イベントレポート
売上は○千万円!? ストックフォト「PIXTA」の2018年トップクリエイターが決定
2019年に有望な撮影ジャンルは?
2019年2月1日 12:59
ストックフォトサイト「PIXTA」を運営するピクスタ株式会社は、1月26日にクリエイターのためのイベント「PIXTA DAY2019」をピクスタ渋谷オフィスで開催した。当日は2018年にPIXTAで活躍したクリエイターの表彰や作品作りで役立つセミナーなどが行われ、大勢の来場者で賑わった。
PIXTAは登録したクリエイターが写真などの素材を登録し、素材が売れるとクリエイターにロイヤリティが支払われる仕組み。PIXTAは特に日本に関する素材が多いことでも知られ、素材購入者のメインは企業ユーザーとなっている。PIXTAは2006年にスタートしたサービスで、現在のクリエイターは約28万人を数える。
トップクリエイターの年間売上額は?
2018年のクリエイター売上ランキングで総合部門1位になったのはxiangtaoさん。気になる売上額はなんと約3,200万円とのこと。
「経費に700万円ほど掛かりましたので、約2,500万円が利益になりました。売上は前年から800万円増えました。直近の売上ペースから行くと、2019年は3,800万円〜4,000万円くらいの売上になりそうです。市場環境が悪いことはないので、今年は経費に1,000万円ほど使って、ガンガン撮っていこうと思っています」(xiangtaoさん)。
ピクスタではxiangtaoさんを、「情報収集力や分析力があり、緻密な販売戦略を立て、さらに構図や演出などで新しいテイストをもたらした」と評価した。ただ写真が良いだけではなく、的確な戦略を立てるのが売上上位への道のようだ。
xiangtaoさんは、「お客様が期待する以上のコンテンツを継続的に提供すれば、全然売れます。マーケットは明るいので、皆さんも頑張って欲しいと思います」と余裕のコメントを残した。2019年も「このまま行けば私がトップになるでしょう」と自信を見せた。
続いて、出張撮影マッチングサービス「fotowa」の年間撮影数トップに輝いたフォトグラファーが表彰された。fotowaはピクスタが2016年に始めたサービスで、撮影して欲しい顧客とフォトグラファーをオンラインで結びつけるもの。登録しているフォトグラファーは900人近くになる。
2018年の撮影数で頂点に立ったのは、栗田広行さん。撮影数、ユーザーからのレビュー数とも断トツだったそうだ。
「圧倒的ホスピタリティと独特のキャラクターはまさにナンバーワン」(ピクスタ)。ユーザーの夢にまで出てきたというエピソードも紹介された。
栗田さんの2018年11月の売上額は約145万円。「xiangtaoさんに比べたら規模は劣るかも知れませんが、fotowaのフォトグラファーならこれがどれだけ大変なのかがわかってもらえると思います。お金だけではありませんが、fotowaを頑張るとこれくらい報酬を得られるということです」(栗田さん)。
「2017年、2018年と2年連続でトップになったので2019年まではトップを狙おうと思います。自分のルールで『1位を3回取れば殿堂入りになる』というのがありますので、作戦を練って頑張りたいと思います」(栗田さん)と抱負を語った。
今後求められる素材とは?
会場には3つのステージが用意され、計12本のセミナーが行われた。ストックフォトの基本に関するものから、収入を安定させる方法、売れるストック動画について、家族の写真をおしゃれに撮るには? といった実践的な内容も多かった。いくつかのセミナーは実際にPIXTAやfotowaで活躍しているクリエイターが講師を務めた。
ここではその中から「2018年購入者動向とこれから求められるストックフォト像」と題されたセミナーの内容をお伝えする。
まずピクスタの2018年の取り組みが紹介された。問い合わせが多かったものとして、画像認識の研究に使用するための画像データ提供サービスを開始した。画像認識システムを作るには、機械学習をさせるために様々な写真が大量に必要になる。
人物の顔だけでは無く、自動車や動物の画像なども需要が高いそうだ。例えば「犬、猫、鳥の画像を数千枚ずつ欲しい」といった問い合わせがあるとのこと。なお、こうした機械学習用の販売でもクリエイターに支払われるロイヤリティは、通常の条件と変わらないそうだ。ピクスタでは、機械学習用素材のニーズは今後も続くと見ている。
また、ピクスタでは他社WebサービスへのAPI提供を活性化させている。例えばWebサイト制作サービスのサイトであれば、簡単にPIXTAの写真を入れられるようになるということだ。こうした使われ方も今後ますます広がっていくとのことである。
教材などの教育向け出版分野も最近引き合いの多いジャンルの1つ。実際、そうしたユーザーが購入する素材数は2014年から2018年にかけて4.5倍に増加したという。それを受けてピクスタでは、ユーザー企業向けに著作権侵害にならない素材の使い方を説明するセミナーなどを2018年に34回開催。需要の掘り起こしも積極的に行っている。
教育分野からは「節分や七夕などの子供向けの季節行事の人物写真」、「生活、文化、産業、環境などの社会科関連素材」、「各地域の風習や地方産業など地理関連素材」といった要望があったそうだ。
節分の写真でいえば、「豆が写っている写真はあっても、豆まきをしている子供の写真はあまりありません。教科書や塾のテキストに載せる場合だと、より行事を想起されやすいものが必要になります。ですから人物が写っている素材のニーズは高いのです」(ピクスタ)。
また、教育分野では「寒い地方の朝方にモヤがかかる現象」の写真が欲しいという要望もあったそうだ。PIXTAには2点ほどしかなく、ユーザーはさらにバリエーションが欲しいとのことだった。「地域特有の現象や風習の素材は非常にニーズがあります」(ピクスタ)。
また人物写真では「中年女性(40〜50代)のライフスタイル素材」、「半導体やソフトウェアなど特定分野のビジネス素材」、「忠実に再現されたバイオ系素材」の需要が高まっているという。
バイオ系のネタでは「忠実に」というのが最近の要望で、試験管やフラスコに入っている色水がけばけばしいのが問題になるという。試薬などは無色透明のものも多く、現実とかけ離れた要素のある素材はビジネスユーザーは使いにくいのだそうだ。
その他、人物素材の最近のニーズとしては「家族団らんでも未成年が写っていない素材」(アルコール飲料メーカーの広告用)、「庭でのバーベキュー風景などアウトドア感のある戸建て素材」(ハウスメーカーの広告)、「カメラ目線ではなく人物の後ろ姿や横から撮影されたビジネス素材」(ソフトウェア関連)、「制服があるような交通業界の女性素材」(広告用)といったものが挙がった。
人物以外では、「スマートフォン向けの縦画面で使える画像」(アプリメーカー)、「マナー教育で使えるような高級感のある素材」(マナースクール)、「銀行やカードローン関連の素材」(広告用)などの問い合わせが多いとのこと。
銀行やカードローン関連に関しては、カードそのものやお金を受け取っている素材はあるものの、「ATMからお金を引き出している」や「ATMを使おうか迷っている」といった素材が少ないそうだ。広告に使うために、これまでにないバリエーションが求められているとのこと。
その他には、「昭和をテーマにした素材」(広告用)、「自動車の正面の写真」(自動車の部位の説明用)、「ビールやワイン以外のアルコールの素材」(焼酎、泡盛、ウイスキーなどは素材が少ないわりにニーズが高い)などが紹介された。
最近では動画素材の需要も高まっているとのこと。写真だけではなく、動画素材にチャレンジしてみるのも面白そうだ。