ニコン「ワイヤレスモバイルアダプターWU-1a」

~D3200の画像をスマホに転送。リモコン代わりにも

 写真共有サイトやSNSサービスの盛り上がりにあわせるように、昨今は無線LAN機能を搭載したデジタルカメラが増えてきた。また、無線LAN機能を搭載した記録メディアも続々登場している。

WU-1a(下)は、IEEE 802.11b/gでスマートフォンと繋がる

 そうしたなか、ニコンがデジタル一眼レフカメラ「D3200」のオプションとして「ワイヤレスモバイルアダプターWU-1a」を発売した。今回は使い勝手を試してみた。

スマートフォンでライブビュー撮影

 WU-1aは今のところD3200でのみ使用できるアクセサリーとなっており、価格は5,250円。D3200の「USB/オーディオビデオ出力端子」に接続して使用する。

WU-1aは大きさ18×21×10mmで重量約3g。カメラ用無線通信ユニットとしては小型軽量
D3200に装着したところ。カメラの電源に連動し、端末と接続するとLEDが点灯する

 このアイテムは、デジタルカメラで撮影した画像をスマートフォンなどに転送するためのものだが、珍しい機能としてスマートフォンでライブビュー映像を見ながらリモートでシャッターを切る機能を備えているのが特徴だ。

 WU-1aを使用するためにはあらかじめ専用アプリ「Wireless Mobile Adapter Utility」(無料)をインストールしておく必要がある。記事執筆時点ではAndroid 2.3以上の端末に対応しており、iOS版は秋に公開する予定だという。今回はサムスン製の「GALAXY S」(SC-02B、Android 2.3.6)で試した。

Wireless Mobile Adapter Utility

 まずは、カメラと端末の接続を確立する。WU-1aを取り付けたD3200の電源を入れ、スマートフォンでもWireless Mobile Adapter Utilityを起動する。次にスマートフォンで無線LANの設定画面が出てくるのでWU-1aのSSIDを選択すると繋がる。特にパスワードなどの設定も無く簡単だ。アプリの「リモートで撮影する」を選ぶとライブビューが端末に表示される。

アプリを起動するとこのような画面が出るので、「はい」を押すすると無線LANの設定画面になるので、WU-1aのSSIDを選んで接続する
メインのメニュー画面が出るので機能を選択する。ここまでで、カメラ本体側での設定は特に不要だ
「リモートで撮影する」を選んだところ(左)。ライブビューが表示されフレーミングが行なえる。丸いシャッターボタンのアイコンをタップするとピントが合いシャッターが切れる。撮影後は自動的に画像が端末に転送される(右)。画面にはシャッター速度、絞り値、カメラのバッテリー残量などが表示される

 液晶モニターが固定式のD3200にとって、リモートライブビューでの撮影でアングルの自由度が高まるのがうれしい。カメラから離れても操作できるので、フリーアングル液晶モニターよりも自由度は高いといえそうだ。GALAXY Sは2010年10月発売とやや古い機種だが、ライブビューはなめらかに表示された。

 なお、ライブビュー表示の拡大や画面のタッチによるレリーズは行なえない。またAFフレームの位置のほか、シャッター速度などの撮影パラメーターも端末側では操作できず、あらかじめカメラ側で設定しておく必要がある。撮影中に設定を変えたい場合には、アプリ画面の上部にある「リモートで撮影する」と「カメラで撮影する」の切り替えアイコンを押して、一旦カメラ側での操作にもどってシャッター速度やAFフレーム、ホワイトバランスの設定を変更する必要がある。

 加えて端末のシャッターボタンアイコンは半押しはできず、タッチするとすぐピントが合ってシャッターが切れるというもの。端末側でのコントロールがレリーズだけというのは割り切った仕様だが、このあたりは今後のアップデートで少しでも機能が追加されるのを望みたい。

このように液晶モニターやファインダーを見ることが難しいアングルでは重宝するだろう。カメラから見通しで10~15m離れても動作するのも、動物などを撮る際にはメリットになるかもしれないライブビュー映像を表示しているので、端末の画面にレンズを向けると合わせ鏡のような表示になる

 アプリで「カメラで撮影する」を選ぶと、カメラのシャッターボタンで撮影した後すぐに画像が自動転送される。このときD3200はファインダー撮影のみ可能で、ライブビューは使用できない。

メインのメニューで「カメラで撮影する」を選んだところ(左)。ライブビューは表示されずカメラ本体側の操作で撮影を行なう。シャッターを切るとすぐに画像の転送が始まる(右)

SNSなどでの共有機能も

 記録メディア内の画像を端末に転送するのは、アプリの「カメラから画像を取り込む」だ。SDカード内の画像を一覧でプレビューでき、複数枚を選んで転送することもできる。画像のサイズはオリジナルで送るか、VGAサイズにリサイズするかをあらかじめ設定できる。転送時間はどちらのサイズでも2秒ほどだった。

メインのメニューで「カメラから画像を取り込む」を選ぶと、すぐにSDカードに記録された画像のサムネイルを取得するサムネイルが表示されたら、端末に転送したい画像を選択する
取り込みの確認画面(左)を経て、画像の転送が始まる(右)。転送時間はフル画素でも1枚あたり12秒ほど。VGAにリサイズしても転送時間はほとんど変わらなかった
画像閲覧アプリでフォルダの中を見たところ。選んだ画像が転送されているのを確認できた

 さらに「画像を共有する」というメニューもある。画像を選択し、画像共有サイトやSNSサイトのアプリに画像を渡してそのままアップロードできる機能。

メインのメニューで「画像を共有する」を選択すると転送済み画像の選択画面になるので、共有したい画像にチェックを入れるトリミングやエフェクトの適用などはできないが、ここで回転だけは設定できる
共有する画像のプレビューが行なえる左下の「共有」ボタンを押すと、画像共有サイトやSNSのアプリアイコンが出るので、希望のサービスを選択する
ここではTwitterに投稿してみた。投稿直前にネットワーク接続の変更を忘れないようにしたい

 投稿する際には、ネットワークの接続先をいつも使用している回線に戻す必要がある。WU-1aに接続したままでは送信できないからだ。この部分も自動的に接続先を変更するようになるとなお使い勝手が高まるだろう。

意外に便利な時刻同期機能

 設定メニューでは、カメラの時刻を端末の時刻にあわせるといった便利な機能も利用できる。接続にパスワードを設けたい場合もここで設定可能だ。

設定画面の項目。「時刻同期」はカメラの時間を端末の時間に合わせることができる。バッテリー残量に応じて動作を制限することもできる。制限をOFFにすることも可能
画像サイズは2通りに設定できる
ネットワークなどの設定画面。今回は、このあたりのネットワーク設定はデフォルトのままで使用できたWU-1aがスリープするまでの時間も設定可能

 WU-1aの電源ONを検出してアプリを自動起動する設定もある。ただし、スマートフォンの無線LANがWU-1a以外のアクセスポイントに繋がっていると自動起動はしないようだ。WU-1aの電源が入っている場合、アプリが起動していない状態で、無線LANの接続先をWU-1aにするとアプリが自動起動するが、アイコンをタップして起動した方が早そうだ。

まとめ

 WU-1aは、従来のこうしたアイテムに見られた煩雑な設定作業がほとんど不要なのも評価できるポイントだ。無線LANにあまり詳しくなくてもそう迷わずに接続できるだろう。オリンパスの画像転送ユニット「PENPAL PP-1」を別にすれば、レンズ交換式デジタルカメラの無線画像転送ユニットは、ほぼ業務用といったものが多かった。比較的低価格で簡単に使えるのがありがたい。

 ただPENPAL PP-1もそうだが、こうしたアクセサリーはぜひともカメラに内蔵して欲しいと思わずにはいられない。PENPAL PP-1はホットシューに付くので収まりが良かったともいえるが、WU-1aは側面からはみ出るイメージになるのでかっこいいとはいえないし、何かがぶつかったりしてもげてしまうかもしれないと心配になる。

 WU-1aを装着した状態でも撮影は可能だが、再生はできなくなる。また動画の撮影も行なえない。WU-1aは転送するときだけカメラに装着して、撮影するときは外しておくという使い方が良いようだ。

 ニコンとしても新コンセプトの製品とあって荒削りな部分も多少見受けられるが、特にリモートライブビューには今後大きく発展する余地があると感じた。レンズ交換式デジタルカメラの購入を検討している人は、こうしたアイテムの存在もを一考してみてはいかがだろうか。

ネックストラップに装着できるケースが付属するほか、WU-1aとネックストラップを結ぶ紐が付属しているので、なくした心配はなさそうだ





本誌:武石修

2012/6/7 00:00