ヤシカ「DVF828」

~スキャナー内蔵のデジタルフォトフレーム~

 今やデジタル家電の一ジャンルとして定着した感があるデジタルフォトフレーム。多様化も進み、無線LANへの対応や、PCのサブディスプレイとして使用できる製品なども登場している。このコーナーでは、デジカメWatchがピックアップしたデジタルフォトフレームについて、特徴的な機能や使用感を紹介する。
DVF828

 今回紹介するヤシカの「DVF828」は、本体に反射原稿用のスキャナーを内蔵したデジタルフォトフレームだ。通常のデジタルフォトフレームと同様、メモリーカード内や本体メモリ内の写真データを液晶ディスプレイに表示できるほか、写真プリントをスキャンして表示することが可能。ユニークな特徴をもったデジタルフォトフレームといえる。

 まずはスペックを確認しておこう。液晶ディスプレイ部は8型(800×600ピクセル)。タッチパネルではない。操作インターフェイスとしては、画面縁の部分にタッチセンサーボタンを備えている。また、リモコンも付属する。

 対応メディアは、CF、SDHC/SDメモリーカード、MMC、メモリースティック、メモリースティックデュオなど。USBメモリーにも対応する。また、本体保存用に1GBの内蔵メモリを搭載している。静止画はJPEGのみだが、MPEG-1/4とMotion JPEGに動画や、MP3の音楽データも再生可能だ。重量は約785gで、外寸は幅235mm、高さ180mm、奥行きが85mm(突起部は除く)となる。

 近年でこそ、写真をデータでやりとりしている人が多いと思うが、フィルム時代は当然、プリントした写真を直接受け渡していただろう。読者の中にも、押入れの奥には古い写真がどっさりたまっているという人もいるのではないだろうか。本来、そういった写真をデジタルフォトフレームで表示させるためには、写真をスキャナーやインクジェット複合機などでデータ化し、外部メディアなどに転送するといった手間がかかる。そこで本機はスキャナーを一体化。PCやインクジェット複合機を介さず、プリントのデータ化とデジタルフォトフレームへの表示を1台で行なう訳だ。

 ちなみに、スキャン可能なサイズは4×5~10×15cmで、Lサイズとハガキサイズに対応する。読み取り解像度は、最大1,200×1,800ピクセル(通常画質150dpiと高画質300dpiの切り替えに対応)となる。
縁部分に備えた「タッチセンサーボタン」。通常は暗くなっているが、触れることで各種アイコンが光る正面下部には、スキャナの給紙部を備えている。取り込む写真などが曲がらないようにスライド式のガイドを使って調整しよう

 スキャンはとてもカンタンだ。タッチセンサーボタンの「SCAN」を押し、取り込み状態になったら、受け口のスライダーを調整して写真を差し込むだけ。あとは「ファイルを保存」を選択すれば、内蔵メモリーにデータとして保存される。

 取り込む際に気を付けたいのは、スライダーをしっかりと、取り込む写真の幅に合わせること。取り込んだ写真を回転させて保存することに対応しているが、微調整はできない。少しでも角度がついてしまうと、斜めの状態でスキャンされてしまうのだ。後継機が出るのであれば、取り込んだ写真の四隅を選択して角度を調整できるといった機能がほしいところだ。

 また、スキャンの際はその構造上、背面に少し隙間を作らなくてはならない。壁にピッタリとくっつけてしまうと紙詰まりの原因になりかねないので気を付けたい。

 DVF828でスキャンした画像は、一度内蔵のメモリに保存され、メニューにある「読み取り写真」からアクセス・表示が可能。さらに、接続したUSBフラッシュメモリにスキャン画像をコピーできる。写真そのものをアルバムなどに戻してしまっても、バックアップデータとしてパソコンなどに保存しておけば、プリンターなどを利用して印刷することもできる。この辺の使い勝手は、パソコンの周辺機器であるスキャナーと同じだ。


プリントをスキャンするときは、こんな感じになる背面には排紙部がある。トレーなどはなく、そのまま排出されるので、背面にはスペースを確保しておこう

 スキャンにかかる時間を測ってみたところ、読み取り画質の設定を150dpiに設定し、Lサイズ写真をスキャンした場合は10.6秒程度。条件を300dpiに変更した場合は19.4秒程度だった。絵柄の異なる写真でもスキャンしてみたが、速度にはほとんど影響がなかった。

 “写真をデータ化したい”という理由であれば、同価格帯の単機能スキャナを購入したほうが良いだろう。画質も専用のスキャナーに比べると段違いに低い。最近よく見る小型スキャナと同等だろうか。ただし、DVF828の画面で見る限りで、本格的なスキャナーとの差は感じられない。別途プリントすることを考えないのなら、DVF828だけでスキャンから表示までが完結する。そういう用途なら無駄がなく、コストパフォーマンス的には優れているといえそうだ。

150dpiでスキャンした画像300dpiでスキャンした画像

 スキャナーを搭載した点以外では、アラームやスリープといった機能のほか、取り込んだ写真データを使った時計&カレンダー表示、スライドショー機能など、機能面は非常にシンプルな印象だ。時計およびカレンダー表示では、画像表示部の画像がスライドしていくことで、目を楽しませてくれる。

 ボディは大きいが、縦位置にも対応する。角度検知用のセンサーを内蔵し、自動で表示画像を回転させることが可能。ただし、設定画面などは回転しない。

 メニュー画面には「写真」、「音楽」、「ビデオ」、「読み取り写真」、「カレンダー」、「設定」というアイコンが並ぶ。写真・音楽・ビデオは、内蔵メモリーや挿入した記録メディアに保存された各データを再生するモード。読み取り写真は、スキャンした写真データを再生するモード。カレンダーは時計/カレンダーを表示するモード。設定は各種設定メニューを表示するモードだ。

各種モード画面。記録メディアを選んだあと、この画面に切り替わる電源を入れてはじめに表示される画面。1GBの内蔵メモリのほか、各種記録メディアにアクセスできる。なお、接続されているメディアはアイコン表示され、されていないメディアはグレーダウンしている
カレンダーアイコンを選択すると、記録メディアに保存された写真データと時間、カレンダーが1画面で表示される設定画面からスキャナの解像度が変更できる。選べるのは「通常画質(150dpi)」と「高画質(300dpi)」の2種類
読み取り写真アイコンを選択すると、スキャナで取り込んだ写真を表示できる取り込んだ写真データは、USBフラッシュメモリや各種記録メディアにコピー可能だ

 操作については、タッチセンサーでもリモコンでも、きびきび動いて大変気持ちのよいレスポンスが得られた。設定項目が少ないこともあって階層は浅く、操作は単純で、これまで使ったデジタルフォトフレームの中でもトップクラスの使い心地と感じた。

 液晶ディスプレイの表示性能についてはもう一歩というところ。コントラストが低く、全体的に淡い印象を受ける。特に階調表現の面ではまだまだ改善の余地はありそうだ。

付属のリモコン。適度なクリック感で、この手のリモコンにしては使い勝手がよい印象

 プリントをスキャンして、そのまま表示するという本機の試みはとても面白い。写真を飾るスペースの問題で、プリントをアルバムにしまいっぱなしになっているという人には、手軽に写真を活用する手段としてオススメできる。また、デジタルフォトフレームに表示する目的で、プリントをデータ化するためにスキャナーの購入を検討しているのであれば、本機を使用することで、ファイルを移動する手間がひとつ減るという考え方もできる。そういう意味では、「プリントをデジタル化して楽しむ手段」のひとつとして、DVF828を利用するという選択肢もあるのではないだろうか。



(飯塚直)

2010/6/9 00:00