新製品レビュー

キヤノンEOS 8000D(実写編)

手軽なサイズの本格派一眼レフ

APS-Cサイズの2,420万画素CMOSと、映像エンジンDIGIC6を搭載。バリアングル液晶モニターとハイブリッドCMOS AF IIIも持つEOS 8000D。基本スペックはEOS Kiss X8iと同じながら、本体上面に液晶パネルを、背面にはサブ電子ダイヤルを装備し、ミドルクラスに匹敵する操作性も実現している。

ここでは、レンズキットに含まれる「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM」を中心に、パンケーキスタイルの「EF-S24mm F2.8 STM」と、コンパクトな大口径レンズ「EF50mm F1.8 STM」も使用した。

撮影中は、やはり液晶パネルやサブ電子ダイヤルがあるせいか、エントリー機という印象ではなく、ミドルクラスを使っている感覚だ。しっかり握れるグリップもあり、やや大柄なEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMを装着してもバランスよく構えられた。EOS Kiss X8iとキットレンズのEF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STMより迫力のあるスタイルなので、より本格派の雰囲気だ。19点AFはスピーディーに合焦し、STMも静かで快適。またライブビュー時のAFも速いので、キビキビした撮影が楽しめた。最短撮影距離も39cmと短く、広角から望遠、近接まで、1本で幅広く使える万能レンズだ。

キットレンズの画角変化

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMのワイド側とテレ側。絞りはどちらもF8だ。1本でこれだけ画角の変化が楽しめる。画質はどちらも中心部の解像力は高く、特にテレ側はシャープだ。周辺部は中心部と比べるとわずかに落ちるが、気になるほどではない。高倍率ズームとしては優れた描写力といえるだろう。

広角端(F8)
望遠端(F8)

画素数は上位機のEOS 7D Mark IIやEOS 70Dの2,020万画素を超えてしまったが、キットレンズでも解像感の高い画質が得られる。中心部のシャープさと比べると周辺部は緩い印象を受けるものの、よほど拡大しなければ気にならない。

画素数が増えると、気になるのが高感度の画質だ。EOS 8000DはISO100からISO12800まで設定できる。最近のAPS-Cサイズの機種は、ISO51200を備えていることもあり、最高でもISO12800はやや物足りないイメージを受ける。とはいえ、よほど暗い場所で高速シャッターを切るのでなければ、ISO12800でも不満はないだろう。ISO800までは常用域。ISO1600からザラつきが目立ってくるが、ISO3200までは実用範囲内。ISO6400とISO12800は緊急用だろう。ただISO12800でも色調が大きく崩れることはない。Webなどでリサイズして小さく使うなら、ISO12800でも実用になるほどだ。APS-Cサイズとしては良好な高感度画質といえるだろう。

感度サンプル

ISO100からISO12800まで撮影。ISO800までは、ISO100とほぼ同じ感覚で使用できる。ISO1600は拡大するとややノイズ感はあるものの、常用の範囲内。ISO3200は高感度らしいザラつきが感じられる。とはいえ被写体のディテールが溶けてしまうこともなく、夜らしい写真だ。ISO6400とISO12800はさすがに常用とはいえない。だが色調が崩れないので扱いやすい仕上がりだ。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

人気の“パンケーキレンズ”をはじめとする、小型の単焦点レンズもよく似合う。特に街のスナップを撮っている人なら、EF-S24mmの1本だけで撮り歩くのも楽しいだろう。軽いフットワークで撮影できる。また登場したばかりの50mm F1.8もEOS 8000Dにフィットする。EOS 8000Dでは80mm相当の中望遠レンズになるので、ポートレートやボケを狙ったスナップに最適だ。キットズームにもう1本、個性が光るレンズを加えたい場合におすすめできる。

ミドルクラスに匹敵する操作性とスペックを備えたEOS 8000D。前回にも述べた通り、コンパクトデジタルやスマホからのステップアップから、EOS 7D Mark IIやEOS 70Dのサブ機など、幅広い層に向いたカメラだ。スペックはEOS Kiss X8iとほぼ同じでも、液晶パネルとサブ電子ダイヤルの存在、さらにモードダイヤルなどのレイアウトがKissと異なるなど、使っているとKissとはワンランク上のクラスに感じてくる。フルサイズのEOS 5D Mark IIIクラスやEOS 6Dを使っている人にも、「手軽に扱えて本格的な撮影にも対応するAPS-Cサイズ機」として注目してもらいたい。

作品集

キットレンズのテレ側135mm。望遠レンズにより、重なりあう足漕ぎボートの遠近感が圧縮されている。ボートの密集感とカラフルな色調が強調された写真になった。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F8 / 1/320秒 / 135mm

キットレンズの最短撮影距離は39cm。小さな紫陽花もクローズアップできた。ピントが合った部分はシャープで、柔らかいボケ味も楽しめる。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F5.6 / 1/160秒 / 135mm

バリアングル液晶モニターを使い、地面スレスレのローアングルで撮影。日常とは異なる視点の写真が撮れた。AFも速く、快適なライブビュー撮影が行える。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F11 / 1/60秒 / 18mm

キットレンズを装着したEOS 8000Dは、エントリーモデルとしては大柄に見える。しかしグリップがしっかり握れてレンズとのバランスも優れるため、長時間歩いていても苦にならならず、街で惹かれたモチーフを撮影できた。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM / ISO400 / F5.6 / 1/400秒 / 124mm

パンケーキ24mmを装着したEOS 8000Dは、ミドルクラス並みの操作性とKiss並みの軽快さの、両方のメリットが一層楽しめる。薄型ながら、画面周辺までシャープ。単焦点レンズの描写力の高さも味わえる。

EF-S24mm F2.8 STM / ISO100 / F8 / 1/400秒 / 24mm

EF50mm F1.8 STMで絞り開放。ズームレンズでは得られない大きなボケだ。フルサイズ換算では80mm相当の中望遠レンズ。スナップでは、街で惹かれた部分を切り取るのに向いている。

EF50mm F1.8 STM / ISO100 / F1.8 / 1/800秒 / 50mm

24mmを使用。シャープなのはもちろん、実にクリアな描写だ。ガラスに強い光が反射しているが、フレアやゴーストも出ていない。また階調も豊かで、EOS 8000Dのダイナミックレンジの広さを感じる。

EF-S24mm F2.8 STM / ISO100 / F8 / 1/400秒 / 24mm

薄暗い場所でISO1600にしても、シャッター速度は1/25秒。レンズに手ブレ補正機構はないが、約125gと軽い。またEOS 8000Dのミラーショックも小さく、スローシャッターで近接撮影してもブレずに撮れた。

EF-S24mm F2.8 STM / ISO1600 / F2.8 / 1/25秒 / 24mm

スイーツのサンプルを、EF50mm F1.8 STMで撮影。APS-Cサイズと50mmの組み合わせは、料理や小物など、テーブルフォトにも使いやすい。しかもEOS 8000Dはバリアングル液晶モニターなので、ハイアングルや俯瞰撮影も楽だ。

EF50mm F1.8 STM / ISO100 / F2.8 / 1/640秒 / 50mm

19点AFは高速で快適。一眼レフのスッキリした光学ファインダーで、快適にフレーミングできた。

EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM / ISO100 / F5.6 / 1/50秒 / 35mm

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になる。現在はカメラ雑誌での撮影、執筆を中心に、国内や海外の街のスナップを撮影。公益社団法人日本写真家協会会員。