キヤノン「320EX」

LEDライトを搭載した“動画対応ストロボ”

 キヤノンからLEDライトを内蔵したクリップオンストロボ「320EX」が登場した。デジタル一眼レフカメラで動画が撮れるようになって久しいが、手軽に使えるメーカー純正の定常光照明はほとんど無かった。今回は実際の使い勝手などを探ってみたい。

EOS 7Dに装着した320EX

 320EXはガイドナンバー24(ISO100・m)だが、先日レビューした「270EX II」と同様に発光部を引き出すとガイドナンバーがアップする機能を備えている。引き出し後のガイドナンバーは32。カバーする画角は通常状態が24mm以上(APS-Cサイズ機では15mm以上)、引き出し状態では50mm以上(同32mm以上)となる。発光部は上90度までのバウンスに加えて、右90度~左180度の回転も可能なので、より自由度の高いライティングが可能だ。同社のラインナップでは270EX IIと「430EX II」の中間に来るモデルになる。

本体部分にLEDライトを搭載した背面に液晶パネルはなく、操作はスイッチとボタンで行なう

近距離の人物撮影に最適なLEDライト

 320EXのLEDライトだが、照射角は50mm以上(APS-Cサイズ機では32mm以上)と広くない。無理矢理に広角で使用すると、画面周辺に行くに従って光量が落ちた描写になる。連続使用時間は約3.5時間とのことで、その点実用性に問題はなさそうだ。

LEDライトを点灯させたところ。至近距離では眩しく感じるほどだスレーブ発光では、上級モデルと同様に発光グループとチャンネルを変更可能

 LEDライトの自動点灯に対応した「EOS Kiss X5」と「EOS Kiss X50」では、暗い場所で自動的に点灯させることが可能だ。それ以外のカメラの場合は背面のボタンで手動点灯できる。なお、今後発売になる同社のカメラは自動点灯に対応するとのことだ。

 ライトの明るさは約75ルクス。点灯させるとLEDの発光部は眩しいほど明るくなる。ただ、公称ではISO3200、F2.8で約2m先が適正露出になるとのことで、ストロボなどに比べるとさほど光量があるわけではない。なお視力障害を引き起こす可能性があるため、人物からは1m以上離れて使用するようにとマニュアルにはある。

 今回は「EOS 7D」に装着して試してみた。LEDライトの発光部はストロボの本体部分にあるのでバウンスや向きを変えることはできない。また、調光にも対応していないので光量は一定だ。薄暗い室内で動画を撮影する場合、EOS 7Dの感度がISO6400になってしまいノイズが目立つ上に、それでもまだ写りが暗かった。その状態でLEDライトを照射すると、ISO感度を下げて撮影できるため大幅にノイズが減って綺麗に撮れる。

動画

 

サムネイルをクリックすると、オリジナルの動画ファイルをダウンロードします。H.264 / 1,280×720 / 約138MB

 EOS 7Dのプログラムモードで動画を撮影した。レンズの画角は32mm(35mm判換算で50mm相当)。前半はライトを点灯していない状態だが、露出が足りずにアンダーになっている。後半にLEDライトを点灯させると、人物もはっきり写すことができた。点灯させた方が、ノイズも減っているのがわかる。

 被写体との距離によって露出が変わるため、人物の撮影などではカメラをプログラムモードなどの自動露出にしておくとうまく撮れる。直射光なので割とはっきりした影も出るが、例えば誕生日会といったイベントであればノイズを抑えて動画を撮影できると思う。F1.4のレンズを使えばISO3200で4mまで光が届くことになっているが、一般的なズームレンズでは学芸会などでステージ上を照らすのは難しいだろう。もっとも学芸会などではそれなりの明るさがあるだろうから、比較的高感度に強いとされるEOSムービーであればLEDライト無しでも撮影は可能だろう。

「リモートレリーズボタン」も装備

 そのほかの新機能としては「リモートレリーズボタン」の搭載がある。詳細は同じ機能を搭載した270EX IIのレビューを参照いただきたいが、ストロボのレリーズボタンでカメラのシャッター(2秒セルフタイマー)を切ることができる機能だ。カメラから5mまでの距離で使用できる。また、マスター発光機能のあるカメラ内蔵ストロボを使用すれば、320EXをワイヤレスでスレーブ発光させることができる。

本体側面に「リモートレリーズボタン」を搭載
スレーブ撮影に便利なスタンドが付属。三脚穴も装備している

発光部の設定

通常状態。24mm相当(APS-C機は15mm以上)をカバーし、ガイドナンバーは24(ISO100・m)発光部を引き出すとガイドナンバーが32(同)になる。カバーする画角は50mm(APS-C機は32mm以上)
バウンス60度同75度
同90度発光部は水平にも回転するので、背後の天井や壁などにバウンスさせることも可能

スレーブ撮影の実写サンプル

 スレーブ機能は、マスター機能のあるストロボの発光に連動して320EXも発光するものだ。今回は、320EXを被写体となる人物の隣に置き、壁にバウンスさせて撮影した。カメラはEOS 7Dで、内蔵ストロボを弱めに発光(これがトリガーになる)させている。直射光やカメラ位置からのバウンスでは得られない描写ができる。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし補正なしの撮影画像をダウンロード後、長辺800ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
EOS 7Dの内蔵ストロボのみで撮影。良く写っているが平板な描写下の状況写真のようなセッティングによるスレーブ撮影。顔に陰影が出て立体的な描写になった
スレーブ撮影時の状況。棚の上に320EXを置いた

430EX II(右)との比較

 単3アルカリ乾電池を含む重量

 なお、270EX IIおよび580EX IIとの大きさ比較も270EX IIのレビューを参照いただきたい。

まとめ

 サードパーティ製のカメラ用LEDライトも増えてきたが、320EXはストロボと一体になっているのが特徴だ。ストロボとライトを別に持たなくても、1つでまかなえるのがよい。今はカメラも静止画と動画が撮れるわけだから、それに見合った機能のストロボといえそうだ。暗いところで動画を撮る機会のあるユーザーは検討してみてはいかがだろうか。

カメラへの取り付け部はレバーロック式。確実で使いやすい電源は単3電池×4本



(本誌:武石修)

2011/6/13 00:00