【新製品レビュー】カシオEXILIM EX-ZR20
カシオが3月16日に発売した「EXILIM EX-ZR20」は、高速撮影機能を特徴とする「HIGH SPEED EXILIM」のラインナップに属する新製品だ。軽量コンパクトなボディに上位機種ゆずりの撮影機能を搭載しつつ、さらに独自の新機能も盛り込まれている。
実勢価格は4万円弱。カラーはホワイト、ブラック、パープル。
■コンパクトなボディに高速処理エンジンを搭載
HIGH SPEED EXILIMは、画像処理エンジン「EXILIM Engine HS」の高速性能による連写性能を特徴とするEXILIMシリーズの上位ライン。デュアルCPUを搭載し、撮影と画像処理をそれぞれのCPUが担当するという贅沢な設計を採用する。かつてはハイスピードムービーで名を馳せたラインだが、昨今は連写合成による暗所撮影や、高速な撮影間隔をもとにした「快速シャッター」を売りにしている。
EX-ZR20は、2011年9月に発売された「EXILIM EX-ZR15」の後継モデルにして、HIGH SPEED EXILIMの最上位機「EXILIM EX-ZR200」の下位モデルという位置付け。外観はEX-ZR15から変化し、より丸みを強調したデザインになった。
ホワイトとパープルはトップカバーがシルバーとなり、本体色とツートンカラーを構成する。先進機能を強調するような角ばったフォルムのEX-ZR200と異なり、いくぶん優しい雰囲気だ。前面カバーと上カバーは金属製。さらりとした質感のブラックに対し、ホワイトはグロス処理になっている。
上面にはAUTOボタンとBS(ベストショット)ボタンが並ぶ。EXILIMではおなじみのBSボタンは、ベストショット(他社でいうところのシーンモード)を呼び出すもの。EX-ZR20からは後述する「アートショット」もベストショットに含まれている。ベストショットを解除するにはAUTOボタンを押せば良く、即座にオートモード、またはプレミアムオートPROモードになる。基本的にオートモードを使い、ベストショットを使うべき場面に出会ったらBSボタンを押す。ベストショット撮影後はAUTOボタンでオートモードに戻る……という使い方がスムーズだ。
上面に並んだAUTOボタンとBSボタン。モードダイヤルのように使える |
撮像素子は1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーで、有効画素数は1,610万。EX-ZR200やEX-ZR15と同じスペックだ。
レンズは焦点距離25-200mm相当(35mm判換算)F3.3-5.9の光学8倍ズーム。EX-ZR200は光学12.5倍であり、この辺りに差が付けられている。その代わりEX-ZR20の方が40gほど軽量で、それでいてEX-Z200ゆずりの高速性能をほぼそのまま継承。レンズ以外の基本機能のスペックは同等であり、高倍率ズームが必要ない人は本機の方に魅力を覚えるかもしれない。ただし本体サイズはEX-ZR200とあまりかわらない。EX-ZR200が104.8×59.1×28.6mm。EX-ZR20が99.9×59×25.7mmとなっている。
レンズは25-200mm相当(35mm判換算)F3.3-5.9の光学8倍ズーム。センサーシフト式の手ブレ補正機構も備えている |
液晶モニターは3型46万ドット。液晶設定オート時の明るさはまずまずで、不満なら「+1」または「+2」に輝度を上げることもできる。上下の視野角は必要十分に感じた。
カシオ自慢の「快速シャッター」だが、確かに合焦速度と撮影間隔は高速で、「サクサク撮れる」という謳い文句に誤りはない。ただしそのうち0.26秒という撮影間隔については、ポストビューを表示させない設定(「撮影レビュー」を「切」にする)のときだ。もっともポストビューを表示させたとしても、他社の同クラスと比べて高速な部類に入ることは付け加えておきたい。ズーム動作もキビキビしており、使っていてストレスを感じないのはEXILIMの美点だろう。
■強力な暗所撮影機能。待望のデジタルエフェクトも搭載
フル解像度での最速連写は30枚/秒(ベストショット「高速連写」設定時)。もちろんAF追随はしないものの、被写界深度の深いコンパクトデジタルカメラならほとんど気にならない。連写速度は3/5/10/15/30fpsから選択でき、撮影可能枚数はいずれも最大30枚と決まっている。したがって、速いほど連続撮影できる時間が短くなるわけで、これらはHIGH SPEED EXILIMの伝統だ。30fps時の連写時間は1秒、15fpsにすると2秒、10fpsで3秒といった具合。制約はあるものの、手のひらに収まるカメラでこれだけの連写ができるのは痛快だ。
連写を活かした新機能としては、「HSナイトショット」がある。暗所での撮影時に連写して合成、複数の画像を重ねることでノイズを低減するモードだ。従来モデルにもある「HS夜景」と考え方は同じだが、HS夜景がなるべく低感度の撮影画像を合成するコンセプトなのに対し、HSナイトショットは最初から思いっきり増感して連写・合成を行なうようだ。実際にISO12800での撮影を行っている。
BSボタンを押してベストショットの一覧表示を行なったところ |
実際に使ってみると、ほとんど目視できないような暗闇の被写体すら明るく浮かび上がらせる。ISO12800という超高感度域で撮影しているため、さすがに画質はきれいとはいい難い。とはいえ夜間の屋外など、絶対撮れそうになかった暗いシーンを三脚なしで明るく描き出すのは、いままでにない面白さだ。また、HS夜景より明るく映し出すことが可能なため、バーやクラブなどでの撮影時、HS夜景で物足りない場合に、だめ押しで使うのも手だと思う。
もうひとつの新機能が「アートショット」。オリンパスの「アートフィルター」に代表されるデジタルエフェクトだ。カシオはHDRアートにこだわったこともありこの分野は出遅れていたが、ようやく実装された。
後発だけに、アートショットはなかなか豪華。「トイカメラ」「ソフトフォーカス」「ライトトーン」「ポップ」「セピア」「モノクロ」「ミニチュア」から選択可能で、その多くが効果の強さをLEVEL 1〜3の3段階に調整できる。基本はLEVEL 1にしておき、物足りなければLEVELを上げるのがおすすめだ。また、トイカメラやライトトーンは、色調を3種類から選択可能。ミニチュアはぼかさないエリアを6パターンから選べる。
アートショットには効果を3段階から選べるものがある | タイプを3つから選ぶものも。写真は「トイフォト」の設定画面 |
アートショットで変わっているのが、撮影時にエフェクトのプレビューが表示されない点だ。つまり、撮影後にしか効果がわからない。そもそもこの手のエフェクトは、ライブビューを活かした機能として誕生した。しかしカメラやエフェクトによってはプレビューの処理が遅かったり、プレビューと撮影後の効果に差異があったりする。「だったら最初からプレビューをなくせばいいのでは」というのがカシオの考え方なのだろう。ただし撮影後の処理にはそれなりに時間がかかるのは、他機種のデジタルエフェクトと同様だ。
HSナイトショットとアートショットは、本機から装備された機能。そのため、上位機種のEX-ZR200には搭載されていない。特にHSナイトショットは興味深い機能なので、いずれそれぞれの機能について詳しく紹介してみたい。
シーン認識機能も前モデルの「プレミアムオート」から「プレミアムオートPRO」に進化。逆光を自動判別してHDR処理を行なうようになった。HDRはHIGH SPEED EXILIMが得意とするところ。連写合成でハイライトとシャドウのバランスを自然な感じに整えてくれる。
動画は1,920×1,080/30fpsのフルHD記録に対応。圧縮方式はH.264。このクラスもほぼフルHD対応が当たり前になってきた。ステレオ音声の記録も可能だ。また、上位機種にない動画機能として「プレミアムオートムービー」が利用できる。要するに動画記録時のシーン認識機能で、「人物」「夜景」「風景」「風景+青空」「マクロ」「風景+緑」のいずれかをカメラが自動設定してくれる。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカードを採用。バッテリーはNP-110。撮影可能枚数は約335枚と多め | USB/AV端子とHDMI端子。USB充電にも対応するが、専用ケーブルが必要 |
■まとめ
アートショットの追加もあり、今まで以上にベストショットとオートを行き来するカメラになったというのが印象。そこで前述した通り、上部の2つのボタンが役に立つわけだ。特にベストショットからオートに即座に戻せるのはありがたい。カシオ機ではおなじみのギミックだが、今回ほど多用したことはなかった。
1/2.3型撮像素子を搭載したモデルとあって、画質については多くを語らないが、等倍にしないなら十分自然な階調と精細感が得られている。高感度画質についても、個人的には明部ならISO1600でも問題ない。低感度と高感度の差が少ないのは、裏面照射型CMOSセンサーの中でも、有効約1,600万画素クラスが持つ美質のひとつだと思う。
既存のベストショットも充実しているし、その上でHSナイトショットとアートショットという遊べる機能が追加されたEX-ZR20。遊びごころを持ちながら、日常的に気軽につきあえるカメラだと感じた。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・画角
広角端 / EX-ZR20 / 約8.3MB / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.4mm | 望遠端 / EX-ZR20 / 約6.9MB / 4,608×3,456 / 1/800秒 / F5.9 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 35.2mm |
・高感度
・HSナイトショット
通常撮影(ストロボ発光) / EX-ZR20 / 約5.7MB / 4,608×3,456 / 1/8秒 / F3.3 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 4.4mm | HSナイトショット / EX-ZR20 / 約4.0MB / 3,648×2,736 / 1/8秒 / F3.3 / 0.0EV / ISO12800 / WB:オート / 4.4mm |
・アートショット
アートショット:ライトトーン / EX-ZR20 / 約6.6MB / 4,608×3,456 / 1/200秒 / F8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.4mm | アートショット:モノクロ(LEVEL 2) / EX-ZR20 / 約9.6MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F4 / 0.0EV / ISO250 / WB:オート / 6.1mm |
通常撮影 / EX-ZR20 / 約8.5MB / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.4mm | アートショット:ポップ / EX-ZR20 / 約8.9MB / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F8 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.4mm |
・近接撮影/ボケ
EX-ZR20 / 約7.4MB / 4,608×3,456 / 1/100秒 / F3.3 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 4.4mm |
・料理モード
EX-ZR20 / 約7.5MB / 4,608×3,456 / 1/60秒 / F4.2 / 0.0EV / ISO800 / WB:オート / 7mm |
・逆光
EX-ZR20 / 約5.7MB / 3,456×4,608 / 1/800秒 / F3.3 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.4mm |
・夕日モード
EX-ZR20 / 約5.9MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F8 / 0.0EV / ISO80 / WB:太陽光 / 4.4mm |
2012/3/16 00:00