交換レンズレビュー
NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR
使いどころの多い、APS-Cセンサー用の“寄れる“広角ズームレンズ
2023年6月1日 08:00
DXフォーマット用のNIKKOR Z レンズで最も広い画角が得られるズームレンズ「NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VR」が発売されました。
画角は35mm判換算で焦点距離18-42mm相当。18mm相当ともなると、景色を広く写すのはもちろん、広角ならではの極端な遠近感を生かした撮影も楽しめます。それでいて、予想以上に被写体に寄れることにも驚きました。
今回はこのレンズを使って、スナップ、ポートレート、花、テーブルフォトに挑戦してみました。
外観・機能
小ぶりな鏡筒なため「Z 30」に装着したときのバランスが良く、この組み合わせだととにかく持ち運びしやすい印象です。
またズームしても全長が変わらず、インナーフォーカス式なので、撮影中にカメラとレンズのバランスも崩れにくいと感じました。
ズームリングとコントロールリングの2つは、どちらも軽すぎず重すぎず、滑らかに操作できます。
ズームリングにはNIKKOR Zレンズ初のリニア駆動のパワーズームが採用されています。「Z fc」「Z 30」のカスタムボタンやリモコン「ML-L7」からのズーム操作が可能で、広角に強いところからも、動画撮影をかなり意識したレンズといえるでしょう。上述した通り、リングを回してのズーム操作は自然に行えます。
一方のコントロールリングはマニュアルフォーカスでのピント合わせのほか、絞り値や露出補正などを割り当てられます。
それぞれのリングは幅・質感・溝の形状が違うので、指に触れた感触でしっかりとした違いが感じられます。背面モニターを見ながら操作したとしても、とまどうことはありませんでした。
作例
レンズ本体は約205gと軽量で、かつコンパクト。手持ちで撮っていても腕への負担は少なく、お散歩しながらでも持ち運びのしやすさを感じました。
しかし超広角ズームだから、「標準ズームや望遠ズームなどなど、ほかのレンズも持っていかないと……」と思いきや、このレンズは35mm判換算で42mm相当までカバー。しかもけっこう寄れるので、思ったより幅広いシーンに対応できます。
広角端の12mmで撮影しました。ただ花畑を見下ろした写真でも、画面の端ほど外へと放出するような勢いがあり、視野角以上の広がりを感じる写真になります。
ヤグルマギクの花の直径は4,5cmほど。超広角ズームだからあまり寄れないだろうと思いきや、普通に花をクローズアップするには十分の倍率が得られたのにびっくりしました。
最短撮影距離はズーム全域で0.19m。最大撮影倍率0.21倍。28mm側を選び、最短撮影距離で撮影したので、最大撮影倍率となります。望遠やマクロのような大きなボケとはいきませんが、背景もボケていますね。
ケーキを真上から撮影しました。望遠側は標準域に近い素直な画角で、着席したままの状態でも撮影ができるワーキングディスタンスとなります。
望遠側の絞り開放はF5.6と決して明るくはないのですが、ケーキにピントを合わせたところ、お皿がほんのりとボケました。レンズ、カメラともにコンパクトなのでお店で撮影しても目立ちにくく、テーブルフォトにも使いやすいレンズです。
「Z 30」の「クリエイティブピクチャーコントロール」のうち、「チャコール」「グラファイト」「バイナリー」「カーボン」といったモノトーン系は陰影が強調されます。
下の写真では「カーボン」を選択。黒を引き締めつつ、レンズのシャープ感を生かしながら、交差する直線を意識して写しました。
12mm側で撮影したポートレート。やはり遠近感がついて、背景に広がりを感じます。ポートレートはアップで撮ったり、逆光で撮ったりもしたのですが、どれもシャープでクリアな印象でした。まつ毛がしっかり解像されていて、子どもならではの整った肌のきめまで再現しています。
近所の川沿いを撮影散歩していた一枚です。しゃがんで土手の坂道の先に5月の青空が映えていました。
超広角12mm側で撮影していますが、中央部に比べるとやや差はあるものの、画面右下や左下の隅の草もシャープに写っています。
まとめ
超広角ズームなので撮れるものが限られるかと考えていたのですが、広がりのある風景はもちろんのこと、42mm相当までカバーする焦点域の広さや、最短撮影距離の短さから、アップもそれなりに得意なのは驚きです。公園の花畑や都市のスナップ、カフェ、子どものポートレートと、予想以上にオールマイティーに使えるレンズでした。しかも画質は上々。
広角表現の入門として、旅行やスナップの常用レンズとして、そしてVlog用のレンズとして、とにかく活用範囲の広いレンズです。