【新製品レビュー】Adobe Photoshop Touch
アドビシステムズが、タブレット端末向けの新アプリ「Photoshop Touch」の提供を開始した。まずはAndroidタブレット向けに提供され、価格は9.99ドル(執筆時点の日本円は850円)。Android Marketからダウンロードできる。
タブレット端末向けのため、画面解像度が1,280×800ピクセル、Android OS 3.1(Honeycomb)を搭載するAndroidタブレットのみ、購入が可能だ。今回、Android 3.2を搭載したサムスン製のタブレットでPhotoshop Touchを試用してみた。
Photoshop Touchのホーム画面 |
Photoshop Touchは、同社の「Touch」アプリの一環として提供されるアプリで、このほかにも「Adobe Collage」「Adobe Debut」「Adobe Ideas」「Adobe Kuler」「Adobe Proto」といったアプリがリリースされている。一部はiOS版もあるが、現時点ではAndroid端末向けのリリースとなっている。
Photoshop Touchは、その名の通り画像編集ソフトの定番Photoshopを、タブレット端末向けに適した形にデザインして、各種の編集機能を搭載したアプリだ。搭載されている機能は、画像の閲覧機能、レイヤー機能、効果やフィルター、トーンや色調の調整など。Photoshopでよく利用されるようなコア機能は盛り込まれており、特にレイヤー機能が搭載されているため、より高度な編集が可能だ。
Photoshopほど高機能ではないが、基本的な編集は可能になっている。タブレット1つである程度の作業は十分にこなせそうだ。
■Photoshop並みの作業が可能に
では、実際に試用してみよう。Photoshop Touchを起動すると、「Tutorials」と「Intro」の2つのアイコンが並ぶホーム画面が表示される。Tutorialsを選ぶと、Photoshop Touchの機能をステップバイステップで学べるチュートリアルが13種類用意されており、使い方を簡単に学習できる。Introからは、前述のチュートリアルが選択できるほか、「Begin a Project」を選択すれば、Photoshop Touchの利用を開始できる。
Introを選ぶと、チュートリアルを見るか、早速プロジェクトの作成を開始するかを選べる |
ホーム画面では、画面上部にAdobe Creative Cloud、共有、フォルダ作成、プロジェクトの合成、削除、Facebook、設定の各ボタンが並ぶ。画面下には、プロジェクトの作成、画像の読み込みアイコンが表示されている。
画面上部のアイコン。左からCreative Cloudなどが並ぶ |
アイコンをタッチし、ドロップダウンから機能を選択する |
画面下部のアイコン。左がプロジェクトの作成、右が画像の読み込み |
Photoshop Touchでは、読み込んだ画像やブランクページを「プロジェクト」として管理している。作成したプロジェクトはホーム画面に追加され、フォルダ分けで管理することも可能になっている。
プロジェクトの作成をタッチすると、キャンバスサイズを指定する画面が表示される。1,600×1,600以上を指定しても強制的に1280サイズになる |
初めて起動した場合は、まずTutorialsから、実際の使い勝手を試してみるといい。Tutorialsには、「ドラマチックフレアを追加する」「効果付きのペイントをする」「カラーを置換する」「カメラレイヤーを追加する」「鉛筆画にする」「フォトフレームを作成する」「タトゥーを追加する」「油絵にする」「スムーズな画像のブレンド」などといった13種類がある。
チュートリアルの一部。計13種類が用意されている |
「ドラマチックフレアを追加する」では、写真の人物を切り取り、背景に動きのある、不思議な効果を追加するというもの。モーションブラーを背景に適用するテクニックだ。
例えばこれはドラマチックフレアを追加するチュートリアル |
Begin Tutorialを選ぶと、画像が読み込まれた状態で編集画面が起動し、次の操作に青い矢印で印がついているので、これを選択し、作業が終わったら画面下部のステップを次に進めればいい。
実際の画像の編集画面。チュートリアルでは、次に操作する項目に吹き出しアイコン、画面下部に操作説明が表示される。左側にはツールパレット、右側にはレイヤーパレットが表示されており、下部にある矢印アイコンタッチで隠すこともできる |
おおざっぱにまとめると、「Scribble Selection Tool」で人物と背景を選択し、「Refine Edge」ツールで細かい選択範囲を調整。人物だけを切り出したレイヤーを作成し、背景に「Directional Blur」を適用する、といった流れになる。
指示に従って女性を選択する |
選択設定の画面 |
レイヤーの新規作成画面 |
レイヤーを個別に非表示にできる |
エフェクト画面 |
Directional Blurを指定する。画面では少し切り抜きが雑だが、レイヤーを使って簡単に独特の画像を作成できる |
このようにパソコンのPhotoshop並みの作業がタブレットだけで行なえるのだ。作業後に保存したプロジェクトは、レイヤーも含めて保存されるので、後から再利用も簡単に行なえる。
■クラウド連携で画像を活用
自分で撮影した画像などを利用したい場合は、ホーム画面から画像読み込みを行なう。読み込めるのは、タブレット上に保存された画像に加え、その場でカメラを使って撮影したもの、Google上で画像検索した画像、Facebookの画像を利用できる。
Google画像検索でインターネット上の画像を取り込める |
自分のFacebookにアップロードした画像もダウンロードできる |
Google画像検索では、任意の言葉で画像を検索し、そこから顔が写ったもの、画像、クリップアートといった絞り込みや、画像のベースカラーや著作権での抽出も可能。プロジェクト上では、こうして追加した画像をレイヤーとして追加もできるようになっている。
レイヤーを駆使した高度な編集だけでなく、編集機能には「Auto Fix」やレベル補正、トーンカーブ、カラーバランスといった基本的な補正機能も搭載。画像のレタッチ用途にも使えそうだ。
ブラシツールの例 |
テキストの追加も可能 |
スタンプツールを使えば、画像内の余計なものを消し去ることもできる。ただし、「コンテンツに応じた塗り」のような機能はない |
なお、新規に画像作成した場合のキャンバスサイズは1600サイズ以下でしか作成できない。読み込んだ画像は、そのままのサイズで読み込まれるようだ。
ホーム画面からは、アドビのクラウドサービス「Adobe Creative Cloud」へ保存したプロジェクトをアップロードすることもできる。Creative Cloudは、Touchアプリに付属してクラウド上に作成したプロジェクトを保存できるサービスで、クラウド経由でほかの端末でも保存したプロジェクトを再利用できるようになる。Photoshop Touchでは、画像を読み込む際に、Creative Cloudに保存した画像を選択することも可能になっている。
まだ英語版だが、Creative Cloudのベータサービスが利用できる |
Photoshop Touchから保存した画像。レイヤーも含めて保存されている。Shareボタンから、画像のURLを別の人に知らせて閲覧させることも可能 |
Creative CloudはWebサービスとしてPCのWebブラウザからもアクセス可能で、Photoshop Touchファイルをダウンロードできるほか、ブラウザからレイヤーを含めた画像の確認もできる。
画像のURLをメールで送信する機能もあり、友人や仕事関係で画像を共有したいときに利用できる。コメントの投稿に加え、元ファイルのダウンロードを許可するかどうかの設定も可能なので、外出先でタブレットを使って補正して、担当者にリンクを送信して、さらに詳細な編集をしてもらう、といった作業分担も可能だ。
画像の送信相手が閲覧できる画面。「Download source file」からダウンロードできる |
WebブラウザからPhotoshop Touchファイル(.psdx)のダウンロードも可能で、アドビのサイトからプラグインをダウンロードすることで、Adobe Creative Suiteで同ファイルを開くことができるようになる。これを利用すれば、外出先でタブレットで調整し、必要なら自宅などに戻ったらデスクトップでより詳細な編集をする、といった作業が可能になる。
■まとめ
Photoshop Touchは、無料のPhotoshop Expressに比べて、さらに高機能な画像編集アプリになっている。Photoshop CS並み、とまでは言わないが、ホームユース向けのPhotoshop Elementsに迫る機能を、タブレット端末で実現したのが特徴だ。Creative Cloudを経由することで、簡単にパソコンと連携することもできる。
Androidタブレット端末だと、例えば無線LAN内蔵カードのEye-Fiを使って撮影画像をすぐにタブレットにダイレクトで転送したり、Sony Tablet SのようなSDカード対応タブレットで取り込めば、ノートパソコンを取り出すよりも手軽に、素早く画像をPhotoshop Touchで編集できる。レイヤーを駆使した作品作りにも(ある程度は)対応できる。指でタッチして操作できるので、パソコンでペンタブレットを使うような感覚で操作できるし、なによりPCより軽量で機動性の高いタブレットなら、場所を問わず、作業がしやすいのもメリットだ。
Photoshop Touchは、今後iOS版の提供も予定されており、ユーザー層としてはiOS対応以降が本番と言えるだろうし、日本語版の提供も期待したいところ。個人的には、画面サイズ的には厳しいかもしれないが、最近増えてきた4〜7インチクラスのHD(1,280×720)ディスプレイ搭載Androidスマートフォンでも動作すると嬉しい。
機能としては、何よりまず、RAW画像に対応して欲しい。ほかにもHDR作成、コンテンツに応じた塗りなど、Photoshop並みの機能も欲しいし、タブレットならではの機能が追加されることも期待したい。
2011/12/15 00:00