新製品レビュー
SONY RX100 VI(実写編)
シリーズ初、8.3倍ズームの画質を見る
2018年8月6日 13:41
ソニーの1型コンパクト、RX100シリーズの6機種目。上着のポケットに入る小さなボディやRX100 IIIから採用されたポップアップ式のEVFを踏襲しながら、レンズは8.3倍の高倍率24〜200mm相当のZEISS Vario-Sonnarを搭載。0.03秒の高速AFや最高約24コマ/秒の高速連写など、幅広いシーンに対応できるようになった。
画角変化
RX100シリーズのZEISSレンズは、どれも優れた描写性能で評価が高い。シリーズ初となる8.3倍ズームレンズの性能も気になるところだ。
実写したところ、コンパクトデジタルカメラの24-200mm相当とは思えないほどズーム全域で解像力が高い。画面中央部と四隅にやや差はあるものの、よほど拡大しなければ気にならないだろう。特にテレ側でも甘くならず、解像力がとても高いのは驚いた。
また絞り開放から安定していて、1段から2段絞ると四隅の描写は向上するが、こちらも拡大した比較で確認できるレベル。画角の変化を楽しみながら、どの焦点距離でも絞り開放から安心して使える。
高感度
RX100 VIは、コンパクトデジタルカメラとしては大きめの1型CMOSを搭載しているが、フルサイズやAPS-Cサイズに比べると決して大型センサーとはいえない。しかしISO 3200でも十分実用的。個人的には、2LサイズのプリントやWeb用なら、ISO 6400も実用の範囲内と感じた。
ここでもISO 6400で夕暮れ時に、ベンチに置かれた造花を撮ってみた。拡大すると細かい部分のディテールは失われているものの、不自然さはない。
レトロな雰囲気にするため、電球の灯りでクラシックカメラを撮った。シャドーにノイズ感はあるが、1型センサーのISO 6400とは思えない階調だ。どんなシーンの撮影で、最終の仕上がりはどの大きさにするのか、を意識するのがRX100Ⅵの高感度の使いこなしだと感じた。
最短撮影距離
最短撮影距離は、ワイド側でレンズ先端から8cm。テレ側で100cm。描写性能を維持するためなのか、決してマクロ撮影に強いとはいえない。
それでもワイド側で最短にすると、小さな南京錠もこれだけクローズアップできる。絞り開放はF2.8なので、F1.8のRX100III〜Vほど大きなボケは得られないが、背景の雰囲気が伝わってくるボケ味だ。
テレ側の最短ではボトルをクローズアップ。200mm相当でここまで寄れれば十分だろう。近接撮影でもラベルの文字がはっきり読めるほどシャープだ。ただ中間の画角でもう少し寄れると、花やテーブルフォトがさらに撮りやすくなる。描写性能が落ちる、あるいはレンズが大柄になるのかもしれないが、マクロ切替機能などを搭載してもう1歩寄れるようになると嬉しい。
連写
連写の最高速は、映画と同じ約24コマ/秒。実際にシャッターボタンを押しても、写真を撮っている、というより、動画を撮影している感覚だ。
約24コマ/秒ですれ違う電車を狙った。バッファメモリーも大容量化され、画質「ファイン」では233枚まで連続撮影できる。そして連続撮影後のメモリーカードへの書き込み中でも、Fnメニューから設定の変更が可能になった。
ただし書き込み中は次の撮影ができないことに注意。約24コマ/秒だとあっという間に100枚くらい連続撮影してしまうため、高速タイプのSDカードを使っても書き込みに待たされることがあった。
RX100 VIのSDカードスロットはUHS-IでUHS-IIには対応していない。これはぜひUHS-II対応を実現してもらいたい。
とはいえ、ポケットサイズのコンパクトデジタルカメラで動体を狙うのはこれまで現実的とは思えなかったのだが、RX100 VIなら高速AFと高速連写、そして8.3倍ズームで新たな動体表現の可能性があると感じた。
4K動画
本格的な4K動画機能を備えているのもRX100 VIの特徴だ。
4K/30pの100Mbpsで、走る東京さくらトラムを撮影した。ファストハイブリッドAFは確実に動く車両を捉えている。普段は写真撮影だが、本格的な動画もトライしてみたい人にもおすすめできるカメラだ。
作品
ワイド端24mm相当で、広角レンズらしい誇張された遠近感を狙った。街灯や建物の細かい部分までしっかり解像している。1型センサーの高倍率コンパクトでここまで写るのは驚きだ。RX100 VIの背面モニターはチルト式なので、下から見上げるアングルも楽に撮れる。
テレ端200mm相当。橋の下をくぐる遊覧船と背景の建物が望遠効果で接近しているように見える。望遠側でも解像力は高く、実にシャープだ。また手ブレ補正機能を搭載しているとはいえ、望遠撮影ではカメラをしっかり構えたい。そうしたときに、ポップアップ式のEVFは威力を発揮する。T*コーティングされたファインダー光学系により、視認性も高い。EVFは背面モニターが見辛い明るい場所で活躍した。
アーケード内の薄暗いところ。それでもAFは迷わずスピーディーに合焦した。また感度はISO 200に設定している。それでもベース感度と変わらない滑らかな階調だ。
焦点距離はテレ端に近い192mm相当で、着物を着たマネキンをクローズアップ。絞り開放でもシャッタースピードは1/25秒の遅さだ。だがRX100 VIは約4段分の手ブレ補正機能を備えているため、手持ちでもブレずに撮れた。背景も綺麗にボケている。
まとめ
RX100シリーズはどのモデルも評価が高く、それぞれに特徴があり、愛用者がいる。そして今回、8.3倍ズームモデルが加わったことで、自分の撮影に合ったRX100シリーズを選ぶ楽しさがさらに広がった。
RX100 VIは、RX100 III〜Vの「大口径レンズ&最短5cmの近接撮影」とは性格が異なり、8.3倍ズームレンズと高速連写で被写体を選ばないオールラウンドに楽しめるカメラに仕上がっている。
そしてレンズが高倍率ズームでもRX100シリーズで好評の高画質を維持しているところも注目だ。1型センサーと高倍率ズームでここまで写るのかと、実写していて何度も驚かされた。日常の目として、また軽快に撮影したい旅行用として、さらにレンズ交換式の一眼レフやミラーレス機のサブとして、様々なシーンで活躍すること間違いなしのコンパクトデジタルカメラだ。