交換レンズ実写ギャラリー
キヤノンEF-S 55-250mm F4-5.6 IS STM
光学系を一新した普及クラスの望遠ズーム
Reported by 曽根原昇(2013/10/3 08:00)
本レンズは「EF-S 55-250mm F4-5.6 IS II」の後継モデルにあたる、APS-Cサイズ対応の望遠ズームレンズだ。入門機や中級機のキヤノン製デジタル一眼レフに用意された、いわゆるダブルズームキットの一端を担う普及クラスのレンズであるため、多くの人が実際に手にして撮影する実用頻度の高いレンズでもある。
前モデルからの大きな変更点のひとつがAFの駆動にSTM(ステッピングモーター)を採用したことで、動画撮影時でも静止画撮影時でも静寂性の高いスムースなAFが実現されている。また、AFでピントを合わせた後にスイッチの切り換えなしでピントの微調整をMFで素早く行なえるフルタイムマニュアルフォーカスが可能となったほか、前玉枠が回転せず偏光フィルターなどの操作が快適に行なえるなど、操作性は大きく向上している。幅の広いフォーカスリングが鏡筒最前部にあり、MFの操作性に配慮されているのも嬉しいところだ。
大きさは、フィルター径こそ58mmと変更がないが、前モデルが全長108mmだったのに対し本レンズは全長111.2mmと、わずかであるが長くなった。とはいえ、今回使用したEOS 70Dとのコンビネーションでは、特に大きさや重さにストレスを感じるようなことはなく、35mm判換算で焦点距離400mm相当に達する望遠レンズとは思えない軽快さで、手軽に望遠撮影を楽しむことができた。
手ブレ補正機構であるISも引き続き搭載されている。カタログ値で効果を見比べると旧レンズが4段分、新レンズが3.5段分とあり、一見効果が弱くなっているように見えるが、この数字は直接比較できない。なぜなら、新レンズは計測方法がCIPA基準に変更(旧レンズは同社基準)されたためだ。キヤノンによると旧レンズをCIPA基準で計測した場合、3段分になるとのこと。新レンズの方が手ブレ補正効果は高いということだ。
描写性能は確実に向上している。光学系は一新され、望遠レンズ特有の色にじみ(軸上色収差)を抑えるUDレンズ1枚を含む12群15枚となり、最短撮影距離は前モデルの1.1mから0.85mに短縮された。最短撮影距離付近こそ極わずかに甘さが見られるものの、画面周辺まで非常に解像感が高くヌケのよい画像をズーム全域で得ることができ、いい意味で予想を裏切る高い描写性能に驚いたのが正直な感想である。逆光にも強く、フード未装着の状態でもハレーションによってコントラストが低下するようなことはなかった。
普及クラスの望遠ズームというと、かつては描写性能もそこそこ、開放F値が暗いため晴天日中の屋外でしか活躍の場がなかった。しかし低価格でも高い描写性能をもち、手ブレ補正機構とデジタルカメラの高感度性能が飛躍的な進化をとげたいま、本レンズは幅広い撮影シーンで活躍する、コストパフォーマンスに優れた“使える望遠ズーム”だといえる。
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