今回のテーマはピクチャーエフェクトの「イラスト調」。ふとしたきっかけからハマってしまい、思わず色々試してみた結果を報告したい。DSC-RX100という尖った機種のレポートなのに、今回も地味なネタで恐縮の至りだ。
写真をイラスト風に処理するエフェクトは、以前から各社の製品で存在している。輪郭を抽出して階調を平板にする処理が主に行なわれており、2007年頃にはコンパクトデジタルカメラですでに一般化していたと思う(カシオのEXILIM EX-Z1000が最初だと思う)。いまさら目新しく感じる人はいないだろう。
しかしそんなイラスト調エフェクトが、最近急激に進化しているのはご存知だろうか。いまならOLYMPUS OM-D E-M5のアートフィルター「リーニュクレール」がその代表格だが、画像処理エンジンの処理能力の進化もあり、以前に比べるとより自然なイラスト調の画像が得られるようになっているのだ。
例えばオリンパスのリーニュクレールでは、本物の手書きを想起させる複雑な輪郭処理や、単に階調をフラットにするだけではない、微妙な階調表現の巧みさにより、鈴木英人、あるいは、わたせせいぞう風のイラストを見事に再現している。
DSC-RX100のイラスト調もその系譜に沿ったものだが、どちらかというと輪郭に特徴があり、手書の妙を強調したものとなっている。これがなかなか面白く、一時期は色々な被写体で試して喜んでいた。タッチが毛筆ぽいからだろうか、特に和風な被写体がハマるのが面白い。線の強調や崩れ方が思わぬ効果を出してくれるため、背景はなるべくぼかさず、パンフォーカスにした方が良いようだ。あと、樹木や葉っぱもきれいな表現となる。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約4.4MB / 5,472×3,648 / 1/200秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 10.4mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約5.0MB / 5,472×3,648 / 1/400秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 10.4mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約4.0MB / 5,472×3,648 / 1/500秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 27.5mm |
もちろん、白い雲に太い黒線が入ったり、食べ物が気持ち悪く表現されたりと、変な結果になることも多々ある。それでもこれまでのイラスト調に比べると段違いで味があるし、表現として良くできている。
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約3.4MB / 5,472×3,648 / 1/1,600秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 10.4mm |
イラスト調のパラメーターは「弱」、「中」、「強」の3段階。弱だともの足りず、強だと極端な処理に走りがちだが、面白いのはやっぱり強だ。コントラストが強いシーンで極端に輪郭が太くなったり、看板などの文字が味わい深く崩れていったりと、予想を超える変化が楽しい。
ピクチャーエフェクト「イラスト調」を呼び出したところ。Fnボタンを使った例 | こちらはメニューから。どちらもライブビューに反映されないのが残念 |
面白いイラスト調のピクチャーエフェクトだが、使い勝手の面で残念なところもある。その筆頭は、イラスト調と同時に普通の写真を同時記録してくれないこと。また、記録フォーマットはJPEGでなければならず、RAWまたはRAW+JPEGにすると機能しないので、JPEG=イラスト調、RAW=元画像という手も使えない。これらはピクチャーエフェクト全般にいえることだ。大事な場面で使うには覚悟が必要となる。あと、動画にピクチャーエフェクトをかけることも不可能だ。
8月29日追記:読者の方より、撮影済みの画像にピクチャーエフェクトを適用する方法を教えていただいた。再生モードにおいて、撮影画像に「水彩画調」と「イラスト調」のみピクチャーエフェクトをかけられるのを確認した。通常の撮影画像とは別に保存される。イラスト調なら弱、中、強の3段階を選択可能。ありがとうございました。
ライブビューで効果を確認できないのもマイナスポイント。慣れるまでは弱、中、強のどれを使うか判断が難しい。かといって撮影後、すぐに再生画面で確認しようとすると、「画像保存中 実行できません」と表示され、数秒間操作を受け付けないところも何とかして欲しい。
こうした不満はあるものの、今回はエフェクトの面白さに負け、不覚にもハマってしまった。ほかにもDSC-RX100には「絵画調HDR」、「水彩画調」、「ポスタリゼーション」といった、派手めな非写真系エフェクトたちが仕込まれている。気が向いたら試してみようと思う。
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約5.3MB / 3,648×5,472 / 1/640秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 16.2mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約6.6MB / 5,472×3,648 / 1/80秒 / F1.8 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 10.4mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約4.6MB / 5,472×3,648 / 1/60秒 / F5 / 0.0EV / ISO6400 / WB:オート / 32.8mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約3.9MB / 3,648×5,472 / 1/40秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 16.6mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約2.9MB / 5,472×3,648 / 1/40秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 15.4mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約5.0MB / 3,648×5,472 / 1/80秒 / F4 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 24.1mm |
ピクチャーエフェクト:イラスト調(強) / DSC-RX100 / 約3.8MB / 3,648×5,472 / 1/200秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO125 / WB:オート / 32.8mm |
2012/8/29 00:00