいくつかライナップされているので、ベース感度ISO200の本機では、そのようなレンズで少しでも絞りを開いて撮影したいときなど重宝しそうだ。
幕速の高速化によりシンクロ速度も1/160秒から1/250秒にアップし、シャッターの耐久性能も15万回を達成する。さらにシャッターレリーズ時に発生する振動と音に関しても、制御シーケンスの見直しや使用部材の最適化などにより、同様にフラッグシップの名に恥じないものとした。シャッターのキレのよさはさらに増している。
細かくても見逃せない進化点たち
そのほか、これまで底面のバッテリーボックスにあったメモリーカードのスロットは、ボディ右側面に独立して配置されるとともに、ダブルスロット化(共にSDXC/SDHC/SDカード用)された。いずれもユーザーニーズに応えたもので、特にダブルスロット化はありがたく感じられる。
液晶モニターは従来と同じ3型ながら、123万ドットからより高精細な162万ドットに。MFで緻密なピント合わせを行うときなど、使い勝手はさらに向上している。
忘れてならないのが、「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」における従来モデルからの進化点だ。X-Pro1では非搭載としていた視度調整機能を内蔵。近視および遠視のユーザーは以前のように視度調整レンズを別途用意しなくて済むので、随分と楽になるはず。何より視力は体調や時間帯などによっても変化することがあるので、正常な視度のひとでもファインダーの視認性は向上するはずだ。アイポイントは14mmから16mmとなり、メガネをかけたときにもより見やすくなっている。
OVF時に画面右下に小型のEVFを表示する「エレクトロニックレンジファインダー」もX-Pro1になかった機能である。これまでOVFではピントが本当に合っているかどうか、撮影後のポストビューを見るまで分からなかっただけにうれしい機能だ。
右下にEVFが出てくると、画面が遮られてしまうのでは?という心配もあるかもしれないが、元々レンズの鏡筒で影になりやすい部分なので、心配する必要は無い。AF測距点の位置に合わせて小型EVFの表示エリアも変わるのはありがたく思える部分である。
なお、MFの際に使える「デジタルスプリットイメージ」もこの小型EVFに表示されるが、従来のモノクロ画像からカラー画像に変更されており、視認性は向上している。
EVFに関しては236万ドットの液晶パネルを新たに採用。144万ドットであった先代モデルにくらべ、より緻密にライブビュー画像を再現する。加えて表示速度を最大85fpsとし、動体等の残像現象を大きく低減させているのも特徴。レリーズ後のブラックアウトタイムも150msへと大幅に短縮されるなど、格段に使い勝手は向上している。
覚えておきたい独特の操作
操作感については、前述したように新たに備わったフロントコマンドダイヤルとフォーカスレバーに注目したい。フロントコマンドダイヤルは露出補正ダイヤルを「C」にセットした際、このダイヤルで露出補正が行える。コマンドダイヤルのほうが補正しやく感じているひとにとって朗報といえるものだ。ちなみに露出補正の範囲は、露出補正ダイヤルの場合は±3EVまでで、コマンドダイヤルでは±5EVまで。
フォーカスレバーはカメラを構えた際、右手親指で操作しやすい位置にあり、AF測距点の選択を行う。ニコンのデジタル一眼レフなどはマルチセレクターで同様にAF測距点を選べるが、操作感はどこかもっさりとした印象であるのに対し、本モデルの場合はレスポンスが極めてよく直感的。特にスナップのような撮影では、素早く被写体と重なるAF測距点を選ぶことができる。しかも中央に真っすぐ押しこむと、AF測距点が画面中央部に戻るのも便利な部分。積極的に活用したい機能といえる。
アドバンストハイブリッドマルチビューファインダーの使い勝手も従来以上だ。カメラ前面のファインダー切り換えレバーの操作で、瞬時にOVF(光学ビューファインダー)とEVF(電子ビューファインダー)が切り換わる。OVF時に画面右下に小型のEVFを表示させるのもこのレバーの中央にあるボタンを押して行うが、同様にストレス無く切り換わる。
さらにレバーを引いたまましばらくすると、OVFの倍率が0.6倍と0.36倍に切り換わるほか、中央のボタンを押すと、装着しているレンズ以外のフレームも表示する。いずれもファインダーから目を離すことなく操作が可能だが、このレバーを使いこなすことがX-Pro2を使いこなすための要のひとつといってよい。
懐かしのISO感度ダイヤルと、モノクロの「ACROS」モード
ダイヤル操作でユニークに思えるのが、ISO感度の設定方法。シャッターダイヤルの外周を上方向に引き上げ、ダイヤルの小窓に表示される感度を見ながら行うのだが、この行為は往年の写真愛好家にとっては涙ものだろう。なぜならMF時代のフィルム一眼レフなどによく採用されていた方法だからだ。高ISO感度になると数字が読みづらくなるのはご愛嬌だが、嬉しいギミックとして素直に歓迎したい。
そのほかとしてはフィルムシミュレーションに新たに「ACROS」が加わった。より滑らかな階調と適度に引き締まった黒が特徴のモノクロモードだ。さらにフィルムの持つ独特の粒状感を再現する「グレイン・エフェクト」も搭載。これらを組み合わせれば、まんま銀塩モノクロ写真の雰囲気である。グレインの強さは強/弱から選べるのもうれしい。次回の実写編ではACROSモードとグレイン・エフェクトを使用した作例を掲載するつもりだが、デジタルカメラでもフィルムライクな表現を楽しんでいるユーザーには、ぜひ活用してみてほしい両機能である。
グッとまとまりのよくなった1台
カメラ好きの琴線に触れる部分が多く、さらに手堅くまとまったカメラである。X-Pro1ではチグハグな部分の多かった操作感についても、ほとんど解消されたいへん使いやすく感じる。
細かなところまで神経を使ってきたなと思わせるのが、カメラ底部の三脚ネジ穴。先代モデルでは適当に開けたとしか思えないような場所にあったが、本モデルではしっかりと光軸上に配置する。一見どうでもよいと思われることかも知れないが、光軸上にあることで三脚にセットした際のアングル微調整が違和感なく行え、何より設計者のカメラに対する造詣の深さや愛着の度合いを伺い知ることができる。
もちろんXシリーズ特有の定評ある絵づくりはしっかり継承しており、大いに作品づくりに活躍しそうである。20万円を越す価格帯のモデルだが、ミラーレスカメラとして最強で最高に面白いカメラに仕上がったように思える。