デジカメアイテム丼

ニッシンの無線ストロボで「オフカメラライティング」を極める

電波式でTTL対応 ハイスピードシンクロもできる多機能モデルの実力は?

ここ最近「オフカメラフラッシュ」という言葉をよく耳にするようになった。これはカメラに装着して発光・撮影していたストロボを、カメラから取り外して離れた位置でフラッシュ発光させ撮影するというものだ。

これまでにも離れたカメラとストロボを繋ぐ為のケーブルや、光学式通信を採用したワイヤレスストロボは存在してきたが、最近はカメラとストロボの通信を電波で行う電波式のワイヤレスストロボも登場している。

「オフカメラフラッシュ」とは、ストロボをカメラから離して発光させる手法だ

今回紹介するニッシンジャパンの「スピードライトDi700A」も電波式通信を採用したワイヤレス制御が可能なクリップオンストロボだ。

ストロボのコントロールにはカメラとの通信が必要

ここで簡単にクリップオンストロボの制御について話をしよう。まずクリップオンストロボにはそれぞれ機種によって発することができる最大光量が決められている。この最大光量の範囲で撮影に必要な光量に調整することを調光という。

調光の方法として、撮影者が自ら発光量を指定するマニュアル調光と、カメラやクリップオンストロボのオート露出機能を利用して発光量を調整するオート調光がある。

そのなかでもカメラ内で算出した発光量を、クリップオンストロボとの間で通信し連動させるTTLオート調光が現在の主流だ。

この通信にはカメラにクリップオンストロボを取付けることにより接点を通し電気信号を使って連動させる必要があるのだが、カメラからストロボを取り外して調光させる際には電気信号を伝える有線ケーブルを使用するか、電気信号をワイヤレスで伝えるなんらかの方法に置き換える必要が出てくる。

近年、オフカメラフラッシュに対応した比較的安価なアイテムが相次いで登場しており、オフカメラライティングが身近なものにになりつつある。

一般的にはカメラメーカー製クリップオンストロボも含め、ワイヤレス通信には多くのモデルが光通信式を採用している。この光通信式は、光信号を発することができるカメラ内蔵のストロボやクリップオンストロボ、または専用コマンダーを使用してカメラから離したクリップオンストロボへ調光の指示を伝達することで、発光量をコントロールする仕組みとなっている。

ニッシンジャパンのクリップオンストロボの多くもこの光通信に対応しており、各カメラメーカーの光通信式ワイヤレスストロボシステムとリンクして調光することが可能だ。

電波通信式ワイヤレスストロボの優位性

電波通信式ワイヤレスストロボは、カメラから離れた位置にあるクリップオンストロボと電波を使用して通信しシンクロ発光と調光を行う。

光通信式のワイヤレスストロボとコントロールできる内容は基本的に同じだが、いちばんの優位点は遮蔽物に遮られても電波が届く範囲であればコントロールできるということだ。

電波式は、光式には無い多くのメリットがある。

一般的に光通信式のワイヤレスストロボの信号は、屋内で15m、屋外だと条件が良くても10m程度だと言われる。また光通信を妨げる遮蔽物を挟んでのコントロールは不可能だ。それに対して電波式ワイヤレスストロボの信号は30~50m程の通信が可能だ。もちろん実際に使用する環境によってこの距離は変化するが、光通信式と比べると圧倒的に距離を稼ぐことができる。

また光通信では不可能な遮蔽物越しの通信も、電波式通信ならば届く可能性がとても高い。つまりカメラ位置からでは見えない場所にもワイヤレスストロボを設置しシンクロ発光・調光させることができるということだ。

Di700Aは、ストロボ本体の「Di700A」とコマンダー「Air1」のセットで使用する。「Air1+Di700Aキット」(キヤノン用、ニコン用)が税込2万9,700円。ニッシンデジタル・ダイレクト各店、フジヤカメラ店などで販売する。ソニー用は後日発売予定。

Di700A

従来機の光通信式ワイヤレスストロボである「Di700」を、電波式無線通信でもコントロールできるように改良したものだ。

Di700A

光量の目安となる最大ガイドナンバー(GN)は54(ISO100/m・照射角 200mm)、48(ISO100/m・照射角 105mm)、28(ISO100/m・照射角 35mm)。カバーする照射角度範囲はレンズ焦点距離にして24~200mm以上のズーム式。ワイドパネルを使用すると16mmをカバーする(いずれも35mm判換算)。

発光部のヘッドは上方90度、下方7度、左180度、右180度可動。可動させる際には軸に設けられたロックボタンを押してロックを解除する。正面位置ロック機構もあり。
ヘッド部には収納式の16mm用ワイドパネルとキャッチライト用の白色反射板を搭載。
カメラに直接取付けたときに使用可能なAF補助光搭載。ワイヤレスストロボとして使用する際には点滅してワイヤレスモードであることを知らせる。なお発光直後のチャージ中は点滅が停止する。
使用電池は単3型乾電池4本。アルカリ電池およびニッケル水素充電池が使用可能。電池4本を装填できる取り外し式のクイックローディング方式を採用。電池のプラスマイナス極の方向が4本ともに同じ向きに揃うのもニッシンジャパンストロボの特徴。
外部電源端子。ニッシンジャパンの充電式外部バッテリー「パワーパックPS8」を接続することで、ストロボのチャージタイムが大幅に短縮される。
今回の撮影でもパワーパックPS8を接続して使用した。
汎用シンクロケーブルを接続させることでカメラとのシンクロ発光が可能なシンクロ端子(右)と有線により別のストロボを連動発光させるためのストロボ増設用端子(左)。
カメラと接続するシュー部。カメラとの通信用端子が設けられている。シューロックは回転させるねじ込み式。
もちろんDi700Aは通常のクリップオンストロボと同様に、カメラのホットシューに装着して使用することができる。
Di700Aの表示パネル。各モードアイコンおよび表示項目はバックライトによる透過表示なのでシンプルで見やすい。操作はSetボタンと回転式リングで行う。直感的な操作で定評のあったDi700のものを継承。

Di700Aに搭載されているモードは「フルオート」(ストロボでの任意の光量調整不可。カメラからの光量調整は可)「TTLオート調光」(ストロボおよびカメラからの任意の調光可)、「マニュアル調光」、カメラから取り外し他のストロボのフラッシュ光に同調する2種類のスレーブモード「SD」(TTLプレ発光を無視し本発光に同調して発光)「SF」(フラッシュ発光に即座に同調)、そして「ワイヤレスTTL調光オート」(電波式/光学式自動切り替え)だ。

Air1

電波を介してDi700AをコントロールするのがコマンダーAir1だ。Air1を装着したカメラとの間でTTLオート調光に関する信号をやり取りし、それをDi700Aへ送信するのが役割だ。

Air1

ニッシンジャパンの電波式ワイヤレスストロボのシステムは、キヤノンとニコンのカメラでそれぞれ使用が可能だ。ただしカメラメーカー純正の無線式ワイヤレスクリップオンストロボをコントロールすることはできない。

コマンダーとストロボの間の通信方式はニッシンジャパン独自のコントロールシステム「NAS」(Nissin Air System)で作動しているからだ。なおAir1は日本国内で使用が可能となる電波法令における技術適合証明を受けている。

Air1は単4型のアルカリ乾電池およびニッケル水素充電池2本で作動する。カメラのホットシューに取り付けることで、カメラからのストロボシンクロとTTL調光の信号を受け取ることができる。Air1本体には技術適合証明のマークが表示。

最初にペアリングすることで快適に使える

Di700AとAir1は事前に、ペアリングとよばれる対として認識させるための登録が必要だ。1度ペアリングすると電源をOFFにしても登録は解消されず、次回電源をONにすれば即座に使用可能となる。

使用する電波の周波数帯は2.4GHz。ユーザーはAir1で使用する電波を8つのチャンネルから任意に選べるので、近くで違う人が同じシステムを使用していたとしても混信による誤作動を避けることができる。Di700A自体にはチャンネルを選ぶ機能がないので、ペアリングされたAir1で選択されたチャンネルがDi700Aにも適用される。

まずはDi700AとAir1をペアリングする。ともに電源をOFFにした状態から、Di700AのSETボタンを押したまま電源ボタンを3秒間長押しする。ピープ音と共にテスト発光ボタンが点滅を始めたらボタンから指を離す。
Air1も同様にSボタンと電源ボタンを同時に3秒間長押した後にボタンから指を離す。Di700Aのピープ音が鳴り止みDi700AとAir1のテスト発光ボタンが点灯したらペアリング完了。
Air1をカメラのホットシューに装着するとシューロックがかかる。取り外す場合は中心部にあるシューロックの解除ボタンを押しながら手前に引き抜く。

Air1からコントロールできるDi700Aの設定は、TTLオート調光、マニュアル調光、照射角度調整オートズームだ。TTLオート調光は1/2EVステップで-2EV~+2EVまで、マニュアル調光は出力の1/1~1/128まで1EVステップで調光が可能だ。

また照射角度調整オートズームは、24~200mmをカバーする範囲を8ステップで調整できる。ワイヤレスストロボはA/B/Cの3グループに分けて操作が可能。全グループ合わせて21台のDi700Aをペアリングし操作することができる。

Air1からA/B/CグループそれぞれのDi700Aをコントロール可能。これはTTLオート調光モードの表示。Air1で設定した補正値が即時にDi700Aに反映される。
マニュアル調光モードの表示。A/B/CグループそれぞれのDi700Aの発光量をマニュアルで変更できる。Air1で設定値を変更する際には、Sボタンを数度押して設定変更したいグループを選択したうえでダイヤルを回して設定値を変更する。設定が完了するとDi700Aからピープ音が1回発せられる。
設定完了時のピープ音は鳴らさないように設定することも可能。Air1が電源ONの状態で、Air1の電源ボタンを長押ししてON(オレンジ色。写真上)/OFF(白色。写真下)を切り替える。
Di700Aの照射角度調整オートズームもAir1からワイヤレスでA/B/Cグループそれぞれ別に設定できる。なお、ズーム設定表示のままではシャッターを切ってもストロボは発光しない。ズーム設定が済んだらTTL調光モードもしくはマニュアル発光モードにAir1を切り替えてから撮影を行う。

Di700Aはオンカメラ、オフカメラどちらにおいても、カメラメーカー純正ストロボと同様にカメラ本体からの調光補正を反映させることが可能だ。また後幕シンクロ発光、ハイスピードシンクロ発光、FE(FV)ロックも使用可能。ニコン用モデルは赤目軽減モード、スローシンクロモードにも対応している。

キヤノンのカメラではメニュー「SHOOT1」-「外部ストロボ制御」-「ストロボ機能設定」で表示された画面からETTL-II/M、ズーム(オンカメラ時のみ)、先幕シンクロ/後幕シンクロ/ハイスピードシンクロ、調光補正の設定を行う。
調光補正はカメラ背面部に配置された「Qボタン」を押して表示されるクイック設定画面内の調光補正、もしくはカメラ上部に配置された「ISO/ストロボ調光補正ボタン」を押してサブ電子ダイヤルを回すことで行える(キヤノンカメラの場合)。

なおカメラでの補正値とDi700Aの補正値は足し合わせることができる。つまりカメラ+2EVとDi700A+2EVの場合は計算上では合計+4EV補正となる。

Air1にはAF補助光用LEDも搭載されている。AF補助光のON/OFFはカメラから設定可能
Di700Aの電源ボタンを短く1回押すことで、操作ロックを掛けることもできる。再度短く1回押すとロック解除。ロック時はSetボタン、ダイヤル操作に反応しない。Air1からのワイヤレス操作には反応する。

Di700A/Air1を活用した撮影作例

Di700AとAir1を組み合わせて屋内、屋外でのポートレート撮影を行った。屋内ではストロボ光を主としたライティング撮影。屋外では太陽の光とストロボ光をミックスしたライティングを行っている。

オフカメラライティング

まずはオンカメラライティングとオフカメラライティングでどのように違いが出るかを見ていただこう。

Di700Aをカメラに装着して正面から発光したオンカメラライティングと、カメラからDi700Aを取り外し人物の右斜め手前上からライティングした写真を比較する。

オンカメラで人物の正面からライティング。EOS 5D Mark III / 1/30秒 / F5 / 0EV / ISO100 / マニュアル / 105mm
ホットシューにストロボを装着したオンカメラ撮影の状況

オンカメラライティングでは人物の肌や衣装が光を反射してキツく不自然な印象だ。また影も人物の背後に出ておりポートレート写真としては魅力に欠ける。

一方オフカメラでのライティングでは不必要な反射は起きておらず、影も人物の左側に流れ違和感が少ない。

オフカメラで人物の右斜め前からライティング。EOS 5D Mark III / 1/30秒 / F5 / 0EV / ISO100 / マニュアル / 105mm
オフカメラ撮影の状況。三脚にストロボを装着した
日中シンクロ

次に逆光での人物撮影における日中シンクロ撮影の例だ。輝く海を背景にした強い逆光での撮影なので、人物が暗くなってしまっている。そこにポールの先端に取り付けたDi700Aを縦位置にしたカメラの上部に配置しワイヤレスで発光させて撮影した。

強い逆光での撮影。そのまま撮影すると背景の明るさのため、人物が影で暗くなった。EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
Di700Aを発光させることで、人物の明るさを補うことができた。EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 105mm
完全な逆光での撮影。ワイヤレスなので、スタンドなどを使えばホットシューの位置に関係なくストロボを好きな位置にセットできる
おなじく逆光で暗くなる人物の顔の明るさをを日中シンクロで補った。ただしできるだけ太陽光との違和感を少なくするため、ポールの先に取付けたDi700Aを人物の右斜め手前上から発光させた。EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F7 / +1.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 28mm
ポールにストロボを付けて持ってもらうと、ライティングの調整がしやすい

Di700AとAir1との組み合わせでは、オフカメラフラッシュ撮影においてもTTLオート調光が可能だ。TTLオート調光は被写体とストロボの距離が変化しても、一定した明るさになるように自動的に光量を調整してくれる機能だ。この機能を活かすとカメラと被写体、そしてストロボの距離が変化する撮影でも安定した光量で撮影することができる。

そこでポールの先端に取り付けたDi700Aをカメラの上に配置し、海岸の波打ち際をモデルといっしょに歩きながら撮影した。モデル、カメラ、Di700Aの距離が微妙に前後する撮影だが、TTLオート調光によって人物を照らすストロボ光の明るさを一定に保つことができた。

共通設定:EOS 5D Mark III / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / マニュアル / 51mm
このシーンではモデル、撮影者、ポールを持つ人が同じスピードで歩きながら撮っている
ハイスピードシンクロ

最高ストロボ同調速度を超えたシャッター速度でのシンクロ撮影が可能な「ハイスピードシンクロ撮影」も、Di700AとAir1との組み合わせでワイヤレス撮影が可能だ。

今回撮影に使用したキヤノンEOS 5D Mark IIIはストロボ同調速度が最高1/200秒だが、ハイスピードシンクロモードに切り替えることでさらに速いシャッター速度でもシンクロ撮影が可能となる。

シャッター速度1/800秒で撮影。動きの速い被写体の瞬間を止めると同時に夕陽の海の明るさを極端に抑えることで、人物がストロボ光に浮かび上がるドラマチックな写真にすることができた。EOS 5D Mark III / 1/800秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / シャッター優先AE / 35mm
ここでもポールにストロボを付け、位置を微調整しながら撮影した
多灯ライティング

多灯ライティングが手軽に行えるのもDi700AとAir1の魅力だ。1台のAir1で3グループのDi700Aを別々に調光してシンクロ発光させることができる。今回はDi700Aを3台使用して多灯ライティングによる撮影を行った。

室内にて3灯ライティング撮影。EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル / 85mm
メインライトとして、カメラ上にスタンドで固定したDi700Aをレフ板に向けて発光。反射したバウンス光にてモデルを照らす。さらにモデル左後方上部から髪が輝く位置に2灯目のDi700Aを配置。3灯目のDi700Aは背景の壁に架かるタペストリーに向け、ズーム機能で照射角を200mmまで絞りスポットライトとして発光した。

続いては森の中に建つ静かなカフェ。入り口は北向きなので建物の影側だが、モデルの正面からレフ板にバウンスさせたDi700Aをメインライトとして照らすことで人肌の色味も良く、衣装も建物の壁の色も鮮やかに発色させることができた。

さらにそのままでは暗くなってしまう店内を、カメラから見えない場所に隠した2灯のDi700Aを発光させ明るくなるようにライティングした。

光通信式ワイヤレスストロボでは通信用信号が壁で遮られてしまいシンクロ発光できない状況だ。無線式ワイヤレスストロボならではのライティングテクニックといえる。EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F4 / 0EV / ISO400 / マニュアル / 62mm
屋外では、影になっているモデルにレフ板で拡散したストロボ光を当てる
一方、室内を明るくするためDi700Aを2灯設置。左側は天井バウンス、右側は壁にバウンスした。

次のシーンは、カフェのテラス席にて撮影。清々しい森の空気感と明るい春の陽射しを表現するべく少し強めの光でライティングした。

メインライトはモデルの正面となるテラス外の庭より、スタンドに取付けたDi700Aで高い位置から差込むように直射している。

EOS 5D Mark III / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO250 / マニュアル / 24mm
EOS 5D Mark III / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO250 / マニュアル / 85mm

同じくスタンドに取り付けた2灯目のDi700Aをモデルとカメラの延長線上の庭の少し離れた位置にを配置。オートズームを70mm程度にセットし少し下振りにすることで、モデルの輪郭を輝かせると同時にウッドデッキに光を反射させ逆光のイメージを強調した。

補助光として3灯目のDi700Aをカメラ横のレフ板に反射させてモデルのシャドウ部の明るさを補っている。

このシーンでも3灯でライティングした。

次は、カメラとモデルがかなり離れている状況での撮影。カメラからDi700Aまでは20m程あり、また明るい屋外での撮影なので光通信のワイヤレスストロボでは信号が届かないシーンだが、電波式ワイヤレスストロボなので問題なくシンクロ撮影ができた。

薄暗い森の中だが、ストロボによってモデルを浮き立たせることができた。スカートの透過光も美しい。EOS 5D Mark III / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 193mm
森の中にひとり佇むモデルを離れた位置から300mmで撮影。
カメラ位置からモデルを見たところ。距離はおよそ20m。
メインライトとしてモデルの左横の位置からスタンドに取付けたDi700Aを直射。さらにモデルの右上後方からポールの先端に取付けたDi700Aを24mmのワイドズームにし、高い位置からモデルを照らす。この2灯で森に差込む太陽のキラキラした光を表現。
加えて、補助光としてモデル左手前(写真手前)からワイドパネルを装着したDi700Aを弱めに発光した。
こちらは、モデルの場所からカメラ(□の所)を見たところ。○は補助光として照射したDi700A。

撮影イメージを限りなく膨らませてくれる“電波式ワイヤレスストロボシステム”

Di700AとAir1によるNASシステムは、従来からあるクリップオンストロボの小型軽量さと多彩な撮影モード、照射角オートズーム搭載などの利点を活かしつつ電波式のワイヤレスストロボとして登場した。

特に明確かつ直感的にわかりやすい操作系、対応カメラメーカーが異なるモデルでもAir1を介することで混在した多灯システムが組める点など純正モデルにはないユーザーメリットは大きい。

光通信式のワイヤレスストロボは屋外の直射日光の下では信号を正しく受け取れないことがよくある。屋外でも確実に発光できるのも電波式ワイヤレスストロボの強みだ。

これまで電波式のワイヤレスストロボシステムは、プロ用の大型ストロボやメーカー純正品の限られた製品しか選択できなかった。もちろんこれらの製品の魅力はとても大きいものだったが、価格面を考えるとキットの販売価格が3万円を下回るDi700AとAir1は圧倒的に手にしやすい製品だといえる。

これまで光通信のワイヤレスストロボを使用してきた人も、そして興味はあったが難しそうでなかなかワイヤレスストロボライティングに手を出せなかったという人にとっても、撮影時の自由度がグンと増したDi700AとAir1の無線ワイヤレスストロボシステムは、簡単にかつ、よりイメージを膨らませた撮影にチャレンジできる機材となるはずだ。

いまだないほどに盛り上がりを見せているストロボライティング撮影を、このDi700AとAir1の組み合わせでぜひとも体感して欲しい。

製作協力:ニッシンジャパン
モデル:前濱瞳
撮影協力:Cafe GROVE

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy