新製品レビュー
話題のスマート望遠鏡で「Seestar S30 Pro」で星雲・星団を撮ってみた
2026年7月29日 07:00
夏の夜空は、天の川や夏の大三角、8月にはペルセウス座流星群も控えており、星を眺めるのに絶好の季節だ。アウトドアに出かける機会も自然と増えてくる。
大自然の中で星を見上げると、もっとよく見たい、もっと知りたいという気持ちになるものだ。そんな思いを手軽にかなえてくれるスマート望遠鏡として人気を集めているのが、ZWOの「Seestar S30 Pro」である。天体望遠鏡を初めて手にする人でも、迷わず使いこなすことができる。
Seestar S30 Proでは、デジタルカメラで撮るような星空と風景を一緒に写す「星景写真」も撮影できるが、本来の主な撮影ターゲットは星雲・星団だ。星雲は宇宙空間に漂うガスや塵が近くの恒星に照らされたり励起されたりして輝く天体、星団は局所的な宇宙空間で重力的に結びついた星の集団を指す。いずれも肉眼では捉えにくい対象だが、Seestar S30 Proを使えばその見事な姿を写し出すことができ、夏のアウトドア体験を一層印象深いものにしてくれるはずだ。
すでに人気商品となっているSeestar S30 Proだけに、多くのレビューがネット上に上がっている。そこで本稿では、これから初めて使う人が注意すべきポイントや、少し踏み込んだ便利な使い方を紹介したい。
なお、Seestar S30 Proは中国製の製品だが、国内では大手天体望遠鏡メーカーであるビクセンが取り扱っており、安心して購入できる。
まずは作例から…望遠モード「星雲星団」撮影
ここで紹介する作例は、いずれもSeestarアプリ内でノイズ処理と簡単なレタッチを加えたもので、撮って出しに近い画像だ。夏の夜に撮影できる代表的なメシエ天体を、夜9時頃から深夜にかけて撮影しやすい順に並べてみた。望遠モードの実力が伝わるはずだ。
広角モードで星座・天の川を撮影
広角モードは、メインレンズの上に付いた小さなレンズで撮影する仕組みだ。フルサイズ35mm相当の画角が得られ、いわゆる星景写真を撮ることができる。中でも面白いのが「ステッチング撮影」で、単写真を複数枚撮って合成するモードだ。撮影から合成までフルオートでこなしてくれる。作例は順に天の川中心部の単写真、木星・金星・ふたご座の光跡を捉えたスタートレイル、そして対角線画角150度程度で天の川を広く捉えた広角モザイクなど、いずれも手軽に撮影できる。
望遠モードで太陽と月を撮影
太陽や月は日々の変化が楽しめる観測対象だ。ただし太陽の観測では、必ず付属の太陽観測用減光フィルターを使用すること。このほか、木星や土星といった太陽系の惑星も撮影できる。望遠モードではさらに2倍、4倍の拡大ができるので、合わせて楽しんでほしい。太陽黒点は日々変化していく様子がが楽しいものだが、望遠4倍とすると視野いっぱいに太陽を捉えることができる。もう1点は新月間際の月だが、望遠2倍とすると夜空にぽっかり浮かんだ印象だ。
パッケージと基本セッティング
Seestar S30 Proは、専用のソフトケースにミニ三脚とともにすっきり収まる。このほか太陽観測用フィルター、ショルダーベルト、USBケーブルが付属し、いずれもソフトケースの中に収納できるため、荷物が増えがちなアウトドア旅行にも邪魔にならない。スマートフォンと並べるとよくわかるが、望遠鏡として考えるとかなりコンパクトだ。
基本的なセッティングは、付属のミニ三脚を取り付けて水平な場所に置くだけでよい。方位などを考慮する必要はなく、あとはスマホやタブレットにインストールしたSeestarアプリからコントロールする。
【重要】最初の接続は必ず屋内で
SeestarアプリはAndroid、iOS向けに提供されているので、まずはそれぞれのストアからダウンロードしよう。アプリの準備ができたらSeestar S30 Proの電源を投入することになるが、ここで重要な注意点がある。最初の接続は、必ず屋内で行ってほしい。
Seestar S30 ProのWi-Fiは2.4GHzと5GHzの両方に対応しているが、出荷時に5GHzに設定されている場合がある。日本国内では、この5GHz帯を屋外で使用することができない。屋外で使用すると電波法違反となってしまうのだ。
そのため、必ず屋内で2.4GHzになっているかを確認し、もし5GHzになっていたら2.4GHzに変更しておこう。電波法の罰則は厳しいものなので、必ず確認しておきたい。確認は、アプリのアカウントメニュー(画面右下のアイコン、または望遠鏡画像のタップでも呼び出せる)から「Wi-Fi」をタップし、表示される周波数(赤く表示されているのが現在の設定)をチェックすればよい。
5GHzになっていたら2.4GHzに変更する。この点は、ビクセンが作成した国内ユーザー向け取扱説明書にも記載されているので、あわせて確認しておきたい。
なお、パソコンでの運用は非推奨・動作保証外ではあるものの、Seestarシリーズはパソコンからもコントロール可能だ。Macであればアプリをそのままインストールして使え、Windowsの場合は別途Androidエミュレーターが必要になる。筆者の環境(Mac OS Tahoe 26.1)では快適に動作しており、S30 Proの前々作であるS50を長らくこの方法で運用してきた。動作を保証するものではないが、試す価値は十分にある。使い慣れてきたら挑戦してみてほしい。
セッティングのTips
付属のミニ三脚は便利だが、足元に置くことになるため、うっかり引っ掛けて倒してしまう心配がある。もっと大きな三脚に取り付けたい場合、Seestar S30 Proの取り付けネジは3/8インチである点に注意したい。一般的な雲台のネジは1/4インチなので、変換アダプターを用意しておこう。
Seestar S30 Proは電池を内蔵しており、単体でおよそ6時間使用できる。夜露対策としてレンズにヒーターが組み込まれているが、これをONにすると連続使用時間は短くなる。デフォルトではOFFになっているが、日本の気候では基本的にONにしておいたほうがよいだろう。となると一晩観測するにはバッテリーが少々心許ないので、USB給電で手持ちのモバイルバッテリーを繋ぐのがおすすめだ。
ただし、Seestar S30 ProのUSBコネクターは回転する本体側に付いているため、時間が経つうちにケーブルが絡んでしまったり、自分で引っ掛けてしまったりすることがある。そこでマグネットタイプのUSBアダプターを用意しておくと、絡んでもケーブルが外れてくれるので、安心して一晩中運用できる。
見たい星を見つける方法
Wi-Fiの確認が済み、晴れた夜空にSeestar S30 Proを持ち出したら、早速撮影してみよう。基本はホーム画面から撮影メニューを選び、画面の指示に従うだけだ。月や惑星を見たい場合は「太陽系」を選択すればよい。ただし星雲・星団の観測では、基本メニューからのスタートだと天体名が示されるだけなので、対象を知らないと戸惑ってしまう。
そこで活用したいのが、ホーム画面下部のアイコンから起動できる星図アプリ「SkyAtlas」だ。SkyAtlas上に表示される青枠は現在Seestar S30 Proが向いている位置、赤枠が自分が向けたい位置を示す。画面をスワイプして見たい天体を探し、ピンチで拡大縮小も可能だ。見たい天体が決まったら、画面下部に表示されるサブウィンドウの「GoTo」をタップすればよい。
なお、星座・天の川撮影モードの場合は、一旦そのモードを選択して撮影画面に進むと、右下に北斗七星のアイコンが表示される。これをタップするとSkyAtlasが起動し、画角に応じた枠が表示されるので、超広角ステッチング撮影でも狙い通りのフレーミングができる。
「Expert Mode」を有効にすると、さらに露光時間を延長できるほか、画面内を通過する航空機や人工衛星の光跡が写り込んだショットを自動的にスタックから除外できるようになる。望遠モードはフルサイズ500mm相当の画角だが、それでも人工衛星や飛行機は意外と多く写り込んでしまうため、この機能はありがたい。
「ステーションモード」でもっと便利に
Seestar S30 Proの基本設定は、スマホと直接Wi-Fi接続する方式だが、自宅のWi-Fiなどを経由してスマホやパソコンと接続したり、他の星図アプリと連携したりできる「ステーションモード」も実装されている。
ステーションモードで運用すると、スマホ単体で使うよりも遠くから接続できるようになる。たとえばベランダに置いたSeestar S30 Proを屋内から操作したり、アウトドアでもWi-Fi環境さえあれば、車外に設置した本体を車内から操作したりすることが可能だ。夏は虫に悩まされることもなく、冬は暖かい室内から観測できるので快適に運用できる。
設定は簡単だ。アカウントメニューの「Wi-Fi」を選び、「Station Mode」をオンにして、接続したいWi-Fiのパスワードを入力するだけでよい。一度設定しておけば、以降はそのWi-Fi環境で電源を入れると、スマホやパソコンに自動的に接続されるようになる。
リモートでシェアしよう
Seestarアプリは、S30 Proをコントロールできるだけでなく、SNS的な作りになっていて画像をシェアできるほか、なんとSeestarシリーズのコントロール自体を他者と共有できる機能を備えている。まだベータ版とのことだが、ぜひ試してみてほしい機能だ。
自宅のWi-FiにSeestar S30 Proが接続されていれば、友人にシェアできるだけでなく、自分のアカウントからもつながるため、出先や旅行先から本体を使って天体観測ができる。飲み会の席で披露したら盛り上がるかもしれない。
設定は簡単だ。まずアカウントメニューから「Telescope Network」をタップし、自分のSeestarを選んで指示に従い、「Telescope Network」に「Join」させる。この時点で、自分のアカウントであれば出先からもアクセスできるようになる。
次に、友人にシェア、つまりコントロール権限を付与する。事前に友人にはSeestarアプリでアカウントを作成しておいてもらう必要がある。シェア画面で入力するのは、友人のメールアドレスもしくは携帯電話番号だ。アカウント名ではない点に注意したい。あとは共有期間を設定すれば完了となる(追加できる友人は最大5人まで)。
相手側の設定
シェアが完了したら、友人にSeestarアプリを開いてもらう。ホーム画面から「接続」をタップすると「Seestarと接続」画面になり、「接続するSeestarを選んでください」という表示が出るが、この文字列の中に「リモート」という赤い文字が隠れている。画面の小さいスマホでは見落としやすいので、よく確認してタップしてもらおう。
するとシェアされている接続可能なSeestarが表示されるので、「Online」であることを確認し、「Connect」をタップするだけだ。これで友人もSeestar S30 Proの機能をフルに使えるようになる。自分のSeestarに接続する場合も同様の手順となる。接続はWi-Fiに限定されず、4G通信からも可能だ。
お互いに画像を共有しながらSNSやビデオチャットで話をすると、とても楽しい体験になる。
以上、ステーションモードやリモート接続に関するものはメーカーの動作保証外であるが、うまく動作してくれれば、S30 Proをより便利に使うことができるようになるので、ぜひチャレンジしてみてほしい。
画像の補正
撮影画像は、天文機器で一般的なファイル形式である「fits」で本体内のメモリーに保存されるが、これをレタッチしてJPGに書き出す作業もアプリ内で完結する。
ホーム画面の「Myアルバム」をタップすると、撮影画像のサムネイルが表示される。アプリ上部のタブは通常「保存しました」になっており、ここには撮影後に自動で書き出されるJPG画像や、自分でレタッチしたJPG画像が保存される。ここからエクスポートすることもできるが、より自分のイメージに合ったレタッチをしたい場合は、タブを「Seestar」に切り替えよう。
すると天文機器のRAWデータであるfitsファイルのサムネイルが表示されるので、アプリ左上の編集アイコンをタップする。
まずAIによるノイズ処理が始まるので、しばらく待とう。処理が終わって画像が再表示されたら、画面下部のスライダーで補正を行う。補正できる項目は明るさ、コントラスト、彩度、クロップの4項目だ。
補正が終わったら、右上の書き出しアイコンから書き出し先を選ぶ。「ダウンロード」では本体内メモリの「保存しました」に保存され、「モーメント」はWeChatへの投稿、「Community」はSeestarコミュニティへの公開となる。ローカルへの保存は「エクスポート」を選ぶ。
S30 Proの画像は、このレタッチだけでも十分魅力的な星雲・星団画像に仕上がる。さらに深いレタッチを行いたい場合は、fitsファイルから作業しよう。「Seestar」タブでfitsファイルを表示した状態で、右下の書き出しアイコンから「RAWでエクスポート」を選べばよい。パソコンとS30 ProをUSBで接続すれば外付けメモリとして認識されるので、直接コピーすることも可能だ。
なお、fitsファイルはPhotoshopやLightroomなどでは扱えない。別途、天文用の画像処理ソフトウェアが必要になる。Windowsでは「ステライメージ」がよく使われているが、Macには対応版が提供されていない。無料で試したい場合や、Macでレタッチしたい場合は「Affinity」がおすすめだ。
筆者の思いと、双眼鏡のすすめ
Seestar S30 Proは優れた天体観測機器で、誰でも簡単に良質な天体画像を撮影できる。しかしその一方で、アプリ画面とだけ向き合うことになるため、いま撮影している天体がどこにあるのか、どのような性質のものなのかを知らずに過ごしてしまいがちだ。それでは本当の意味で天体観測、あるいは天文趣味に親しんだとは言えないのではないだろうか。
この懸念は、すでに何年も天体観測や天文趣味に打ち込んでいる方には当てはまらないものだ。しかし、S30 Proが初めての天体望遠鏡という方には、思い当たる節があるかもしれない。写真趣味でもそうだが、まずは被写体に興味を持ち、詳しくなっていくことが上達や趣味が長く続く要因になったりする。
そこで、初めての方にはS30 Proと同時に双眼鏡を購入することをおすすめしたい。S30 Proと8倍程度の双眼鏡は視野の広さが近いため、S30 Proで撮影している星空を肉眼で確かめることができる。とはいえ、双眼鏡で見る星空はS30 Proの撮影画像ほどには見えない。
もしかしたら、最初はまったく見えないかもしれない。それでも、アプリでライブスタックの様子を表示しながら、じっくりと双眼鏡を覗いてみてほしい。数分、あるいは10数分かかるかもしれないが、天体がじんわりと見えてくるはずだ。そこにあると確信でき、アプリ画面という比較対象があることで見えてくるようになるのだ。長く天体観測を続けている方にはよく知られていることだが、これは脳が視覚情報を積算しながらものを見ていることの表れなのだろう。
双眼鏡は倍率の高いものほど高性能と思われがちだが、観測目的別に適した倍率とレンズ口径の目安がある。双眼鏡の製品名には「8×40」のような数字が含まれているが、これは倍率×レンズの直径を表している。レンズの直径を倍率で割ると「瞳径」(単位:mm)という数値が得られ、これは目に入ってくる光の束の大きさ、つまり双眼鏡の視野の明るさを示す指標になる。天体観測にはこの瞳径が5mmから7mmのものが適している。
S30 Proで市民科学に参加しよう
S30 Proでの撮影を行っている間は、美しく気持ちの良い時間が流れる。筆者の場合、S30 ProはWi-Fiルーターを経由したステーションモードで、ランタンの明かりが届かない場所に設置することが多い。Wi-Fiでコントロールできる機材ならではの利点だ。
そのほかにもタイムラプス撮影用の一眼カメラを2台設置し、撮影中の数時間は手が空くので、のんびりと双眼鏡で天体観測を楽しんでいる。キャンプ場であればそのまま一杯やってほんわりしたいところだが、そうもいかない場所では撮影が済んだら撤収して移動する。それでも、満点の星空のもとで過ごす時間はいつも格別だ。
S30 Proを手に入れたら、満点の星空へ一緒に出かける機材にしてほしいと思う一方で、それだけではもったいない使い方でもある。
S30 Proに限らず、Seestarシリーズは誰が撮影しても良好で均質なデータが得られることから、変光星や地球に接近する天体を観測するプロジェクトが立ち上がっている。SeestarアプリにSNS的な側面やリモートコントロール機能が実装されていることからも、こうした市民科学への活用がZWO社の開発意図に含まれているように思われる。こうしたプロジェクトへの参加は市民科学であり、社会的にも科学的にも意義のあることだ。もとより天文趣味は市民科学としての要素が強いもので、筆者もこれまでいくつかのプロジェクトに参加してきた。
国内でS30 Proを使用して参加できるプロジェクトを2つ紹介しておきたい。いずれも都心からの観測であっても有用なデータとなり、撮像とアップロード以外に特別な技術を必要としないものだ。ぜひ参加してみてほしい。S30 Proを活用する機会もさらに増えるはずだ。



































































