イベントレポート

【CP+2019】Lightroomの使いこなしを伝授 アドビブースの写真家セミナー

プロのワークフローとテクニックを知るチャンス

アドビシステムズは、ブース全面をフルに使ったプロ写真家によるセミナーを展開。風景やポートレートといった撮影ジャンルを例として、RAW現像ソフト「Lightroom CC」および「Lightroom Classic CC」の基礎的な使いこなし方を伝授していたほか、「Adobe Stock」で売れる写真を撮るためのコツを伝える主旨のセミナーもあった。

登壇する写真家は、岡田裕介さん、木村琢磨さん、桐生彩希さん、GOTO AKIさん、関一也さん、大門美奈さんの6名。このほかアドビスタッフによる各種機能の紹介プログラムも行われていた。

セミナー内容は概ね初心者向けだが、現像パラメータの変えどころやレンズプロファイルの活用方法など、プロが日常的に行なっている現像工程の一端を垣間見ることのできる機会にもなっている。

セミナーステージのタイムテーブルについては、特設サイトを参照されたい。

本レポートでは、広告写真や風景写真のフィールドで活躍している木村琢磨さんのセミナー「LightroomでRAWの性能を引き出そう!思いのままに風景写真を仕上げるテクニック」の内容を抜粋して紹介する。

木村琢磨さん

木村さんのセミナーでは、渓流をスローシャッターで撮影した写真の調整工程を実演。「記憶色と近いイメージに仕上げる」ために、ハイライトやシャドウ、かすみの除去といった基本補正のほか、色相やディテールの微調整、円形フィルターによる明るさ調整などについて言及した。

左は調整前、右は調整後。

作例の写真は地明かりが暗い場所で撮った渓流の写真であり、元画像でも色温度が低く寒々しい印象に写っているため、まずは色温度を補正する。

「色温度を調整するときは、あえてスライダーの数値を見ずに、自分でちょうどいいな、と思ったところで止めるようにしています。必ずしもキリのいい数値である必要はないですよね。カメラのプリセットにない、細かい調整が直感的にできるのがRAW現像ソフトのいいところです」

目視でいい塩梅のところに色温度を合わせていく。

ディテールを強調する目的で「ハイライト」や「シャドウ」を調整する場合は、「白レベル」や「黒レベル」の調整を併用することで、白飛び、黒つぶれを抑えつつ、コントラストの高い写真にできると話した。

「撮影プレビューを見た時点で白飛びや黒つぶれしていたなと思っていた部分も、調整してみると意外と救えることもあります。ディテールを強調したいときは、強調したい部分のコントラストを出しながら、画面全体の明るさ、コントラストのバランスが破綻しないように気をつけるのがポイントです」

作例では、画面中央やや上側に光の差し込んでいる岩肌があるが、データを開いてみると撮影した時よりも日差しが弱く感じられたため、「円形フィルター」で露光量を上げて対処している。

現像作業の中で画面の一部分だけを明るくすることについて、木村さんは「暗室作業でいうところの『覆い焼き』とか『焼き込み』という技法をデジタルで再現しているのと同じ」と表現した。

円形フィルターで画面上の一部分だけを明るくしている

渓流の作例の補正についてはこれに加えて「かすみの除去」をあえてマイナス側に調整することで、渓谷に流れる水の質感を出しながら、「明瞭度」を上げて岩の硬さなどを強調。「色相」で緑をより鮮やかにする、などの操作を行なって仕上げている。

「かすみの除去」をマイナス補正して流れる水の質感を維持。

このほか、周辺光量落ち補正やレンズプロファイルを使った小技も紹介。

前者は画面周辺部の明るさを補正するパラメータをマイナスに振ることで、画面中央に視線を誘導する「トンネル効果」を狙ってみるテクニック。

後者の「レンズプロファイル」は本来、撮影に使用したレンズの歪みを補正する機能だが、あえて撮影に使ったのとは違うプロファイルを適用することで、強引に補正をかける使い方を紹介している。

「例えば下の写真はGoProで撮影したデータですが、これにGoPro用のプロファイルを適用すると、歪みが補正されて、まるで超広角レンズで撮影したかのような写真にできます。もし自分の持っているレンズが登録されていない場合でも、近いスペックの他社レンズのプロファイルを適用すると、いい感じに補正される場合もあるので、いろいろ探してみるのもありかと思います」

最後に、スマートフォンアプリ版の「Lightroom」の使い方も紹介。現像にかかわる基本的な機能はPC版と同様だが、木村さんの場合は撮影してすぐにめぼしいデータをスマートフォンに転送し「仮の現像」を行なっておくことで、PC版で現像する際のヒントにしているという。

関根慎一