【新製品レビュー】GE「E1255W」

〜国内初参入ブランドの新製品を試す
Reported by 本誌:折本幸治

 ついにGE(General Electric Company)ブランドのデジタルカメラが、国内市場に本格参入した。通販に始まり今春からは、大手の量販店で続々取り扱いが開始。すでに大手国内ブランドと同様、売場の一角を占めているところが見られるという。

 米国の複合企業、特に歴史ある白物家電ブランドとして知られるGEだが、国内では「量販店にある大きな冷凍冷蔵庫」ぐらいの認知度なのではと思う。しかもイメージング機器を手がけていることは、日本ではあまり知られていない。

 そもそもGEブランドのデジタルカメラは、GEからライセンスを受けたGeneral Imagingが2007年に北米で発売を発表。元オリンパスの映像カンパニー長をつとめた小宮弘氏が会長兼CEOに就き、薄型スタイリッシュ系とエントリークラスのコンパクトデジタルカメラをPMA07に出品したのが始まりだ。

 その後、欧州での展開を経て、いよいよ今年から日本市場に参入。3月のフォトイメージングエキスポ2009が本格的なお披露目となり、その後ビックカメラを皮切りに、4月から6月にかけて、大手量販店での取り扱いがはじまった。

 製品ラインナップは、単3電池対応のエントリーモデル「A1250」と「A1050」。さらにリチウムイオン充電池を採用した薄型モデルの「J1050」と「E1255W」を用意。E1255Wをタッチパネル化した「E1250TW」も登場する予定だ。執筆時に入手できた製品のうち、最も高スペックなE1255Wを試用してみた。

28mmからの5倍ズームレンズを搭載

 基本スペックは次の通り。有効1,200万画素の1/2.3型CCDに、レンズはガラス製の光学5倍ズーム。液晶モニターは3型23万ドットだ。CIPA規格に準拠した撮影可能コマ数は約200コマとしている。レンズの焦点距離は28〜140mm相当(35mm判換算)なので、一般的に使いやすい画角をカバーしているといえるだろう。

 外装はアルミ合金と思われる金属で、顔検出機能やシーン認識など、国内モデルにおけるトレンドも抑えている。それでいて実勢価格は2万4,800円前後。2009年の春モデルであることを考えると、スペックに比してかなり安い部類に入るだろう。生産国表示は中国だった。

 露出制御はプログラムAEだけだが、測光方式としてAi AE、中央部重点、スポットを装備。最高シャッター速度は1/2,000秒で、連写は約1.39コマ/秒。一般的なコンパクトデジタルカメラと同様の基本機能といえる。

 液晶モニターは若干粗さを感じる上、寒色系の色味が気になる。それでもこの値段で3型を搭載した意義は大きいのだろう。エントリークラスのコンパクトデジタルカメラとして考えると、撮影レスポンスにも不満はない。

 モード切替はダイヤルで行なう方式。シャッターボタンは2段目がはっきりしている一般的なタイプで、特に押しづらいと感じたことはなかった。

 動画機能は、最大640×480ピクセル・30fpsでのMotion JPEG記録に対応。これまた一般的な仕様といえるだろう。最大60秒の音声記録も可能だ。

 惜しいのは、光学式の手ブレ補正がないこと。ブレ軽減機能としては、画像合成を利用したとみられる「電子式ブレ軽減」モードを設けている。

 光学式の手ブレ補正がないことを除けば、国内ブランドの一般的なコンパクトデジタルカメラと大差ない印象。ただし、金属とはいえ外装はかなり薄そうで、仕上げも平凡。最近はエントリークラスといえどもしっかりした質感を伴っているので、その手の製品に見慣れた目からすると、高級感はいまひとつといった印象だ。

記録メディアスロットはSDHC/SDメモリーカードに対応。バッテリーにはGEのロゴマークが入る液晶モニターが3型と大きいため、操作部の面積は狭い。4方向ボタンは押し込めるタイプだ
伝統あるGEのロゴをボディ前面にデザイン。背面液晶モニターにも電源投入時にロゴが現れる

簡単操作でパノラマ画像を作成

 珍しいところでは、「パンショット・パノラマ」が特徴的だ。カメラを右から左、あるいは左から右へとパンするだけで、パノラマ画像を自動生成する機能。カメラをパンすると2つのターゲットが近づき、合致したところで自動的に撮影が始まる方式だ。シャッターボタンを押す必要はない。オリンパスのパノラマ機能に近い操作感といえる。2枚、または3枚の写真をつなげることが可能。撮影後、10秒程度の処理時間が生じる。

 アバウトな操作方法だが、つなぎ目は比較的きれい。近距離よりは遠距離の方がうまくいくようだ。もちろん、従来のカメラ内パノラマ機能と同様、シームレスなつなぎ目処理は不可能。拡大して目を凝らすと、どうしてもつなぎ目が見えてしまう。また、300万画素程度になってしまうので、大サイズへのプリントはおすすめできない。それでも手持ちでここまで簡単にパノラマ画像が撮れるとあれば、旅行先などでの利用価値は高いだろう。

パンショット・パノラマの開始画面撮影後、カメラを振ってターゲットを合わせると自動的につなぎ合わせる

 顔検出も搭載し、笑顔検出、まばたき検出、赤め自動補正に対応する。7つのシーンをカメラが自動的に認識し、最適なシーンモードをカメラが選ぶ「オートシーン」モードも利用可能だ。

 メニュー操作も一般的なものだ。OKボタンを押すとショートカットメニューが現れ、ISO感度、ホワイトバランスなど良く変更する項目が並ぶ。露出補正は十字ボタン上から可能。全体的にあか抜けておらず、直訳調の日本語メニューだが、撮影メニューでインターバルタイマーが「間隔拍照」になっているところをのぞけば、日本語表記にも不審な点はなかった。

カメラがシーンを自動判別するオートシーンモードを搭載マクロを含めた7つのシーンから最適なものが自動的に選ばれる
OKボタンを押すとショートカットメーニューを表示被写体を見ながらの露出補正にも対応する
顔認識も搭載。1名でしか試してないが、精度と速度は一般的なレベルだった機能設定を撮影メニューとセットアップに大別。もちろん日本語表示が可能だ

 画質はいまひとつ。等倍で見ると、低感度でも塗り絵のような描写であり、階調も大雑把。それを補うためかシャープネスがきつ目にかかっている。2Lサイズなどにプリントすれば、しゃきっとした問題ない絵になるが、正直いって(この機種に限ったことではないが)1,200万画素が必要なのか疑問が残るところだ。

 面白いのは「色彩」の中にある「セピア」だ。一般的なセピアトーンと異なり、青や黄色や緑などの原色がうっすらと残っている。モノトーンの1種という位置付けではなく、極端なホワイトバランスに設定した写真のようだ。これはこれで面白いと思った。

まとめ

 28mmからの5倍ズーム、顔認識、シーン認識、3型液晶モニターと、低価格ながらトレンドを上手く取り入れた製品。細部に目を凝らせばそれなりに不満もあるが、失礼を承知でいうなら、「思ったより普通で感心した」というのが正直なところ。コストパフォーマンスを考えると、総じてそつなく求められる機能をまとめている印象を受けた。

 国内出荷で前年割が続く市況の中、デジタルカメラ市場での新ブランドの登場は喜ばしい。GEブランドの今後の展開に期待したい。

 

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

【広角端】E1255W / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.2 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 5.3mm【望遠端】E1255W / 約5.7MB / 4,000×3,000 / 1/240秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 / WB:太陽光 / 24.9mm

・歪曲収差

【広角端】E1255W / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/85秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / WB:曇天 / 5.3mm【望遠端】E1255W / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/42秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 / WB:曇天 / 24.9mm

・パノラマ

E1255W / 約724KB / 3,312×880

・カラーモード

※共通設定:E1255W / 4,000×3,000 / 1/300秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.8mm

標準ビビッド
白黒セピア

※共通設定:E1255W / 4,000×3,000 / 1/170秒 / F4.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 11.5mm

標準セピア

・自由作例

E1255W / 約5.7MB / 4,000×3,000 / 1/240秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.8mmE1255W / 約5.7MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 13.1mm
E1255W / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 7.7mmE1255W / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/480秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO64 / WB:太陽光 / 13.1mm
E1255W / 約5.9MB / 4,000×3,000 / 1/70秒 / F3.3 / -0.3EV / ISO64 / WB:曇天 / 5.3mmE1255W / 約4.9MB / 4,000×3,000 / 1/220秒 / F3.4 / +0.7EV / ISO64 / WB:曇天 / 6mm
E1255W / 約5.7MB / 4,000×3,000 / 1/300秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:曇天 / 14.9mmE1255W / 約4.9MB / 4,000×3,000 / 1/60秒 / F5.1 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 24.9mm
E1255W / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/140秒 / F5.1 / -0.7EV / ISO64 / WB:曇天 / 24.9mmE1255W / 約5.8MB / 4,000×3,000 / 1/70秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 11.5mm
E1255W / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/50秒 / F3.3 / 0EV / ISO64 / WB:曇天 / 5.3mmE1255W / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/90秒 / F4.5 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート / 13.1mm




本誌:折本幸治

2009/7/10 11:00