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セットアップはわずか数秒。ワンプッシュで高さが決まる新発想の動画三脚

「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE Tripod」

今回紹介するのは、動画撮影用の小型三脚「SmallRig x Potato Jet TRIBEX SE Tripod」。カメラリグの世界ではお馴染みの中国「SmallRig」社の製品で、登録者100万人を超えるYouTuber、Potatojet氏とのコラボ製品となっている。

まずは三脚としての主要スペックを挙げると、重量は3.7kg。動画用三脚としては割とコンパクトな部類で、ワンオペでの携行などに使いやすいサイズと言える。収納時の全長は72cmと短く、多くのスーツケースに収納可能なのも便利な点だろう。脚部分の対荷重は15kg、雲台部分は6kg。伸縮により地上約23cmから166cmまでの高さになる。素材はアルミ製だ。

ハンドルグリップによる伸縮システム

この三脚の特徴は、「X-Clutch」と称するユニークな油圧によるワンプッシュでの脚の伸縮システムにある。

脚1本あたり3段の構成なので、一般的な三脚であれば、伸縮時には6つの脚ロックネジかレバーを操作することになる。しかしこの製品では、全ての脚の全ての段を、1つのグリップを握るだけでロック解除して伸ばすことができる。反対に、握りを緩めればロックされるため、ワンハンドでセッティングが可能になっているのだ。

以前紹介したザハトラーのFlowtechでは、脚1本がひとつのロック操作に集約され、全体で3回の操作になってその利便性が高く評価されていた。だがこちらは1つのハンドルグリップを握るだけなのだ。

これにより脚の下部をロックするためにかがんだり、座ったりする必要が減って腰など身体にかける負担が少なくなる点が嬉しいポイント。不整地などに設置する場合にもそれぞれの脚の長さを微妙に調節しやすい。

移動状態からセッティングを紹介。3本の足を広げたら、X-Clutchのハンドルをボタンを押しながら起こし、レバーを広げ、握ると脚がフリーになるので思い通りの高さ、角度にしてレバーから手を離す。油圧作動の関係でレバーを離して1秒ほど待ってやるのが確実に止めるコツと言えそうだ

水平出しも容易に

さらにここで便利なのが、脚をロックする時に水準器を見ながら水平出しが同時にできてしまうということ。

通常、ビデオ三脚では脚の長さを調節して狙った高さにしたら、その後にお釜と呼ばれる球体関節状の部分で雲台全体の水平を出す、という作業が欠かせなかった。だが、本製品であれば脚の長さが瞬時に微調整可能なので、高さ調節と水平出しが同時にワンアクションで行えるのだ。

お釜を廃した設計なので動画用三脚としては珍しくセンターポールも装備されており、通常のビデオ三脚では難しかった高さの微調整も気軽に行えるようになっている。

セットの全容。肩掛けと手持ちができるパッド入りのキャリングケース、三脚本体、六角レンチ、スマホホルダー、伸縮可能パンバー、マンフロット互換プレート

パイプの滑り

実際に使うと、本当にこれまでとは比べ物にならないくらいに高さと水平のセッティングが容易にできて、移動しながらの撮影も楽だと感じる。特に伸ばす時の動きはとてもスムーズで、グリップ部を握るだけで脚が自重でストンと落ちて来て地面に接地してくれる。

これまで写真用のカーボン三脚などを使っていた人にとって、このさっと伸びる感覚は一部の高級な製品に限られていたので、このパイプの滑りの良さだけでも満足度が高いのではないだろうか。

その反面、どうしても使いにくいと感じてしまったのはローポジションでの撮影。脚部の開脚角度は3段階で、狭い状態の2ポジションではいいフィーリングなのだが、角度を最大にすると脚が地面に向かって水平に近くなるので自重で伸びて行きにくく、さらに雲台部の傾きに与える影響も相対的に少なくなるので水平出しが困難になる。

そのうえ、この状態ではセンターポール下端が地面にぶつかってしまうために取り外す必要があるのだが、ポールはイモネジで固定されているので、取り外しに結構な手間がかかってしまうのだ。

カウンターバランス付きの雲台

脚部分は画期的な構造だが、雲台部分は小型三脚として極めて一般的。オイルによるフリクションと約4kgに対応したカウンターバランスを内蔵している。どちらも硬さや重さの加減はできない簡易的なものだが、可動部の遊びも少なくこのクラスとしては意外にスムーズなカメラワークが実現できた。

実際に3kgほどのセットアップのカメラを載せてみたが、ティルトネジを緩めると、カメラがゆっくりと下を向くように動くのでカウンターバランスのバネが弱目と感じられるかもしれない。

BlackMagic Cinema Camera 6Kにてカメラワークのテスト撮影。重心高の高目な3kgほどのセットでの撮影だが、ゆっくり斜めのワークで満足度がなかなか高かった。パンニング最後の止める場面でほんのわずかなおつり(揺り戻し)が見られるが、大画面ではともかく、スマートフォンの画面では気が付きにくいレベルに収まった

だが、これはカメラの重さだけでなく、セットアップの内容により重心が上下することでもバランスが変わるので、一概にカタログの重量数値だけで判断できない問題だ。

それでも滑らかなオイルフルードとカウンターバランスの反発バネによって、手を離した途端にカメラがガクン! と下を向き三脚が倒れるようなことはないし、カメラワークをよくアシストしてくれている。高速なスポーツや鳥などを追う撮影、緻密なワークが求められる物撮りなどは難しいものの、多くの場面で満足度が高いだろう。

雲台トッププレートには六角レンチがマグネットで収納されている。雲台下部の緑色の円形部は水準器。3本の脚の結合部には別売りのマジックアームなどを取り付け可能な1/4インチのネジ穴が、左右に回転止めの穴を用意した形で装備されている。X-Clutchの操作ハンドルは真下90°で収納、使用時は水平に起こすようになっているが、もう少しほかの角度でも止まるように設定されていた方が使いやすく感じられる

高コスパモデルの信頼性

ここで心配になるのはその信頼性。SmallRig社自体が老舗と呼ばれるような古いメーカーでもなく、しかも他社にはない油圧伸縮という新しい機構を備えた製品だけにここが気になる人も多いだろう。

もちろん僕もこの製品を数週間しか試してはおらず、耐久性に関しては実体験レベルでは未知数。海辺の使用などで稼働部に砂を噛んだ時などの動作の安定性も気になる。

だがメーカーのアナウンスでは油圧構造は-20~60℃の範囲で安定しており、数万回に及ぶ動作耐久試験を行なっているという。さらに4年間という長期にわたる製品保証が標準でついているのは心強い。

実はこの製品、製品名に「SE」とついているいわゆる高コスパモデル。標準版に比べて脚の材質をカーボンからアルミにすることや、カウンターバランスの強さ固定などの機能簡略化によってコストを約半分に抑えたモデルで、さらに機能に富んだ標準モデルも用意されている。機会を見て、そちらの標準モデルもレビューしてみたいので楽しみにしていて欲しい。

脚の1段目外装は、印象的なヘキサゴンパターン。触感が柔らかいエラストマーで、寒い日にも指に優しく滑りにくい
吉村永

YouTubeがリリースされる前からネットでカメラ業界情報動画を配信していた「元祖カメラ系動画配信者」。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物撮影のカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。