EOS 50DはEOS DIGITALとして初めてレンズの光学的な収差をデジタル処理する機能が設けられました。レンズの周辺光量落ちを補正する「周辺光量補正」です。この機能はEOS 50D以降に発売されたEOS DIGITAL各機種にも搭載されています。
時には味として演出にも用いることもあるレンズの周辺光量落ちですが、作品の意図や被写体によってはない方が好ましい場合もあります。「周辺光量補正」を「する」に設定すると、装着したレンズの周辺光量落ちを自動的に補正してくれる機能です。
補正の制御はかなり細かくて、次の要素で変わります。
- 装着したレンズの機種
- ズームレンズの場合は撮影時の焦点距離
- ピント位置
- F値
周辺光量落ちそのものが上記の条件によって変化するので、その変化に合わせて補正が制御されている様子がテスト撮影によって感じられました。まあ、レンズ毎のデータが予めカメラ内に記録されているらしく、撮影条件とそのデータが照合されて補正されている様子です。
キヤノンに問い合わせて確認したところ、現行のEFレンズおよびEF-Sレンズは、フィッシュアイとTS-Eレンズを除き全てレンズ毎の補正データがEOS 50Dに記録されていて、周辺光量補正が可能だそうです。ただし残念ながらEOS 50D登場以降に現れた新型レンズ、
- EF 100mm F2.8 L Macro IS USM
- EF-S 15-85mm F3.5-5.6 IS USM
- EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS
これら3本については現状は未対応です。
いずれ新型レンズの情報が入ったファームウェアが公開されれば対応できると思いますが、今のところは公式なアナウンスはありません。
新型レンズでもRAW(およびSRAW1、SRAW2)で記録すれば、キヤノン純正RAW現像ソフト Digital Photo Professional(以下、DPP)で補正して現像ができます。
もちろん、ほかの対応しているレンズも同様です。DPPでは周辺光量補正に加え、歪曲収差、色収差、色にじみの補正も行えます。
なお新型レンズについては、今のところはEOS 7DにバンドルされているVer.3.7.1.1のDPPでのみ対応しますが、キヤノンのWebサイトでDPPのバージョンアップ版も近日中に公開されることでしょう。
ほかの項目はその設定が一目でわかるが、周辺光量補正はこの先の階層にしないと確認できない | 「補正データあり」のレンズを「する」にすると補正される。RAWなら「しない」でもDPPで補正可能 |
初期型のEF 300mm F2.8 L USMのように古いレンズは補正データがないので補正できない。DPPでも不可 |
DPPの「レンズ収差補正」画面。周辺光量補正はここから行う |
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
●周辺光量補正の例
共通データ:EOS 50D / EF-S 18-200mm F3.5-5.6 IS / 約4.3MB〜約9.2MB / 4,752×3,168 / 1/1,600秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 18mm
・JPEGで撮影(カメラ内で補正)
補正なし | 補正あり(補正量70に自動設定) |
・RAWで撮影(DPPで補正)
補正量100に設定 | 補正量120に設定 |
●感度による周辺光量補正の変化
※わかりやすいようにコントラストを最大にしています。
共通データ:EOS 50D / EF-S 18-200mm F3.5-5.6 IS / 約3.6MB〜約5.1MB / 4,752×3,168 / F5.6 / 0EV / WB:太陽光 / 135mm
補正しない(ISO100) | 補正する(ISO100) |
補正する(ISO400) | 補正する(ISO1600) |
補正する(ISO3200) |
作例を撮っていて途中で気がついたのですが、周辺光量の補正量はISO感度によってその度合いが変わります。具体的には低感度ほど補正量が多めで、感度を高くするにつれて補正量は少なめになります。レンズの収差による周辺の暗部を明るく補正するので、高感度ほどノイズが目立たないように少なめにしているのでしょう。なかなか細かい芸当です。ついでに「高感度撮影時のノイズ低減」の設定と連動して、「強め」だと高感度でも補正量を多めにしてくれるとなおよいと思いました。
同時記録したRAWのデータで見るとISO100は補正量70、ISO3200では補正量40となります。この補正量の加減はISO感度だけによるもので、レンズやF値などの他の条件とは関係ない様子です。
RAWだとISO感度に関係なく30〜120まで補正量を変えられます。100でほぼ完全に補正、120では過度に補正されて周辺が明るく中央が暗い画像にもなります。JPEGではISO100時の70が補正量最大です。JPEG派の方で周辺光量をより強く補正したい場合は、低感度で撮ると良いでしょう。
さて、約1年間に渡ってお送りしたEOS 50Dのレポートも今回で最終回です。もともとライブビューによる顔認識とコントラストAFを試すのが目的で購入したEOS 50Dですが、ポートレート撮影の現場で予想以上に有効であることが判明し、大活躍してくれました。
しかしその後、EOS 5D Mark IIにも同等の機能が搭載されライブビュー撮影はEOS5DMarkIIがメインとなり、最初の目的は果たすことができました。
肝心のライブビューと顔認識ですが、EOS DIGITALではEOS 50Dは筆者の勝手な分類では第二世代となり非常に実用的となりました。
EOS-1D Mark III、EOS-1Ds Mark III、EOS 40Dが筆者的には第一世代。これらの機種は初期のライブビュー搭載機でコントラストAFは未搭載。液晶モニターも荒く拡大してもピント合わせはイマイチやり辛い。電池の消耗が激しい。撮像素子の発熱でライブビューが10分も持たなく途中で強制解除されてしまう。レリーズ後にライブビュー画像が表示されるのにけっこうタイムラグがある。などなど実用性は今ひとつ感がありましたが、ライブビューの先進性は感じさせてくれました。
コントラストAFが初搭載されたEOS Kiss X2が筆者的に1.5世代。コントラストAF搭載により実用度は上がりましたが、他の欠点は第一世代のままでした。
EOS 50Dから筆者的には第二世代です。顔認識に加え、第一世代の欠点を克服。液晶は緻密になりピント合わせも高精度。電池の持ちもよくなり、撮像素子の発熱も少なくなって数十分間ライブビューが持続。30分くらい経過した頃に発熱を警告するマークが現れましたが、強制解除されることもなく画像にも特に問題ありませんでした。
ライブビューによる顔認識とコントラストAFを試すという当初の目的を果たした後は日常のスナップ(主にファミリーフォト)や、撮影現場のオフショットとして活躍してくれました。
特にキットレンズのEF-S 18-200mm F3.5-5.6 ISの利便性と内蔵ストロボ。エントリー機の敵ではない連写性能。プロ仕様機に肉薄するシャッターレスポンス。EOS-1Ds Mark III、EOS-1D Mark III、EOS 5D MarkIIという布陣の中で出番は少ないものの、十分な活躍を見せてくれました。
筆者個人は最新型の上位機種EOS 7Dに移行しますが、EOS 50Dはコストパフォーマンスとバランスのよい高性能機として、まだまだ現役として活躍できる実力を持っていると思います。
最後に付け加えておきますが、一年間の総ショット数は約6万回。この間不具合はもちろんエラーも一度も起きなかったのには頼もしい限りでした。
EOS 50D / EF 50mm F1.4 USM / 約4.3MB / 4,752×3,168 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 50mm | EOS 50D / EF 70-200mm F4 L IS USM / 約5.5MB / 4,752×3,168 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 200mm |
EOS 50D / EF 24mm F1.4 L II USM / 約4.3MB / 4,752×3,168 / 1/40秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 24mm | EOS 50D / EF 24mm F1.4 L II USM / 約5.6MB / 4,752×3,168 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 24mm |
EOS 50D / EF 50mm F1.4 USM / 約6.5MB / 3,168×4,752 / 1/180秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 50mm |
2009/10/15 20:09