イベントレポート
山木社長が「SIGMA fp」の今後に言及…体験イベントにファンが集結
なぜか新規ユーザーが増加中
2024年6月3日 11:12
シグマのミラーレスカメラ「SIGMA fp」シリーズの体験イベント「fp hour」が、東京・渋谷で6月1日(土)に開催された。イベントではSIGMA fp本体やレンズの貸し出し、トークショーなどが行われ、SIGMA fpユーザーを中心に多くの写真愛好家が集まっていた。
今でも根強い人気のSIGMA fpシリーズ
fp hourは、コロナ禍直前に開催された同種のイベント「fpフェス 2020春」以来のユーザーイベントとなった。2019年の発売以来、4年以上が経過したSIGMA fpは今でも根強い人気を維持しており、しかもこの1年で購入者が急増しているという。
そんな中で開催された今回のイベント。開始15分で貸出機がすべてなくなるほど、熱心なユーザーが来場。SIGMA fpを持っていないユーザーの参加もあったということで、いまだに注目を集めていることが伺えた。
イベントでは、fpファンから集めた「#mysigmafp SNSキャンペーン」で送られた約360枚の写真が掲示され、様々なSIGMA fpのセットアップを見られた。
また、会場には「#mysigmafp 撮影ブース」も設けられていた。
これは、キャンペーンであがった「fpを撮影するfpがない」という声に応えて急遽用意されたもので、ユーザーのSIGMA fpをプロのフォトグラファーがSIGMA fpで撮影。プロが撮影してくれるということもあって、多くの人が持ち寄った自らのfpを撮影してもらっていた。
トークイベントでは、同社の山木和人代表取締役社長と、fpシリーズプロジェクトリーダーの畳家久志氏がSIGMA fpに関する様々な話題を展開。来場者からの声にも応えるトークイベントとなっていた。
その中で、SNSで事前に採ったアンケート「fp歴は何年目?」という問いでは、発売後すぐのユーザーである「4年以上」が31%だったのに対して、「1年目」という回答が43%という結果になっていた。
発売はSIGMA fpが2019年10月、SIGMA fp Lが2021年4月なので、それぞれ4年7カ月、3年が経過している。そうしたカメラにも関わらず、今まさに購入しているユーザーが多いということになる。
山木社長によれば、実際の売り上げも同様の動きを示しているそうで、「最初パッと売れて、その後は売れ行きも下がって、在庫が積み上がったけど、最近また売り上げが増えた」という。現在は当初積み上がった在庫も解消し、新規の生産も始まっているという。
「(シグマの)会津工場にある組み立て棟の中で、最もクリーン度が高いのはSIGMA fpのセンサーユニットを作る棟。3~4年前に稼働して(SIGMA fpの生産が止まっていたので)しばらく動いていなかったが、最近はちゃんと動いている」と山木社長は正直に話す。
ただ、この急に売り上げが伸びた理由について、山木社長も畳家氏も、その他のシグマの社員も揃って首をかしげる。いくつかの理由は想定できているものの、どうもこれという明確な理由が見当たらないようで、ここ1年、急に伸びているそうだ。
同様にSNSアンケートでは、「SIGMA fp/fp Lの好きな部分」も選んでもらっており、コンパクトかつフルサイズの画質、プロダクトデザイン、カラーモードという事前に想定した回答がそれぞれ多かった。
山木社長が「こんなカメラが欲しい」とノートにスケッチしたところからスタートしたSIGMA fp。「毎日カバンに入れて持ち歩けるフルサイズのカメラが欲しい」という社長自身のニーズから開発されたので、「コンパクトさが評価されたのは嬉しい」と山木社長。
画質に関しては、それまで同社が扱っていたFoveonセンサーのように、なるべく「マイクロディテール(細かいディテール)」を残し、階調豊かな処理にする、ということを重視したという。とはいえ、あくまでSIGMA fpのセンサーはベイヤーセンサーなので「限界はある」と山木社長は言う。
畳家氏は、シグマの開発チームがむしろ「Foveonしか知らない」ということで、「ベイヤーセンサーですぐに絵が出ることすらまず感動だった」と笑う。そうした状況のため、ベイヤーセンサーでもFoveonで築き上げてきた絵に近づけるようにチューニングをしていったそうだ。
シグマのレンズも、このFoveonの影響を受けていると山木社長は話す。同社の最初のFoveon搭載カメラ「SD9」は、RAW専用でJPEG出力もできないカメラで、「今では考えられないようなカメラでよく民生機として発売したなと思う」と山木社長も苦笑。
ただ、これが世界中のユーザーグループなどでも話題となり、SD9の解像力を生かせるレンズが少なく、「もっと周辺まできちっとディテールを捉えるレンズ」を作るように求められたという。こうしたユーザーからの刺激を受けて、「もう徹底的にレンズをやろう」(山木社長)ということで、それまで以上に画質を磨き上げる方向にシフトしたことで、その後のArtシリーズにも繋がったらしい。
シグマは、フルサイズのFoveonセンサーの開発も継続しているが、量産までも見据えた開発で難航しており、これは現時点でも状況は変わっていないようだ。それでも新規カメラに向けた検討は進められているようで、このfp hourイベントで寄せられた声も次の開発に生かしたいとしている。
山木社長は、SIGMA fpシリーズの今後の戦略について「まだ決まってはいないが、基本的には進化させていきたい」とコメント。コンパクトさとシンプルさに加えて拡張性を持つというSIGMA fpのコンセプトには可能性がある、と山木社長は強調し、「今後も追及していきたい」との考え。
SIGMA fpが4年以上にわたって市場で受け入れられ、継続的に利用されていることについて山木社長は「まったく想定していなかった」。ただ、これは日本だけで、「若干中国が来ている」とはいうものの、日本でだけSIGMA fpの人気が継続している状況だという。
「(SIGMA fpシリーズを)長年愛していただけていて本当にありがたいと思うし、SIGMA fpの持つコンセプトのように、これからも特徴のある、他社さんとはちょっと違う、一点突破するようなカメラを作っていきたい」と山木社長は今後の方向性を示していた。
トークイベントでは、写真家でコマーシャルフォトグラファーの百々新氏も登壇し、SIGMA fp Lで撮影したバングラデシュでの作品や、これまでの同氏の作品である万博記念公園ポスター太陽の塔シリーズなどの広告作品の背景などが紹介された。
バングラデシュの首都ダッカでの撮影で百々氏は、カメラを意識されないスナップショットを撮りたいと考えていたという。SIGMA fp Lと35mm F2 DG DNの組み合わせでは、「コンパクトでボディがかわいくて、スッと(他人の領域に)入っていける」というメリットがあったそう。
加えて「レンズが凄い」と称賛。周辺の落ち込みや流れもなく、階調とシャドウの中のノイズのなさにも驚いたそうで、「表現の仕方が気持ちよかった」と百々氏は話していた。