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100均商品で撮影?ニッシンの「手作り」ワークショップ

自分で作ったアイテムで、ストロボ撮影の奥深さを知ろう

ストロボメーカーのニッシンジャパンは4月26日、東京・高円寺にある同社のスタジオにおいて、ストロボ実践活用イベント「ド根性!アーウィンのちょっと気合いが入ったストロボワークショップ」を開催した。

同社が開催している講座・イベントの1つで、カメラとストロボを離して使うオフカメラライティングの経験者に向けた、中級ストロボユーザー向けのワークショップ。講師はフォトグラファーのアーウィン・ウォン氏。

今回のワークショップは、身の回りにあるものを使って、できるだけお金を使わずにストロボアクセサリーを作るコンセプト。ここでは100円均一ショップで手に入る素材を用いて、ストロボアクセサリーを自作し、ポートレートの撮影で使用した。材料としては画用紙、テーブルクロス、輪ゴム、針金、クリップ、セロファン、洗面器などを用意しており、ソフトボックス、グリッド、スヌート、オパライトなどのアクセサリーを作成できた。

アーウィン・ウォン氏
今回用意されたストロボアクセサリーの材料。基本的に100均ショップで買ってきたものだ

大切なのは"光をコントロールできる"こと

ワークショップ全体の構成は大きく分けて3つ。ストロボ講座、アクセサリー自作、ポートレート撮影による実践の3部からなる。ストロボ講座では、ストロボを使ったウォン氏自身の作品を例として、主にスポット光の活用方法を解説した。

前半は、ウォン氏による座学を中心に進行した。講座では、ストロボアクセサリーを拡散、集中、遮蔽の3種類に分類。光を拡散させるアンブレラやソフトボックス、光を集中させるスヌートやグリッド、光を部分的に遮蔽するフラッグなどを例に挙げた。いずれも被写体に対する光の当たり方をコントロールするためのアクセサリーだが、どうしても思ったような光にならない場合は、自作のアクセサリーを使うことがあるという。

ストロボアクセサリーを3つに分類
素材を安く手に入れる
グリッドやスヌートの材料
手作りのソフトボックスをストロボに取り付ける。白い部分はテーブルクロスや雨合羽を材料にした
こちらは手作りのオパライト。強い光を通す白い洗面器を使っている
実際にオパライトとして使っているところ
アルミホイルと白い紙を台紙に貼り付けた。丸めてスヌートとして使う
丸めてストロボに取り付けたところ
スヌートとして使用したところ
画用紙に切れ込みを入れ、光を遮る「フラッグ」。影を活かした表現に使う
フラッグを使っているところ
現場にある観葉植物も光を遮る材料として使える
光を拡散させた例
光を集中させた例
フラッグを使って光を遮った例
観葉植物を使って光を遮った例

「色々な表現を試みる中で、市販のアクセサリーでは得られない質の光が必要になることもありますが、そういう時は自分で作るしかないのです。例えばテレビから出た光が人物の顔を照らしているように表現したいとき、普通のストロボアクセサリーを使っても思ったような光にならないことがあったので、自作のストロボアクセサリーを使いました。被写体のどこをどう照らして、どこを照らさないか。必要に応じて光をコントロールできることが重要なのです」

ウォン氏はフォトグラファーになる前にストロボのテクニックを勉強していた頃、ストロボのアクセサリー機材まで資金が回らず、よく自作していたと話す。また、自作して使っているうちに、光の当て方を上手くコントロールできるようになったという。

「当時は経済的にもそれしかなかったというのはありますが、試行錯誤を繰り返していくうちに、ストロボアクセサリーの効果をコントロールするにはどうしたらいいのか、意図通りに表現するにはどのように作ったらいいのかを考えるようになりました。市販のアクセサリーはやや高価なのですが、構造がシンプルなので、きちんと作れば自作でも概ね同等の効果は得られます。でも、耐久性は市販のアクセサリーの方が上ではあります」

様々な試行錯誤を重ねた結果、ストロボの光をコントロールするための知識が身についたとウォン氏は話す。ただ、時には思わぬ効果が得られることもあって、今でも気づくことはたくさんあるという。

「自作の面白さは、定番のライティングだけではなく、応用が効かせられるところですね。例えばグリッドを手作りするとき、僕の場合は黒いストローを使いますが、ストローを長く切ればより集光効果が高まりますし、短く切れば拡散します。必要に応じて効果の具合を調整できる。今ある物で満足できないから自分で作るのです。今は100均(100円均一ショップ)があるので、安価に材料を調達して自作できる環境があります。僕は普段の生活の中でも面白い光の効果を探すようにしていて、街中で面白い光の当たり方をしているのを見かけたときは、よく観察して、現場で再現できるように自分で作ってみることもあります」

創意工夫で自由に製作、多灯ライティングも体験可能

座学の終了後は、各自自由にストロボアクセサリの作成や撮影に時間を割り当てられる。ストロボアクセサリーの自作は、基本的な作り方をウォン氏が指導し、完成したらすぐに撮影で使うことができた。参加者は用意された材料を使って、ソフトボックスやスヌート、グリッドなどを手作りし、撮影ではその場で思いついたライティングを試したり、撮影した写真を参加者同士で見せ合ったり、作ったアクセサリーを手直しするなどして楽しんでいた。

カゴに雨合羽の生地を張ってライトボックスを作っている
あっという間に完成した
テープの上に黒いストローを並べて海苔巻き状にして、グリッドを作っているところ
針金を使って固定させる作り方もある
手作りグリッドをストロボに取り付けたところ
スヌート用の板を作ったところ
ソフトボックスをストロボに取り付ける
手作りのストロボアクセサリーで実際に撮影を試せた
今回使用したストロボはスピードライトDi700A
コマンダーはAir1。シンプルな操作性が好評という

なおニッシンジャパンではこのほかにも、プロカメラマンを講師に迎えたセミナーを盛んに実施しており、撮影において光をコントロールすることの重要性を学ぶことができる。セミナーでは同社の新製品も体験可能で、今回のワークショップではスピードライト「Di700A」やコマンダー「Air1」などを用いた多灯撮影も体験できた。

モデル:クリスティーン

(関根慎一)