イベントレポート

桜の写真は現地の「下調べ」が重要/プリントでは用紙の使い分けに気を配りたい

「インプレス桜フォト祭り2024」セミナーに本間昭文氏が登壇

本間昭文氏。インプレス桜フォト祭り2024の会場で

3月16日(土)に開催された「インプレス桜フォト祭り2024」において、風景写真家の本間昭文氏によるセミナーおよび写真展「光に包まれて」が開催された。

本イベントは協賛企業と参加写真家がコラボする形で実施しており、本間氏はエプソン販売と共同でセミナーおよび展示に臨んだ。

セミナーでは桜の写真作品を撮影するテクニックの解説に加えて、エプソン販売の写真向けプリンター「SC-PX1V」でプリントした作品についても紹介。ここではセミナーのレポートを中心に、写真展の模様もお届けする。

桜の写真をはじめとした10点の作品を展示した
開場前のセミナーに並ぶ来場者

本間氏が担当するセミナータイトルは、「ドラマチックな桜の撮影術&高画質プリントで存分に桜を楽しむ」。桜を撮影する際に押さえておきたいポイントをはじめ、現像・レタッチの手法などを解説した。

最初に紹介したのは、秋田県仙北市・角館町の武家屋敷通りで撮影した1枚。雨上がりにライトアップされた桜と道の照り返しを撮影したもの。ライトアップの桜を撮影するにあたり重要なポイントとしては「開花情報やライトアップ時間などの下調べをすること」「構図に主題以外の要素も入れてみること」「三脚を使うこと」の3点を挙げた。

「この写真の場合は雨上がりの路面に桜と照明の照り返しが映えて非常にきらびやかだったので、桜だけでなく路面も構図に取り入れてみました。雨上がりで通行人がいないタイミングだったことも良かったですね」

また、三脚を使ってカメラをぶらさないことは、レタッチやプリントにも繋がる重要な要素だと強調した。

現地の情報がわかっていれば、普段は難しい状況もある程度狙って撮影できる可能性がある
本間氏の作品。秋田県の森吉山で日の出を撮影したもの

青森県弘前市の弘前公園で撮影した作品は、池の水面を桜の花びらが埋め尽くした様子を写している。ここでも花筏になる時期や、水面に桜の樹が影を落とす時間帯を事前に調べておくことが重要としている。

「弘前公園で花筏を撮影すること自体は難しくありませんが、この写真のように正面に太陽がくる位置は少ないので、想定しているアングルに対してどんな光がくるのか、太陽の位置を確認しましょう。この時期の弘前公園は混雑するので、人が写り込まないタイミングで撮影するのが難しいですね」

例年、弘前公園の池にきれいな花筏ができるのは3日間程度だという。「きちんと下調べをすること」「自分のタイミング(都合)で撮影に行かないこと」が重要だと話した。

花筏は桜の散り具合も把握しておく必要があるため、開花情報や天気予報などの情報収集も欠かせない

現像・レタッチのパートでは、Lightroom Classicを用いた調整方法を解説。本間氏の場合は調整項目を上から順に調整していくやり方を採用しており、特に「カラーミキサー」での色調整を重点的に行なっているという。「自分でパッとしないと思う写真でも、自分で選び、レタッチして仕上げることで1つの形になる。それも自己表現の1つ」との考えを示した。

プリントについては、LightroomやSILKYPIXなどで使えるレイアウトプラグイン「Epson Print Layout」を使って用紙や余白の設定などを実演。SC-PX1Vで出力したプリントは「黒」の表現が優れていると評価した。

左はRAWで撮影したままの初期状態。右は調整途中の状態
実際に写真展で展示した作品
セミナー後、本間氏に頼んで用紙の質感を確認する来場者もいた

写真展には本間氏が在廊するタイミングがあり、直接話を聞ける機会もあった。とりわけ多く耳にしたのは、用紙選びの重要性について。本間氏によれば「プリントの質は用紙で決まる」とのことで、用紙によって色の出方が違うため、写真によって用紙を変えているという。展示作品の10点だけでもハーネミューレ、アワガミ、キャンソン・インフィニティといったブランドのプリント用紙を使い分けており、来場者にプリントを示して、色の出方や質感の違いを体験してもらう場面もみられた。

在廊中、本間氏への質問に集まった来場者に撮影テクニックや用紙の選び方について説明する一幕も
各作品のキャプションには使用した用紙を記載している
本間氏の在廊中であれば、説明を受けながらプリントに直接触れて質感の違いを確認することもできた
関根慎一