交換レンズレビュー
フォクトレンダー NOKTON 50mm F1 Aspherical
意外? 実は解像力重視の超大口径標準レンズ
2024年5月1日 07:00
コシナからフォクトレンダー「NOKTON 50mm F1 Aspherical」のソニーEマウント版が3月に登場した。これまでVMマウント、ニコン Z マウント、キヤノンRFマウント用が発売済みだったが、今回ソニーユーザーにとって待望のリリースとなった。
1番の特徴はその明るさで、開放F1という超大口径を実現している。実勢価格は税込23万2,780円前後だ。
従来、フォクトレンダーのEマウントレンズで最も明るい50mmのレンズは「NOKTON 50mm F1.2 Aspherical」だったほか、純正では「FE 50mm F1.2 GM」が一番明るい。それらを上まわる明るさレンズとはどんな描写なのかをチェックしていきたい。
使いやすいサイズ感のF1.0レンズ
外形寸法は約79.3×69.3mmで重さは590g。それなりのボリューム感があるが、F1という明るさを考えるとMFとはいえまとまりは良い。α7 IIIのボディとも相性が良く、バッテリーグリップ無しでもバランスは良かった。フィルター径も67mmに収まっている。
フォクトレンダーというとクラシックなデザインテイストで知られるブランドだが、本レンズはダイヤパターンのローレットを採用。ややモダンな印象を受けた。実際滑りにくく回しやすさは申し分ないといったところ。
ピントリングの回転角は180度強と大きく、精密なピント合わせが必要となる絞り開放付近でもしっかりと合わせられた。滑らかな感触もさすがはコシナのクオリティといったところだろう。
ボディからの絞り操作はできない。絞りリングでのみ調整でき、1/3段のクリックストップがあるが、動画撮影時などを想定して、クリックストップを無効できるようになっている。絞り羽根は12枚と一般的なレンズよりも多く、絞り込んでも比較的円形に近いところもポイントだ。
電子接点を備えており、各種の補正やボディ内手ブレ補正も使用できる。画面拡大もピントリングに連動しているので、精密なピント合わせをしたい場合には活用したい。もちろんピーキング表示も可能だ。
F1.0ならではの独特の描写
まずは、少々離れたウエストアップほどの距離で絞り開放の描写を見た。大口径レンズらしい柔らかさで人物が浮き立つ写りだ。
続いては少し絞り込んだF2で撮影。柔らかさは残しながらもピントの合った部分はグッと鮮明になる。まつげ1本1本をくっきりと描写していた。
敢えて絞り開放で植物の前ボケを作って見た。もう少し絞っても良いシーンだが、ここまでボケを大きくできる懐の広さはある。前ボケの緑のグラデーションも滑らかで良い。
最短撮影距離の0.45m付近まで近づいて撮影。球面収差がかなり抑えられており、こうした撮り方で発生するやや白っぽいモヤのようなものは見られなかった。
こうした輝度差の大きなシーンでも色付きなどがほとんど無い。太陽がビルに反射して強い逆光のシーンでもあるが、コントラストもしかり保たれていて安心して使える。
高感度画質が良くなったり手ブレ補正が進化した現代のカメラでは、昔ほどレンズの明るさが有利になることは少なくなったかもしれないが、それでもF1.4から1段も明るいのは暗いシーンでは心強い。
F8に絞り込んで全体的な解像力を見た。これだけ離れた場所から撮っても柵の装飾模様まで手に取るように見て取れるのは驚きだ。右側の樹木も流れるようなことは無く、しっかり写っていた。
まとめ
フォクトレンダーブランドの超大口径レンズということで、全体的にソフトな描写を想像していたが、使ってわかったのはそれとは逆の解像力重視タイプだったということだ。ソニーEマウントセンサーに最適化された設計が奏功しているのだと思う。
絞り込んだときの解像感も凄いが、絞りを開けても一昔前の大口径レンズのようなソフトさは無く、しっかりと芯のある描写なのが印象的だった。
絞って使っても良し、ここぞというときには絞りを開けてほかのレンズとは違った圧倒的ボケ量を演出することもできる。最新レンズにふさわしい描写力で表現のレンジが広まる1本だ。
モデル:進藤もも