新製品レビュー

ソニー RX10 V

1台で超望遠600mm相当までカバーしつつ、α譲りのAF&操作性も

ソニーから新たに登場した「RX10 V」は、1.0型センサーを搭載するレンズ一体型カメラだ。

2017年10月に発売された「RX10 IV」の後継モデルに当たり、約9年の月日を経てモデルチェンジを果たした。画像処理エンジンが刷新され、AIを活用した被写体認識機能など撮影性能が大きく進化。さらに、操作系も最新αシリーズの設計思想を取り入れて現代的に変更されるなど、約9年分の進化を実感できるモデルに仕上がっている。

外観

外形寸法は約136.4×94.5×151.3mm、質量は約1,111g(バッテリー、メモリーカード含む)。前モデル「RX10 IV」は約132.5×94.0×145.0mm、質量約1,095gとなっており、外形寸法、質量ともにわずかに増加した。ただ、実際に見比べてみても違いを実感できるほどの差はなく、携行性に大きな変化は感じられなかった。また、サイズ感は望遠ズームレンズを装着した同社α7シリーズのミラーレスカメラとほぼ同等といえる。

基本コンセプトは従来モデルを踏襲している一方で、中身は現代の技術に合わせて大きく刷新されており、長年RX10シリーズを待ち望んでいたユーザーにとっては、まさに正常進化を遂げた後継機といえるだろう。

操作性

背面のダイヤルやボタン類は、前モデルから大幅に見直され、「α7 V」などの同社最新ミラーレスカメラと共通する操作性が取り入れられている。

特にマルチセレクターの新採用は操作性に与える影響が大きく、前モデルから買い替える人にとっても、使いやすさの向上を実感しやすい部分だろう。

カメラ天面も前モデルとは大きく異なっており、表示パネル・内蔵ストロボの省略、電源レバーの独立、後ダイヤルの新設など、こちらもαシリーズのミラーレスカメラに近い操作系へと刷新されている。

ファインダーは0.5型・約369万ドットで、倍率は約0.78倍。前モデルは0.39型・約236万ドット、倍率約0.70倍だった。ファインダーに関しては、「α7 V」と同等の仕様となっており、視認性は格段に向上している。

液晶モニターは3.0型の162万ドットで、前モデルの144万ドットよりも、わずかではあるが解像度が増加している。タッチパネル採用の上下チルト式である点に変更はない。

バッテリーとメモリーカードは同室の構成となっている。バッテリーは前モデルの「NP-FW50(1,020mAh)」から、α7シリーズなどと共通の「NP-FZ100(2,280mAh)」に変更され、容量が約2倍となったことでカメラの駆動時間も増えた。メモリーカードはSDカードのみの対応となったが、UHS-IIに対応したことで、データ転送や4K動画の記録をより快適に行えるようになった。

カメラ左側には、上からマイク端子(3.5mmステレオミニジャック)、ヘッドホン端子、HDMIマイクロ端子、マイクロUSB端子、USB Type-C端子が並ぶ。USB端子は充電および給電に対応する。

24-600mm相当の大口径高倍率ズームを搭載

本モデルの大きな特長の1つが、35mm判換算で24-600mm相当となる「ZEISS Vario-Sonnar T* 24-600mm F2.4-4.0」を搭載していること。前モデルから仕様変更はないものの、シリーズを特徴づける24-600mm相当のズーム域を1本でカバーできる利便性は、今なお大きな魅力となっている。

広角端24mm相当で撮影したのが以下の作例。目前に広がる光景を1枚の写真として表現したいときに使いやすい画角だ。

RX10 V/91mm(24mm相当)/絞り優先AE(1/400秒、F5.6)/ISO 100

そして、望遠端600mm相当で、上の作例から中央付近の船を切り撮ってみたのが下の作例。遠くの被写体でも同じ場所から十分な大きさで写すことができる、本モデルの特長がよく分かるだろう。

RX10 V/210mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/250秒、F5.6、+0.3EV)/ISO 100

望遠端の600mm相当までズームした状態が下の画像。35mm判換算で600mm F4と言えば、野鳥撮影などでもよく使われる立派な大口径超望遠レンズだが、それでも十分手持ち撮影可能なサイズに収まっている。

鏡筒の左側には「フォーカスモードスイッチ」「フォーカスホールドボタン」「フォーカスレンジリミッタースイッチ」が備えられている。「フォーカスモードスイッチ」は本モデルで追加された機能。レンズ一体型カメラとしては豪華な装備が採用されていると言えるだろう。

また、絞り値の調節を行うための「絞りリング」が搭載されていることも本モデルの特長の1つであるが、これは鏡筒背面にある「絞りリングクリック切り換えスイッチ」でクリックの有無を切り換えることができる。動画撮影などでクリックを無効にできる。

撮像センサーと画像処理エンジン

搭載する撮像センサーは、有効約2,010万画素の1.0型・積層型「Exmor RS CMOS」だ。1.0型というレンズ一体型カメラとしては大型のセンサーを搭載していることは、RXシリーズに共通する特徴の1つで、一般的なスマートフォンやコンパクトデジタルカメラよりも解像感に優れた写真を撮ることができる。

RX10 V/16mm(44mm相当)/絞り優先AE(1/50秒、F3.2、-0.3EV)/ISO 160

さらに、本モデルでは画像処理エンジン「BIONZ XR」を採用することで高い階調表現や低ノイズ性能などを実現しており、約9年前に発売された前モデル「RX10 IV」と比べれば、格段に磨きのかかった高画質を得ることができると考えていいだろう。

RX10 V/25mm(72mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F5.6、-0.3EV)/ISO 100

圧倒的に進化した被写体認識

画像処理エンジンが刷新されたことで得られる恩恵は、画質の向上だけにとどまらない。αシリーズのカメラと同じく搭載された「AIプロセッシングユニット」と連携することで、「人」「動物」「鳥」「昆虫」「車・電車」「飛行機」といった多様な被写体を認識して、自動的かつ高精度にピントを合わせられるようになった。

イヌやネコの瞳に、素早くピントを合わせてくれるのはもちろんのこと。

RX10 V/35mm(100mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F4.0、+1.0EV)/ISO 250

従来では検出が難しく不安定だった昆虫などでも、問題なく正確にピントを合わせてくれる。

RX10 V/198mm(566mm相当)/絞り優先AE(1/250秒、F4.0)/ISO 1600

さらに、連写速度が最高約24コマ/秒から最高約30コマ/秒に向上し、積層型センサーと画像処理エンジン「BIONZ XR」との組み合わせによって、ブラックアウトフリーでの高速連続撮影も可能となった。また、最大約60回/秒の高速AF/AE演算によって、動体撮影でもAF追従性は高いレベルにある。

RX10 V/208mm(595mm相当)/シャッター優先AE(1/1,600秒、F4.0、+0.3EV)/ISO 250

動画撮影性能

本モデルは4K60p(4:2:2 10bit)での動画記録に対応。

今回は、本モデルにおける最高画質設定となる4K60pでサンプル動画を撮影した。

作例

広角端では約3cm、望遠端では約72cmまで、モードを切り換えることなく近接撮影が可能だ。最大撮影倍率は広角ド端で0.42倍、望遠端で0.49倍に達し、被写体をハーフマクロ並みに画面いっぱいに大きく写せる。目についたものをその場で気軽に大きく写せるのは、本モデルならではの使いやすさと言えるだろう。

下の作例では広角端でワルナスビの花に近づき、花を大きく捉えながら背景も取り入れることで、周囲の環境の中に咲く花の表情を表現してみた。

RX10 V/91mm(24mm相当)/絞り優先AE(1/100秒、F4.0、+0.3EV)/ISO 100

超望遠域までカバーするためネイチャー撮影に注目されがちだが、もちろんスナップ等でも活躍する。焦点距離を幅広く自在に選べるため適切な距離感で構図を調整でき、自由度の高さを実感した。

寺の門前に供えられた草履を、手前の柵を生かして切り撮り、古い草履と新しい草履の対比を表現。編み目や擦れまで描き分ける質感描写に感心した。

RX10 V/26mm(76mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F4.0)/ISO 100

1.0型センサーとはいえ、大口径高倍率ズームを搭載していることもあって、背景は思いのほか大きくぼかすことができる。作例では手前の風鈴にピントを合わせて並びを捉えてみたが、奥に行くほど風鈴の形を適度に残しながら自然にぼかすことができた。クセのない素直なボケ味で、その質もなかなか美しい。

RX10 V/397mm(114mm相当)/絞り優先AE(1/250秒、F4.0、+0.3EV)/ISO 100

近づくことのできない蓮の花を、望遠端の600mm相当で捉えてみた。本モデルの大きな特長である超望遠域の威力はやはり絶大で、普段なら撮影を諦めてしまうような被写体も、比較的容易に画面いっぱいに捉えることができる。さらに、約9年ぶりのモデルチェンジによる画質向上も確かに実感でき、撮影結果に十分に満足できた。

RX10 V/210mm(600mm相当)/絞り優先AE(1/8,000秒、F5.6、+0.3EV)/ISO 6400

まとめ

24-600mm相当の大口径高倍率ズームというRX10シリーズならではの個性はそのままに、αシリーズのミラーレスカメラで培われた画像処理技術や被写体認識、操作系などを取り入れ、現代の撮影環境にふさわしい性能へと大きく進化している。特にAF性能や画質、4K動画など、長い年月を経たからこそ実現できた進化は大きく、RX10シリーズの完成形と呼べる仕上がりだ。

スマートフォンや一般的なコンパクトデジタルカメラでは難しい、背景をぼかした撮影や高倍率ズームを生かした超望遠撮影を、レンズ交換なしで手軽に楽しめるのは大きな魅力である。ネイチャー撮影はもちろん、スナップや日常の撮影まで幅広くこなせる、1台でさまざまな撮影を楽しみたいユーザーに適したカメラといえるだろう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。