【新製品レビュー】リコーGXR MOUNT A12(機能・外観編)
リコーはGXR用Mマウントユニット「GXR MOUNT A12」を5日に正式発表した。これはCP+2011で参考出品され、大きな話題となった製品だ。このユニットを使うと、GXRがオールドレンズのベースボディになる。しかも、イメージセンサーとマウントを組み合わせただけの素のユニットというわけではない。ライカMマウントレンズを筆頭に、各種オールドレンズが使いやすいように、さまざまな工夫をこらしている。前編となる今回は、ハードウェアまわりと搭載機能を中心にGXR MOUNT A12の魅力を探っていこう。
ライカMマウントに対応したレンズの数々が、GXRで使えるようになった。オールドレンズファン待望のアイテムである |
■ユニット内にAPS-Cセンサーとシャッターユニットを凝縮
GXR MOUNT A12はAPS-Cサイズの約1,230万画素CMOSセンサーを搭載している。他のカメラユニットと異なり、レンズは搭載せず、ユニットの先端はGXRマウント(ライカM互換マウント)になっている。ここにライカMレンズや各種オールドレンズを付けて撮影するためのユニットである。APS-Cセンサーなので、35mm判換算は1.5倍となる。GXRの登場当初、素のマウントユニットを望む声があったが、それが現実のものとなったわけだ。ある種のドリームユニットといえるだろう。
他のカメラユニットがレンズシャッターを採用しているのに対し、GXR MOUNT A12はフォーカルプレーンシャッターを搭載している。ユニットの向かって右側がせり出しているのは、フォーカルプレーンシャッターのモーターを格納しているためだ。スペースが限られていることを考えると、よくぞこのサイズにまとめ上げたと感心する。これはひとつの偉業といってよいだろう。
レンズはなく、ライカM互換マウントを搭載している。ここに別途レンズを装着する | フォーカルプレーンシャッターのモーター部を格納するため、向かって右側がせり出している |
APS-Cセンサーを搭載しており、レンズの焦点距離を1.5倍すると35mm判換算となる | マウント側面にレンズの着脱レバーがある。加工精度が高く、滑らかにレンズを着脱できる |
マウントを保護するためのボディキャップが付属する。RICOHのロゴ入りだ | グリップ側の側面はボディ接続用の端子がある。これは他のカメラユニットと同様の仕様だ |
ユニット背面には着脱用のガイドプレートが組み込まれている。これも他のカメラユニットと同様だ |
■オールドレンズユーザーにうれしい充実した機能
GXR MOUNT A12はいわば素のマウントユニットだが、オールドレンズを理想的な環境で使うためにさまざまな機能を搭載している。もっとも特徴的なのがフォーカスアシスト機能だ。昨今、ソニーNEXシリーズがピーキング機能を採用したが、GXR MOUNT A12は輪郭強調とコントラスト強調というフォーカスアシスト機能を搭載した。ともにエッジを強調することで、拡大表示しなくてもマニュアルフォーカスで快適にピント合わせが行なえる。
画質面にもこだわりがある。まず、イメージセンサーは新しいマイクロレンズレイアウトを採用し、広角レンズ使用時に周辺部へ十分に光がとどくように配慮した。そのうえで周辺部のコンディションを整えるためのマニュアル補正機能を搭載している。周辺光量補正と歪曲補正はむろん、色シェーディング補正も可能だ。色シェーディング補正は周辺部の色かぶりを補正することができ、周辺が色かぶりしやすい広角レンズ使用時に威力を発揮するだろう。
GXR MOUNT A12はレンズと電子的な接続がない。そのためレンズ情報をExifに記録できないのがウィークポイントだ。この点を克服するため、GXR MOUNT A12はマイセッティングでレンズ名、焦点距離、F値を登録できる。周辺補正機能といっしょに登録しておけば、特定のレンズに特化したマイセッティングが作成できるわけだ。GXR MOUNT A12はマイセッティングをSDメモリーカードに書き出せるので、レンズプロファイルとしてユーザー間で共有することも可能だろう。
撮影機能に関しては、フォーカルプレーンシャッターとは別に電子シャッターモードを搭載している。フォーカルプレーンシャッターが1/4,000秒から180秒で撮影できるのに対し、電子シャッターは1/8,000秒から1秒の設定が可能だ。大口径レンズの開放撮影で重宝しそうな仕様だ。ただし、電子シャッターは画面の上下で露光時間にずれが発生するため、手ブレに注意が必要となるだろう。なお、本機はバルブとタイム撮影にも対応している。
フォーカスアシストはMODE1とMODE2、2種類のタイプを搭載している | MODE1はピントの合った場所のコントラストを強調表示する。エッジ部分が白く際立つ |
MODE2は画面をグレー化し、ピントの合った場所の輪郭を強調して表示する。色味を確認できないのが弱点だ | オーソドックスな拡大表示も搭載している。2倍、4倍、8倍で液晶の拡大表示が可能だ |
周辺画質を補正するための3つの機能を搭載する。主に広角レンズの補正で役立つだろう | 周辺光量補正は、画面左側のスライドバーで±3段階の補正が可能だ |
ディストーション補正は、樽型収差と糸巻き収差ごとに3段階の補正が行なえる | 色シェーディング補正はコーナーごとに色合いを調整する。ブルーとレッドで±4段階の補正が可能だ |
マイセッティングの編集画面でレンズ情報を入力できる。これらの入力情報はExifに反映される | 英数文字でレンズ名を入力する。Exifのレンズ名にこの情報が反映される |
焦点距離にはレンズの焦点距離を入力する。この情報もExifに反映される | F値にはレンズの開放F値を入力しておく。この数値が撮影時の絞り値としてExifに書き込まれる |
マイセッティングはMY1〜MY3に加え、マイセッティングBOXとSDカードに保存できる | マイセッティングBOXとSDカードには、最大6つずつマイセッティングを登録できる |
シーンモードのESモードを選ぶと、電子シャッターで撮影できる | MモードでB(バルブ)とT(タイム)が選択できるようになった |
■オールドレンズの装着例
GXR MOUNT A12はライカM互換マウントを採用している。現行から旧製品までライカMマウントレンズが装着できるわけだが、ライカMレンズ専用というわけではない。LMリングを介せばライカLマウントレンズが装着できるし、コシナ製のVM/ZMレンズという選択肢もある。また、距離計非連動タイプのライカM用マウントアダプターを使えば、一眼レフ用レンズを付けることも可能だ。ライカMマウントはユニバーサルマウントという側面があるため、GXR MOUNT A12に装着できるレンズは実に多彩だ。
その一方で、GXR MOUNT A12は他社製レンズと受け入れるという特異なユニットだ。後玉が飛び出しているレンズは、内部干渉の危険も無視できない。そこで本製品にはレンズチェッカーが付属している。これをレンズに付け、後玉がはみ出していなければ装着できるという仕組みだ。
レンズチェッカーを後玉にのせ、はみ出していなければ本体に装着できる |
【Elmarit 28mm F2.8】GXRは無骨なスタイルなので、クラシカルなデザインのレンズがよく似合う | 【Summicron 35mm F2 RF】メガネ付きのライカレンズも装着できる。ボディとのサイズ感もわるくない |
【Elmar 5cm F3.5】バルナックライカの代表的な沈胴式標準レンズだ。沈胴すると内部干渉しかねないので要注意だ | 【Elmarit 90mm F2.8】中望遠レンズはRF機だとピント合わせがシビアだが、GXRなら確実に合わせられる |
【Heliar 50mm F2】ライカレンズだけでなく、コシナ製のレンジファインダー機用レンズも装着できる | 【GR Lens 21mm F3.5】リコー製の広角レンズだ。Lマウントなので、LMリングを介して装着している |
【Planar T* 50mm F1.4】ヤシカ/コンタックスマウントの標準レンズだ。muk selectのC/Y-ライカMアダプターで装着している |
■まとめ
GXR MOUNT A12はレンズの持ち味を引き出すため、ローパスフィルターを省いている。単焦点のオールドレンズはそもそもシャープなものが多く、ローパスなしのGXR MOUNT A12ならそのすぐれた解像感をダイレクトに楽しめそうだ。後編では実写可能な機材を入手し、オールドレンズでの実写性能や操作性をレポートしていく。
2011/8/8 00:00