RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5が発売されてから、はや2カ月が過ぎた。すでに日々活用されている方も多いと思う。かくいう筆者も海外旅行で利用してみたので、そのときの印象を綴ってみたい。
筆者にとって旅行中の撮影は、主に2種類に分類できる。ひとつは記録を重視した撮影。行く先々で見た興味あるものや光景をメモ的に残すものだ。もうひとつは、じっくり腰を落ち着けて撮る撮影。たいていは三脚を立て、夕景や夜景といった風景をメインに撮影している。
そのうちGXRには、これまで前者の撮影を担当させていた。カメラユニットは、A12 28mm F2.5とA12 50mm F2.5を多用。メモカメラとしてiPhone 4SやAndroid端末も使用するが、印象的な光景に出会ったときは、やっぱりGXRを取り出してしまう。
一方、三脚を使っての風景撮影では、GXR以外のノンレフレックス機(ミラーレス機)、またはデジタル一眼レフカメラを使用。理由は、それらのシステムにズームレンズが存在するからだ。APS-Cサイズ相当の撮像素子を搭載するA12 28mmとA12 50mmの画質に不満はないが、使える画角が2種類だけなのは厳しい。しかも遠景がメインなので、いわゆる足で画角を変えるのには限界がある。本来ならGXRというひとつのシステムで、記録撮影と風景撮影を両立したいところだが……。
しかしここにきて、GXRを記録撮影と風景撮影の両方に使える可能性が出てきた。そう、ズームレンズを採用したA16 24-85mmの存在だ。今回の旅行で使ってみると、これが想定通りの働きをしてくれた。
まずは、記録撮影におけるインプレッションから。
最も効率的に感じたのは、先割れ型のレンズキャップ「LC-3」だった。いちいちレンズキャップを着脱しなくて良いのは、移動中のスナップ撮影にぴったりだ。すでにS10ユニットやP10ユニットでその便利さを実感しているが、外寸が大きいA16 24-85mmユニットであっても、使いごこちはすこぶる良い。
また、カメラユニットが軽いため、片手撮りが容易にできるのもメリットと感じた。片手撮りはブレが目立ちやすくなるので御法度とされているが、スーツケースを引っ張っているときにメモ的な撮影を行なうなど、個人的には使用頻度が高い。そんなとき、GXRの吸い付きの良いラバーグリップと、見た目より軽いA16 24-85mmユニットの組み合わせは快適だ。右手親指でズームレバーを操作すれば、片手でズーム操作が行なえるのも、GXRシステムのユニークなところだろう。
A12 28mmユニットより広角の24mm相当をカバーしているのもうれしい。旅行先では風景や建物など、広い範囲をレンズに収めたくなるもの。そういったとき、28mmと24mmの差を感じる。また、背景を含めての自分撮りにも有利。狭いホテルの室内を記念に撮る場合にも、より広角な画角ほど威力を発揮するはずだ。
旅行中は、撮影モードダイヤルのMY1ポジションに「24mm」というマイセッティングを保存。速写・広角スナップ用の設定とした。具体的には、撮影モード=A、絞り値=F4、AFモード=スポットAF、スナップ時フォーカス距離=∞、フルプレススナップ=オン、ISO感度=AUTO-HI、絞り自動シフト=オン、そして電源ON時の画角を24mm相当とした。
RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5のマイセッティング。「24mm」と「35mm」が街中や移動中のスナップ用、「TRIPOD」が三脚を試用した風景撮影用だ |
ステップズームもオン。24mmで画角が広めに感じたら、28mm相当や35mm相当にステップズームで変更する。旅行のように次々と状況が変わる場合、ユニット交換すら時間が惜しいこともある。そんなときでも、いつものA12ユニットど同様の使い勝手で、多彩な画角を切り替えられる。ズームレンズ搭載ユニットの面目躍如といったところだろう。
画質・サイズはJPEG(3:2F)、Fn2にはアスペクト比を割り当てた。起動時のズームポジション以外は、いつも使っているA12 28mmの設定とほぼ同じである。
MY1「24mm」の中身(一部)。電源オン時の画角を24mm相当にしておき、必要があればステップズームで調整する。AFが基本だが、フルプレススナップ→無限遠のパンフォーカス撮影も使える |
同様に、MY2に「35mm」も作っておいた。ダイヤルをMY2にしてから電源オンにすると、自動的に35mm相当の画角でスタートするモードで、それ以外はMY1の「24mm」と同じ。これもよく使った。
A16 24-85mmで残念なのは、最短撮影距離がレンズ先端から約25cmというスペックだ。被写体に寄り切れないことで日頃から不満を覚えているA12 28mmユニットより、さらに約5cm長い。そのため旅行で撮ることの多い、料理などを撮る場合にも難儀した。その場合は、素直にA12 50mmユニットを使った方が良いだろう。
なおこうした記録重視の撮影なら、A16 24-85mmユニットではなく、S10 24-72mmユニットを使うのも一考だろう。A16 24-85mmの弱点である本体サイズが大幅に小さくなり、最短撮影距離にも余裕がでる。もちろん画質はA16 24-85mmの方が上だが、メモ的な記録を残すのがメインなら、個人的に(暗所以外は)S10 24-72mmでも十分だと思う。A16 24-85mmにはない手ブレ補正機構もありがたい。
一方、三脚を使っての風景撮影でも、A24-85mmユニットは大活躍した。ズームで画角が調整できるので、ズームレンズ付きのデジタル一眼レフカメラと同じような条件で撮影できる。これでようやく、GXRを風景撮影のメイン機材として利用できることに感激した。
MY3「TRIPOD」の設定の一部。フォーカス無限遠、最低感度、ホワイトバランス屋外という風景写真用のセッティングにしてみた |
ズーム以外に強調したいのは、GXRにはフォーカス距離を無限遠に固定するAFモードがあること。これが風景撮影ではことのほか便利なのだ。というのも、AF一眼レフカメラのレンズの場合、無限遠付近には遊びが設けられているため、MFでぴったり無限遠に合わせるには微調整が必要になる。ライブビューがない頃は、ちゃんと無限遠に合っているか結構不安だった。それがGXRなら、電源オンにするだけで確実に無限遠になる。これは風景写真を撮る上で大きな強みだと思う。
マイセッティングのMY3には、三脚での風景撮影用として「TRIPOD」モードを設定した。撮影モード=絞り優先、ISO感度=200、ホワイトバランス=屋外、電子水準器=オン、ステップズーム=オフなどを記憶させたもので、もちろんフォーカス=無限遠にしている。
三脚を立てるまでは、手持ち用のMY1やMY2で撮影。三脚を立てたらMY3に切り替える。設定を失敗することなく、素早く確実にセッティングできるのはGXRの強力なカスタマイズ性能のおかげだ。
というわけで、A16 24-85mmユニットが大活躍だった今回の旅行。スナップカメラとしての側面が強いGXRだが、これで風景やネイチャーなどへの使い道が見えたのでは、と考えている。もちろん、明るい望遠レンズや防塵防滴ボディといった本格的な装備は望むべくもないが、活用範囲が広がるのはうれしい限りだ。
おまけ:GR LENS A12 28mm F2.5と比較
28mm相当に揃えて撮影。この被写体だと、中心部の解像性能はそれほど変わらないように見える。A16 24-85mmの方が若干コントラストが高く、画素数が多い分描写が細かい。周辺画質はA12 28mmの方が優秀だ。
2012/6/7 00:00