交換レンズレビュー

NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR

使いどころの多い、APS-Cセンサー用の“寄れる“広角ズームレンズ

DXフォーマット用のNIKKOR Z レンズで最も広い画角が得られるズームレンズ「NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR」が発売されました。

画角は35mm判換算で焦点距離18-42mm相当。18mm相当ともなると、景色を広く写すのはもちろん、広角ならではの極端な遠近感を生かした撮影も楽しめます。それでいて、予想以上に被写体に寄れることにも驚きました。

今回はこのレンズを使って、スナップ、ポートレート、花、テーブルフォトに挑戦してみました。

外観・機能

小ぶりな鏡筒なため「Z 30」に装着したときのバランスが良く、この組み合わせだととにかく持ち運びしやすい印象です。

またズームしても全長が変わらず、インナーフォーカス式なので、撮影中にカメラとレンズのバランスも崩れにくいと感じました。

※レンズフード「HB-112」は別売

ズームリングとコントロールリングの2つは、どちらも軽すぎず重すぎず、滑らかに操作できます。

ズームリングにはNIKKOR Zレンズ初のリニア駆動のパワーズームが採用されています。「Z fc」「Z 30」のカスタムボタンやリモコン「ML-L7」からのズーム操作が可能で、広角に強いところからも、動画撮影をかなり意識したレンズといえるでしょう。上述した通り、リングを回してのズーム操作は自然に行えます。

一方のコントロールリングはマニュアルフォーカスでのピント合わせのほか、絞り値や露出補正などを割り当てられます。

それぞれのリングは幅・質感・溝の形状が違うので、指に触れた感触でしっかりとした違いが感じられます。背面モニターを見ながら操作したとしても、とまどうことはありませんでした。

作例

レンズ本体は約205gと軽量で、かつコンパクト。手持ちで撮っていても腕への負担は少なく、お散歩しながらでも持ち運びのしやすさを感じました。

しかし超広角ズームだから、「標準ズームや望遠ズームなどなど、ほかのレンズも持っていかないと……」と思いきや、このレンズは35mm判換算で42mm相当までカバー。しかもけっこう寄れるので、思ったより幅広いシーンに対応できます。


広角端の12mmで撮影しました。ただ花畑を見下ろした写真でも、画面の端ほど外へと放出するような勢いがあり、視野角以上の広がりを感じる写真になります。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/12mm(18mm相当)/絞り優先AE(1/125秒・F8.0・+0.3EV)/ISO 100

ヤグルマギクの花の直径は4,5cmほど。超広角ズームだからあまり寄れないだろうと思いきや、普通に花をクローズアップするには十分の倍率が得られたのにびっくりしました。

最短撮影距離はズーム全域で0.19m。最大撮影倍率0.21倍。28mm側を選び、最短撮影距離で撮影したので、最大撮影倍率となります。望遠やマクロのような大きなボケとはいきませんが、背景もボケていますね。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/28mm(42mm相当)/絞り優先AE(1/100秒・F5.6・+0.3EV)/ISO 100

ケーキを真上から撮影しました。望遠側は標準域に近い素直な画角で、着席したままの状態でも撮影ができるワーキングディスタンスとなります。

望遠側の絞り開放はF5.6と決して明るくはないのですが、ケーキにピントを合わせたところ、お皿がほんのりとボケました。レンズ、カメラともにコンパクトなのでお店で撮影しても目立ちにくく、テーブルフォトにも使いやすいレンズです。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/25mm(37mm相当)/絞り優先AE(1/80秒・F5.6・+1.7EV)/ISO 200

「Z 30」の「クリエイティブピクチャーコントロール」のうち、「チャコール」「グラファイト」「バイナリー」「カーボン」といったモノトーン系は陰影が強調されます。

下の写真では「カーボン」を選択。黒を引き締めつつ、レンズのシャープ感を生かしながら、交差する直線を意識して写しました。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/15.5mm(23mm相当)/絞り優先AE(1/80秒・F8.0・+0.7EV)/ISO 100

12mm側で撮影したポートレート。やはり遠近感がついて、背景に広がりを感じます。ポートレートはアップで撮ったり、逆光で撮ったりもしたのですが、どれもシャープでクリアな印象でした。まつ毛がしっかり解像されていて、子どもならではの整った肌のきめまで再現しています。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/12mm(18mm相当)/絞り優先AE(1/320秒・F5.6・+0.7EV)/ISO 200

近所の川沿いを撮影散歩していた一枚です。しゃがんで土手の坂道の先に5月の青空が映えていました。

超広角12mm側で撮影していますが、中央部に比べるとやや差はあるものの、画面右下や左下の隅の草もシャープに写っています。

Z 30/NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR/12mm(18mm相当)/絞り優先AE(1/3,200秒・F4.0・+0.3EV)/ISO 200

まとめ

超広角ズームなので撮れるものが限られるかと考えていたのですが、広がりのある風景はもちろんのこと、42mm相当までカバーする焦点域の広さや、最短撮影距離の短さから、アップもそれなりに得意なのは驚きです。公園の花畑や都市のスナップ、カフェ、子どものポートレートと、予想以上にオールマイティーに使えるレンズでした。しかも画質は上々。

広角表現の入門として、旅行やスナップの常用レンズとして、そしてVlog用のレンズとして、とにかく活用範囲の広いレンズです。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。