Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

北の大地で野生動物たちの姿を待ち構える

動物撮影になくてはならない井上浩輝さん愛用の三脚&雲台「LM-363C+LH-55+LR-50」

まっ赤なオンコの実を食べる“きねずみ”ことエゾリス。鈴なりになった実を食べる姿を撮るときは、撮影をする側にとっても長期戦。重い超望遠単焦点レンズは手持ちせずに機動性の高い三脚に装着して撮影したい
ソニー α7R Ⅴ/FE 400mm F2.8 GM OSS/400mm/マニュアル露出(F2.8、1/1,250秒)/ISO 800/WB:オート

北海道でキタキツネをはじめ、さまざまな野生動物や自然風景の撮影を続けている井上浩輝さん。三脚には、野生動物の撮影に欠かせない超望遠レンズをしっかりと支えられる剛性と、極寒の状況下でも扱いやすい操作性を求める。その条件に見合う三脚と雲台は「LM-363C+LH-55」。

さらに、雲台のプレートを「LR-50」にカスタマイズすることで、使い勝手を向上させている。井上さんのこだわりが詰まった愛用の三脚について魅力を語ってもらう。

井上浩輝

1979年生まれ。風景の撮影をする中、キタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになる。キタキツネの写真で注目を集め、毎日放送「情熱大陸」などに出演。早稲田大学非常勤講師

※本企画は『デジタルカメラマガジン2024年1月号』より転載・加筆したものです。

極寒の地で動物の素敵な表情を待ち構えるために

自然風景や野生動物の撮影をするとき、できればカメラは手持ちで構えたい。しかし、薄暗い環境でシャッター速度が遅くなりがちなときや焦点距離が長く重たいレンズを使った撮影では手ブレが気になってくる。野生動物の姿を長時間待ち続けるときも、手持ち撮影では限界がある。そんなシーンでは三脚を積極的に使うことになる。

ここで、僕が選んでいる三脚と雲台を紹介したい。まず、三脚はLMサミットシリーズのLM-363Cを使用している。サミットシリーズを選ぶのは、スチル撮影用の自由雲台だけでなく、ときにボールレベリング機能が付いたビデオ雲台も使いたいからだ。

サミットシリーズには雲台の取り外しや付け換えが素早く行える機構が採用されている。2つの雲台を素早く使い分けられるだけでなく、空港の保安検査場通過時に、雲台をさっと外して三脚の全長を60cm未満にできる点も便利だ。

航空会社関連の撮影を多くしているため、この機構はとても重宝している。撮影時は脚の展開も素早く行いたいことから、縮長がギリギリ60cmを切りながらも、セッティングのスピードが速い3段のモデルを愛用中だ。

「LM-363C+LH-55+LR-50」
LM-363C
価格:10万4,500円(税込)/全伸長:1,350mm/最低高:95mm/収納高:595mm/段数:3段/最大脚径:36mm/耐荷重:35kg/質量:1,850g
LH-55
価格:5万5,000円(税込)/高さ:98mm/ベース径:72mm/耐荷重:25kg/質量:867g
LR-50
価格:1万5,840円(税込)/幅:50mm/高さ:22mm/長さ:61mm/質量:131g
LM-363Cはベース部をカスタマイズできる三脚で、フラットタイプやハーフボールタイプの雲台を装着できることはもちろん、ギア式センターポールなども組み合わせられるフレキシブルな構造が魅力だ
LM-363Cの収納高は59.5cm。60cm未満になり、三脚の国内線航空機の機内持ち込み可能サイズを満たすケースが多い。(航空会社によって異なるので、搭乗予定の航空会社のルールを事前に確認してほしい)

スチル撮影用でメインとなる雲台は、自由雲台のLH-55だ。超望遠レンズとカメラで質量は合計4kg近くになるが、それをしっかりと支えてくれる直径55mmの大型ボールにはとても安心感がある。

さらに、おすすめしたいのは特注仕様のクランプレバーだ。LH-55購入時の状態では大きなネジでアルカスイス互換のプレートを締めるのだが、冬の北海道のように気温が著しく低くなると、そのネジがきつくなって、プレートをしっかりと締め上げたのかよく分からなくなってしまう難点がある。

このネジ方式を、クランプレバー方式のロック機構を持つLR-55に換装することで、問題が解決する上に、ネジ式ではできない目視による締め上げ位置の確認が可能となる。

LH-55は大型のボールを備えた自由雲台で、耐荷重25㎏と非常に安定性が高い。プレートロック部をクランプレバー方式のLR-55にカスタマイズすることで、厳寒の地で使いやすくしている
クランプレバー方式のLR-50に換装することでレバーの開閉でプレートをロックでき、ロック状態がひと目で把握できる。プレート部のLR-50への換装は、両製品を購入の上、事前連絡後に南鳩ヶ谷のワイドトレード事務所に発送すると対応可能だ(送料のみ自己負担)。並行輸入品は対応不可となる点に注意しておきたい
シャッター速度は25秒。滑らかな水面と湖面を走る気嵐を写し止めた。超望遠単焦点レンズ撮影仕様で風景写真にはオーバースペックな三脚と雲台も、こうしたシーンでは絶大な安心感がある
ソニー α7R Ⅴ/FE 70-200mm F2.8 GM OSS/98mm/マニュアル露出(F16、25秒)/ISO 100/WB:オート

この仕様の三脚と雲台が最も活躍するのは、なんと言ってもキタキツネの撮影だ。400mmクラスの超望遠単焦点レンズを装着したカメラのファインダーをのぞきながら、いつ巣穴から出てくるか分からない子ぎつねたちをじっと待ち構えられる。撮影開始から数時間後にやっと出てくるような彼らの素敵な仕草や表情を確実なものにするために、なくてはならない道具になっている。

重量級機材である400mmの超望遠レンズをセットした状態でも安定する剛性の高さが魅力的だ。動物たちの登場を長時間待ちながらの撮影でも苦にならない
朝のパトロールから帰ってきた父さんぎつね(左)と母子(右)。このようなシーンをじっと待って超望遠単焦点レンズで撮影するには、手持ちではなく頑丈な三脚と雲台に備え付けてじっくり待ちたいものだ
ソニー α7R Ⅴ/FE 400mm F2.8 GM OSS/400mm/マニュアル露出(F4、1/1,250秒)/ISO 250/WB:オート
井上浩輝