交換レンズレビュー

キヤノン RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM

小型軽量な超広角ズームレンズ 驚くほどの近接撮影能力にも注目

「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」は、キヤノンRF-Sレンズで初めての超広角ズームレンズ。35mm判換算で焦点距離16-29mm相当の画角になるため、同じくキヤノン純正の標準ズームレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」や、高倍率ズームレンズ「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」よりも、さらに広がりのある景色を撮りたい、遠近感を強めたいという要望に応えます。

また、デジタル一眼レフカメラ用のキヤノン「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」よりもコンパクトに。質量も約150gと軽量化されています。

もうひとつポイントがあります。それは近接撮影能力がかなり高いこと。最短撮影距離はオートフォーカス(AF)利用時が14cm、マニュアルフォーカス(MF)時で8.6cm。後者の最大撮影倍率は0.5倍となり、いわゆるハーフマクロの域に達しているのです。

広角とクローズアップ。どこか相反するようですが、そのどちらも1本で楽しめるという魅力を持ったレンズです。

外観・仕様

他のRF-Sと似ているとてもシンプルな造りで、すっきりとした外観です。スイッチやボタン類はなく、ズームリングとピントリングのみが備わっています。操作感はズームリングがやや重め、ピントリングはやや軽め。

AFでのピント合わせは静かでスムーズです。近接撮影時も素早くて驚きました。ピントが合う、合わないの境目、つまり最短撮影距離付近でもAFが迷うことがほとんどありませんでした。このストレスを感じることなく撮れるのが気持ちよかったです。

鏡胴は沈胴式で、ズームリングを広角側にさらに回すと先端部分が収納されてコンパクトに持ち運べます。一度繰り出せば10mmから18mmの間でズームしますが、広角側へさらに回し込めば収納されます。

作例

超広角レンズの持ち味は広い画角です。後ろにスペースがない室内などでの撮影で使われる他、視覚を超えるような範囲の景色を写せるため、頭上を撮るとダイナミックな構図にもできます。枝や葉が細かく描写されていることも注目です。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/125秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 160

被写体に近づくほど遠近感を強調できます。和傘の手前側になるほど、こちらへ迫り出してくるような迫力がありますね。焦点距離が短くなるほど遠近感が強調されるので、程よい画角でうまく整えてください。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、−1.3EV)/ISO 100

焦点距離が短いほど、さらに被写体に近づくほど、遠近感は強まります。逆に望遠端で少し離れて撮影すれば、自然な印象で撮ることもできます。布地や編み目を見て分かるとおり、この焦点距離でも十分な解像力があります。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/320秒、F8.0、−1.3EV)/ISO 100

逆光でハナモモを撮影しました。見上げるようにしたので、背後には太陽が写り込んでいます。いわゆる逆光状態ですが目立ったフレアは発生せず、とても自然でクリアに描写できています。シャープ感は損なわれていません。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F4.5、+0.7EV)/ISO 100

最大撮影倍率はなんと0.5倍です。しかし、AF時とMF時で最大撮影倍率が異なります。

  • 最短撮影距離:AF時0.14m(10-18mm)/MF時0.086m(10mm時)
  • 最大撮影倍率:AF時0.23倍(18mm)/MF時0.5倍(10mm時)

望遠端ではAFでもMFでも拡大率に大きな差はありません。しかし広角端になると、AFとMFでの差が広がります。MFにするとぐっと近くまでピントが合うので、広角での近接表現が好きな方には、とても使いでのあるレンズといえます。

広角端
AF
MF
望遠端
AF
MF

被写体に迫った時の広角と望遠の違いは、背景として写る範囲の大きさです。超広角は特に背景が広く写るので、主役に迫りつつも背景にある風景を広く伝えることができます。美しい風景をバックに人物を撮りたいときは、画角が広いレンズの方が周囲の環境を見せることができます。

また、ボケは被写体に迫るほど大きくなります。背景をぼかしたいときは接写能力の高さを活かして、被写体に近づきましょう。超広角でもほんのりとぼかすことができます。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/200秒、F6.3、+0.7EV)/ISO 100

このレンズでテーブルフォトを撮るときの強みは、クローズアップ能力が高いことと背景を広く取り入れられること。料理を大きく写すだけではなく、背景を取り入れて、店内の雰囲気も感じさせることができます。10mm側の絞り開放F4.5で撮影したので、背景が少しボケています。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/10mm(16mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F4.5、+0.7EV)/ISO 4000

望遠側のAFでボタンの花芯をクローズアップしました。超広角ズームレンズで撮ったとは思えないほどのクローズアッです。28.8mm相当とはいえ、ここまで近づけると、すぐ後ろの花びらもほんのりとボケます。

EOS R10/RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM/18mm(28.8mm相当)/絞り優先AE(1/80秒、F6.3、+0.3EV)/ISO 4000

まとめ

広い画角によるワイド感、遠近感。そして、近接撮影能力。これがこんなコンパクトなレンズに詰まっているというのが驚きです。

このレンズを使う前、寄ることはできてもその画質はどれほどのものかと思っていました。私は普段からクローズアップ撮影が中心なのですが、この広角ズームレンズでは寄れることに加えて、さらに高い解像力や逆光耐性も持ち合わせていることに驚きました。

小型軽量なシステムということもあり、撮っていてとても楽しいレンズに感じました。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。