ライカレンズの美学

SUMMILUX-M F1.4/24mm ASPH.

屋外はもちろん、光量の限られるインドアでも楽しい大口径広角

現行ライカレンズの魅力を探る本連載。今回はSUMMILUX-M F1.4/24mm ASPH.を取り上げてみたい。

SUMMILUX-M F1.4/24mm ASPH.は2008年のフォトキナで初めてお披露目されたレンズだ。同じフォトキナ2008ではNOCTILUX-M F0.95/50mm ASPH.や、SUMMILUX-M F1.4/21mm ASPH.なども発表されて、大口径レンズに対するライカの意地のようなものを強く感じさせるフォトキナとなった。ちなみに当時のM型ライカはまだライカM8.2(APS-Hサイズ撮像素子)が最新機であったが、発表されたレンズは当然ながらすべて35mmフルサイズ対応であり、翌年に登場することになるフルサイズCCDを搭載したライカM9を強く予感させる新レンズ群でもあった。

SUMMILUX-M F1.4/24mm ASPH.の光学系は8群10枚構成で、1枚目と2枚目の前面(被写体方向面)がまったく湾曲しておらず、ほぼフラットなのがちょっと変わっている。非球面レンズは1面で、異常部分分散ガラスは5枚使われている。構成そのものは同じく8群10枚で登場時期も同じSUMMILUX-M F1.4/21mm ASPH.とよく似ていて、特に後群の5群7枚の配列はフローティング方式や非球面の配置を含めてそっくり。ただしさらに目を凝らして構成図を比較すると使われているレンズの厚みなどには差があって、当然ながら完全に同一ではない。ライカによると1996年に登場したELMARIT-M F2.8/24mm ASPH.と比べ、絞りが同じF2.8ならSUMMILUXの方が画面全体の均質性は高いそうだ。

レンズ外観のプロポーションはSUMMILUX 21mmほどレンズ先端が広がっておらず、使用可能なフィルターもSUMMILUX 21mmがシリーズVIIIなのに対しSUMMILUX 24mmはシリーズVII(直径50mm弱)で、ひと回り小さい。重さはSUMMILUX 21mmより80gほど軽く、ちょうど500g。レンジファインダーカメラ用の広角レンズとしては明らかに大柄だが、それでも一眼レフカメラ用の24mm F1.4(フィルター径77mm、重さは620~650g)に比べると小型軽量だ。

絞り羽根は11枚と多い。
専用フードはネジ込み式の全金属製。フードの1個所だけファインダーケラレ防止の穴があいている。フィルターを使いたいときはフード側にシリーズVIIフィルターを装着する。

M型ライカにおける24mmレンズの存在意義や相性については本連載の17回目でELMAR-M F3.8/24mm ASPH.を取り上げた時にも少し考察している。そのときに"24mmレンズは屋外で使うのももちろんいいけど、約84度という適度な対角画角は屋内でも使いやすそう"といった話を書いた。今回はそれを検証すべく屋外よりも屋内を中心に撮影してみたのだけど、やはり室内での24mmレンズはかなり使いやすい。もちろん、このあたりの使いやすい云々はあくまでも主観的な感想だし、モチーフや撮り方が変われば話も変わってくるのだが、今回のような撮り方では24mmは広すぎず狭すぎずの絶妙な画角だと感じた。特に光量が限られる屋内撮影では大口径F1.4の威力は絶大で、その意味ではF3.8のELMAR 24mmよりも使いやすいし、絞り開放時の浅い深度は「広角でもアウトフォーカス描写を楽しみたい」という贅沢な願望を叶えてくれる。

絞り開放で撮影。F1.4なら24mm広角でも屋外はこれだけボケる。LEICA M(Typ240) / ISO200 / F1.4 / 1/250秒 / WB:晴天
M型ライカと組み合わせる場合、液晶モニターのライブビューでもいいが、24mmに対応した外付けOVFもしくはEVFがあると使いやすい。
ライカSLで撮影。ピーキングや拡大に頼らなくてもピントがハッキリと見えるEVFでテンポ良く撮影できた。ライカSL / ISO50 / F1.4 / 1/80秒 / WB:オート
合焦は目の部分。望遠レンズほど露骨ではない、非常にデリケートなアウトフォーカス描写を楽しめる。ライカSL / ISO50 / F1.4 / 1/100秒 / WB:オート

写りはSUMMILUXらしく繊細でシャープな描写。今回のインドアカットはほとんど絞り開放で撮影したが、画面周辺でピントを合わせた場合でもF1.4大口径レンズとは思えないほどシッカリとした結像を得られた。当然ながら絞り込むに従って解像性能は上がっていくし、周辺光量も改善されていくのだけど、この大口径レンズならではの旨みを味わいたいなら、なるべく絞り開放で使うべきだろう。ボケの効果を得られない遠景撮影の場合でも絞り開放で撮るとものすごく雰囲気のある描写になる。

なお、今回はいつものライカM(Typ240)の他にライカSLでも撮影してみた。ライカM(Typ240)はレンジファインダー、ライブビュー共に画面中央部でしかピント合わせが出来ない(最新のライカM10なら可能)ので、中央以外でピントを合わせたいときにライカSLを使用したのだが、さすがに440万ドット&0.8倍という高精細・高倍率なEVFの威力は凄まじく、ピーキングや部分拡大機能に頼るまでもなく、普通の全画面表示のままで正確なピント合わせが可能だった。

21mmだとちょっとパースが気になりそうな撮り方でも24mmなら大丈夫。ポートレート用としては21mmより難易度は低く使いやすい。ライカSL / ISO50 / F1.4 / 1/25秒 / WB:オート
今回はライカSLでも撮影してみた。ミラーレス機としては大きめなライカSLも、小柄なM用レンズと組み合わせればスナップにも問題なく使いたくなるサイズ感になる。
F5.6まで絞って撮影。ガラス越しなので本来の解像ではないが、それでも細部まで驚くほど緻密な描写。LEICA M(Typ240) / ISO200 / F5.6 / 16秒 / WB:オート
大きくボカした光点ボケに若干のハロの影響が見えるものの、さすがに現代レンズだけあってクセが少ない自然なアウトフォーカス描写だ。ライカSL / ISO6400 / F1.4 / 1/40秒 / WB:オート

これまでM型ライカで大口径レンズを絞り開放で使用し、なおかつ合焦させたいモチーフを中央以外に配する場合は、レンジファインダーで合焦させた後、フレーミングによって発生するであろうコサイン誤差分をピントリングで勘に頼って微調整していたのだが、そういうひどくマニアックなことをしなくてもいいのは楽だ。ライカM10をはじめとするM型デジタル機ほどではないけれど、ライカSLもライカMレンズの使用を考えて撮像素子前面のフィルターセットを薄型化するなど配慮されており、6bitコードによるレンズ検出も可能なので、ある程度の補正も働く。今回の結果を見るかぎり、周辺部の色かぶりなども心配はなさそうだ。ライカSLは専用レンズのラインナップがまだこれからなので、その意味では今回のSUMMILUX 24mmはM型ユーザーのみならずライカSLユーザーにもお勧めだ。

被写界深度目盛りも完璧。写真はあくまでも一例だが、F5.6で3mの場合、約1.6mからほぼ無限遠までが深度内になる。目測でスナップ撮影する場合に活用したい。
スローシャッターを得るためにF8まで絞り込んで撮影。絞り羽根は11枚なので、光芒は倍の22本出る。LEICA M(Typ240) / ISO200 / F8 / 6秒 / WB:オート

モデル:いのうえのぞみ
協力:ライカカメラジャパン

河田一規

(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。ライカは80年代後半から愛用し、現在も銀塩・デジタルを問わず撮影に持ち出している。