【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-ZX3

スリムボディに25mmからの8倍ズームレンズを搭載
Reported by 本誌:折本幸治

 コンパクト系のLUMIXのうち、ZX系は2009年春からラインナップとなる新シリーズ。初代のLUMIX DMC-ZX1に続いて登場した2代目のLUMIX DMC-ZX3は、8倍ズームレンズ、2.7型液晶モニター、AVCHD Lite記録といったところが特徴だ。

 ちょうど、光学12倍ズームレンズを搭載するTZ系と、光学5倍ズームレンズ搭載のFX系との中間に位置する製品で、今春モデルでいえば、DMC-TZ10よりもスペックは落ちるものの、LUMIX DMC-FX66よりは高機能。見た目はDMC-TZ10をそのまま小さく薄くしたイメージであり、パナソニックでは、「光学8倍ズームレンズ搭載で世界最小」を謳っている。

 撮像素子は有効1,410万画素の1/2.33型CCD。レンズは焦点距離25〜200mm相当(35mm判換算)、F3.3〜5.9。実勢価格は3万5,000円前後。本体色はゴールド、シルバー、レッド、ブラウン。


薄いボディに8倍ズームレンズを搭載

 試用したのは、マットな触感塗装が施されたブラウン。奥行き約26mmのボディは確かにスリムで、8倍もの高倍率ズームレンズを搭載しているとは思えない。近年は各社とも10倍前後のズーム倍率をもつ比較的スリムな製品をラインナップしているが、現状では30mm前後の奥行きが生じている。ズーム倍率を少し抑えて、本体の薄さ方向に振ったDMC-ZX3のスタイリングは、今後のトレンドを占う上で興味深いものがある。

 同じパナソニックの薄型機であるFX系と異なり、グリップがついているのも特徴。ただしTZ系に比べると申し訳程度であり、指掛かりを意識したパーツも外側すぎる。それでも何となく、バッグからとり出すときなどで安心感を覚えるから不思議だ。

 操作系は、上位機種のDMC-TZ10に近い。電源スイッチおよび撮影/再生スイッチはスライド式。基本的にはモードダイヤルで撮影モードを決定、Q.MENUボタンから基本設定を行ない、十字ボタン下で呼び出せるAFメニューで適宜追尾AFを選ぶといった操作イメージになる。

 背面には、FX系にない動画ボタンを搭載。Motion JPEGに加えて新たに搭載した、AVCHD Liteへの自信がうかがえる。ちなみに前モデルDMC-ZX1の動画圧縮フォーマットは、FX系と同様のMotion JPEGのみ。動画ボタンの装備も今回からだ。

 液晶モニターは2.7型23万ドット。FX系との差別化を考えるなら、46万ドットクラスを期待したいところだが、ファインダーとしての性能は十分。視野角も広く、直射日光が当たるような局面以外、使っていて不都合を感じることはなかった。

 記録メディアとして新たにSDXCメモリーカードに対応したのもトピックだろう。現状ではあまり有用性が感じられないSDXCメモリーカードだが、新規格にいち早く対応したところは、さすがメモリーカードでも高シェアのパナソニックといえる。

 撮影可能コマ数は約330コマ。AVCHD Liteで最高画質となるSHモードでの連続記録時間は約110分。電源ON/OFF、撮影開始/終了、ズーム操作を繰り返した場合の実撮影可能時間は、約55分となっている。発表会などの行事を連続して長時間記録する場合は心配だが、要所要所でスナップ的に記録するような使い方なら問題なさそうだ。

レンズは25〜200mm相当の光学8倍ズームFX系と異なり、モードダイヤルは外に出ている。MS1、MS2にユーザー設定をアサインできる
主な操作はLUMIX共通。動画ボタンがついたテレビ出力用のHDMI端子を備える
新たにSDXCメモリーカードに対応(写真はSDHCメモリーカード)。バッテリーの撮影可能コマ数は約330コマ

常時ONで使いたい超解像技術

 本機のみならず、今春のコンパクト系LUMIX最大のトピックといえるのが、新搭載の超解像技術だろう。小倉雄一氏の取材記事に詳しいが、この技術はレンズ性能や画素数の向上ではなく、信号処理で解像の向上を目指したもの。AV機器で先行し、いよいよデジタルカメラでの応用が始まった技術だ。

 DMC-FX66のレビューでも述べた通り、その効果は高い。もちろん本来的な解像の向上には適わないだろうが、いわゆるシャープネスをギチギチにかけた状態よりもずっと好ましく、上手い具合にエッジが出ている。リンギングや偽色も目立たないし、カラーノイズを強調してしまうようなこともない。ONとOFFで記録時間にほとんど差はないので、常時ONで問題ないと感じた。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • サムネイルは元画像の一部を等倍で切り出したものです。
超解像ON・広角端
DMC-ZX3 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm
超解像OFF・広角端
DMC-ZX3 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm
超解像ON・望遠端
DMC-ZX3 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/160秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 36mm
超解像OFF・望遠端
DMC-ZX3 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/160秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 36mm$$

 本機はDMC-FX66よりも後処理による無理があまり感じられない。もともとのレンズの性能が良いからだろう。ただし、細かく見ると黒い輪郭がきつめになったり、輝度ノイズが強調されているのか、ぎざつきが現れるケースも見られる。どうしても気になるのなら、OFFにすることもできる。


高画質なAVCHD Liteを採用

 もうひとつの特徴であるAVCHD Liteは、AVCHDの720p版ともいえる動画記録モードのひとつ。1,280×720ピクセルなので、AVCHDのようなフルHD記録は不可能だが、H.264による高圧縮記録という特徴は受け継いでいる。ビットレートは、SHが17Mbps、Hが13Mbps、Lが9Mbps。いずれも60p記録(ただしCCD出力は30コマ/秒)になる。

 SHでの画質は、コンパクトデジカメの動画機能としてはかなり優秀。光学8倍ズームレンズであることを考えると、動画向けのコンパクトデジカメとして高機能な部類に入る。もちろん、動画記録中のズーム動作も可能だ。

 ただしモノラル録音のみになることには注意。同じくAVCHD Liteを搭載する上位機種のDMC-TZ10と違う点だ。

AVCHD Lite(.mtsファイルのみ掲載) / 54.6MB / 1,280×720 / 30fps

 また視聴や編集に快適さを求めるなら、フルHDのAVCHDよりは有利とはいえ、パソコンでの気軽な再生やネイティブ再生には、それなりのスペックが必要だ。

 例えば、再生や簡易編集が可能な付属ソフト「PHOTOfunSTUDIO Ver.5.0」の場合、AVCHD動画再生でCore 2 Duo 2.16GHz / Pentium D 3.2 GHz以上、AVCHD動画編集時でCore 2 Quad 2.6 GHz以上が推奨されている。

 編集後の保存や視聴環境のことを考えると、パソコンではなく、ディーガなどレコーダー製品の活用も視野に入れた方が良いだろう。

 そのほか、夕焼け認識付きの「おまかせiA」モードがつくなど、ほかのLUMIXと同等の進化を見せている。「ハッピーカラー」は今春の新LUMIXからの機能。鮮やかさと明るさを引き上げるとともに、人物が写っているときは美肌効果も働く。


まとめ

 レンズ性能が良いためか、画質は総じてDMC-FX66より良い。また、少し大柄なところが操作性の良さにも繋がっている印象だ。同じ2.7型液晶モニターを搭載していることを考えると、本機とDMC-FX66の間で心が揺れ動くことだろう。決めては8倍ズームレンズとAVCHD Lite動画で、個人的にはこの2つを取るなら、少々のサイズアップも許せる。

 一方、12倍ズームレンズのDMC-TZ10に対しては、望遠端の焦点距離で部が悪い。DMC-TZ10のみ搭載するGPS機能も魅力的だ。動画機能は、録音以外ほぼ同レベル。静止画の画質もほぼ同レベルに感じられる。

 25mmからの8倍ズームレンズは守備範囲が広い。レスポンスも前モデルから良くなり、操作感にも不満はない。本体サイズと性能のバランスが絶妙なので、FX系のような薄型スリム機に物足りない、でも10倍ズーム機はまだ大きい、と感じる人なら検討に値する製品だ。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

広角端・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.2MB / 4,320×3,240 / 1/200秒 / F10 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
広角端・超解像OFF
DMC-ZX3 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F10 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
望遠端・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.0MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 36mm
望遠端・超解像OFF
DMC-ZX3 / 約4.8MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 36mm

・感度

ISO80・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.5MB / 3,240×4,320 / 1/1.6秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm
ISO100・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.4MB / 3,240×4,320 / 1/2秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm
ISO200・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.1MB / 3,240×4,320 / 1/4秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm
ISO400・超解像ON
DMC-ZX3 / 約4.7MB / 3,240×4,320 / 1/8秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm
ISO800・超解像ON
DMC-ZX3 / 約4.1MB / 3,240×4,320 / 1/15秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm
ISO1600・超解像ON
DMC-ZX3 / 約4.1MB / 3,240×4,320 / 1/30秒 / F3.9 / -0.7EV / WB:晴天 / 6.7mm

・ハッピーカラー

ハッピーカラーON・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.7MB / 3,240×4,320 / 1/13秒 / F5.9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 36mm
ハッピーカラーOFF・超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.5MB / 3,240×4,320 / 1/13秒 / F5.9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 36mm

・逆光

超解像ON
DMC-ZX3 / 約5.7MB / 4,320×3,240 / 1/160秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 36mm
超解像ON
DMC-ZX3 / 約4.5MB / 4,320×3,240 / 1/320秒 / F10 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm




本誌:折本幸治

2010/4/12 00:00