「料理写真」をワンランクアップ!

スタミナつけるぞ!レバ刺し・もつ焼き・もつ鍋編

みなさんこんにちは! フォトグラファーの山本春花です。お酒をほとんど飲めないわたしですが、酒の肴が大大大好物! 夜な夜な名店を求めてさまよい歩く趣味が高じて、今回、新しい連載を担当させていただくことになりました。その名も“「料理写真」をワンランクアップ!”。

居酒屋メシから寿司、ステーキ、天ぷらなどなど、料理ごとに美味しく見えちゃう撮り方をご紹介していきます。テクニックを覚えて、SNSにアップする写真をワンランクアップ! 皆から注目される料理写真を目指しましょう。

仕事帰りにふらっと入ったから、ミラーレスカメラや一眼レフカメラを持ってない……なんてこともありますよね。でもご安心ください! ここではスマホでの撮り方もご紹介するので大丈夫!

京都の伝統食材と味付けの和食居酒屋

記念すべき第1回は、もつ吉 西荻窪店へやってきました!

もつ吉 西荻窪店

京風もつ鍋やもつ焼きなどのもつ料理に加え、京都の伝統食材・九条ねぎをふんだんに使った一皿、京丹後半島の天然鮮魚やレアな日本酒、漬物、お通しの茶碗蒸しなど様々な料理がリーズナブルな値段で楽しめます。

住所:東京都杉並区松庵3-38-13
電話番号:03-5344-9161
営業時間:月〜木 17:00〜24:00(LO 23:00)
金・土・祝日 15:00〜24:00(LO 23:00)
定休日 なし

今回一緒に写真のお勉強をするのはこの方。イラストレーター・モデルなどマルチに活躍する倉田茉美さん。倉田さんはお酒大好きに加えてカメラも大好き。公私共に仲のいい友人です。今日はお仕事なので、お互い飲み過ぎ注意ということで……。

のれんをくぐっていざ店内へ! 1階と2階があり、座席数は全てテーブルの60席。木のぬくもりが暖かく、居心地の良い空間です。

実践! レバ刺し編

まず最初に挑戦するのは「低温調理牛レバー刺し」。低温でじっくり三日間かけて仕込むこのレバ刺しは、もつ吉さんの名物料理。このレバ刺しを食べに県外から足を運ぶ人もいるそう。

色がきれいでおいしそう!
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 50mm / 絞り優先AE(1/160秒・F4・-0.3EV) / ISO 2000

美味しそうですね……! 早く食べたいので、早速レバ刺しを写真におさめていきたいと思います。

撮影に入る前に必ずしておきたいのが……テーブルの上の片付け! 全ての料理写真を撮影する上で一番大切と言っても過言ではありません!

特に居酒屋では、こんな風にお箸やおしぼり、コップなどでテーブルの上が煩雑になってしまいがち。面倒くさがらず、不必要なものは写真に写らない場所に片付けましょう。

周りに余計なものが!
EOS 5D Mark IV / SIGMA 28mm F1.4 DG HSM | Art / 28mm / 絞り優先AE(1/320秒・F3.2・±0.0EV) / ISO 2000

もう一つ気をつけたいのが店内の照明。今回は座ったテーブルの真上に白熱灯があったため、俯瞰で撮影するとカメラの影がお皿に写り込んでしまいました。そんなときはお皿の位置を白熱灯が影響しないところまで移動させたり、カメラを斜め上から構えて影が写らないようにするなど工夫して撮影してみましょう。

うっ、自分の影……
EOS 5D Mark IV / SIGMA 28mm F1.4 DG HSM | Art / 28mm / 絞り優先AE(1/250秒・F3.2・±0.0EV) / ISO 2000

今回いただいたレバ刺しは一枚一枚の形が同じで規則正しくお皿に盛られており、ボケを使っても料理の全体像が伝わるため、大胆に被写界深度を浅くしてみました。斜め横から撮ることでレバーの厚みやエッジが際立ちます。

斜め横から撮って肉の厚みを出す
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 50mm / 絞り優先AE(1/80秒・F2.8・±0.0EV) / ISO 500

スマートフォンで撮影する場合、グッと寄れるのがポイントです。影を作らないように斜め上から構えて思い切ってレバ刺しに近づきましょう。お肉の質感が伝わる一枚が撮れました。注文数が多くテーブルの上がごちゃついてしまう居酒屋での撮影では、フットワークの軽いスマホが大活躍します!

スマホならグッと寄れる!
iPhone XS Max / 61mm相当 / 通常撮影(1/50秒・F1.8) / ISO 80

ごま油と塩でいただくレバ刺し、まるで生のような食感です。お肉の味と食感がダイレクトに伝わってきて、こ、これは美味しい……! お肉そのものが美味しいので、ごま油と塩というシンプルな味付けが絶妙にマッチしています。

EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 50mm / 絞り優先AE(1/60秒・F2.5・±0.0EV) / ISO 1250

実践! もつ焼き編

次に挑戦するのは「もつ焼き」。炭火で焼き上げた九条ねぎ、和牛もつ、タン、ハラミが一皿で楽しめるもつ吉さんの名物料理です。ガスコンロで提供されるので、テーブルの上で熱々のまま楽しめるのが魅力です。

がっつりパワー系!! でも上品なお味
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM / 50mm | Art / 絞り優先AE(1/40秒・F3.5・±0.0EV) / ISO 1600

ガスコンロで熱々の状態になっているので、湯気の撮影に挑戦してみましょう。ポイントは湯気が見やすいように黒っぽい背景で撮影すること。白熱灯が当たっているテーブルと背景の明暗差が激しかったのでこれを活かし、背景が暗くなるようにガスコンロの位置を調整しました。湯気は前後左右に揺らめいているので、全体にピントが合うように少し絞って撮影しましょう。

背景が暗いと湯気が写りやすい
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 50mm / 絞り優先AE(1/100秒・F2.8・-0.7EV) / ISO 1600

お皿と同じくらいの高さでカメラを構えて、料理の高さを伝える方法もあります。こんもりとした牛もつと九条ねぎの贅沢感を表現してみました。

横から撮って“こんもり感”を強調
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 絞り優先AE(1/80秒・F2.5・±0.0EV) / ISO 1600

いやぁ、プリプリのもつを炭火のいい香りでいただく贅沢……たまりません。そして実は、個人的影の主役は九条ねぎ。熱が入った九条ねぎの甘さがたまりません。ねぎが苦手な人にも絶対絶対チャレンジして欲しい一品です!ちなみに私はもつ吉さんの九条ねぎのおかげでねぎ嫌いを克服しました。ねぎの概念、くつがえります。

熱が入って甘くなった九条ねぎと一緒に……いただきます!

EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 絞り優先AE(1/80秒・F2.5・±0.0EV) / ISO 1600

実践! もつ鍋編

さぁ、いよいよメインのもつ鍋が来ました!! 味付けのミソはなんといっても京風味噌。ミソだけにっ。

鍋が来るとテンションが上がってついすぐにお箸を入れてしまいがちですが、せっかくならきれいな状態のビフォー&煮込んで熱々になったアフターを撮影しておきましょう。組み写真でアップすると面白いです。

ビフォー
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 絞り優先AE(1/320秒・F2.8・±0.0EV) / ISO 1600
アフター
EOS 5D Mark IV / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / 絞り優先AE(1/50秒・F2.8・±0.0EV) / ISO 320

スマホで箸上げ写真に挑戦。誰かと一緒なら箸で持ち上げるのを手伝ってもらいましょう。一人鍋の場合も、片手で箸、片手でスマホと手軽に撮影できるのがスマホのメリットです。湯気を避けつつ、もつにグッと近づけました。

スマホなら“箸上げ”も簡単!
iPhone XS Max / 61mm相当 / 通常撮影(1/50秒・F1.8) / ISO 160

驚くほど大ぶりのプリプリもつ、脂の甘みを堪能しましょう!

iPone XS Max / 通常撮影(1/50秒・F1.8) / ISO 160 / 61mm相当

シメのうどんを投入して、鍋と取り皿をS字構図で撮影。スクエアフォーマット & S字構図で動きがありつつバランスの取れた一枚になりました。

複数の器は斜めに配置
iPone XS Max / 通常撮影(1/50秒・F1.8) / ISO 400 / 61mm相当

◇   ◇   ◇

ということで、初回はもつ吉さんで「もつ」の色々な撮り方を実践しました! もつ吉さん、リーズナブルなのに一品一品の量が多いっ!! 値段に対して「え、こんなに?」と驚くくらいの量なんです。食材も新鮮で、こだわりのものを使っていることが一口食べただけで伝わります。落ち着く古民家の空間で、身体に優しいものをお腹いっぱい食べられる本当におすすめのお店です。ぜひ訪れてもつ写真に挑戦してみてくださいね。それではまた次回!

おまけPhoto

無農薬のレモンをふんだんに使ったレモンサワー。「自家製蜂蜜レモンサワー」はレギュラーサイズもビッグサイズも580円という恐ろしい値段設定。

ビッグサイズのジョッキは倉田さんの顔ほどもある大きさ……。

こちらは大ハマり中の「九条ねぎと塩昆布和え」。撮影関係なく個人的にお店に行ったときにスマホで撮影したものです。もう、毎日でも食べたい!!

撮影協力:もつ吉 西荻窪店
モデル:倉田茉美

山本春花

(やまもとはるか)東京都生まれ。雑誌・書籍の撮影を中心にフリーランスで活動中。写真雑誌「snap!」の企画・編集にも参加。2014年より自身のブログで、女性モデルを被写体としたポートレートシリーズ「乙女グラフィー」の連載を開始。若い女性に対するコンプレックスの解消や、自らの“老い”に向き合うことをテーマとしており、同年開催されたアートフェア「台湾フォト」に出展された。2018年8月、スタンダーズより同タイトルで写真集を上梓。